商談の効率性を奪っているのはだれか?

法人向けの営業をしている、ある若い営業担当者から相談を受けました。

「聞いてください。会社がせっかくの商談をつぶそうとしているのです。上司がお客様に直接電話をしてしまって、お客様が怒ってしまったのです。どうすればいいでしょうか?」

苦々しい表情で、本当に「困ったなあ」という様子でした。
具体的な話を聞いていて、びっくりしました。
上司がせっかくの商談をつぶそうとしてしまっているのです。
もちろん、意図的につぶそうとしてしまっているのではなく、知らず知らずに商談をつぶす方向に向けてしまっているのです。
そして、結果的に営業担当者のこの商談への余計な作業が発生してしまっているのです。

過去の経緯や状況を聞いてみますと、下記のような状況だとわかりました。

実は、このお客様はまだ取引実績がないお客様なのです。
偶然、お客様が私たちの商品を知り、問い合わせをしてきました。
このお客様は、民生用の機器を製造しているのですが、機器に問題があることがわかったようなのです。
微妙な動作の調整がうまくいかずに、場合によっては故障が発生してしまう可能性があるようなのです。
その問題はなかなか発見することができないので、その問題を発見する可能性を高めたいとのことでした。
それができれば、修理も減り、商品の信頼性を高めることができると考えています。
お客様と初めて会ったのは半年ほど前で、その時から商談を進めてきました。
初めて会ってから2ヶ月後くらいに、お客様から要望で一般的な製品のデモンストレーションしました。
その時点でご満足いただき、その後、お客様の実際に製造しているものでベンチマークをしてほしいということになったのです。
2カ月ほど前にお客様の機材をお借りして、ベンチマークをしました。
そのベンチマークでは、一部確認できない要素もあったのですが、ほとんどのご要望は確認ができ、効果がありそうだとわかっていただけ、お客様にも喜んでいただきました。
そのデモンストレーションの時には、『予算を確保しておきます』と言っていましたが、その後、お客様は一応予算化のめどがたったようです。
ただ、まだ確認できていないご要望もありましたので、2回目の検討をすることになりました。
しかし、この検討は、お客様も私たちも準備をするに時間がかかるので、1ヶ月後くらいにベンチマークを行うことになっています。
上司にもその報告はしてあり、注文をいただけそうだと伝えてあります。
ところが、先日私の知らないところで上司がお客様に電話をかけて、『すぐ注文をいただけませんか?』ってお願いしたそうなんです。
上司も数回面会したことがあるお客様でしたから。
お客様は、その電話には唖然としたそうです。
だって、まだすべてが確認できていないのですから…。
お客様も困ってしまい、上司にそのことを報告したところ、『そんな注文のことしか考えていないところは、しっかりフォローをしてくれるはずがない。やめてしまえ』と上司が怒ってしまっているらしいのです。
話を聞いてみると、この商談は、非常に良い形で進んでいる商談です。
成約率も高い商談です。
運よくお客様から問い合わせがあった時点では、はっきりした競合が存在しているわけではなく、競合より早く商談に関与できています。
また、「8つの購買ステップ」における、「課題リスト」に相当する内容もしっかり理解できています。
「予算」の状況もつかんでいます。
ベンチマークを行っているので、「概略要求仕様」も理解できています。
そして、「ベンダー選定」のステップでも、競合が参入することなく進められ、今は、「ソリューション選定」の最中です。お客様のプロジェクトのペースに合わせ、効率的に、商談が進んでいて、お客様との信頼関係も築けつつある状態です。成約率がかかり高い商談でしょう。

 

しかし、いくら商談がよい形で進んでいたとしても、「ソリューション選定」が済んでいない段階で、「注文書をいただけないか?」は余りにも売手の都合ばかりを考えた勇み足でしかありません。
本当に購入して役に立つものか判断できない段階で、お客様は購入の約束をできるはずはありません。
そして、相手の状況も考えず、自分の都合を押し付けてしまえば、今までのよい関係も簡単に壊れてしまうのです。
上司の「早く注文がほしい」という気持ちは、わかります。
しかし、部下に余計な作業をさせることになってしまっています。
また、部下だけであればまだ自分の会社の浪費だけで済みますが、部下だけではなくお客様の大切な時間を奪ってしまっているのです。
商談を再度正常な状態に戻すための作業が必要になってしまっているのです。
浪費が発生してしまっている以上、商談の効率化などあり得ないのです。

では、この場合はどうすればよかったのでしょうか?
まず、上司は、商談の状況をしっかり確認すべきです。お
客様は注文を出す準備が整わなければ、注文はいただけません。
特に新規の商談であればなおさらです。
少なくても、「ソリューション選定」が合意している必要があります。
ソリューション選定に合意をし、最終見積書を出せていなければ、仮注文を出すことは、ほぼ不可能です。
そして、今回の場合において、注文を早くしてほしければ、お客様にお願いする前に、まず社内の努力をすべきです。2回目のベンチマークの日程を早めることが先立ちます。
2回目のベンチマークの日程を早くできれば、お客様が発注できる準備が早く整うわけです。
お客様のベンチマークの日程を早める努力をすることは、「注文をもらえませんか?」という安易なお願いとは大きく違い、お客様の信頼を失うことはありません。

今回は、相談のケースをもとに書きましたので、上司の問題として書きました。
しかし、営業担当者自身にもよく当てはまるケースです。
ノルマの関係上、注文を早く出してほしいケースがあると思います。
その場合は、やはりお客様に注文を早く出していただくお願いや要望をすべきです。
しかし、このお願いや要望をできるのは、お客様の購買プロセスが進み、発注する準備が整っている場合です。
少なくとも、「ソリューション選定」のステップが終わっていないと、お客様の発注する準備がほぼ整っているとは言えないのです。
しかし、場合によっては、お客様の社内都合で、承認に手間取り、発注がなかなか出ない場合がありますが、このときは、お願いや要望をすべきです。
お客様は様々仕事をしている以上、効果を早く手に入れるために、しっかり要望すべきです。
それ以外においては、注文を早めるためには、まず、お客様の購買プロセスを加速させるようにすることなのです。

私たちティ・スクエアが提供している「Profit Growthを持続可能にする、営業組織の業務プロセスの品質を向上する」ソリューション(SalesQuality)では、商談プロセスにおける基本的な考えを提供しています。
この商談プロセスをしっかり理解すれば、間違った行動をするのではなく、効果を発揮する方法を自ら考え、行動できるようになります。効果が格段に違ってくるのです。

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