あけましておめでとうございます。
新しい年を迎えましたが、3月末までの会社としての事業年度も残り少なくなってきました。
今期の目標達成に向けて最後のひと踏ん張りの時期ですが、マネージャーには来年度の方針作成の準備を始める時期でもあります。
次の事業年度では、今までとは違うさらなる成長を成し遂げたいものです。
成長を実現するためにマネージャーはどのような方針を作成すればよいでしょうか?
メンバーの意欲を最大限に引き出し、目標を達成できるリーダーとしての方針の作り方をご紹介します。
方針作成は「技術」です。プロセスに基づいて行えば、誰でもが作ることができます。
そして、ここで説明するプロセスを繰り返し行えば、よい方針を作る「技術」を高めることができます。
この記事のもくじ
メンバーの意欲を最大化し、ビジネスを成功に導く方針作成方法
この記事「部門方針(グループ方針)の作り方」のメリット
この記事は、方針や実施計画を作成する方針作成者のための実践的で使い易いガイドです。方針や実施計画を作成するときに、より論理的かつ効果的にすることに役立ちます。
また、メンバーがその方針を正しく理解したり、それに基づいて仕事をすることにも役に立ちます。
方針とは何か?
方針とは、「部門(グループ)のマネジメントリーダーによって正式に表明された、企業の使命・理念・ビジョン・中長期経営計画の達成につながる、部門としての目標・意図や方向を示したもの」
です。
部門 (グループ) の方針には、最低限下記が含まれます。
(1) 部門 (グループ) の目標
(2) 重点施策
(3) 重点施策の達成基準
(4) 重点施策の方策

方針の問題点、こんな方針には要注意!
私たちは、様々なクライアント企業の部門方針(グループ方針)作成研修に取り組んできました。方針作成のコンサルティングを行なう前にマネージャー達が作っていた方針には、目標達成や部門(グループ)の改善・成長にはほど遠い方針も目につきました。
実際にどのような問題があったのかを見ていきましょう。
問題1: 毎年書かれている内容が一緒、具体性が乏しい
あるIT企業の営業部門のマネージャーが作成していた方針を時系列で確認してみると、下記のような方針になっていました。[2013年度方針] 売上目標 xxx億円 / 施策: 新規の顧客の創出
[2014年度方針] 売上目標 xxx億円 / 施策: 新規市場の開拓
[2015年度方針] 売上目標 xxx億円 / 施策: ビジネス領域の拡大
[2016年度方針] 売上目標 xxx億円 / 施策: 新規分野での事業拡大
表現は変えていますが、毎年「新規開拓」が施策となっており、本質的には何も変わっていない方針でした。実際、毎年新規開拓を成し遂げられないまま終わっていました。
新規開拓は簡単ではないです。ですが、毎年同じ施策に取り組んでいるということはこの部門(グループ)は学習・改善・成長がなされていないことと一緒です。
また、施策がこのように抽象的なものでは、目標達成することはできません。
問題2: 目標が高すぎる
ある商社の営業部長の方針には下記のように書かれていました。各自の達成目標: 訪問件数 月200件
この達成目標を設定した理由を確認した所、
「以前は月120件だったんです。でも、達成できない営業が多かった。なので、もっと気合を入れて訪問させるために、より高い目標設定をすることにしました」
とのことでした。
このように達成できない目標を方針にしてはいけません。方針は、目標を達成するためにあるのです。
逆に、簡単に達成できる目標でもダメなのです。
問題3: 戦略になっていない
あるメーカーの営業部の方針には下記のように書いてありました。戦略とは、「目標達成の可能性を高めるために、限られた資源(営業の時間)をどこに割り振るか?」です。
ですが、この方針は、「新規にも訪問しろ! 既存顧客にも訪問しろ!」と言っているのと同じです。
結局のところ、「何しろもっと訪問しろ!」と言っているだけにすぎないのです。
どちらかに施策に取り組むと、もう一方の施策の取り組みが犠牲になるような戦略は立ててはいけません。
問題4: 方針に意欲を感じず、他人事
方針には、部門(グループ)としての達成目標が書きます。通常マネージャーが方針に記載する達成目標は「会社から割り振られた今年の達成目標(予算)の数値」が書かれます。
ですが、これは「上から与えられた数値で、やらなければならない目標」という意味合いです。すなわち、「義務」なのです。
このような達成目標の方針では、メンバーの意欲を引き出すことができません。
方針に書くべき達成目標というのは、会社や上司から与えられた数値ではダメです。
方針作成者が、部門(チーム)のメンバーを率いて達成したい「方針作成者の意欲が現れている達成目標」を記載しないといけないのです。
方針には「義務」ではなく「意志」を示すことが重要です。
目標達成のための理想的な方針とは?

メンバーの意欲を最大限に引き出し、目標を達成できるリーダーとしての「方針」は、下記のようなものでなくてはなりません。
(1) 会社や上層部のミッション・ビジョン・中長期計画と連携が取れているもの
(2) 部門(グループ)の達成目標が、方針作成者の「意志」が現れているもの
(3) 達成目標が客観的で明確にわかるもの
(4) 達成目標が、ストレッチな目標となっているもの (頑張らなければ達成できない目標)
(5) 幅広い視野で課題が検討され、戦略となる重点施策と達成目標と合理的に導き出されているもの
(6) メンバーが「何を達成するか?」「なにをするか?」「何に時間を使うか?」がはっきりわかるもの
実際に方針を作成する!
理想的な方針を作るためには、多角的な情報を収集し、その収集した情報から幅広い視野で課題を見出すことが重要です。理想的な方針を作成するため、情報収集し課題を見出すステップは下記の手順で行います。
ステップ1: 会社の中期計画を確認
部門(グループ)のリーダーが作成する方針は、「会社(もしくは上司)の使命・理念・ビジョン・中長期計画・戦略」と合致しているものでなくてはなりません。そのために、前期の会社の「会社の使命・理念・ビジョン・中長期計画・戦略は何だったか?」を改めて確認します。そして、前期までの中長期計画の達成度も把握します。
次に、今期の会社の「会社の使命・理念・ビジョン・中長期計画・戦略は何か?」を確認します。
上記が集まったら、「会社の中小期計画」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」を書き出します。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)
この「課題や問題(悩みや懸念)」を導き出すためのポイントは下記です。
ステップ2: 部門(グループ)の目的の検討
方針作成者が率いる部門(グループ)の目的を検討します。部門の存在価値を明確にするということは、メンバーの仕事に対する考えを「単なる業務」ということから「意義のある取り組み」へと変化を促すことにつながります。
まずは、前期の方針を作成する際に文書化した下記の項目を確認します。
次に、今期の部門(グループ)の目的を文書化します。
上記が終わったら、「部門(グループ)の目的」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」を書き出します。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)
ステップ3: 日常管理データの検討
部門やグループとして行われている業務には、その業務が円滑に遂行できているかどうかを測る日常管理データがあります。その日常管理データを集計します。営業に関わる部門(部門)であれば、部門として下記のようなデータを集計します。
これらの日常の管理データとして収集している数値を過去3年分(3期分)の数値データを収集します。
上記が終わったら、「日常管理データの検討」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」を書き出します。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)
着目すべき点は、
ステップ4: 主要顧客別売上高
部門(グループ)の主要顧客別売上高を集計します。年間の売上高が高い10社を主要顧客として選定し、過去3年分(3期分)の数値データを収集します。
また、その10社の顧客のそれぞれの今後の投資動向の情報が収集できていれば、それをそれぞれメモします。
上記が終わったら、「主要顧客別売上高」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」を書き出します。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)
もし、それぞれの今後の投資動向の情報が収集できていなければ、それは、課題や問題の1つとなります。
ステップ5: 主要商品売上高
部門(グループ)の主要商品別売上高を集計します。年間の売上高が高い10個の商品を選定し、過去3年分(3期分)の数値データを収集します。
また、その10個の商品の今後の販売見込の増減に関わる情報があれば、それをそれぞれメモします。
上記が終わったら、「主要商品別売上高」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」を書き出します。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)
もし、今後の販売見込の増減に関わる情報が収集できていなければ、それは、課題や問題の1つとなります。
ステップ6: 過去の方針反省表
過去作成してきた方針反省表を検討します。過去3年分(3期分)の方針反省表を検討することが望ましいです。
これにより、「この方針は前回と変わっていないのではないか?」ということを回避し、さらに具体的かつ効果的な方針の作成につなげます。
過去3期分の方針反省表を読み込み、「過去の方針反省表」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」を書き出します。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)
ステップ7: 競合
ライバル会社(競合)を検討します。最も競い合うことが多いライバル会社を3つ以上あげます。
その競合について、それぞれ下記の3つを考え、文章としてまとめます。
上記が終わったら、「競合」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」を書き出します。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)
方針作成のコンサルティングを行っていると、「うちの会社は特別なことをやっているので、主たる競合はいません」というマネージャーは多いです。
そのため「競合という観点での課題や問題(悩みや懸念)」を書くことができません。
ですが、このようなケースの「課題や問題(悩みや懸念)」というのは、「競合を意識した戦略や営業活動ができていない」ということです。
ステップ8: その他課題
その他の課題を検討します。特に、下記の要素それぞれで変化・課題・問題を検討し、文章として書きます。
上記が終わったら「その他課題」という観点での「課題や問題(悩みや懸念)」を書き出します。(最低でも1つ、できれば、3つは考えます)
方針作成ステップ1から8を通して、様々な観点で部門(グループ)が取り組まなければならない課題をリストすることができました。
ステップ9: 部門(グループ)の達成目標の決定
この段階で、会社から割り振られた部門(グループ)の達成目標・予算に基づき、方針作成者(部門・グループのマネジメントリーダー)として達成したい達成目標を決定します。(ここでポイントとなるのは、方針作成者が「チームを率いて達成したい!」という意志が込められた達成目標を設定することです)
ステップ10: 重点施策の決定
方針作成ステップ9で決定した達成目標に対して、重点施策を決めます。この重点施策は、方針作成ステップ1から8のステップを通して見出してきた課題から決定します。
このリストされた課題には、必要に応じてグルーピングをします。
多くのことをやろうとても、中途半端となり結局は成し遂げられないまま終わります。
重要かつ効果があることに絞ることが重要です。重点施策は最大でも3つ以内にすべきです。
重点施策が決まったら、その重点施策の達成基準(客観的に数値で離れる基準)、および、その達成基準を達成するための方策(手段)を検討します。
この方策(手段)も1つの重点施策にたいして、最低3つ以上記入します。
これで、下記の要素を含む、メンバーの意欲を最大限に引き出し、目標を達成できるリーダーとしての「方針」が完成です。
(1) 部門 (グループ) の目標
(2) 重点施策
(3) 重点施策の達成基準
(4) 重点施策の方策
方針は必ず文書として作成し、壁に貼るなどして、いつでも参照できるようにします。
方針を作っただけで終わらない!進捗管理と反省が必要

部門(グループ)方針は、作っただけで終わりにしてはいけません。
方針に書かれている方策に取り組み、定期的に進捗を管理し、目標達成に向けて”対策”を講じることが大切です。
進捗の確認は、マネジメントミーティングで行います。
そのミーティングの場で、方針作成者の上司もしくは他の部門(グループ)のマネジメントリーダーが議論を行い、それぞれの部門が確実に目標を達成できるようにするための対策を検討します。
(基本は月1回、最低でも四半期に1回は行います)
さあ、方針作成に取り組もう!
部門(グループ方針)を作成するためのプロセスについて考えてきました。方針作成は「技術」です。プロセスに基づいて行えば、誰でもが作ることができます。
そして、ここで説明したプロセスを繰り返し行えば、よい方針を作る「技術」を高めることができます。
是非、上記プロセスで方針作成に取り組んでください。
メンバーの意欲を最大限に引き出し、目標を達成できるリーダーとしての「方針」が完成しているはずです。
取り組んでみたがうまく行かなかった場合には、遠慮なくお問い合せください。
私たちが、貴社のマネージャーが今までとは格段に精度の高い方針を作成できるようになるお手伝いをします。
貴社のマネージャーが、メンバーの意欲を最大限に引き出し、目標を達成できるリーダーとしての方針が作れるようになることをお祈りしております。
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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