できる社員がマネージャーになって成果を出すことができない原因とは? ~ 社員とマネージャー、それぞれの資質の違いを理解して、優秀なマネージャーを育成する対策

私たちのソリューションの1つに「マネージャーとして結果を出すための仕事の技術」プログラムがあります。クライアント企業内で「マネージャーの仕事の技術の向上」の支援をしていますと、「彼は一般社員のときは優秀だったのですが、マネージャーになったら力を発揮できていないのですよ!」と聞くことがあります。

一般社員のときには優秀だったので、会社としては「マネージャーになっても高い目標を達成してくれるだろう!」と期待していました。ですが、マネージャーになると「その率いるチームのメンバーの意欲が低いまま」「コミュニケーションが悪い」「チームの結果が出せない」などの状況に陥っています。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?

その原因は「一般社員に求められる資質や能力」と「マネージャーに求められる資質や能力」が違うからです。このノートでは、その資質や能力の違いと、それを理解した上で「結果を出せるマネージャー」を育成する注意点を解説します。

社員とマネージャー、それぞれの資質の違いを理解して、優秀なマネージャーを育成する対策

マネージャーと一般社員に求められる資質や能力の差とは?

一般社員に求められる資質や能力は?

日常の業務を担う一般社員に求められている役割は「自らの目標を達成するために、決められた職務/業務をいかに効率的に行うか!」です。成績の良い社員は、決められた業務を効率よく行うことができています。効率の良さが高い結果を達成できる理由です。

この「職務/業務をいかに効率良く行うか!」という思考は「戦術思考」と言われます。目標達成に向けた職務や業務とは「手段(行動)」に相当します。すなわち、「手段をいかに効率よく行うか」がポイントなためです。戦術思考は、視点が「手段」に向けられています。

以上のように、一般社員が優秀な成績を残すために必要な資質や能力は「戦術思考」と呼ばれる能力です。

マネージャーに求められる能力や資質は?

一般社員と比較すると、マネージャーには「戦術思考」だけではなく、それ以外の能力や資質が求められます。マネージャーの役割は「率いるチームの成果を最大化すること」です。マネージャーは、自分のことよりもチームのことを先に考えることが求められます。会社には、開発/生産/営業/サポート/総務などの様々な業務がありますが、どのような業務のマネージャーであれ、必要とされている仕事は下記の5つです。

◆ 目標と計画を立案する
◆ 評価/フィードバックを行う
◆ 適切な指導を行う
◆ 部下の動機付けを行う
◆ 組織間の仕事の受け渡しの調整や問題解決を行う

この5つの任務を遂行するためには、「いかに効率良く行なうか!」という戦術思考だけでは不十分です。マネージャーには「限られた資源で成果を最大化するためには、その資源をどのように分配するか!」という「戦略思考」も求められます。ここでいう「限られた資源」とは、時間/人(能力)/投資やコスト/設備などです。すなわち、マネージャーは、チームの成果を最大化するために、担当するチームの時間/人(能力)/投資やコスト/設備など、「どの領域にどのように配分するか」を合理的に決定できる能力が必要なのです。

目標を確実に達成するために「だれがどの業務領域を担当するか?」「どのくらいの比率で担当するか?」を合理的に考え、それらを反映した目標設定と計画を立案できるマネージャーだから、チームとして高い成果を達成することができます。

以上のような「戦術思考」と「戦略思考」の両方を発揮し、チームの目標を達成するために最適な資源の配分を決定できるマネージャーを育成する必要があるのです。


優秀な一般社員がマネージャーとして力を発揮できていない原因

Aさんは、一般社員のときに優秀だったため、他の人よりも早くマネージャーへと昇進しました。マネージャーに昇進したあと、率いるチームメンバーの仕事ぶりを見ると「仕事の能力が十分ではない!」と感じました。なぜならば、自分のように高い結果を出すことができていないからでした。そこで、Aさんは「自分と同じように仕事を行えば、もっと結果が出るはずだ!」と考え、部下たちへ「私の言うとおりに行え!」「もっと効率よく行え!」「もっと量を行え!」と、Aさんなりの仕事のやり方を指示しました。その指示の内容は、Aさんにとってもっとも効率的なやり方だったからです。

一般的に、社員として優秀だった人がマネージャーになると、以上のように自分の考え方や仕事の方法をメンバーたちへ押し付ける傾向があります。ですが、Aさんにとって、効率的な考え方や仕事の方法が、他の人にも効率的とは限りません。

Aさんが今までにやっていた考え方や仕事の方法は体系化されていないために、感覚的で思いつきのままに一方的に指導するだけになっていました。そのため、メンバーにとって理論的かつ効果的な学習機会とならず、逆に混乱/困惑させていました。

このようなマネージャーは、以下の状態を引き起こします。その結果、会社が期待していたマネージャーとしての結果を出すことができなくなるのです。

◆ メンバーがマネージャーを信頼しない
◆ メンバーが成長できない
◆ メンバーが疲弊してしまう
◆ メンバーが会社を辞めてしまう

メンバー(社員)を優秀なマネージャーへと育成させるためには?

このような結果を出せない状態を未然に防ぐためには、マネージャーの「戦略思考」を強化することが必須です。戦略思考を強化することで、マネージャーは下記のことができるようになります。

◆ 適切な人の配置
◆ 適切な業務比率の特定
◆ 適切な課題の設定
◆ 適切な育成

マネージャーが上記のことをできる結果として、チームの成果を最大化できるのです。マネージャーが、チームの成果を最大化するためには、「戦略思考」を学び、実践できることが必要です。

私たちの「マネージャーとして結果を出すための仕事の技術」では、その一部でこの「戦略思考」について扱っています。マネージャーに求められるこの「戦略思考」の基本フレームを学習し、ワークやディスカッションを通して「戦略思考」の応用力を高めることができます。
(【参照】【マネジメント基礎研修】 リーダーやマネージャーとして「チームを率いて結果を出す仕事の技術」 ~ チームを「目標達成」「持続的成長」させるスキルを強化(Manager’s Business Technics)

「戦略思考」を強化する基本フレームは、下記の4つの要素で構成されています。

◆ どのような課題があるのか?
◆ 何を変えるのか?
◆ 何へ変えるのか?
◆ それによってどのような成果を手に入れるのか?

この「マネージャーとして結果を出すための仕事の技術」プログラムに参加したマネージャーたちの多くは、このワークを実施する前、「自分はこのような戦略思考はできている!」「自分がこのような能力を高めるよりも、部下が学ぶべきだ!」と考えていました。ですが、実際にこの基本フレームワークの演習を行うと「自分はできていない!」と感じ始めました。「自分はできている」と思っていたのに、ワークで満足行く結果を出すことができなかったからです。

1回ワークを体験しただけでは十分に戦略思考を応用できるようにはなりません。様々な事例を通して、この4つの要素を繰り返し考えさせることで、社員やマネージャーたちの戦略思考を育むことができます。

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早いうちからマネージャー育成を始めよう!

経営者や上位マネージャーから言われたことだけを行うマネージャーばかりだと、企業は成長することができません。なぜならば、経営者や上位マネージャーがマネジメントできる範囲(目が届く範囲)は限られているからです。経営者や上位マネージャーの方針や戦略を理解し、その経営者や上位マネージャーの肩代わりができるマネージャーを増やす必要があります。

マネージャーには、戦術思考だけではなく、チームの結果を最大化するための戦略思考が必要で、その戦略思考を強化することが、企業の成長を可能にします。

多くの企業でマネージャーの能力強化を支援してきて、早いうちにこの「戦略思考」を学ぶことが大切であると痛感しています。なぜならば、年齢が高くなると、新しい思考や変化を受け入れることが難しくなるからです。「新しいことに挑戦するより、自分の今までの経験の範囲で無難に仕事をする」という楽な方法を選びます。ですから30才台のうちに学ばせることが大切です。

マネージャーという職務は、一般社員の経験の積み重ねだけでできるものではありません。また、何もせずに自然と育つ時代でもありません。マネージャーを意識的に育成することが大切な時代です。それが会社の持続的成長を可能にします。マネージャーが十分育っていないとお感じであれば、遠慮なくお問い合せください。貴社と力を合わせて「マネージャーとして結果を出す仕事の技術」を鍛えます。

(本ノートは、2015年12月6日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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