部門方針(グループ方針)の作り方 ~ メンバーの意欲を最大化し、事業を成功に導く方針作成方法

多くの日本の企業は、4月から新年度に入ります。そのため、毎年正月から3月にかけては、今期の目標達成に向けて最後のひと踏ん張りの時期であるのと同時に、マネージャーには来年度の方針作成の準備を始める時期でもあります。
次の事業年度では、今までとは違うさらなる成長(Growth)を成し遂げたいものです。
今年度の結果を踏まえ、さらなる成長を実現していくためにマネージャーはどのような方針を作成すればよいでしょうか?
このコラムでは、メンバーの意欲を最大限に引き出し、目標を達成できるマネジメントやリーダーとしての方針の作り方をご紹介します。
マネージャーの方針を作成する能力は、率いるその部門(グループ)が「部門(グループ)としての目標達成が出来るかどうか?」および「部門(グループ)としての成長(Growth)を成し遂げられるか?」を大きく左右します。
方針作成は「技術」です。プロセスに基づいて行えば、誰でもが作ることができます。
そして、ここで説明するプロセスを繰り返し行えば、よい方針を作る「技術」を高めることができます。

メンバーの意欲を最大化し、ビジネスを成功に導く方針作成方法

この「部門方針(グループ方針)の作り方」コラムのメリット

このコラムは、方針や実施計画を作成する方針作成者のための「実践的で使い易いガイド」となるものです。
方針や実施計画を作成するときに、より論理的かつ効果的に作成することに役立ちます。
また、メンバーがその方針を正しく理解し、それに基づいて仕事をすることにも役に立ちます。


方針とは何か?

方針とは「部門(グループ)のマネジメントやリーダーによって正式に表明された、企業の使命・理念・ビジョン・中長期経営計画の達成につながる、部門としての目標・意図・方向を示したもの」です
ですから、部門 (グループ) の方針には、数値による達成目標だけではなく、それ以外に最低限下記が含まれます。
(1) 部門 (グループ) の目標
(2) 重点施策
(3) 重点施策の達成基準
(4) 重点施策の方策


方針の問題点、こんな方針には要注意!

マネージャーの方針を作成する能力は、率いるその部門(グループ)が「部門(グループ)としての目標達成が出来るかどうか?」および「部門(グループ)としての成長(Growth)を成し遂げられるか?」を大きく左右します。
「部門(グループ)の成果」は、その部門(グループ)を率いるマネージャーの能力次第なのです。

そのため、私たちは、様々なクライアント企業からマネージャーやリーダーたちの方針作成力を強化するご依頼をいただきます。
私たちが、その方針作成の支援を行なう前にマネージャー達が作っていた年間計画は、目標達成や部門(グループ)の改善・成長にはほど遠い方針も目につきました。
実際にどのような問題があったのかを見ていきましょう。


問題1: 毎年書かれている内容が一緒、具体性が乏しい

あるIT企業の営業部門のマネージャーが作成していた年間計画を時系列で確認してみると、下記のようになっていました。

[2013年度方針] 売上目標 xxx億円 / 施策: 新規の顧客の創出
[2014年度方針] 売上目標 xxx億円 / 施策: 新規市場の開拓
[2015年度方針] 売上目標 xxx億円 / 施策: ビジネス領域の拡大
[2016年度方針] 売上目標 xxx億円 / 施策: 新規分野での事業拡大

表現は変わっていますが、その内容は毎年「新規開拓」が施策のままで、本質的には何も進化のない年間計画でした。実際、この営業部は、毎年新規開拓ができていないまま終わっていました。
新規開拓は簡単ではないです。ですが、毎年同じ施策に取り組んでいるということはこの部門(グループ)は学習・改善・成長がなされていないことと一緒です。
また、施策がこのように抽象的であると、確実に目標達成をすることはできません。


問題2: 目標が高すぎる

ある商社の営業部長が作成していた年間目標には下記のように書かれていました。

各自の達成目標: 訪問件数 月200件

この達成目標を設定した理由を確認した所、
「以前は月120件だったんです。でも、達成できない営業が多かった。なので、もっと気合を入れて訪問させるために、より高い目標設定をすることにしました」
とのことでした。

このように達成できない目標を年間目標にすることも避けるべきです。そもそも、年間目標は、目標を達成するためにあるのです。
(逆に、簡単に達成できる目標でもダメです)


問題3: 戦略になっていない

あるメーカーの営業部の年間目標には下記のように書いてありました。

  • 新規顧客開拓の訪問を増やす
  • 既存顧客との取引額の増加
  • お客様との関係を…

  • この施策の問題は、トレードオフの関係にあることです。新規の開拓に注力すれば、その分既存顧客がおろそかになります。そのまた逆もしかり、です。
    方針には戦略を占めることが大切です。戦略とは「目標達成の可能性を高めるために、限られた資源(営業の時間)をどこに割り振るか?」です
    ですが、この年間計画では、「新規にも訪問しろ! 既存顧客にも訪問しろ!」と言っているのと同じです。
    結局のところ、「何しろもっと訪問しろ!」と言っているだけにすぎないのです。

    どちらかに施策に取り組むと、もう一方の施策の取り組みが犠牲になるような戦略は立ててはいけません。


    問題4: 年間目標に意欲を感じず、他人事

    年間目標には、部門(グループ)としての達成数値目標を書きます。
    通常、年間目標に記載する達成目標は、「会社から割り振られた今年の達成目標(予算)の数値」が書かれます。例えば、「今季、会社から与えられた年間目標は、売上50億円だ!」というようなものです。
    上述した3人のマネージャーたちが作成していた年間計画にも、会社から割り振られた達成数値目標が記載されていました。

    この「会社から割り振られた今年の達成目標(予算)の数値」とは、「上から与えられた数値で、やらなければならない目標」という意味合い、すなわち、「義務」となっています。このような「義務」による年間目標はメンバーの意欲を引き出す効果がないのです。

    確実に目標を達成するマネージャーは、「意思」を示します。「俺は、みんなと一緒に売上50億円を達成したいのだ!」という、自らの意思を示す年間数値目標を示します。
    「意思」を示すから、メンバーの意欲を引き出すことができるのです。

    マネージャーが掲げる年間目標に書くべき達成目標というのは、会社や上司から与えられた数値をそのまま記入しているようではダメなのです。


    目標達成のための理想的な方針とは?



    以上のように、多くのマネージャーが作成しているものは、「方針」ではなく、達成しなければならない「年間目標」でしかありませんでした。また、戦略性の乏しいものでした。
    そもそも、方針とは「部門(グループ)のマネジメントやリーダーによって正式に表明された、企業の使命・理念・ビジョン・中長期経営計画の達成につながる、部門としての目標・意図・方向を示したもの」です。
    数値目標だけは示していますが、意図や方向に相当する部分が弱かったのです。

    メンバーの意欲を最大限に引き出し、目標を達成できるマネジメントリーダーとしての「方針」は、下記のようなものでなくてはなりません。
    (1) 会社や上層部のミッション・ビジョン・中長期計画と連携が取れているもの
    (2) 部門(グループ)の達成目標が、方針作成者の「意志」が現れているもの
    (3) 達成目標が客観的で明確にわかるもの
    (4) 達成目標が、ストレッチな目標となっているもの (頑張らなければ達成できない目標)
    (5) 幅広い視野で課題が検討され、戦略となる重点施策と達成目標と合理的に導き出されているもの
    (6) メンバーが「何を達成するか?」「なにをするか?」「何に時間を使うか?」がはっきりわかるもの

    では、どうしたら、このような特徴のある「方針」を作ることができるのでしょうか?


    実際に方針を作成する!

    理想的な方針を作るためには、多角的な情報を収集し、その収集した情報から幅広い視野で課題を見出すことが重要です。
    そのためには、下記のような手順で「方針作成」に取り組みます。


    ステップ1: 会社の目的・中長期計画・戦略からの課題の抽出

    部門(グループ)のマネジメントリーダーが作成する方針は、「会社(もしくは上司)の使命・理念・ビジョン・中長期計画・戦略」と合致しているものでなくてはなりません。
    そのために、今までの「会社の使命・理念・ビジョン・中長期計画・戦略は何だったか?」および「その達成度合い」を改めて確認します。
    次に、新たな「会社の使命・理念・ビジョン・中長期計画・戦略は何か?」を確認します。

    これらの確認を通して、「会社の目的・中長期計画・戦略」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」のリストを作ります。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)

    この「課題や問題(悩みや懸念)」を導き出すためのポイントは下記です。
  • 中長期計画のうち、達成度が悪い・芳しくないものは何か?
  • 過去と比べ、変化した会社の使命・理念・ビジョン・中長期計画・戦略は? (「変わっている!」ということは、会社という観点で新たな課題や問題が発生した可能性が高いです)


  • ステップ2: 部門(グループ)の目的からの課題の抽出

    方針作成者が率いる部門(グループ)の目的を検討します。
    部門の目的や存在価値を明確にするということは、仕事に対するメンバーそれぞれの捉え方を「単なる業務ということから意義のある取り組み」へと変化を促すことにつながります。

    まずは、過去方針を作成する際に文書化した「部門(グループ)の目的」に相当する下記の項目を確認します。
  • 私たちの部門(グループ)のお客様は誰か?
  • お客様が必要としているものは何か? お客様が価値を感じるものは何か?
  • 私たちの部門(グループ)はどのような貢献をすべきか? どのような存在であるべきか?

  • 次に、これから作成する方針に盛り込みたい「部門(グループ)の目的」を文書化してみます。

    上記の2つの作業を通して、「部門(グループ)の目的」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」のリストを作ります。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)


    ステップ3: 日常管理データからの課題の抽出

    部門やグループとして行われている業務には、その業務が円滑に遂行できているかどうかを測る日常管理データがあります。その日常管理データを確認します。
    この日常管理データとは、例えば営業に関わる部門(グループ)であれば、下記のようなデータを集計します。
  • 総売上額
  • 粗利額
  • 営業利益率
  • 新規引合金額
  • 競合勝率
  • 訪問件数

  • これらの日常管理データは、できれば過去3年分(3期分)の数値データを集計できるとなお良いです。

    これらの集計する作業を通して、「日常管理データの検討」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」のリストを作ります。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)
    この際、「課題や問題(悩みや懸念)」のリストを作るために着目すべき点は、下記の2つです。
  • 大きく悪化している数値
  • だんだん悪くなっている数値


  • ステップ4: 主要顧客別売上高からの課題の抽出

    部門(グループ)の主要顧客別売上高を集計します。
    年間の売上高が高い10社を主要顧客として選定し、過去3年分(3期分)の数値データを収集します。
    また、その10社の顧客のそれぞれの今後の投資動向の情報が収集できていれば、それをそれぞれ文書化します。

    上記の作業を通して、「主要顧客別売上高」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」のリストを作ります。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)

    この作業を行う際、もし主要企業それぞれの今後の投資動向の情報が収集できていなければ、それは、課題や問題の1つとなります。ぜひ、今後の方針の重要施策として取り組むべき課題です。


    ステップ5: 主要商品売上高からの課題の抽出

    部門(グループ)の主要商品別売上高を集計します。
    年間の売上高が高い10個の商品を選定し、過去3年分(3期分)の数値データを収集します。
    また、その10個の商品の今後の販売見込の増減に影響を及ぼす情報があれば、それをそれぞれ文書化します。

    上記の作業を通して、「主要商品別売上高」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」のリストを作ります。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)
    この作業を行う際、もし今後の販売見込の増減に影響を及ぼす情報が収集できていなければ、それは、課題や問題の1つとなります。


    ステップ6: 過去の方針反省表からの課題の抽出

    過去作成してきた方針反省表を改めて確認します。
    過去3年分(3期分)の方針反省表を検討することが望ましいです。
    これにより、「この方針は前々回・前回と何ら変わっていないのではないか?」とならないようにし、前回の方針よりもより効果的・具体的・合理的な方針の作成につなげます。

    過去3期分の方針反省表を読み込み、「過去の方針反省表」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」のリストを作ります。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)


    ステップ7: ライバル会社(競合)からの課題の抽出

    ライバル会社(競合)を検討します。
    最も競い合うことが多いライバル会社を3つ以上あげます。
    その競合について、それぞれ下記の3つを考え、文章としてまとめます。
  • ライバル会社(競合)の動向
  • ライバル会社(競合)に対する自社の強み
  • ライバル会社(競合)に対する自社の弱み

  • 上記が終わったら、「競合」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」のリストを作ります。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)

    過去、クライアント企業の方針作成のコンサルティングを行っていると、「うちの会社は特別なことをやっているので、主たるライバル会社(競合)はいません」というマネージャーは多いです。
    そのため「ライバル会社(競合)という観点での課題や問題(悩みや懸念)」を書くことができません。
    ですが、このようなケースの「課題や問題(悩みや懸念)」というのは、「ライバル会社(競合)を意識した戦略や営業活動ができていない」ということです。もし、「ライバル会社(競合)という観点での課題や問題(悩みや懸念)はない」ということであれば、「ライバル会社(競合)という観点での情報収集ができていない」ということが方針として取り組むべき課題の1つです。


    ステップ8: その他の課題の抽出

    最後は、その他の課題の検討です。
    特に、下記の要素それぞれで変化・課題・問題を検討し、文章としてまとめます。
  • 市場動向
  • 社外の協力会社
  • 社内の他部署
  • 社内業務
  • 部門(グループ)や人材
  • 上記以外

  • 上記が終わったら「その他課題」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」のリストを作ります。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)

    方針作成ステップ1から8を通して、様々な観点で部門(グループ)が取り組まなければならない課題をリストすることができました。


    ステップ9: 部門(グループ)の達成目標の決定

    この段階で、会社から割り振られた部門(グループ)の達成目標・予算に基づき、方針作成者(部門・グループのマネジメントリーダー)として達成したい達成目標を決定します。
    (ここでポイントとなるのは、方針作成者が「部門(グループ)を率いて達成したい!」という意図・意志が込められた達成目標を設定することです)


    ステップ10: 重点施策の決定

    方針作成ステップ9で決定した達成目標に対して、重点施策を決めます。
    この重点施策は、方針作成ステップ1から8のステップを通して見出してきた課題から決定します。
    このリストされた課題には、必要に応じてグルーピングをします。

    多くのことをやろうとても、中途半端となり結局は成し遂げられないまま終わります。
    重要かつ効果があることに絞ることが重要です。重点施策は最大でも3つ以内にすべきです。


    重点施策が決まったら、その重点施策の達成基準(客観的に数値で離れる基準)、および、その達成基準を達成するための方策(手段)を検討します。
    この方策(手段)も1つの重点施策にたいして、最低3つ以上記入します。


    これで、下記の要素を含む、メンバーの意欲を最大限に引き出し、目標を達成できるリーダーとしての「方針」が完成です。
    (1) 部門 (グループ) の目標
    (2) 重点施策
    (3) 重点施策の達成基準
    (4) 重点施策の方策

    方針は必ず文書として作成し、壁に貼るなどして、いつでも参照できるようにします。


    方針を作っただけで終わらない!進捗管理と反省が必要



    部門(グループ)方針は、作っただけで終わりにしてはいけません。
    方針に書かれている方策に取り組み、定期的に進捗を管理し、目標達成に向けて”対策”を講じることが大切です。

    方針の作成は、方針を作っただけで終わりではなく、その後の運用もしっかり検討しておくことが大切です。
    立てた方針の進捗の確認は、マネジメントたちが集まったミーティングで行います。
    そのミーティングの場で、方針作成者の上司もしくは他の部門(グループ)のマネジメントリーダーが議論を行い、それぞれの部門が確実に目標を達成できるようにするための対策を検討します。
    (基本は月1回、最低でも四半期に1回は行います)


    さあ、方針作成に取り組もう!

    メンバーの意欲を最大限に引き出し事業を成功へと導く部門(グループ方針)を作成するためのプロセスについて解説しました。

    方針作成は「技術」です。プロセスに基づいて行えば、誰でもが作ることができます。
    そして、ここで説明したプロセスを繰り返し行えば、よい方針を作る「技術」を高めることができます。

    是非、上記プロセスで方針作成に取り組んでください。
    メンバーの意欲を最大限に引き出し、目標を達成できるリーダーとしての「方針」が完成しているはずです。
    取り組んでみたがうまく行かなかった場合には、遠慮なくお問い合せください。
    私たちが、貴社のマネージャーが今までとは格段に精度の高い方針を作成できるようになるお手伝いをします。

    マネージャーの方針を作成する能力は、率いるその部門(グループ)が「部門(グループ)としての目標達成が出来るかどうか?」および「部門(グループ)としての成長(Growth)を成し遂げられるか?」を大きく左右します。
    貴社のマネージャーが、メンバーの意欲を最大限に引き出し、目標を達成できるリーダーとしての方針が作れるようになることをお祈りしております。


    文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
    Copyright (C) 2018 T-SQUARE Co., Ltd. All rights reserved.

    お問い合わせ先
    ご質問・ご依頼は、こちらからお問い合わせください

    関連するソリューション
    [プロフェッショナル人材育成] マネージャーの方針作成・推進力を強化 ~ 率いる部門を成長に導き目標を達成する!
    [プロフェッショナル人材育成] 成長 (Growth) をリードするハイパフォーマンスなマネージャーの実務能力を強化!
    [コンサルティング] パフォーマンス向上! 業務改善プロジェクトを成功へ導く計画立案&推進を支援

    関連する導入事例
    [お客様事例] 株式会社サカエ様 ~ 顧客をリードするプロアクティブな営業マンの育成研修で、売上が45億→55億に!
    部門方針(グループ方針)作成研修 導入事例 [お客様: エンジニアリング企業 @2016/08]
    部長候補者を対象とした部門方針作成研修 導入事例 [クライアント企業: 人材派遣企業 @2016/10]
    社内業務の最適化・生産性向上コンサルティング 事例 [お客様: サービス企業様 @2016/10]