営業組織の目標達成と成長には、「インサイドセールスの活用」が必須な時代 ~ インサイドセールス体制を構築/強化する注意点と対策

多くの企業が「新規顧客が十分に増えていない!」「案件や商談が十分な量ではない!」と悩んでいます。

外回り営業であるフィールドセールスが頑張ってお客様に訪問しますが、新規のお客様の開拓/新規の商談の開拓は、以前と比べますます難しくなっています。その背景は、お客様はますますインターネットに依存して情報収集するようになったからです。「どの会社に声をかけるのか?」はその調査結果次第です。

そのため、新規顧客/新規商談開拓の手法として、『マーケティングオートメーション』というツールや『インサイドセールス』という体制を導入する企業が増えています。私たちは『インサイドセールス体制』の導入/強化の支援を行っていますが、すでに営業組織を持つ企業が導入する際にはいくつかの注意点があります。

実際に、インサイドセールス体制を導入するための一連の流れ、そして、その注意点と対策について解説します。

インサイドセールス体制を構築/強化する注意点と対策

『マーケティングオートメーション』『インサイドセールス』とは?

マーケティングオートメーションとは?

マーケティングオートメーション(Marketing Automation)は、その名前の通り、『企業内で行われるマーケティングに関わる業務を自動化し、営業組織の生産性を向上するツール』です。SNSやホームページなど、インターネットの様々なメディアを活用してお客様に役立つ情報を提供することで、お客様の関心や購買意欲を高め、新たな商談機会を生み出します。マーケティングオートメーションによって、お客様からの問い合わせがあったら、その対応はインサイドセールスが担います。

インサイドセールスとは?

インサイドセールスは、『内部営業』『内勤営業』とも言われます。インサイドセールスと対比するのがフィールドセールス(『外勤営業』『外回り営業』『訪問営業』とも言われます)です。フィールドセールスはお客様へ訪問する営業ですが、インサイドセールスは主に社内にいて営業を担います(企業によっては、お客様先へ訪問することのあるインサイドセールスもいます)。

「インサイドセールスはコールセンターのことですね?」とも聞かれますが、必ずしもそれが正しい答えとは言えません。コールセンターの場合、アウトバウンドコールと言われる『電話でアポイントメントを取る役割』や『電話で商品紹介をする役割』がありますが、それよりも高度なスキルが必要となります。また、コールセンターでは、インバウンドコールと言われる『電話受付という役割』もありますが、やはり、それよりも高度なスキルが必要です。

お客様からの問い合わせ対応は、インサイドセールスの主な役割の一つです。いくつかの企業では、ホームページにアクセスしたお客様がどのページを見たかを確認し、そのお客様の購買意欲を高めるための情報提供を担っているインサイドセールスもあります。

インサイドセールスは『営業』です。コールセンターの一部ではなく、『営業』として体制構築することが大切なのです。

インサイドセールス体制はどのような効果があるのか?

「インサイドセールスとフィールドセールス、それぞれがどのお客様を担当するか?」は、下記の4つのお客様の分類にもとづいて決定します。

1. 継続した取引ができているお客様
2. 休眠顧客 (過去取引があったが、面会が途絶えているお客様)
3. 一度面会はしたが、今まで取引はなく、その後、疎遠になっている見込み客
4. 面会も取引もなかった新規顧客

『1. 継続した取引ができているお客様』での新規商談の開拓

継続して取引ができているお客様から新しい案件や商談を開拓することは、今までと同様、フィールドセールスが担います。お客様の課題や悩みに耳を傾け、新製品や解決策を提案し、他の部署のお客様との面談を重ね、発見した商談を確実に受注へと結びつけます。

特に、『エンタープライズ企業などの取引額が大きいお客様』や『競合会社のほうが取引額の多いお客様』に対しては、フィールドセールスが戦略的な営業を行う必要があります。

『2. 休眠顧客』での新規商談の開拓

休眠顧客とは、過去に取引があったが、その後、取引が途絶えているお客様です。以前、取引があったお客様ですから、その連絡先はわかっています。このような休眠顧客から新規の案件や商談を生み出すことは、以前はフィールドセールスの役割でした。フィールドセールスが、新製品/展示会やセミナーの紹介を行い、新規の案件や商談を作ろうとしていました。

お客様がちょうど関心を持ち始めたタイミングでフィールドセールスが訪問できれば、新規の商談を効率よく発見することができます。しかし、「今は必要ないです!」や「先日、他社のモノを購入しました!」など、タイミングが合わないことのほうが多く、フィールドセールスの営業効率はあまり良くありません。そのため、マーケティングオートメーションを利用して、休眠顧客に継続的な情報提供を行います。お客様の購入意欲が高まり、そのお客様からの問い合わせがあると、その問い合わせ対応をインサイドセールスが担います。

インサイドセールスは、そのお客様の購入検討状況/ご要望/購入量/予算などを把握します。そのうえで、インサイドセールスが、「この案件は、フィールドセールスがお客様に訪問すべき!」と判断すれば、フィールドセールスへお客様訪問を依頼します。お客様は、すでに私たちの商品に関心を持っていて、購入の可能性が高いことはわかっています。ですから、フィールドセールスは、受注確率が高い商談を中心に訪問することができるのです。

商談の状況や金額の大きさによっては、そのままインサイドセールスが受注までを担います。

『3. 一度面会はしたが、今まで取引はなく、その後、疎遠になっている見込み客』での新規商談の開拓

この分類のお客様は、名刺交換をして連絡先はわかっているが、今は連絡を取っていないお客様です。この分類のお客様には、展示会やセミナーなどで名刺を頂いただけのお客様も含まれます。

この分類の見込み客も、休眠顧客と同様、新規の案件や商談を生み出すことは、以前はフィールドセールスの役割でした。ですが、過去取引がないために、面会のお願いをしてもなかなか会ってくれません。飛び込み営業をしようとしても、最近はセキュリティーなど観点から、『飛び込み営業を禁止』している企業も増えています。フィールドセールスは、これらのお客様の仕事内容を把握できていませんから、訪問できたとしても、新しい案件や商談になる確率は低く、営業効率は良くありません。時間ばかりを奪われてしまうことにもなりかねません。

この分類の見込み客へも『2. 休眠顧客』と同様、マーケティングオートメーションツールを活用して、継続的な情報提供を行います(『ナーチャリング』と呼ばれる活動)。実っている果実だけを獲得しようとする狩猟採集的な営業活動だけではなく、マーケティングオートメーションを活用して、農耕的に種から実へと確実に新しい商談を育てていくのです。そして、お客様からの問い合わせを増やすようにします。

『4. 面会も取引もなかった新規顧客』での新規商談の開拓

この分類は、全く接点がなかった見込み客です。連絡先もわかりませんので、テレビや雑誌などの宣伝や展示会などのマスマーケティング的な活動から接点を作ります。まずは、「私たちのことを知っていただきたい!」「興味を持っていただきたい!」「お客様の連絡先情報がほしい!」のです。ですが、これらのマスマーケティングの効果は段々薄れています。お客様はなにか困ったことがあると、その解決方法をまずインターネットで検索します。そして、お客様がインターネット検索で発見したところにコンタクトします。インターネットで、私たちのことを発見してもらうことが大切なのです。

そのために、ホームページに価値のある情報を掲載することが重要になります。基本的に、その情報はマーケティング部門と営業部門が共同して作成します。ただ、企業によってはマーケティング部門がないために、営業部門やインサイドセールスが担うこともあります。そして、その問い合わせを頂いたお客様に、インサイドセールスがコンタクトして、商談をはじめます。

インサイドセールス体制を導入する上での注意点

私たちは、『過去、長らくフィールドセールスだけの営業をしてきたが、今後、新たにインサイドセールス体制を導入したい企業』を支援させていただくことが多いです。そのような企業が、インサイドセールス体制を導入する際には、以下のような注意点があります。

注意点1. フィールドセールスとインサイドセールスが、それぞれが役割を果たすことが成功の鍵!
注意点2. インサイドセールスの存在価値向上と能力強化
注意点3. 最初からいろんなことに手を出さない!

注意点1. フィールドセールスとインサイドセールスが、それぞれが役割を果たすことが成功の鍵!

新規の案件創出は、フィールドセールスだけの仕事だけではなく、フィールドセールスとインサイドセールスの共同作業です。フィールドセールスとインサイドセールスの役割には、以下の違いがあります。

フィールドセールス

◆ 既存顧客との関係性を強化し、既存顧客からの新規案件を発見し、商談を確実に受注する。
◆ インサイドセールスからの依頼を受け、新規顧客および休眠顧客からの受注確度の高い商談を確実に受注する。

インサイドセールス

◆ マーケティングオートメーションを活用して、新規顧客を開拓する。
◆ マーケティングオートメーションを活用して、新しい案件や商談を創出する。
◆ お客様からの問い合わせを担当し、ニーズを的確に把握し、フィールドセールスが担当するか、インサイドセールスが担当するかを判断する。

このように、それぞれの主たる業務範囲や担当するお客様を明確にすることが大切です。それには、『ジョブ型雇用制度』と呼ばれる方法を活用し、それぞれの職務内容の定義/適正要件/評価基準を定めます。

注意点2. インサイドセールスの存在価値向上と能力強化

インサイドセールスが活躍するためには、インサイドセールスの能力/スキルを強化することが重要です。インサイドセールスは、コールセンターではありません。インサイドセールスは『営業』です。

お客様の課題を把握して、そして、受注確度が高いかどうかを見極める能力が必要です。インサイドセールスとしてそのような力を発揮するためには、上述したとおり、『ジョブ型雇用制度』を活用して、職務内容の定義/適正要件/評価基準を明らかにし、それに基づくトレーニングを行う必要があります。

また、『大手顧客からの問い合わせ』『金額が大きい問い合わせ』『ライバル会社(競合)が関与している問い合わせ』などの商談については、インサイドセールスは、フィールドセールスへ訪問を依頼します。このように、「どのような場合、インサイドセールスがその商談を行うか、フィールドセールスに依頼するか」の判断基準を明確にし、それを適切に判断できるようにする必要があります。ですが、実際には、明確に判断できない問い合わせも多いため、まずはトレーニングを行い、インサイドセールスとフィールドセールスの連携を強化することが大切です。

注意点3. 最初からいろんなことに手を出さない!

先ほども紹介しましたが、インサイドセールスを強化し、新規の商談を開拓するためには、マーケティングオートメーションというITツールが有効です。マーケティングオートメーションは、多様な機能があります。マーケティングオートメーションを販売する会社の営業は、その商品を売り込むために様々な機能を魅力的に紹介します。

確かに魅力的な機能は多いですが、最初から多くの機能を使おうとすると必ず失敗します。このことは、多くの企業がITツールを導入しながら使われていない状態になっている原因の1つです。せっかく導入したのだからいろいろやりたい気持ちになるのはわかりますが、最初は2~3の重要な機能に絞り、まずは効果を出すことが重要です。

ポイントは、『最初に実施すべきことを絞り込むこと』そして『順次拡大していく計画的なアプローチ』です。マーケティングオートメーションの活用には、段階的に学習しながら段々と効果を高めていくような方法が必要なのです。

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あなたの会社の新規顧客開拓/新規商談開拓を最大化しよう!

インサイドセールス体制とマーケティングオートメーションについて解説しましたが、インサイドセールス体制を導入することは、営業組織のパフォーマンスを高めるためには有効な手段です。インターネットがこれだけ影響力を持っている状況では、フィールドセールスだけが新規顧客開拓/新規商談開拓をしていても、大きな改善は期待できません。また、フィールドセールスが、今までより商談の成約率を高めるためにも、インサイドセールス体制が必要とも言えます。

以上のように、インサイドセールス体制は、『新規顧客開拓』『新規商談開拓』に効果があります。しかし、その体制を作っただけでは、その効果を手にすることができません。インサイドセールスは『コールセンター』ではありません。インサイドセールスは『営業』なのです。そのことを理解して導入することが大切です。

私たちは、SFA(Sales Force Automation)やマーケティングオートメーションのようなツールを販売している会社ではありません。そのために、公平な立場でマーケティングオートメーションのツール選定やマーケティングオートメーションによって成果を手に入れられるための準備から導入後の改善に至るまでの支援をしています。

(『【コンサルティング】 業務改善/事業変革の遂行支援 ~ パフォーマンス向上を目指すプロジェクトを成功させます!(Consulting for Performance Improvement Project)』を参照ください)

私たちは、多くの営業組織の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウと経験があります。「これからインサイドセールス体制を導入したい!」もしくは「インサイドセールスによる効果をさらに高めたい!」と考えていらっしゃれば、是非ご連絡ください。貴社と力を合わせて、あなたの会社で成果を出せるように、導入から改善に至るまで、支援をいたします。

(本ノートは、2018年6月1日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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