多くの社員が直面している問題を解決できない6つの理由とその対策 Vol.273

私が担当する研修に参加した受講者から「こまっているのですが、どうすればいいんでしょうか?」と相談を受けることがよくあります。
その相談内容の多くは、仕事の生産性向上やさらなる業績の改善などです。「成果を出すことを求められているのだが難しい!」というものです。

「難しい!」と感じるような問題のため、「問題に直面しているのだが、その問題に対してどうすればいいのか?」という思考の状態で止まってしまっているのです。
なぜ多くの社員が「どうすればいいんでしょうか?」と悩んでいるだけの思考の状態で止まっているのでしょうか?
いろんな理由があると思いますが、私の視点からには下記のような理由があるように思います。

社員が問題解決に取り組めない理由を明らかにするとともに、その解決策を探ります。


多くの社員が直面している問題を解決できない6つの理由とその対策

私たちが体験した「社員たちが問題を解決できていない理由」

まずは、私たちが相談を受けて気がついたことを通して「多くの社員たちが問題を解決できない理由」について考えることから始めましょう。


理由1: 何が問題なのかわかっていない

「困ったことがあるのですが、ご意見を聞きたいのですが」と相談に来た受講者がいました。
その時の会話の流れは下記のようなものでした。

【私】 実際にどんな問題が起きているのですか?

【受講者Aさん】 うちの会社は問題が起こるたびにチェックシートを作るんですよ。そのチェックシートがあまりにも多くなって仕事の効率が悪くなっているんです!

【私】 そうですか、ちなみにチェックシートとは具体的にどのような内容のチェックシートがあるのでしょうか? 幾つか事例を教えていただけませんか?

【受講者Aさん】 いろいろあるんですよ、なんだったっけなあ、えっと… そう言われると…


必要以上にチェックシートが多いことは確かに問題かもしれません。もし本当に問題ならば解決しなければ生産性に悪影響をおよぼします。
ですが、そのチェックシートの概要だけでもわからないと解決策を検討することは出来ません。


理由2: 期待されていることの意味を理解していない


[写真: 先日散策中に撮影した近所の桜]


【受講者Bさん】 上司から“もっとチームメンバーの意欲を高めろ!”って言われているんですよ。どうすればいいですか?

【私】 なるほど、では、”意欲を発揮している”って具体的にどんな状態は望ましいのですか?

【受講者Bさん】 ”言われていないことも自分で考えてやれ!”ってことですかね?

【私】 なるほど、そういう意味もあるかもしれません。仮にそうであれば、”言われていないことも自分で考えてやれ!”って、どうなっていたらその問題が解決されたってわかるのですか?

【受講者Bさん】 …

【私】 ではちょっと話を変えましょう。この件で、最近上司の方とどのような話をされたか思い出すことはありませんか?

【受講者Bさん】 この前上司に言われたのは、「もう少し、一人ひとりへのマネジメントのバランスを考えた方が良いんじゃないか?」とのことでした。


その後、受講者Bさんと話を続けると、マネージャーの方がBさんへ期待しているのは、「意欲のないメンバーは、まずは放っておいてよい。今の会社の状況は全ての人の意欲を高めることなど出来る状態ではない。意欲の高い人だけをさらにしっかり引き上げれば良い」ということが分かってきました。

相談者と話をしていると、上司や周りの人から期待されていることを正しく把握できていないことも多いです。


理由3: 1発で解決しようとする

営業マネージャーからは「何で目標ができないんでしょうね!」という部下に対する相談がよくあります。
このように部下の目標達成に悩みを抱えている営業マネージャーは、部下に「意欲を発揮しろ!」「外回り毎日20件だ!」と意欲と行動量に着目しているマネージャーが多いです。


成熟度の高いマネージャーは、そのような意欲と数値目標に着目するのではなく、「何でできないんだろうか?」の部分を探ろうとします。
その原因に相当する部分を徹底的に考えることで、
  • 会社のプロセスに問題がないか?
  • 会社の複数の目標が矛盾している状態となっていないか?
  • 報告体系や評価体系は?
  • マネジメントのやり方に問題がないか?
  • スキルはどうか?
  • などに目を向けます。

    そして、その問題に対する達成目標を設定し着実に解決するようプロジェクト的な取組をします。
    このような問題は「なにか1つの対策を取れば解決できる!」というものではなく、複雑に絡み合っているものを1つ1つほぐしながら解決することが重要だからです。

    本来は、上述したように、手順を踏みながらしっかり対処することが必要なのですが、多くの営業マネージャーは、
  • 何でできないんだ!
  • いいから2倍やれ!
  • 意欲を出せ!
  • と行動量と意欲だけに着目して「1発で解決しよう!」としすぎています。

    実は、意欲やモチベーションを高めることは“技術“です。ですので、本当は学べば誰でもできるようになります。


    理由4: 問題を複雑にしている

    ある受講者から相談を受けた時の話です。
    受講者が私に話してくれた内容が、どうも焦点がはっきりしないように感じました。言葉を注意しないといけませんが、表面的な話に感じたのです。
    そのため、「もう少し詳しく教えてくれませんか?」ときいてみると、下記のようなことを話し始めました。

    「こんなこともありましてね」
    「それに、他のこと仕事ばかり押し付けられていて」
    「そして、でも助けてくれなくて」
    「話を聞いてくれないんですよ」
    「それに」

    上記のように、多くのことを話してくれました。
    その相手の話を聞き終わった後の会話は下記のようなものでした。

    【私】 そうですか、いろんな事が起こっているようですね。話を聞いて感じたことなのですが、通常そのような場合にはxxxが第一の問題で、その解決にはxxxxという手段に取り組むことが良いのですが?

    【受講者C】 あっ、それはですね、やっていないんですけど、たぶん、こういうことがあるのでそれをやるのは難しいんですよ。


    「感情的な要素」「自己主張」「自分のことを認めて欲しい」「否定的に感じていること」など様々な内的・外的要因を複雑に絡めてしまっていました。

    たしかに、いろんなことをやらないといけないんでしょう、その気持ちはわかります。
    いろんなことが発生しているのでしょう、それも大変だと思います。
    ですが、それらのことをシンプルに整理しないと解決できません。
    問題が複雑なままだと解決することはできないのです。


    理由5: 人間関係を考えすぎる

    「理由5: 人間関係を考えすぎる」は「理由4: 複雑にしている」と似ていますが、別の理由として考えてみます。
    外資系ではそれほど問題ではないのですが、日本の企業ではよくある問題です。なぜ、外資系ではそれほど問題ないのに日本企業でよく起こるかと言いますと、外資系企業と日本企業とでは職務の定義や評価方法がことなるからです。


    下記のような相談も受講者からよくあります。
    「みんなでやることになっているのですが、Dさんが協力してくれなくて…」
    「あそこの部門は敵対しているので…」
    など、人間関係や組織間の関係に関わる相談です。

    本来は、力を合わせて生産性を高めるために組織があるのですが、どうもそうなっていないようなのです。
    人間関係を考えすぎて、問題解決に踏み出せないのです。
    このような問題では、人間関係などの関係に着目するのではなく、発生している問題そのものに目を向けることが大切です。このような関係も考慮した上で、問題を解決する方法を学ぶ機会がなかったようです。


    理由6: 実は、解決したいと思っていない


    [写真は、先日私のワインの師匠と一緒に飲んだワイン]


    今までご紹介した理由1から5にも当てはまるのですが、「解決したい」といいながら思考の段階で止まってしまっている最も重要な理由がこの「実は、解決したい!と思っていない」ことです。
    解決するためには、自分も変化を求められますし、人との関係に軋轢が発生してしまうと思っているからです。

    人は「変化(チェンジ)」を嫌います。認めたくない人も多いと思いますが、ちょっとした変化にも抵抗しています。
    ですので、実は、「問題だ!」と言いながら、ほとんどの社員は解決することを望んでいないのです。


    社員たちが問題を解決できるようになるための対策

    私たちが体験してきた「社員たちが問題を解決できない6つの理由」をご説明しました。
    問題を解決できず、先送りもしくは放置しているような状況になっている根本的な原因は「問題の状態が正しく整理できていないこと」および「正しく理解できていないこと」です。
    これら6つの理由をなくし、自分たちで問題を解決出来るようになるためには、「直面している問題を整理し、できるだけ正しく理解する」ことが大切です。

    「直面している問題を整理し、できるだけ正しく理解する」ためには、私たちは基本となる下記の4つのポイントを意識して取り組むことを推奨しています。
  • ポイント1: 書く
  • ポイント2: 論理構造を持つ
  • ポイント3: 現場へ出向く
  • ポイント4: シンプルに考える

  • 参照: これらは、[研修] 思考力強化研修 / potential of thinkingプログラムで学ぶことができます


    ポイント1: 書く

    まず、問題を感じたらその問題について考えていることや分かっていることを紙に書いてみてください。
    紙に書く以外でも良いです。パソコンに入力する方法でも構いません。
    「紙に書く」という行為はその直面している問題を客観的に見ることが出来る効果的な方法です。
    その作業を通して、自分が考えていることが整理されていくはずです。



    ポイント2: 論理構造を持つ

    紙に書いた後は、その書いた内容を整理しましょう。
    問題を解決するために書いた内容を整理するためには、下記の3つで分類してみます。
  • 現状の状態と目指す状態
  • 自分の期待と周りに期待
  • 原因と結果

  • この3つで情報を整理すれば、複雑な問題でもかなり整理されてきて、対処すべき本質的要素が見えてきます。

    ポイント3: 現場へ出向く

    3つの要素で分類された内容を見て情報が足りなければ、もう一度情報を集めましょう。
    何かに取り組む前に足りない情報を集めることで、更に効果的な解決手段を発見することができます。

    ポイント4: シンプルに考える

    問題を複雑にしてしまうと問題解決が試行の段階で止まってしまいます。
    そのために、原因と結果で整理する際には、「たった1つの原因」を発見しようとすることは避けてください。これが逆に問題を複雑にします。
    原因が複数あっても大丈夫です。その複数の原因を1つ1つ解決していけばよいのですから。

    この様に、問題をシンプルに考えることで、やるべきことがはっきりしてきます。


    更に効果を上げるために!

    問題を解決できない人と話をしてみて、私たちが感じることは「1人で抱え込みすぎている」ということです。
    「相談する相手がいない」「一緒に取り組んでくれる人がいない」ために、自分で考えすぎ、ただ、書くことをせずに自分の頭の中だけで考えているだけなので、「問題そのものを整理すること」ができずに「問題そのものの原因」を明らかにすることができていないのです。

    ですので、問題に直面した時には、前述した一連の手順を、社内の相談者と進める、もしくは、複数で取り組む、ことがより効果できです。


    更に、実は「社内の相談と進める、もしくは、複数で取り組む」ようにしても直面している問題が放置されることがあります。
    それは、その問題に社内の人間関係が絡まっている場合です。前述したとおり「あの部署のことを考えると」「あの人のことを考えると」ということが問題解決を思考段階で止めます。

    そのような場合には、相談者や一緒に取り組んでくれる人を会社の外部に依頼することが大切です。
    外部の人は、そのような人間関係の影響を受けませんから、「正しく問題を整理・理解すること」そして「人間関係を考慮した上で、幾つかの対策を見出すこと」ができます。
    私たちのクライアント企業もそのようなことをよく知っていて、私たちに「社員だけでは解決できなかったので、協力してくれませんか?」という相談をよくいただきます。社員だけにまかける以外の方法もあるのです。


    社員たちが直面している問題を解決するためのトレーニングから始めよう!

    会社内には様々な問題が発生していますが、問題を解決するやり方を学び体験することなく、それらの問題を社員だけで解決することは困難です。
    「変革プロジェクト」という観点で考えても、変革を推進できる人は実は企業内には少ないです。
    「社内だけでなんとかしよう」としても、企業が抱えている半分以上の問題は放置されています。
    少し時間はかかりますが、これらの問題を解決するために社員の思考力を強化することはとても大切です。


    あまりゆっくりしていられない場合には、外部の人に問題解決の支援をしてもらうことをオススメします。
    ただ、外部に丸投げはいけません。信頼できる外部の人と一緒に問題に取り組むことが最も良いです。
    そうすれば、その解決できるノウハウも会社に残すことができますから…


    私たちも、クライアント企業の経営者からそのような依頼をいただき、一緒に問題解決に取り組んでいます。下記はその一例です。
  • 部内のレポート体系を部長と一緒に見直してほしい
  • 総務と一緒にRPA(Robotic Process Automation)の導入に取り組んでほしい
  • インサイドセールスのKPIがうまく機能していないので改善してほしい
  • 月に1回来て複数のマネージャーたちの改善活動が効果的に進む支援をしてほしい
  • このような問題でお悩みであれば、是非ご連絡ください。
    あなたと力を合わせてこれらの問題解決に取り組みます。


    さて、来週も成し遂げたい目標を1日でもはやく実現するための一週間にしていきましょうね!

    (本コラムは、2016年4月4日に書かれたものを再編集しました)
    文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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