安売りして、その上、お客様に嫌われていた営業担当者の行動 ~ 「お客様想い」だけでは不十分、営業担当者を教育しないと大きな機会損失となる!

営業担当者がお客様のことを考えることは大切でしょうか?

その答えは『イエス』です。営業担当者が『お客様想い』の気持ちを持って営業することは、営業の心構えとして必須条件です。ですが、『お客様想い』のために値引きして安く販売し、安く販売しているにもかかわらずお客様に嫌われてしまった商談事例を時折見かけます。このノートでその事例を1つ紹介しますが、他の会社の営業担当者でも同様なことをしていました。

なぜ、『お客様想い』なのに、そして、値引きまでしているのに、お客様に嫌われてしまっているのか、その原因と対策について解説します。

「お客様想い」だけでは不十分、営業担当者を教育しないと大きな機会損失となる!

『お客様想い』のためにお客様から嫌われた!

あるクライアント企業A社から営業力強化のご依頼をいただきました。A社は、介護用品の販売/レンタルをしている企業でした。A社の社長は、「営業の人数も10名近くまで増えており、会社のさらなる発展のために、この段階で営業体制を整えたい」と考えていました。

以前は、営業の人数が増えれば、その分、売上も増えていたのですが、ここ数年は、営業の人数が増えてもそれに見合った売上が増えない状況でした。社長は、「今まで営業研修をしたことがなかったが、今後は営業を強化したい」「営業の管理体制や人事評価も見直していきたい」と期待していました。そのため、私たちは、この企業の成長に向けた営業戦略の立案と実行の支援のご依頼をいただきました。

まず、A社の現状を把握するために、数人の営業担当者と同行訪問することになりました。同行訪問をしてみると、営業担当者たちは全員『お客様想い』の気持ちを持った営業担当者たちでした。会社の価値観にも『お客様への貢献!』となっており、そのことは、営業担当者たちに浸透しているようでした。

お客様との商談初日に発生していた出来事とは?

希望は「もっと外出できるようになりたい!」

あるお客様からA社のホームページへ「電動の車椅子を購入したい」という問い合わせがありました。営業担当者Fさんがその商談の担当でした。Fさんは、この業界では6~7年の経験があり、A社の中ではベテランの営業担当者の一人でした。

Fさんがお問い合わせを頂いたお客様に訪問したところ、その打ち合わせの相手は母親と娘さんでした。その打合せでは、まず、電動の車椅子を購入することになった以下の背景を教えてもらいました。

電動の車椅子を使うのは娘さんでした。今、この娘さんは電動ではない車椅子を使っていました。ですが、病状がだいぶ悪化してしまい、今までの車椅子では外出が辛くなり、一人での外出が減っていました。

今使っている車椅子を購入した時も、電動の車椅子の購入を検討したのですが、そのときは金額が高くて諦めました。ですが、家族も娘さんも一人での外出の頻度が減っていることが気になりはじめ、「今度は電動の車椅子を買おう」と決断しました。その予算も用意していました。

通院しているお医者さんにこの電動車椅子の購入を相談したら「では、障害者自立支援法に申請してみようか!」という話になったようです。この『障害者自立支援法』で認定されると、全額ではないですが、購入補助金が給付されます。

要望を削らないと、金額が高くなりますよ!

電動車椅子を購入することになった背景がわかりましたので、Fさんは電動の車椅子に対する希望や要望を伺いました。お客様の要望は、娘さんが使うことになるので『なるべく小型で片付けやすい』『できるだけ遠くまで外出できる』『姿勢の調整がしやすい』『座りやすい』でした。

これらの要望を聞いた後、まだ、お客様のご予算やその他の注意点などは確認していない状況だったのですが、営業Fさんはお客様へ、「娘さんの症状を考えますと、すべての要望を満たした車椅子では、給付金は購入額の一部分だけになりますよ。いくつかの要望を減らさないと高くなります。ですので、ご要望に合うように値引きもしますね」と説明しました。

このお客様は、電動の車椅子を買うのは初めてのために、詳しいことがわかりませんでした。そのため、Fさんの提案を受け入れ、いくつかの機能を削った電動車椅子で、見積りや各種書類の準備をすることになりました。

商談が終わった後、営業が言った言葉とは?

この商談が終わった後、Fさんは私に「過去の経験上、結局給付金が少なくて、安くしろ、安くしろ、と言われることが多いんですよ。この人も余計な機能が入っているから価格が高くなり、給付金が少なくなるんです。お客様が安く買えるためにも余計な機能は削ったほうがいいんですよ!」と言いました。

Fさんは、Fさんなりの『お客様想い』の気持ちは持っていたのです。

販売した後、実は、お客様に嫌われていた!

このお客様は、Fさんの提案した電動の車椅子を購入したそうです。ですが、お客様は「次の電動車椅子を買うときは、他の会社から買います!」と言っていました。今回購入した電動の車椅子は一回り大きいために片付けづらいのです。また、娘さんは「重くて操作がしにくい」と言っています。「もう少し高くても、違う方を購入しておけばよかった!」と反省しています。

車椅子は、利用頻度が高く、かつ、症状に合わせて買い直す必要があるために、繰り返し取引ができる商材です。A社の過去の取引状況を調べてみますと、購入に不満があり『1回限りの購入で終わり!』だったお客様が一定数いることがわかりました。お客様に繰り返し購入いただくチャンスをみすみす失っていたのです。

お客様が満足して購入するためにはどうすればよかったか?

営業担当者がお客様想いであることは、重要なことです。Fさんもその気持ちを持っていました。ですが、最終的には、安売りまでして、そのうえ、お客様に嫌われてしました。そのことが、お客様だけではなく、企業にも損をさせる結果となってしまっていました。

Fさんは、「お客様の購入の背景」「希望や要望」「ご予算」「その他の制約事項」などを詳しく伺い、いくつかの選択肢を用意して、お客様と一緒にその選択肢を比較検討し、お客様が最適な選択ができるように支援する必要があったのです。例えば、お客様が最適な選択ができるように、下記のような商談を行うべきでした。

◆ 『なるべく小型でしまいやすい』というご要望ですが、機能Aを入れた場合には、xxx円になります。少し機能を落とすとXXX円です。この中から選択してもらいますが、お考えはいかがですか?
◆ 『遠くまで外出できる』というご要望ですが、バッテリーAは容量が多いですが、やはり重いです。バッテリーBだと重さがxxxで軽いですが、外出時間がxx分くらいになります。
◆ 『姿勢の調整がしやすい』についてですが…
◆ 今回、ご要望に出ていませんが、修理のことを考えておく必要があります。たとえば…

このように、お客様が具体的にイメージしやすく、お客様にとって最適な選択できる支援をすることが、現在の営業担当者には求められています。本来は、このような「お客様にとって最適なものを見出す」という観点での『お客様想い』が大切で、その結果として長期的なお付き合いができるのです。


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営業の教育をやっているか、やっていないかで、お客様が増えるか減るかが決まってしまう!

A社の他の営業担当者も『お客様想い』ではあるのですが、そのために意味のない安売りをしていることがわかりました。A社は、過去、営業担当者に対して商品の勉強会は行っていましたが、営業教育を行っていませんでした。基本的には、先輩と一緒に同行訪問をして営業方法を学んでいました。営業担当者たちは『お客様想い』ではあるのですが、それをお客様満足と会社の利益に結びつけるための営業手法を学習していなかったのです。

このような営業上の問題は、営業現場を調査しないと見つかりません。営業担当者たちは「自分はお客様想いだ」と思っているので、自分が間違ったことをしていることに気づいていません。そして、通常『お客様に嫌われた』という悪い情報は隠されます。A社でも、営業現場を調査したから、この問題を発見できたのです。

あなたの会社の営業担当者たちは大丈夫でしょうか?

日本の多くの企業では、営業研修や営業教育が行われていないために、営業担当者たちが属人的な営業をしています。そのことが、知らず知らずのうちに、お客様に嫌われてしまうことにつながっています。営業研修や営業教育をしていれば、お客様に嫌われることを最小限にし、売上も利益も増やすことができます。

私たちは、多くの営業組織の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウ/経験があります。営業組織の業績(パフォーマンス)や生産性に疑問をお持ちであれば、遠慮なくお問い合わせください。貴社と力を合わせて問題を発見し、その問題を解決します。より具体的な内容説明の希望/質問/ご依頼は、下記からお問い合わせください。

(本ノートは、2016年4月24日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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