不況時(景気低迷期)に営業組織の業績を改善させた企業はどのように営業力を強化したのか? ~ 経済環境が悪化しても結果を出せる基礎的な営業の仕組みを構築する方法!

お客様のニーズはますます多様化しています。法人向け営業(BtoB)はますます高度化しており、その多様化するお客様のニーズに応えることができる営業の仕組みが必要となっています。

しかし、日本の営業の仕組みは御用聞きの状態が多く、お客様のニーズに十分応えられている体制ではない営業組織が多いです。これからの未来の法人向け営業(BtoB)では、顧客のニーズを適切につかみ、不況(景気低迷期)でも目標達成ができる「新しい営業の仕組み」へと移行することが求められています。

経済環境が悪化し、そのためにリストラをしなければならない状況まで業績が悪化したある企業は、営業力を強化することで売上を回復することができました。その企業が実際に行った「営業の仕組みの見直し方法」について解説します。

経済環境が悪化しても結果を出せる基礎的な営業の仕組みを構築する方法!

営業担当者の目標達成率が悪化していた!

私たちのクライアント企業A社は、BtoBとよばれる法人営業をしている企業です。A社は、景気の低迷を受けて、売上目標を達成できている営業担当者が急激に減少しており、このままではリストラを行わなければならない状況でした。A社の営業組織内の管理は、下記の項目で毎月の売上見込だけを管理している状況でした。

◆ 今月の売上見込金額はいくらか?
◆ 今月どのような商談が受注できる予定なのか?

その当時、A社の営業現場では、以下のような問題が発生していました。

◆ 毎月の売上見込が大幅にずれる
◆ 今月受注できるはずの商談が受注できていない
◆ 営業担当者たちの目標達成の確率が悪い

直面している問題解決に向けて、営業支援ツール(SFA: Sales Force Automation)を導入!

これらの3つの問題を解決するために、A社はSFA(Sales Force Automation)と呼ばれる営業支援ツールを導入しました。そのSFAを販売している会社の営業担当者からは、「我社のSFAは、A社の直面している営業問題を解決するためには最適なツールです!」という提案があったためです。

SFAというツールは、営業組織の生産性を向上させるためのシステムです。SFAには、1つ1つの商談の進捗状況を管理する機能があります。商談の進捗度合いを管理することで、下記のような効果をもたらします。

◆ 毎月の売上見込のずれを小さくできる。
◆ それぞれの商談の受注予定日の精度を向上できる。
◆ 商談の受注確率を向上できる。

SFAを導入することで新たな問題が発生した!

A社は、新しい営業の仕組みとしてSFAを利用し始めました。しかし、当初期待したほどのSFAの導入効果が得られませんでした。効果が得られないどころか、その逆に、SFAを導入することで、以下のような新たな問題に直面してしまっていたのです。

◆ 新たな問題1. 導入の失敗
◆ 新たな問題2. SFAを標準設定のまま使用した!

新たな問題1. 導入の失敗

A社は、SFAを導入する際、「使っていれば、そのうち使い方もわかるだろう!」と考え、導入前のトレーニングを行いませんでした。このようなシステムを導入するときには十分なトレーニングが必要です。トレーニングを行うことで、営業マネージャーと営業担当者は下記のことを学ぶ必要があります。

◆ どのような目的でシステムを導入したか?
◆ このシステム導入による得られる効果は?
◆ このシステムで必須として入力すべきことはなにか?
◆ このSFAの使い方は?

このようなトレーニングを行わなかったために、営業マネージャーも営業担当者も好き勝手に使っていました。中にはデータを入力していない営業担当者までいたのです。

新たな問題2. SFAを標準設定のまま使用した!

SFAは、1つ1つの商談の進捗状況を管理することができます。そのため、一般的なSFAは、下記のような商談の進捗項目が初期設定されています。

「アポ取得」→「ヒアリング」→「デモ」→「提案書の提出」→「見積書の提出」→「クロージング」
(SFAは様々な企業が販売していますが、販売している企業によってこの設定されている項目は異なります)

A社は、SFAの商談の進捗項目の設定をこのまま使い始め、「アポ取得」「ヒアリング」「デモ」「提案書の提出」「見積書の提出」「クロージング」のそれぞれの毎月の量をモニタリングしていました。そして、営業担当者一人ひとりの量を確認し、営業マネージャーたちは以下のような指示をしていました。

◆ A君は、デモが少ないからデモを増やすように…
◆ B君は、提案書の提出量が少ないから、これを増やすように…

このようにSFAを利用しはじめたのですが、当初想定していた効果を得ることができませんでした。その原因は、A社の営業状況に合う商談の進捗項目をSFAに設定していなかったためでした。

新たに発生した問題の対策を実施!

対策1: まずは、SFAの設定を大きく見直しした!

A社が導入したSFAに初期設定されていた商談進捗の項目は、「アポ取得」「ヒアリング」「デモ」「提案書の提出」「見積書の提出」「クロージング」でした。A社は、この初期設定されている商談進捗の項目をそのまま使っていましたが、これはA社にとって「商談を確実に受注するために適切な商談の進捗項目」ではありませんでした。

A社で実際に起こっていたことの1例ですが、SFAのデータから「デモの量が少ない」という事がわかったとしましょう。そうすると、営業マネージャーが営業担当者へ「デモの量を増やすように!」という指示をします。営業担当者はデモの量を増やすのですが、売上は改善しませんでした。

実際に私たちが調査をしてみますと、「デモの量を増やせ!」という指示でしたので、営業担当者たちはデモをしていました。ですが、「新しい商品が出ましたので見てください!」とやみくもにデモをしている状況だったのです。お客様のニーズや予算を確認して、それに合ったデモをしている状況ではないために、売上を増やす効果はありませんでした。

法人営業とは「お客様の購買プロセスを先に進めるお手伝いする活動」とも言えます。BtoCと呼ばれる消費者向け営業の場合には即断や衝動買いが期待できますが、法人のお客様は合理的に購買の可否を判断します。SFAに設定する商談の進捗項目は、法人企業のお客様の合理的な購買手順に合致するように仕組み化しなければ、確実に受注することに役立ちません。そこで、A社はSFAの商談の進捗項目の設定を以下のように見直しました。

「引き合い評価」→「予算化」→「要求の明確化」→「競合比較」→「価格交渉」→「受注」

対策2: 新しい仕組みのトレーニングをもう一度行なう

以上のように、SFAの商談進捗の設定を修正したあと、営業マネージャーと営業担当者にトレーニングを実施しました。これによって、営業担当者たちが入力する情報が統一化され、当初悩みとなっていた下記の問題を改善することができました。

◆ 毎月の売上見込の精度が向上
◆ 商談毎の受注見込の精度が向上
◆ 営業担当者たちの目標達成の確率が改善

SFAを利用して営業状況を数値化することは大切です。ですが、営業現場の実態に即していないデータを集めても効果が得られることはありません。逆に悪化させてしまうのです。

まずは、確実に受注へと結びつけることに役立つ商談の進捗項目を設定します。そして、それを数値として把握し、対策を取ります。そうすることで、営業組織と営業パーソン両方のパフォーマンスを向上させることができます。

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不況時(景気低迷期)を乗り越えるために、営業の仕組みを見直そう

営業の強い会社にはいくつかの特長があります。

◆ 営業計画が戦略的
◆ お客様に価値を提供しようとしている
◆ 営業担当者が積極的(プロアクティブ)
◆ 仕事内容と求められる成果が具体的
◆ 成果に基づく、明確な報奨がある。
◆ 組織として体系的な教育体制が構築されている
◆ 「仲がよい」というだけのお客様との関係ではない
◆ 営業担当者が確実に目標を達成する

営業が強い会社は、以上を実現するための「営業の仕組み」を構築し、それを継続的に改善しています。「営業の仕組みを見直す」と言っても様々な方法があります。今回紹介したA社は、「SFAを導入する」「SFAの設定を見直す」という対策を行うことで、不況時(景気低迷期)を乗り越えました。

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(本ノートは、2008年3月24日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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