今回ご紹介するのは、受注増加により業務部の負荷が限界に達していたあるエンジニアリング会社が、クロスファンクショナルチーム(部門横断チーム)を立ち上げ、わずか6ヶ月で業務部の生産性を20%以上向上させた事例です。
単なる業務効率化ではなく、そのプロセスを、以下の通り具体的に解説します。
◆ 部門間の壁をどう乗り越えたのか
◆ なぜ「自ら考え行動する社員」が増えたのか
◆ 事業成長につながる仕組みがどう生まれたのか
業務部の生産性が20%向上、部門間連携で成果を出したクロスファンクショナルチームの実践事例
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業務部の生産性が限界だったエンジニアリング会社の課題
エンジニアリング会社S社は、工場設備や部品などを販売している企業です。S社は大きく分けて「営業部」「業務部」「総務部」の3つの部署に別れています。営業部は、お客様への営業活動を行い、新しい注文を獲得してくる部門です。業務部は、「お客様に出す見積もりの作成」「受注後の納品」「在庫管理や仕入先との調整」などの業務を担っています。総務部は、「経営企画」「人事」「会計」などを担っています。S社の社長が課題と考えていたことは、業務部の生産性でした。営業部は、以前から行っていた営業力強化が功を奏して高額な受注が増え始めていました。注文数が多くなったことは嬉しいことですが、注文の増加に伴い、業務部がその量に対処できなくなったのです。業務部のメンバーは、納品や受注後の伝票処理などの作業に時間を取られてしまうため、見積作成や仕入れ先との調整を営業担当者が行うようになりました。そのため、「営業担当者がお客様へ行かなくなる」という状況が多くなったのです。
S社は、中長期経営計画として、大きな事業成長を目指していました。そのために、「業務部の人数を増やす」という対策をするだけではなく、業務の生産性を高める課題解決の実施を決断しました。
なぜクロスファンクショナルチームを立ち上げたのか?
S社の社長と「どのように実施するか?」について話し合い、この業務部の業務改善プロジェクトは営業部と業務部と総務部のそれぞれから主要メンバーを集めたクロスファンクションチームとして実行することにしました。選抜されたメンバーには、「将来マネジメントとして活躍すること」を期待されている人が選ばれました。S社は、今までの5カ年経営計画が終了する時期を迎えており、次なる5カ年経営計画を作成している最中でした。これから行う業務部の業務改善プロジェクトを通して、次なる5カ年経営計画を確実に達成できるように、このチームのメンバーの能力を強化することも期待されていました。業務部の業務改善プロジェクトであるにも関わらず、営業部や総務部からもメンバーが参加したもう1つの理由は、業務部の仕事が業務部だけで完結していないためです。業務部が業務の改善を行うと少なからず営業部や総務部にも影響を及ぼします。営業部や総務部が主体的に業務部の改善に協力するために、営業部や総務部のメンバーもクロスファンクションチームに参加することにしました。
このクロスファンクションチームが目指すのは、「会社や組織のさらなる成長のために、現状よりも20%以上の生産性向上をすること」でした。私たちは、このクロスファンクションチームが挑戦する事業成長&業務改善を成功させるための推進支援とコーチングを担いました。
生産性向上を阻んでいた4つの業務課題
クロスファンクションチームは、業務部が直面している問題や障害の特定から始めました。その問題や障害を探っていると下記のことがわかってきました。◆ 営業とのやり取りに時間がかかる
◆ システム入力とエラーの増加
◆ 在庫欠品と過剰在庫
◆ 業務の属人化
営業とのやり取りに時間がかかる
S社の特徴は、「お客様の数」と「取扱商品の数」の両方が多いことでした。お客様から見積もりの依頼があるとお客様独自の諸条件や要望を間違えないようにするために、業務部のメンバーは、営業担当者へ確認することがルールとなっていました。ですが、営業担当者は外にいるためにすぐに返事をもらえないことが多く、その待ち時間が発生し、それが業務効率に悪影響を及ぼしていました。システム入力とエラーの増加
注文量が増えているために、お客様からの注文をシステムに登録する手間も増えていました。お客様から注文を受ける方法や納期の回答の方法には「Web(EDI)」「メール」「電話やFAX」など様々あり、システムへ入力の効率化を行う必要がありました。在庫欠品と過剰在庫
お客様から注文を頂いても、在庫が切れていて、仕入先への発注や納期の催促をしなければいけないことも時々発生し、これも問題となっていました。業務の属人化
最後に、業務部は仕事が属人化しており、新入社員がすぐに業務を担える状態ではありませんでした。注文数が多い時期はアルバイトや短期派遣などで対処したいのですが、マニュアルもないためにそのような対処ができない状況でもあったのです。課題別、業務部の生産性を高めた具体策
クロスファンクションチームは、以上のような問題を対処し、業務部の生産性の向上を目指しました。それぞれの問題に対して、具体的に下記のような問題解決を行いました。見積業務を止めないための情報一元化
見積作成時の業務部と営業担当者との間のやり取りを減らすために「顧客別の見積価格ガイドライン」の情報を一元管理できるようにしました。まず、トライアルとして表計算ソフトを利用して、お客様ごと&商品ごとの「仕入れ値に対する掛け率」「納期」「諸注意事項」をまとめ、業務部がすぐに参照できるようにしました。このトライアルを行ってみると、業務部のメンバーはその情報を見れば営業担当者に問い合わせをしなくても多くの見積を作成できることがわかりました。通常、営業担当者はこのような情報の一元管理に協力しないことが多く、十分に情報が集まりません。営業担当者にとっては、忙しい上に一時的に過度な手間がかかるからです。ですが、S社ではこの問題解決をスムーズに行うことができました。なぜならば、クロフファンクションチームに営業メンバーが入っており、その営業メンバーが思いついた解決策だったからです。
この対処によって、営業担当者が作成する見積件数を10数%削減することができました。今後は、このExcelをデータベース化し、「より検索しやすくする」と「アラームを出せるようにし、長期間情報が更新されていないものは営業担当者へ更新を促すようにする」という対処が行われる予定です。
RPA導入による入力業務の自動化
お客様からの注文のシステム入力やその注文に対する納期回答は、RPA(Robotic Process Automation)を導入することになりました。RPAでは、十分に対処できないところもあるために、すべてのシステム入力を自動化できたわけではありませんが、ほとんどのシステム入力はRPAで自動処理することができました。また、FAXで納期の回答をしなければならないお客様には、RPAを利用して自動でFAX送信できるようにしました。多くの入力作業を自動化できましたが、「発注数が少ないお客様が次の問題」とわかりました。発注数が少ないために、注文が不定期で、FAXや電話などで注文を受けていました。そのために、そのようなお客様に対しては、webで注文できるような仕組みを構築しました。お客様にwebで注文してもらう依頼をし、それによって、システム入力の手間を削減でき、納品や請求の業務をより丁寧に行う時間を生み出すことができました。
すべての業務をRPAで対処できるわけではないのですが、総務部内にRPAプログラムの専門家を育成し、今後は業務の自動化を増やす予定になっています。
在庫管理ルールの再設計
今までは、月に1回在庫量を確認し、在庫確認の当番が在庫の補充を行っていました。この問題に対しては、それぞれの在庫に対して閾値を決め、その閾値によって黄色信号や赤信号を出す仕組みにしました。その閾値は、過去数年間の発注量の平均値を基幹システムから出力し、その平均値と在庫量を比較するようにしました。これによって、月1回の発注ではなく、都度発注できる仕組みとし、欠品している状況を減らしました。また、この在庫に関しては、欠品だけが問題ではなく、一部では過剰在庫もあり、場合によっては廃棄していました。ただ、現在のところ、この廃棄量は経営に悪影響を及ぼすほどの量ではなかったために、次回以降に対処することになりました。
マニュアル整備による属人化の解消
S社は、他の多くの会社と同様に、季節によって注文件数が変動する状況でした。1月から3月までは忙しいのですが、6月から9月までは余裕のある状況でした。ですが、業務が属人化しており、その忙しいときにアルバイトや短期派遣などで対応できる状況になっていませんでした。この問題解決をするために、業務プロセスと社内システムの使い方マニュアルを作成しました。これによって、忙しいときにアルバイトや派遣を採用することで固定費を増やすことなく対応できるようになりました。
また、現在の社内システムは業務量を測定できない状況でした。そのために、それぞれの社員やお客様に、どの程度の業務量が発生しているか特定できなかったのです。そのことも、「業務の属人化」かつ「業務部としての生産性向上の対策が取れない」原因となっていました。現在、そのような業務量を測定できるシステムへと機能強化することを検討しています。
6ヶ月で生産性20%向上を実現できた理由
S社のクロスファンクションチームは、6ヶ月という期間で業務部の生産性向上を目指しました。彼らは20%の生産性の向上を目指したのですが、もっとも悩ましかったことは、「20%の生産性の向上をどのように測定するか?」でした。社内システムに処理数を測定する機能がなかったために、社員に一定期間作業数を記録に残してもらう方法で計測するしかなかったためです。今回は、そのような一定期間測定することを通して、20%を超える改善ができていることを確認しました。クロスファンクショナルチームが生んだ副次的効果
今回のクロスファンクションチームの活動は、副次的にさらに大きな効果を生みました。S社は「生産性の向上は大切だ」とは思いつつもできていない状況でした。ですが、「組織が成長し続けるために業務を計測する」という考えが定着し、すでにお伝えした通り、様々な社内システムを再構築する検討が始まりました。さらには、今後の事業成長を目指して、「ジョブ型雇用」の導入が始まりました。クロスファンクションチームのメンバーが、今回の経験を活用して、評価や教育や給与体系を変革する挑戦をしています。
事業成長につながる「自ら考え行動する組織」へ
「業務部の仕事が回らない」「営業が売ってくるほど、社内が疲弊していく」そんな状況に心当たりはありませんか?今回の事例が示しているのは、「業務改善=業務部だけの問題」ではないということです。部門を越えて課題に向き合い、チームで事業成長に挑戦することで、生産性向上と人材育成の両立が実現しました。
もし、以下の課題を感じているのであれば、この事例がヒントになるはずです。
◆ 業務部の負荷が限界に近い
◆ 部門間の連携がうまくいっていない
◆ 社員が受け身になっている
私たちは、多くのクライアント企業において、社員がチームとなって自主的に「事業成長に貢献するプロジェクト」を遂行するコーチングや支援しています。力を合わせて、組織として成長する力を強化し、会社内にその仕組みを構築しましょう。このチームで挑戦する『事業成長への行動』推進モデルの具体的な内容説明の希望・質問・ご依頼は、下記からお問い合わせください。
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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