キックオフミーティングを成功させることができなければ、プロジェクトを成功させることはできない! ~ 失敗事例を通して学ぶ、キックオフミーティングを成功させるための準備方法

最近では、日本の企業でも「キックオフミーティング」という言葉がよく使われるようになりました。その背景には「チームで高い目標達成を目指すプロジェクト的な仕事の割合が増えている」という働き方の変化があります。キックオフミーティングは、チームが一丸となって挑戦するプロジェクトが成功するかどうかを左右する大切な役割を担っています。

多くの企業のキックオフミーティングを見てきましたが、その進め方は企業によって様々です。中には、準備不足のためにキックオフミーティングの段階ですでに失敗していたプロジェクトもありました。私たちがコンサルタントとして支援したクライアント企業のキックオフミーティングの準備と進め方、そして、直面した問題の事例を通して、キックオフミーティングを成功させる秘訣について解説します。

失敗事例を通して学ぶ、キックオフミーティングを成功させるための準備方法!

今、プロジェクト的な仕事の割合が増えている!

「ただ言われたことを行う!」という状況から「チームの成果を最大化する!」状況へ、働き方の変化が求められています。そのため、現在、多くの企業の中では様々なプロジェクトが行われています。一般的に企業内のプロジェクトには、以下のような特徴があります。

◆ 達成すべきゴール(達成基準)がある
◆ 複数人のチームで推進される
◆ 一定期間実行する
◆ (場合によって)投資を伴う

私たちは、クライアント企業のプロジェクトを推進する支援をしています。私たちが実際に支援したプロジェクトには以下のようなものがありました。

◆ 営業組織の生産性の向上(戦略的営業力の強化、SFAの導入と運用の支援)
◆ 業務変革や業務プロセスの改善 (生産性を20%上げる)
◆ 新システムの導入 (システムをクラウドに置き換える)
◆ 次世代マネージャーの育成
◆ 新しい部門や部署の立ち上げ
◆ 人事・評価制度の見直し(ジョブ型雇用の導入)
◆ 重要な大手企業との取引額の拡大

このような企業で実行されるプロジェクトには、通常、以下のような「3つの役割」があり、それぞれの役割の人々がプロジェクトを推進しています。

【プロジェクトオーナー】 プロジェクトの遂行を決定し、ヒト・モノ・カネなどの資源の活用を承認する人
【プロジェクトマネージャー】 プロジェクトを円滑に遂行するためのマネジメントをする人
【プロジェクトメンバー】 プロジェクトを実際に実行する人

私たちのようなコンサルタントがプロジェクト推進の支援を行うときは、プロジェクトオーナーから依頼を頂いて、プロジェクトマネージャーとともにプロジェクトが成功するように支援をします。

キックオフミーティングとは?

プロジェクトを開始するときには、キックオフミーティングが必須となります。キックオフミーティングは、プロジェクトに関わるメンバーが一堂に会し、これから始まるプロジェクトの目的や意義を理解するためのイベントです。

そこでは、下記のプロジェクトに関することについて、全員で共有化します。
(1) 会社は何を目指しているか?
(2) それに向けて、このプロジェクトで何を成し遂げようとしているのか?
(3) このプロジェクトで解決すべき問題はなにか?
(4) プロジェクトに関わる全員には何が期待されているか?
(5) プロジェクトに関わる全員は何をすればいいか?

以上のように、キックオフミーティングは、「プロジェクトを成功させるために、プロジェクトオーナーやプロジェクトマネージャーの考えや決意を表明し、チームの方向性を示し、メンバーの動機づけを行い、全員を一つに団結させてプロジェクトをスタートする」大切なイベントです。

こんなキックオフミーティングはNG!

「プロジェクトが成功するかどうかの8割はキックオフミーティング次第である!」と言われるくらい、キックオフミーティングは大切なイベントです。プロジェクトが成功するためには、特に、プロジェクトメンバーたちの意欲的な挑戦が欠かせません。プロジェクトオーナーやプロジェクトマネージャーは、事前にキックオフミーティングにおいて「何を伝えたいのか」「それを正しく伝えるためには何が必要か」について練っておくことが重要です。ですが、準備不足で場当たり的なキックオフミーティングも多く見かけます。

「キックオフミーティングはなぜ重要なのか?」を理解しないまま、なんとなく集まるキックオフミーティングは、残念ながらプロジェクトのプラスになりません。NGなのは下記のようなケースです。

◆ プロジェクトオーナーやマネージャーが準備不足のまま開催してしまう
◆ 資料が用意されていない
◆ プロジェクトオーナーやマネージャーの決意が伴っていない
◆ キックオフミーティングの大切さを理解していない

事例紹介: 「業務改善プロジェクト」キックオフミーティングでの進め方と発生した問題

キックオフミーティングは、その目的とアジェンダの設計から始める!

あるクライアント企業A社の「社内業務の生産性を20%改善する」という目標にむけた「業務改善プロジェクト」の推進を支援しました。

このプロジェクトのプロジェクトオーナーは事業部長、プロジェクトマネージャーを担うのが部長と私でした。この3人が集まって「キックオフミーティングをどのように進めるか?」についての事前打ち合わせを行いました。その打合せでは、私たちが用意したキックオフミーティングの進行案(アジェンダ案)のたたき台にして、以下について協議しました。

(1) 参加者の選定
(2) そこで伝える業務改善の目的や重要メッセージ
(3) 発表者はそれぞれなにを説明するのか?
(4) 進行手順は?
(5) キックオフミーティングの成功基準

この打ち合わせによって、下記の役割を合意しました。

◆ 事業部長 → 方針説明、事業部全体としての財務状況や改善目標
◆ 部長 → 今回の業務改善プロジェクトの達成目標や対象範囲、部長としての決意
◆ コンサルタント(私) → 業務改善を行うスケジュール・メンバーそれぞれの役割の解説

キックオフミーティングは1週間後です。それまでに各々が使用する資料を準備することになりました。

メンバーの迷いを取り払う綿密な事前打ち合わせが必須!

この事前打ち合わせの後、プロジェクトマネージャーを担う部長から「キックオフミーティングのために、こんなに中身が濃い打ち合わせを行う必要があるのですか、今までこのような事前打ち合わせを行ったことがなかったものですから」と聞かれました(この部長は、以前、キックオフミーティングを主催した経験がないことが後でわかりました)。

キックオフミーティングの事前打ち合わせは重要です。というのも、業務改善プロジェクトで実行されるタスクは、通常業務を担っているプロジェクトメンバーたちが実行することになります。プロジェクトオーナー(事業部長)、プロジェクトを共に進めるプロジェクトマネージャー(部長と私)が行えることは限られています。プロジェクトメンバーたちが意欲的に挑戦するためには、プロジェクトオーナーやプロジェクトマネージャーの発言に一貫性があり、「必ず成功させる!」という決意や意志が伴っている必要があります。

プロジェクトの成功は、彼らがどれだけ実行してくれるか次第です。「場当たり的なものではなく、事前に内容が十分検討されていて、リーダーたちには意志がある!」と感じさせるものでなければなりません。

準備が不十分で、推進者の意思統一が図られていないキックオフミーティングでは、「上の人たちが言っていることは食い違っている。これでは今回もうまくいかないだろう!」と感じさせてしまいます。最初からそのように感じさせてしまっては、プロジェクトがうまくいくはずはありません。

少なくともキックオフミーティングの主催者全員で骨子を事前に確認し、それぞれの発表が相関性のあるものにしなければなりません。そうした下ごしらえが現場の人たちに、「上層部が時間をかけて準備して始めようとしている重要なプロジェクトなのだ!」と感じさせ、「やらなければ!」という意欲を促すのです。

キックオフミーティングで参加者全員に理解してもらうこととは?

キックオフミーティングの目的は、発表ではありません。プロジェクトメンバー全員が、以下のことを理解/納得することが目的です。

(1) 会社は何を目指しているか?
(2) それに向けて、このプロジェクトで何を成し遂げようとしているのか?
(3) このプロジェクトで解決すべき問題はなにか?
(4) プロジェクトに関わる全員には何が期待されているか?
(5) 私たちは何をすればいいか?

例えば、キックオフミーティングが終わった後、プロジェクトメンバーへアンケートを行い、(1)~(5)について正しく回答できているようならば、そのキックオフミーティングは成功したといえます。

当日に問題が発生! 部長の発表は不十分なものだった!

さて、キックオフミーティング当日です。事前打ち合わせで確認したとおり、まず、事業部長が、会社が目指している方向性と直面している問題をスライド4枚程度と配布資料を使って発表しました。その事業部長の発表には「なんとしてでもこのプロジェクトを成功させる!」という意思を感じるものでした。

次は部長の順番です。部長の役割は、「今回の業務改善プロジェクトの達成目標や対象範囲、部長としての決意」を説明することでした。ですが、部長はスライドを用意してなく、2分程度「事業部長が言ったとおりです。必要だから頑張ってほしい」と口頭で説明しただけでした。

これではダメです。口でいくら説明しても誰も聞いていません。記憶には残りません。人は、言葉だけで行われた発表を十分理解できません。耳で聞くだけではなく、目で見ることを合わせることで、より理解できるようになるのです。視覚で補足しなければなりません。時折「パワーポイントを使っている会議は、生産性が悪い」と言われることがありますが、視覚的に訴えることは重要です。何10枚もの多くのスライドを準備する必要はありませんが、こうした場では要点がまとめられた2~3枚程度のスライドは必須です。

この部長のキックオフミーティングの役割は、プロジェクトマネージャーとして、「今回の業務改善プロジェクトの達成目標や対象範囲、部長としての決意」を伝えることでした。これらの内容は、プロジェクトの中核を成す大切なものです。このプロジェクトの遂行中において、メンバーが壁にぶつかったときにはその資料に立ち戻り、「勘違いがないか?」「誤解していないか?」「どこまで達成できているのか?」「どのように修正していけばよいか?」を確認・検討するために必要なものです。ですから、文書としてまとめ、いつでも振り返りができるようにしなければならないものでした。

今回の部長の発表は不十分でした。参加者はプロジェクトで期待されていることを深く理解することができていませんでした。その上、本来はもっと意欲を引き出すことができたのに、参加者の意欲に影響を及ぼすこと無く終わってしまったと言えるでしょう(事業部長と話し合い、改めて私が資料を作成し、もう一度説明することになりました)。

失敗を機に、事業部長は業務改善ができる人材育成へと舵を切った

このキックオフミーティングの後、プロジェクトオーナーの事業部長から、「部長と言っても、業務改善を経験していないマネージャーがうちの会社には多いのです。業績を向上するために、業務の改善ができる人材を増やしていかなければいけません。そこで、今回のプロジェクトに、新たに若いメンバーを参加させ、彼らにも経験させることにしました。ティ・スクエアさんには『業務プロセス改善ができる人材育成』も支援してもらえますか?」と依頼されました。

業務改善ができる人材は、会社にとって新たな成長を切り拓くことができる宝です。若い人を抜擢し、プロジェクトメンバーの一員とすることで業務改善プロジェクトを経験させ、会社の業績向上を担う人材に育てようとする事業部長の決断は素晴らしいものでした。

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なんのためのプロジェクトか、誰がなにを担うのか?

キックオフミーティングは、プロジェクトの目的を共有する場です。繰り返しになりますが、開催前にプロジェクトオーナーとプロジェクトマネージャーは、以下の準備をしておきましょう。

明確にすること

(1) 会社は何を目指しているか?
(2) それに向けて、このプロジェクトで何を成し遂げようとしているのか?
(3) このプロジェクトで解決すべき問題はなにか?
(4) プロジェクトに関わる全員には何が期待されているか?
(5) 私たちは何をすればいいか?

準備すること

(1) プロジェクトオーナー
→ 方針説明、部門全体としての財務状況や改善目標
→ プロジェクトの最高責任者としての決意や期待

(2) プロジェクトマネージャー
→ 今回の業務改善プロジェクトの達成目標や対象範囲
→ プロジェクトを推進するマネージャーとしての決意
→ 業務改善を行うスケジュール・メンバーそれぞれの役割

「プロジェクトが成功するかどうかは、キックオフミーティング次第である」といっても過言ではありません。このような事前の準備を行なうことが、プロジェクトの成功へとつながっていくのです。

プロジェクトを成功に導くキックオフを実施しよう!

多くの企業(特に、営業系の組織)では、業務改善プロジェクトで成功した経験のある社員は少ないです。プロジェクトを成功に導くためには、プロジェクトの推進を支援できる存在が必要となります。

私たちは、多くのクライアント企業の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウ/経験があります。私たちは、そのようなプロジェクト推進支援を行っております。貴社のプロジェクトを成功に導くために、私たちへご依頼ください。私たちがそのプロジェクトを成功へ導くのと同時に、社員たちが自ら推進できるように育てます。

(本ノートは、2016年5月22日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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