「新しいことへの挑戦」に抵抗する人への対処方法 ~ 事業の成長に向けて、「組織の進化の障害」となる社員の抵抗を取り除け!

世界が大きく変わり始めました。「新しいことへの挑戦」が必要な時代です。企業はもちろんのこと、非営利組織などでも「新しいことへの挑戦」が必要となっています。ですが、実際に始めると、それに抵抗する人がいて、遅々として進まない問題に直面します。

社員が、「新しいことへの挑戦」に抵抗するのであれば、企業はさらなる進化を遂げることができません。どうすればよいのでしょうか?

このノートでは、社員が「新しいことへの挑戦」に抵抗する理由、そして、その抵抗への対応方法について解説します。

事業の成長に向けて、「組織の進化の障害」となる社員の抵抗を取り除け!

「新しいことへの挑戦」の多くが失敗している

今までと同じことをしているだけでは、成長することはできません。周りは進化しているために、「今までと同じ」ということは、現状維持ではなく、衰退していると一緒です。

例えば、経済成長率(市場成長率)よりも目標が低ければ、努力しなくても目標達成できるでしょう。周りがそれだけの成長をしているからです。ですが、経済成長率(市場成長率)よりも高い目標達成を目指すのであれば、知恵を発揮し、努力をしなければ、その目標を達成することはできません。

パフォーマンスを向上するためには、企業や組織が変化/進化すること、 すなわち、「新しいことへの挑戦」が必要です。企業だけではなく、非営利組織を含めた多くの組織が「新しいことへの挑戦」を行います。ですが、社員たちの抵抗に合い、「新しいことへの挑戦」に失敗しています。

経営に関する書籍や論文を調査すると、「新しいことへの挑戦」の約60~70%が「期待する結果が得られないままで終わっていた」と報告されていました。

驚くべきことに、2/3もの「新しいことへの挑戦」が、思うような結果を得られることなく終わっているのです。

「新しいことへの挑戦」への抵抗

私たちは、クライアント企業の「新しいことへの挑戦」が成功するための支援を行っています。その支援を通して、社員たちが「新しいことへの挑戦」に抵抗する4つの理由がわかりました。

◆ 自己的な利益を失うおそれ
◆ 不信感
◆ 必要性やメリットに対する考え方の違い
◆ 個人の能力や耐性の低さ

自己利益を失うおそれ

「新しいことへの挑戦」に対して、社員が抵抗する1つ目の理由は、「自分自身の利益を失うことへのおそれ」でした。

例えば、会社が「新しいことへの挑戦」を実施しようとすると、社員たちは「自分の仕事が減ってしまうのではないか、なくなってしまうのではないか」と感じていました。例えば、企業はライバル会社との競い合いがあるために、さらなる「生産性の向上」を進める必要があります。そのために、たとえば、ITを導入することによって、工数を削減したいわけです。

ですが、それに対して、幾人かの社員たちは、「仕事が減ってしまう(なくなってしまう)のではないか、給料や残業代が減らされるのではないか」と、自分の利益が減ってしまう恐れを感じているのです。また、新しいITを導入すると、その学習が必要となります。最近のIT技術はますます高度になっています。それを学習することも簡単ではありません。そのITを使いこなすことができないと、上司から「新しいITを十分に活用できていない」と評価され、「自分の給料が下がってしまう」おそれがあります。

会社の中核を担っている部長や課長などのベテランの社員たちは、会社が「新しいことへの挑戦」をすると、「今までの自分の権限を失ってしまうのではないか」「自分の立場が低下して、部下たちが自分の言う事を聞かなくなるのではないか」「今までのやり方を否定されているのではないか」と不安を感じていました。

不信感

「新しいことへの挑戦」に対して、社員が抵抗する2つ目の理由は「不信感」でした。

リーダーやマネージャーが「新しいことへの挑戦」を言い出したとしても、そのリーダーやマネージャーのことを信用できないのです。多くのマネージャーたちが「やれ!」と指示するのですが、一方的に指示するだけで、その「新しいことへの挑戦」が必要となった理由や情報を正しく伝えることなく、「何しろやれ!」と実施させていました。

実際に始まった後は、リーダーやマネージャーは、プレッシャーだけはかけるのですが、助けようとしてくれません。うまくいかない原因や責任を部下に押し付けます。逆に、成功できたら、その手柄や報酬は独り占めします。「よく頑張った!」というような言葉は言いますが、部下たちの評価や報酬は上がっていないのです。

上司への不信感から、「新しいことへの挑戦」に抵抗するのです。

考え方の違い

「新しいことへの挑戦」に対して、社員が抵抗する3つ目の理由は「考え方の違い」でした。

リーダーやマネージャーたちは、長期的な視野で「業務プロセスの見直しが必要だ」と考え、「新しいことへの挑戦」を実行しようとします。ですが、現場の社員たちは、直近の仕事が忙しいために、「今の仕事の状態を考えると、業務プロセスの見直しよりも、新しい社員を雇ってほしい!」と要求します。

「お客様へ提供するサービスの向上」は、企業が永遠に追求しなければならないテーマの1つです。ですが、社員たちは、「自分たちは、もうすでに十分良いサービスが提供できている。お客様に喜んでもらっている。」と感じています。そのために、「新しいことへの挑戦が必要だ」と思っていません。

以上のように、人によって価値観や考え方は変わります。特に、「リーダーやマネージャー」と「社員」では、立場や過去の経験が違うために、価値観や考え方が合わないのです。そして、社員たちは、「上層部は一方的に指示するだけで、自分たちの考えを聞いてくれない」とも感じています。そのために社員は抵抗するのです。

個人の能力や耐性の低さ

「新しいことへの挑戦」に対して、社員が抵抗する4つ目の理由は「個人の能力や耐性の低さ」でした。

「新しいことへの挑戦」をするためには、さらなる学習が必要となります。知識やスキルを更に高めなければなりませんが、それに対して、社員は「今更勉強するのは嫌だ」「自分は今のままで良い」「自分には難しすぎる」と考え、抵抗していました。

「新しいことへの挑戦」には、緻密な情報収集や計画立案が必要です。ですが、そのような緻密な行動や計画を苦手としている社員は多いです。そのような手間がかかることを丁寧にやることよりも、「めんどうなことはせずに、さっさと済ませたい!」「細かいことをするよりも、自分の好きな方法でやりたい!」という感情が先立っています。このような「新しいことへの挑戦」の耐性が弱いことも抵抗する理由となっています。

特に、「自分に自信がある人」や「自分が中心的な存在ではないと気がすまない人」は耐性が低いことも多く、「新しいことへの挑戦」に抵抗する傾向があります。

抵抗する社員への対処方法

「新しいことへの挑戦」への心の変化

「新しいことへの挑戦」を抵抗する社員に対して、どのような対策を行えばよいのでしょうか?

社員たちは、「3段階の心の変化」を経てから、「新しいことへの挑戦」および「変化や進化」を受け入れるようになります。以下の「3段階の心の変化」を理解して、丁寧に対策を行うことが大切です。

1. 理解不足
2. 心の葛藤
3. 難度への不安

理解不足

「新しいことへの挑戦」を始めるにあたって、多くの社員たちは、上層部から十分な説明を受けることなく、その内容を正しく理解できていない状態なのに、「やるように!」に指示されています。リーダーやマネージャーが、「必要な理由はなにか」「なにを目指しているか」「それによる効果はなにか」「上層部はなにを期待しているのか」を正しく説明していないのです。

社員たちが「新しいことへの挑戦」に抵抗するのは、「新しいことへの挑戦」の内容を正しく理解できていないから抵抗するのです。まずは、この「理解不足」の対策を行う必要があります。

心の葛藤

「新しいことへの挑戦」の内容を理解できると、社員たちは、次に「心の葛藤」に直面します。「新しいことへの挑戦が求められていることはわかったが、自分にはどのような影響があるのだろうか」を考え始めるのです。ここで、「必要性やメリットに対する自分の考え方の違い」「自己的な利益を失うおそれ」などについて不安を感じて抵抗します。

次に対処すべきは、この「心の葛藤」です。

難度への不安

「新しいことへの挑戦」を理解し、その必要性やメリットを受け入れると、社員たちはやっと「自分はなにをしなければならないか」という自分の役割を考え始めます。ここで、社員たちは、自分に課せられる役割の難しさに不安を感じ始めます。「それは自分には難しすぎる」「自分にはできない」「あまりにも面倒」「いまから、また新しいことを学ばなければいけない」と感じます。そのために、抵抗するのです。

最後は、「難度への不安」に対処します。

社員を巻き込んで「新しいことへ挑戦」を始めるときには、以上のような「3段階の心の変化」を理解し、それらを丁寧に対処する必要があるのです。

抵抗への対処方法

以上の「3段階の心の変化」への効果的な対策方法が、以下の4つです。

◆ コミュニケーション
◆ 相手へのメリットを検討する
◆ 抵抗する主な人をチームに取り込む
◆ デメリットも伝える

コミュニケーション

相手に「新しいことへの挑戦が必要となった理由」「目指している目標」、そして、「これから起こること」を正しく説明します。その際、真実を伝えるようにし、わからないことがあったときには、「わからない」と素直に伝えます。嘘をついたり、大げさに言ったり、甘い見通しを言ったり、中途半端な説明をすることは避けます。

また、「新しいことへの挑戦」を一方的に相手に押し付けるのではなく、「あなたにとっては、難しすぎることかもしれない。だが、是非、挑戦してほしい。成功するように支援をする。」など、相手への支援を約束することも重要です。

相手へのメリットを検討する

「相手の個人的な考え」や「相手が目指しているビジョン」について、相手に話をしてもらい、理解します。そして、今回の「新しいことへの挑戦」が、「相手の個人的な考え」や「相手が目指しているビジョン」に、どのように役立つかを一緒に検討します。

その検討を通して、「この『新しいことへの挑戦』は必要だ」と相手が感じることを目指します。1回目の話し合いで到達できなかった場合には、時間をおいて、2回目の話し合いをします。通常、1回目の話し合いでうまくいかなくても、2回目、3回目の話し合いを行うことで、相手が受け入れるようになることが多いです。

実際の所、ほとんどの人は「変化や進化は必要だ!」とは、頭ではわかっています。ですが、その具体的な内容や自分への影響がわからないために、心で「抵抗」してしまうのです。先程解説した「心の葛藤」を幾度か繰り返すと、社員たちは段々と「新しいことへの挑戦は必要だ」と受け入れるようになります。

抵抗する主な人をチームに取り込む

強い抵抗が予想される社員には、早い段階で「新しいことへの挑戦」の計画立案やその推進へ参加を促します。抵抗する社員の一部には、「自分に自信がある人」や「自分が中心的な存在ではないと気がすまない人」がいます。彼らにとっては、「新しいことへの挑戦によって自己利益を失うこと」よりも、自分の存在や関わり方のほうが重要なのです。中心メンバーの一員として活躍してもらうようにします。

デメリットも伝える

「コミュニケーション」のところで説明した内容と少しかぶりますが、「新しいことへの挑戦」のデメリットがわかっているのであれば、デメリットを伝えることも重要です。正しく伝えることは、「不信感をなくす」ためには必須のことです。

「邪魔しなければ良い」と考える

社員全員が、「新しいことへの挑戦」を受け入れて、率先してくれれば最高です。ですが、全員が率先してくれないことも多いです。1人でも多くの人が率先してくれることを目指し、まずは、少なくとも1人か2人は率先してくれるフォロワーを作ります。そして、それ以外の人は、「新しいことへの挑戦」の邪魔をしないでくれればよいのです。「新しいことへの挑戦」が失敗してしまう原因の1つは、「社員が邪魔をすること」です。「邪魔される」状態を避けることができれば、「新しいことへの挑戦」を成功させる可能性を高めることができます。

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「新しいことへの挑戦」に対する抵抗は、応用力が必要

今回のノートでは、「新しいことへの挑戦に抵抗する原因」と「新しいことへ挑戦するリーダーやマネージャーたちがとるべき行動」について解説しました。新しい挑戦をするとき、社員が抵抗すれば、残念ながら成功が難しくなります。その抵抗を極力下げ、少しでも抵抗せずに実行してくれる、そのような状況をつくることが大切です。

抵抗への対処は、簡単なことではありません。応用力が必要です。外部のコーチから継続的に学ぶことによって、リーダーやマネージャーたちの抵抗への対応力を高めることができます。企業内でそのような抵抗を減らすことができれば、会社の変化や進化は加速します。

私たちは、多くのクライアント企業の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウと経験があります。社員たちが主体的に「新しいことへの挑戦」を実行する組織風土や事業運営体制の構築する支援をしています。より具体的な内容説明の希望/質問/ご依頼は、下記からお問い合わせください。

(本ノートは、2022年5月2日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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