このノートでは、「医療用品製造業」が、私たちのソリューション「【営業コーチング】営業の結果を変える「営業パフォーマンス向上コーチング」を導入した事例について紹介します。私たちは、このクライアント企業の営業担当者の営業活動に同行して、結果を出すための営業コーチングを実施しました。
この医療用品製造業は、営業担当者たちの能力のばらつきや行動量の違いについて、問題に感じていました。多くの営業組織が行っている「行動計画を立てる」「案件の管理を行う」さらに「営業ロールプレイ」は、行っていました。それなのに、なぜか、一部のベテラン営業は売れていますが、多くの営業、特に、最近会社に入社した営業担当者のパフォーマンスは悪い状況でした。このクライアント企業の経営者の課題は、「なぜ、多くの営業担当者は売れないのか?」「なぜ、もっとお客様に訪問しようとしないのか?」でした。
このノートでは、この医療用品製造業が「【営業コーチング】営業の結果を変える「営業パフォーマンス向上コーチング」」を導入した背景、実施方法、そして、その効果について解説します。
営業担当者の営業活動に同行して、「行動力の強化」と「提案力の強化」のコーチングを行い、営業のパフォーマンスを向上させる!
ページコンテンツ
「営業コーチング」の導入の背景
クライアント企業が置かれていた状況とは?
この医療用品製造業F社へ、営業コーチングを提供することになったきっかけは、F社のM社長が当社のホームページへ問合せをしたことでした。その問い合わせ内容は、「BtoBの営業力を本格的に強化したい。その提案を受けてみたい。」と書かれていました。その後、M社長との最初のミーティングで、F社の状況とM社長の期待について、以下のように教えてもらいました。
◆ 売上を2倍へ伸ばしていきたい。
◆ 当社は、病院向けに医療用品の販売を行っている。
◆ 現在、営業担当者は、10数名いる。
◆ 多くの営業組織が行っている営業力の強化、「行動計画を立てる」「案件の管理を行う」さらに「営業ロールプレイ」は実施している。
◆ 営業担当者によって、売上実績や成約率がバラバラの状況である。
◆ たとえば、この2~3年に入社した若い社員は、「病院に行けない」などの状況である。さらに、価格だけで売っている。
◆ 行動計画を立てさせているが、小さい病院ばかりへ訪問しており、大きな取引額が見込める大きな病院へ訪問しない。
◆ 商材は5~6種類あるが、利益率の高い商材Pをもっと積極的に売りたい。
M社長とのミーティングを通して、「売上を拡大させる余地が十分あるのに、期待する売上が実現できていない」ことと、「営業力強化の対策を行っているのに、それが結果として現れていない」ことを不満に感じていることがわかりました。
当社からの提案内容
M社長とのミーティングで、以上のようなF社の状況とM社長の期待を伺ったあと、当社から以下の提案をしました。正しく現状を把握しないと、F社にとって本当に役に立つ提案ができないためです。◆ まず3ヶ月間、F社のBtoB営業力に関しての現状把握を行う(営業担当者との同行訪問、会議の参加、レポートの確認、など)
◆ その現状把握のあと、F社に最適な法人営業力を強化する実施計画を提案する
M社長へこの提案を行った時、「3ヶ月の現状把握のあとに、『F社に最適な法人営業力を強化する実施計画』を提案しますが、もし『この提案は当社の役には立たない!』と思われたら、現状把握だけでお断りください」とお伝えしました。この私たちの提案を受け入れていただき、現状把握から始めることになりました(最終的には、2年ほど、F社の営業力強化や営業変革の支援をしました)。
営業担当者たちの現状把握
この業界の商流
F社が扱っている商材の商流は、「F社 → 代理店 → 病院」とわかりました。F社と病院の間には代理店があり、そこで医療用品の在庫を持ち、代理店が病院へ納品して代金を回収していました。病院への新しい医療用品を提案するときは、F社の営業担当者が直接病院の担当者や用度へ提案をしていました。その際、代理店の営業担当者と一緒に提案することもありました。ですので、私たちが、F社の営業担当者に同行して病院に行くときには、代理店の営業担当者と一緒に訪問することもありました。
営業担当者の訪問先の比率
営業担当者たちの営業活動の状況を把握するための同行訪問が始まりました。営業担当者との同行訪問は朝から夕方までで、1日中営業担当者といっしょに過ごしました。F社の営業担当者と同行してみると、F社の営業担当者たちには決まったパターンがあることがわかりました。午前中は代理店に訪問して、在庫状況の確認、病院からの提案依頼の有無などの確認、その他残件の話をしていました。午後は病院へ訪問していました。通常、1日で2つの病院へ訪問していました。
お客様との面談時間
上でお伝えした通り、病院への訪問は一日2件ほどでした。そのそれぞれの病院での面談時間は5分程度でした。時折、10分ほど面談していることもありましたが、その逆に、2~3分で終了していた面談もありました。お客様への新商材の提案
お客様への面談時間が短いのですが、その短い時間の中で、新しい商材の紹介をしていました。F社の営業担当者が行っている新商材の紹介にも問題がありました。F社の営業担当者たちの約2/3が行っていた新商材の紹介は、「新しい新商材がでましたので紹介に伺いました。安いです。現在の価格と比べていただいて、更に安くできると思います。サンプルの評価してもらえませんか?」というものでした。面会時間が5分程度なので、このくらいの紹介しかできないのです。
他の1/3の営業担当者が行っていた新商材の紹介は、もっとひどいものでした。商材一覧のカタログをお客様に見せて、「紹介したい1つ目はこれです。」と言います。そうすると、お客様は、「今は問題ないしなあ」や「この前、新しいモノを導入したばかりだし…」と断ります。営業担当者は、「次のこれはどうですか?」と聞きます。お客様は、「ああ、これはいらないなあ」と断ります。営業担当者は、「では、これはどうですか?」と3つ目の商材について聞きます。このように、カタログの商材を1つずつ見せるのですが、多くの場合、お客様からすべて断られていました。最後に、営業担当者は、「では、また新しい商材がでましたら紹介しますね」と言って面談を終えていました。
私たちは、このような商材の紹介の方法を「行商の営業」と名付けました。この「行商の営業」を行っていた営業担当者たちは、次の新商材が出るまでこの病院に訪問する事ができないのです。面会のお願いをするネタがないためでした。
多くの場合、お客様は購入するかどうかを決めるために、サンプル評価をしていました。このサンプル評価でも問題が起こっていました。M社長が売上を増やしたい商材Pは、他社の商材よりも強度があることが特長でした、時折、破れてしまうことがあり、破れないようにするためでした。ですが、お客様にサンプル評価の感想を聞くと、ほとんどのお客様が「硬い!」と言って、購入しない決断をしていました。これは商品Pの特長なのですが、その特長のせいで、受注できない状況になっていました。
商材の不具合対応
時折、商材の不具合が発生して、そのクレームの対応をする必要がありました。そのような場合、ほとんどの営業担当者たちは、すぐに「対処します!」「社内で理由を確認します!」と言って、「どのような不具合が発生したのか?」「どのような状況だったのか?」などの不具合の状況をしっかりと確認していませんでした(2~3人の営業担当者は、不具合の状況についてしっかり確認していました)。そのため、クレームに対するお客様への報告などの対応も良くない状況でした。お客様との関係構築
以上のように、「お客様との面談時間が短い」「安さだけを全面に出す新商材の紹介」「不具合が発生しても、しっかり対処できない」ために、お客様と良い関係を築けているわけではありませんでした。もちろん、全くできていないわけではないのですが、お客様から見ると「安いものを扱っている業者の1つ」というだけの関係でした。月間のお客様の訪問数
営業会議や営業レポートもチェックをしましたが、その内容にはびっくりすることもありました。月初めには20件の病院訪問を計画しているのですが、実際には、月10件程度しか訪問していませんでした。私と同行しているときには、1日2~3件の病院訪問をしていました。ですので、私と同行訪問していないときには、ほとんど病院へ訪問していなかったのです。さらに、訪問していた病院は、クリニックなどの小さい病院でした。大きい病院へ訪問することができていませんでした。また、案件の管理状況を確認すると、お客様に見積もりを出したあとの商談フォローが悪く、見積もりを出した後、半年もほったらかしになっている案件もかなりありました。
現状把握から発見した問題
3ヶ月間、F社の営業担当者と同行訪問してみて、F社では以下の問題があることがわかりました。◆ 代理店には訪問しているが、購入決定権のある病院へは訪問していない。更に、小さいところばかりにしか訪問していない。
◆ 病院への訪問量が少ない上に、面会時間が5分程度と短い。
◆ 新商材の提案ができていない。安売りしかできない。
◆ クレームの対応も十分にできていない。
◆ 行動計画や案件管理ができていない。
◆ 以上のことから、お客様と良い関係が構築できていない。
すでにお伝えしましたが、F社は、「行動計画を立てる」「案件の管理を行う」さらに「営業ロールプレイ」などの基本的な営業力強化の対策を行っているのに、以上のような状況だったのです。
これらの問題は、営業担当者と同行訪問をし、会議やレポートを分析したから発見することができたのです。
営業力を強化するため、営業担当者との同行を含めた「営業コーチング」の提案
3ヶ月の現状把握が終わったあと、この現状把握の内容を報告書としてまとめました。そして、これらの問題を解決するための、以下のような「F社に最適な法人営業力を強化する実施計画」を提案しました。営業力強化コンセプト | F社に対する「お客様の認識」を変える! 「安いものを扱っている業者の1つ」という認識から、「価値のある情報を提供してくれ、様々な問題を解決してくれるプロフェッショナル」という認識へ |
行動力の強化 | ◆ 「営業活動計画力の強化」研修の実施 ◆ 戦略的なお役様の設定と案件進捗管理の見直し ◆ 月間目標の達成度と行動計画の立案の営業コーチング 【目指す効果】 大病院への訪問件数増加を目指す |
提案力の強化 | ◆ 「商談開拓スキル強化 TSメソッド」研修の実施 ◆ 商材ごとの提案シナリオの作成 ◆ 営業同行による「提案力」の営業コーチング 【目指す効果】 お客様との面談時間、および、提案の質を向上し、売上の増加をめざす |
M社長は、私たちの提案に納得いただき、実施することを決断されました。その後、これらの問題を解決し、目標の達成に向けて、営業担当者たちへの「営業コーチング」が始まりました。
営業コーチングの実施内容
法人営業の行動計画力の強化
F社の営業担当者たちは、今までも行動計画や案件管理をおこなっていました。ですが、現状把握をしてみると、数値の報告だけで、「具体的にどこの病院へ訪問しようとしているのか?」「どこの病院は訪問できて、どこの病院は訪問できなかったのか?」「1ヶ月以内に受注できそうな案件はどれか?」など、質的な内容は営業担当者任せになっていました。F社は、確実に結果を出すための「行動計画とその管理方法」および「案件管理の方法」について、十分な知識がなく、営業担当者ごとの属人化した管理となっていたのです。まず、必要なことは、「結果を出すために必要な行動計画の方法」と「案件管理の方法」を学ぶ必要がありました。
そのために、営業担当者全員へ、「営業活動計画力の強化」研修を実施しました。この研修では、以下のことを扱いました。
◆ 「売上の拡大に役立つ重点顧客」の設定方法
◆ 案件管理の方法
◆ 重点顧客、および、案件管理の対象となっているお客様への活動計画の大切さとその方法
(【参照】 【法人営業研修】営業パーソンの営業活動計画力の強化 ~ 目標を確実に達成するために必須となる営業活動計画の作成方法(Planning Method for Achievement))
「営業活動計画力の強化」研修を実施したあと、F社の状況に合う「月間営業計画書」を作成し、それで行動計画を行うようにしました。毎月月初めに、営業担当者と営業計画についてのミーティングを開催し、以下の項目を話し合うことで、継続的な営業コーチングを行いました。
◆ 先月の売上目標額とその達成度、年間売上目標に対する達成度
◆ 重要な案件ごとの進捗目標の達成度、今月創出した新規案件の数、および、総案件金額の増減
◆ 顧客訪問計画とその訪問達成度
◆ 先月の行動計画の自己評価
◆ 今月の売上目標
◆ 今月の重要な案件の進捗目標
◆ 今月の顧客訪問計画
この「営業活動計画力の強化」の営業コーチングを始めた当初は、私たちが期待していた営業計画書と比べて出来具合はかなり低いものでした。数値が間違っているなど数値の扱いも悪く、数値として記入できない営業担当者もいました。毎月、粘り強く営業活動計画力に関する営業コーチングを続け、実際に、全ての営業担当者が最低限期待していた営業活動計画ができるようになるまでに6ヶ月かかりました。6ヶ月たった時点でも、あくまでも最低限の営業活動計画でしたが、最初の壁を突破しましたので、その後、より高いパフォーマンスを達成するための応用力を強化する営業コーチングを実施しました。
お客様への提案力の強化
F社の営業担当者たちは、今までもロープレなどを行い、お客様への提案の練習をしていました。ですが、現状把握をしてみると、「新商材がでました、これ安いです。」や「(商材一覧カタログを見せて)これはどうですか?」と紹介をしている程度の状況でした。F社は、確実に結果を出す「お客様への提案」ができていませんでした。また、お客様と話をしている時間も5分程度の短い時間でした。そのため、F社の営業担当者たちに必要なことは、「お客様との会話の方法を根本的に変えること」と「商品提案とはどのように行うのかを学ぶこと」でした。
そのために、営業担当者全員へ、「商談開拓スキル強化」研修を実施しました。この研修では、以下のことを扱いました。
◆ お客様との良好な雰囲気の作り方
◆ 商談を開拓するための質問
◆ 商談を開拓するための提案
(【参照】 【法人営業研修】商談開拓スキル強化 TSメソッド ~ 「商談開拓技法」が営業パーソンの提案力を強化し、商談総額を2倍へ増やす!(Developing New Opportunities, TS-Method))
まず、「商談開拓スキル強化」研修を実施し、以上について学んだあと、F社の代表的な商材を選んで、その代表的な商材において、それぞれの「お客様へ提案するための商談のシナリオ」を作りました。商談のシナリオは6種類の商材に対して作りました。
この商談のシナリオの出来具合は、売上と相関関係がありました。やはり、売れずに苦労している商材は、商談のシナリオの出来具合が芳しくありませんでした。M社長が「販売を増やしたい!」と期待していた商材Pの商談のシナリオの出来具合もあまり良くありませんでした。そのため、半年に1回程度、定期的に商談のシナリオを見直す作業を行い、シナリオの効果性を高めました。
この「商談のシナリオ」は、文章としてまとめることは重要ですが、それだけでは十分ではありません。文書としてシナリオをまとめても、実際にお客様の商談ではそのシナリオ通りに進めることができないのです。繰り返しトレーニングすることが大切です。そのために、営業担当者との同行訪問のときに、お客様との商談におけるシナリオの活用度合いをフィードバックしました。
営業担当者たちは、最初はシナリオ通りにいかずに苦労をしていましたが、繰り返しフィードバックをすることで、次第にできるようになってきました。以前は、F社の営業担当者から、「サンプル評価をしてもらえませんか?」とせっつくような状況だったのですが、お客様の方から「いつごろなら、サンプル品を持ってきてもらえますか?」と言われる状況へと進化していました。
営業担当者たちの提案力が向上し、提案した商材に対するお客様の興味を引く出すことができるようになったのです。
営業コーチング 実施した効果は?
月1回の営業担当者たちの月間活動計画の営業コーチング、および、営業担当者たちとの同行訪問を含めた営業コーチングを実施することで、以下のようにパフォーマンスを向上しました。以上のように、「顧客訪問」「お客様との面談」「提案」が改善し、F社の法人営業力を強化することができました。この私たちが営業コーチングをした時期、病院への販売の市場は悪化していましたが、他社と違い、F社は売上を若干ですが上昇させることができました。
お客様からのクレームの対応も、数値データまではありませんが、大きく改善しました。営業担当者と同行訪問しているときに、お客様のクレームがあったときには、その対応方法のコーチングを行いました。そのため、お客様からのクレームに対しても、より具体的な対応方法などを報告できるようになりました。
営業コーチングを行う前、お客様にサンプルの評価をしてもらったときには、「硬い!」と言われて受注できなった状況でした。このことも、営業担当者との同行訪問を通して営業コーチングを行うことで、このようなことが起こる回数を格段に減らせ、商材Pの売上拡大を実現できました。
以上のように、M社長が期待していた「BtoBの営業力を本格的に強化したい!」という要望を実現し、様々なパフォーマンスを向上させました。M社長は、特に、10数名いる営業担当者の中でも、若い営業担当者が成長していることを実感しており、そのことを喜んでいました。
営業組織の強化のために、営業担当者の営業活動を把握する!
あなたの会社の営業担当者は、確実に結果を出すための営業活動ができていますか?F社は、私たちが支援をする前から、「行動計画を立てる」「案件の管理を行う」さらに「営業ロールプレイ」は、行っていました。ですが、M社長はBtoB営業力には満足できてなく、売上拡大余地はあるのですが、売上を伸ばせていませんでした。
営業研修を実施しただけでは、営業としてのパフォーマンスは向上しません。M社長は、それを理解してくれ、営業コーチングの実施を決断しました。営業組織のパフォーマンス、そして、営業担当者のパフォーマンスの問題は、「営業担当者がお客様とどのような商談をしているか?」を観察すればわかります。パフォーマンスが低い営業担当者は、お客様と効果的な商談ができていません。具体的な商談、そして、具体的な計画に対して営業コーチングを行えば、確実に営業担当者のパフォーマンスは向上します。
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文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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