介護業界企業の営業力強化 ~ 売上増加および営業の意欲を高めるためにお客様との面談をより効果的なものへ改善する!

介護用品の販売/レンタルをしている企業から、営業力強化のご依頼をいただきました。この会社は先代である社長が創業した会社で、二代目である経営者は、「親から引き継いだこの事業を成長させたい!」という強い想いのある人でした。介護業界も構造的な変化に直面しており、今までと同じ経営方法では会社を持続させることが厳しい状況で、そのための対策を必要としていました。

現在の営業の状況を確認するために数人の営業担当者と同行訪問したところ、いくつかの問題点が見えてきました。このノートでは、多くの介護業界の営業が直面している課題とその対策について解説します。

売上増加および営業の意欲を高めるためにお客様との面談をより効果的なものへ改善する!

介護業界の営業の課題とは?

クライアント企業の経営者との初めての面談で、その経営者が直面している悩みや問題を伺いました。その後、「より具体的な営業力強化策を立案するためには、現在の状況を詳しく理解させてほしい」とお伝えしたところ、快く受け入れていただき、まずは営業担当者と同行訪問してより具体的な現状把握をすることになりました。

介護業界の営業力強化の支援は初めてでしたので、この業界の営業方法には興味がありました。業界が違えばその業界特有の問題や悩みがあります。営業同行やレポートなども含め現状を把握することで、この経営者の悩みや問題の背景や原因を更に深く理解でき、その結果として、効果の高い営業力強化策を立案することが可能となります。

その後、この企業の営業担当者と同行訪問を行うと、この業界には下記の特徴があることがわかりました。

◆ 扱う商品数が多い。ライバル会社も同じような商品を扱っていて、商品で差別化することは難しい。
◆ 扱っている商品の価格にも差がない。
◆ ニーズは様々あり、お客様の状況に合わせた提案が必要。
◆ 一度採用されたら取引先を変更することがあまりない。

同行訪問を通して確認できた問題には、介護業界特有のものもありましたし、他の業界の営業と共通しているものもありました。また、経営者から伺っていた悩みや問題以外にも隠れていた問題があることもわかりました。

介護業界の営業の問題点1. お客様との面談

同行訪問だけではなく、営業組織で使われている営業報告書の内容も確認しました。この営業組織の営業報告書では、以下の内容を報告することになっていました。

◆ 先月の売上目標達成度
◆ 今月の売上目標
◆ 今後の売上予測
◆ その他、気がついたことの報告

このような報告は、他の業界の営業組織でも一般的に行われているものです。ですが、気になることもありました。他の多くの営業組織で行われている営業報告には含まれているが、このクライアント企業の報告書には含まれていないものがありました。それは「面談件数」です。基本的に面談件数と売上額は比例関係です。

特に、このクライアント企業のような「御用聞き営業」的な営業スタイルの営業組織では、比例関係となっていることが多いです。この「面談件数」を確認していないことは、このクライアント企業の営業上の問題の1つでした。

また、実際に同行訪問して気になったことがありました。それは「お客様との面談時間が短い」ことでした。この企業が扱っている商品自体はそれほど難しいものではないので、簡単に商品説明することができます。ですが、同行訪問をしていて気がついたのですが、お客様のニーズは多種多様でした。そのような状況で、幅広い商談チャンスを引き出すためには、お客様ともう少し幅広く、かつ、深く話しをすることが必要でした。

介護業界のことから少し話がそれますが、以上に「面談件数」と「面談時間」について紹介しましたので、この面談件数/面談時間に関する特性について2つ紹介します。1つ目は、「お客様との面談時間というのは営業担当者の意欲やモチベーションと比例関係である」ということです。これは、私たちが様々な営業組織を観察して気がついた経験則なのですが、お客様との面談時間が少ないと営業担当者の意欲やモチベーションは低い傾向がありました。さらには、営業担当者の意欲やモチベーションが下がれば、その営業組織の売上は下がってしまうという悪影響を及ぼしていました。

2つ目ですが、企業によって「面談件数の量に着目したほうが良いか、面談時間の長さに着目したほうが良いかが変わる」ということです。一般的に多くの企業では面談件数を数えていることが多いです。ですが、お客様のニーズを理解し、お客様のニーズに合わせた提案をすることが多い企業の場合、面談件数よりも面談時間の長さを測定したほうが効果的です。そのような企業の場合、面談時間の長さと売上は比例関係なのです。

ですが、お客様との面談時間を測ることは手間がかかりますので、「いかに簡単に測定するか!」を考慮して行うことが重要です。また、面談時間の長さを重視する場合、「それぞれの面談の目的はなにか?」も含めて集計・分析すると、営業力強化をより効果的に遂行することができます。

介護業界の営業の問題点2. 新規のお客様の開拓

以上で説明しましたが、このクライアント企業の営業の特性は以下でした。

◆ 扱う商品数が多い。ライバル会社も同じような商品を扱っていて、商品で差別化することは難しい。
◆ 扱っている商品の価格にも差がない。
◆ ニーズは様々あり、お客様の状況に合わせた提案が必要。
◆ 一度採用されたら取引先を変更することがあまりない。

これらの特性と発見した様々な問題を検討すると、介護業界では、お客様は初めて購入した会社からその次も購入しようとします。ですので、介護用品が必要となる可能性が高いお客様をいかに発見するかが重要です。ですが、このクライアント企業では「ライバル会社よりも早く介護用品が必要となる可能性が高いお客様とコンタクトする」対策が十分ではありませんでした。この課題は、このクライアント企業の営業力強化の最も重要な課題とわかりました。

営業力強化の結果はどうなったか?

以上で説明した以外にも問題を発見できましたので、問題を構造化し、解決策となる営業力強化策を立案しました。その営業力強化策の中には、「目指すべきパフォーマンス目標」と「半年に渡る営業力強化の進め方」を盛り込みました。経営者へそのプランをご提案したところ、「是非やりましょう!」と了承いただき、実施することを合意しました。そこで、1週間後にキックオフミーティングを開催することになりました。

ですが、経営者へ提案した翌日、その社長から電話があり「今回の依頼を辞めたい!」と言われました。8名いる営業担当者のうち2名が「会社を辞める」と言い出したためでした。実は、営業担当者たちと同行訪問をしたときに、「もしかすると、辞めてしまう人が出てしまうかもしれない。」と感じていました。そのため、ある営業担当者との同行訪問の後に経営者へ「もしかすると、辞める社員が出るかもしれませんよ、それを配慮して丁寧にすすめる必要がありそうです」と伝えていました。その時、その経営者は「そうですか、そのくらい意気込みはある社員だったら嬉しいですけどね。辞めないと思いますよ!」と言っていました。

「辞める」と言い出した社員たちは、もともと辞めることを考えていたのですが、今回の営業力強化が「辞める」と言い出したときっかけとなったようでした。そのため、経営者は営業力強化を諦めてしまったのです。営業担当者がやめることで直近の売上に悪影響を及ぼすことを恐れたようでした。この経営者はそのことを懸念し、成長への変革よりも現在の売上を選択したのです。

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それに、成長への変革を行うことで社員が減少しても、そのことで会社が潰れてしまったケースはほとんどありません。それよりも、その後、企業は成長できていることのほうが多いのです。

私たちは、多くの営業組織の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウ/経験があります。力を合わせて、企業を成長させる営業変革に挑戦しましょう。是非、多くの社長には、その勇気を持って成長のための組織変革を実行してほしいと想います。

(本ノートは、2016年3月21日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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