キックオフミーティング 成功の秘訣 > プロジェクトのスタートダッシュを成功する! Vol.277

最近、日本の企業でも “キックオフミーティング” という言葉がよく使われるようになりました。
その背景には、チームで高い目標達成を目指すプロジェクト的な仕事の割合が増えたという働き方の変化があります。
キックオフミーティングは、チームが一丸となって挑むプロジェクトの成功を左右する大切な役割を担っています。
ですが、そのキックオフミーティングの行い方も各社によって様々で、その大切なキックオフで失敗していたケースも目に付きます。
コンサルタントとして支援したクライアント企業にて実際に行われたキックオフミーティングの準備・進め方・発生した問題を通して、キックオフミーティングを成功させる秘訣について解説します。


プロジェクトのスタートダッシュを成功する秘訣はキックオフミーティングの周到な準備

キックオフミーティングとは?

キックオフミーティングは、プロジェクトに関わるメンバーが一堂に会し、これから始まるプロジェクトの意義を理解するためのイベントです。
そこでは、プロジェクトに関する下記について全員で共有化します。

(1) 会社は何を目指しているか?
(2) それに向けて、このプロジェクトで何を成し遂げようとしているのか?
(3) そのために会社が直面している問題は何か?
(4) 私たちは何を期待されているか? (いつまでに、何を達成するか?)
(5) 私たちは何をすればいいか? (役割は何か?)


意外に大切にされていない? キックオフミーティングがプロジェクト成功の鍵を握る!

企業でプロジェクトとして新しいことに取り組む場合、キックオフミーティングが必須です。
キックオフミーティンがうまくいくかどうかで、プロジェクトが成功するかどうかの8割が決まります。


プロジェクトには、下記のような特徴があります。

  • 達成すべきゴール(達成基準)がある
  • 複数人のチームで推進される
  • 一定期間取り組む
  • (場合によって)投資を伴う


  • 私たちが過去支援をしたクライアント企業のプロジェクトには、下記のようなものがありました。

  • 部門や部署の年初(期初)に行われる会議 (新素材を開発する、売上目標30億円を達成する)
  • 業務変革や業務プロセスの改善 (生産性を10%上げる)
  • 新システムの導入 (システムをクラウドに置き換える)
  • 新規市場への参入の取り組み (アジアでの直販体制を行なう)
  • 次世代経営者の育成
  • 新しい部門や部署を立ち上げた時の最初の会議


  • 企業で取り組まれるプロジェクトには、3つの役割が存在します。
    【プロジェクトオーナー】プロジェクトへの出資者。プロジェクトの実施を決定する人
    【プロジェクトマネージャー】プロジェクトを円滑に遂行するためのマネジメントをする人
    【プロジェクトメンバー】プロジェクトに実際に取り組む人


    キックオフミーティングはプロジェクトオーナーやマネージャーの考えや決意を表明し、メンバーの動機づけを行い、心に火を点すことで、参加者全員がひとつになってプロジェクト成功へのスタートを切る大切な場です。


    こんなキックオフミーティングはNG!

    なぜ重要なのかを理解しないまま、なんとなく集まるキックオフミーティングは、残念ながらプロジェクトのプラスになりません。NGなのは下記のようなケースです。

  • プロジェクトオーナーやマネージャーが準備不十分のまま開催してしまう
  • 資料が用意されていない
  • プロジェクトオーナーやマネージャーの決意が伴っていない
  • キックオフミーティングの大切さを理解していない


  • 参加者は忙しい仕事の合間を縫って、会場に集まります。
    そうした貴重な場で何を伝えたいのか、そしてそれを全員にしっかり伝えるためには何が必要か、プロジェクトを管理する側が事前にしっかりと練ることが重要なのです。


    事例紹介: 「業務プロセス改善プロジェクト」キックオフミーティング

    私たちはクライアント企業に、様々なコンサルティングをご提供しています。
    その中から「法人営業(BtoB)の社内業務の生産性を10%以上改善する」という目標を掲げて行った「業務プロセス改善プロジェクト」を例にとり、成功するキックオフミーティングを解説します。


    キックオフミーティングは、全体像の設計から始めよう

    私たちは、コンサルタントとしてキックオフミーティングのアジェンダ(議事進行案)作成を支援しました。
    プロジェクトのオーナーである事業部長、プロジェクトのマネジメントを担う部長と私の3人で、「キックオフミーティングをどのように進めるか?」について話し合う事前打ち合わせを持ちました。
    そこでは私たちが用意した進行案(アジェンダ案)のたたき台をもとに、キックオフミーティングの全体像を設計します。

    キックオフミーティング全体像の確認:
    (1) 参加者
    (2) そこで伝える業務改善の目的や重要メッセージ
    (3) 発表者はなにを説明するのか?
    (4) 進行手順は?
    (5) キックオフミーティングの成功基準


    この事前打ち合わせでは、下記の流れで発表が進むことを確認しました。

    (1) プロジェクトオーナーである事業部長 → 方針説明、事業部全体としての財務状況や改善目標
    (2) 部長 → 今回の業務改善プロジェクトの達成目標や対象範囲、部長としての決意
    (3) コンサルタント → 業務改善を行うスケジュール・それぞれの役割


    キックオフミーティングは1週間後です。
    それまでに各々が発表で使用する資料を準備することが決まりました。


    プロジェクトオーナーやマネージャー側の綿密な事前打ち合わせが、現場の心に火をつける!

    事前打ち合わせの後、部長から
    「キックオフミーティングのために、こんなに中身が濃い打ち合わせを行う必要ってあるんですか? 今までやったことがなかったんですが…」
    と聞かれました。
    (この部長はキックオフミーティングに参加したことはあっても、過去に自ら発表する機会がなかったことが後で判明しました)


    部長の感想を覆すようですが、キックオフミーティングの事前打ち合わせは大変重要です。
    というのも、業務プロセス改善プロジェクトは、現場で業務を担って働いている人たちが担うものです。
    プロジェクトオーナーである事業部長や、プロジェクトを共に進める部長、私たちが行なえることは限られています。
    現場の人達に意欲的に取り組んでもらうためには、プロジェクトオーナーやマネージャーの発表に一貫性があり、構造的・合理的であり、「成し遂げる!」という決意や意志が伴っている必要があります。
    「場当たり的なものではなく、事前に内容が練られていて、リーダーたちは共通した考えになっている!」と感じさせるものでなければなりません。


    準備が不十分で推進者の意思統一が図られていないキックオフミーティングでは、「上の人たちが言っていることが食い違っている。これでは今回もうまくいかないだろうなぁ」と感じてしまいます。
    最初からそんなことを感じさせてしまっては、プロジェクトがうまくいくはずはないのです。


    少なくとも発表者全員の骨子を事前に確認し、それぞれが相関性のあるものにしなければなりません。
    そうした下ごしらえが現場の人たちに「上がしっかりと準備して始めようとしている重要なプロジェクトなんだ!」と感じさせ、「やらなきゃ!」という意欲を促すのです。


    キックオフミーティングで参加者全員に理解してもらうこととは?

    キックオフミーティングの目的は、発表ではありません。参加したすべてのプロジェクトメンバーが下記を理解していることが重要なのです。

    (1) 会社は何を目指しているか?
    (2) それに向けて、このプロジェクトで何を成し遂げようとしているのか?
    (3) そのために会社が直面している問題は何か?
    (4) 私たちは何を期待されているか? (いつまでに、何を達成するか?)
    (5) 私たちは何をすればいいか?


    例えば終わった後、プロジェクトメンバーへのアンケートで(1)~(5)に触れた答えが書かれているなら、そのキックオフミーティングは成功といえるでしょう。


    部長、その発表では意味がありません! 当日に発生した問題

    さて、キックオフミーティング当日です。
    事前打ち合わせで確認したとおり、最初に事業部長が会社の直面している状態と目指している姿を、スライドと配布資料を用いて発表しました。


    次に部長が「プロジェクトの必要性」を説明しました。
    部長からは3分程度の発表で「必要だから頑張ってほしい!」というだけのものでした。「部として何を達成するのか?」「重点的に取り組むべきことはなにか?」「期待していることはなにか?」の説明はありませんでした。
    しかも、この部長は1枚のスライドも使わず、言葉だけで説明しました。


    これではダメです。
    口でいくら説明しても誰も聞いていません。記憶に残りません。
    視覚で補足しないといけないのです。


    「パワーポイントを使っている会議は生産性が悪い」と言われることがありますが、視覚的に訴えることは非常に重要です。
    何10枚のスライドを準備する必要はありませんが、こうした場では要点がまとめられた1-2枚程度のスライドは必要です。


    キックオフミーティングでは、資料の準備を怠ってはいけない

    この部長が担っていることは、プロジェクトオーナーではありません。このプロジェクトにおいて、プロジェクトマネージャーは役割でした。そのプロジェクトマネージャーとして部長が発表を担当する「達成目標や対象範囲」は、プロジェクトの中核を成す大切なものです。
    プロジェクトの遂行中、メンバーが壁にぶつかったときに何度も立ち戻り、「勘違いがないか?」「誤解していないか?」「どこまで達成できているのか?」を確認するための内容です。


    今回の部長の発表は説明が不十分でした。
    参加者にプロジェクトを円滑に遂行するための機会を与えていないのです。
    本来もっと盛り上げることができた参加者の動機づけを、低い段階でとどめてしまったといえるでしょう。


    部長は「ここで説明が足りなくても、現場で補足していけばいい」「実際にプロジェクトを担う課長に後で伝えておけばいい」と思うかもしれません。
    しかしそれではプロジェクトメンバーに無駄な手間や時間を使わせることになります。
    円滑に効率的にプロジェクトを遂行できるようにするために、キックオフミーティングを行っていることをもっと意識しなければなりません。


    人は変化を嫌います。プロジェクトはメンバーにとって、過負荷と捉えられてしまうものなのです。
    チームメンバーの時間を大切にしようという意識を持たずに、プロジェクトを成功裏に終わらせることなどできないのです。
    これからは「口で伝えて終わり」ではなく、「伝えるために何が必要か」「相手にしっかり伝わっているか」を確認できるマネージャーが求められているのです。


    失敗を機に、事業部長は業務改善ができる人材育成へと舵を切った

    このキックオフミーティングの後、プロジェクトオーナーの事業部長から
    「部長と言っても、彼のように業務プロセス改善の経験がないマネージャーがうちの会社には多いのです。業績を向上するためには、業務プロセス改善ができる人材を増やしていかなければいけません。そこで今回のプロジェクトで新たに若いメンバーから幾人かを選び、彼らにそれができる人材になってもらうことにしました。ティ・スクエアさんには、追加で“業務プロセス改善ができる人材育成”にも取り組んでもらえますか。ちなみに部長は対象外でいいです」
    という依頼がありました。


    業務プロセス改善ができる人材は、会社にとって新たな成長を切り拓くことができる宝です。
    若い人を抜擢し、プロジェクトメンバーの一員とすることで業務プロセス改善を経験させ、会社の業績向上を担う人材に育てようとする事業部長の決断は素晴らしいものだと思いました。


    なんのためのプロジェクトか、誰がなにを担うのか?

    キックオフミーティングはプロジェクトの目的を共有する場です。
    なんのためになにをやるのかを、参加者全員に把握してもらう大切なイベントです。
    繰り返しになりますが、開催前はプロジェクト管理者間で下記の準備を万端にしておきましょう。


    明確にすること:
    (1) 会社は何を目指しているか?
    (2) それに向けて、このプロジェクトで何を成し遂げようとしているのか?
    (3) そのために会社が直面している問題は何か?
    (4) 私たちは何を期待されているか? (いつまでに、何を達成するか?)
    (5) 私たちは何をすればいいか?


    準備すること:
    (1) プロジェクトオーナー
    → 方針説明、部門全体としての財務状況や改善目標
    → プロジェクトの最高責任者としての決意や期待
    (2) プロジェクトマネージャー
    → 今回の業務改善プロジェクトの達成目標や対象範囲
    → プロジェクトを推進するマネージャーとしての決意
    → 業務改善を行うスケジュール・メンバーそれぞれの役割


    キックオフミーティングの成功が、プロジェクトを左右するといっても過言ではありません。
    このような事前の準備をしっかり行なうことが、プロジェクトの成功へとつながっていくのです。



    文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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