事業と個人の両方の成長に向けた「社員の実行力」を強化する! ~ 成長している企業が実施している目標管理(MBO)の運用方法の解説

目標管理(MBO)が、事業と社員の両方を成長させることに役立っていますか?

目標管理(MBO, Management By Objectives)は、ほとんどの企業が実施している人事管理(人事マネジメント)です。最近はOKR(Objectives and Key Results)を行う企業もありますが、このOKRも目標管理(MBO)の一部です。私たちのクライアント企業のほとんどが目標管理を行っていました。

ですが、目標管理を行っているにも関わらず、多くの企業が「社員が意欲的ではない」「業務が混乱している」「業績が向上できない」「社員が定着しない」に悩んでいます。本来、目標管理とはこのような問題を解決するためのものですが、目標管理がうまく機能していないようです。

企業が成長するためには、企業の成長に役立つ目標管理を行う必要があります。そのような目標管理を行っている企業の事例を通して、目標管理を効果的に運用する方法について解説します。

成長している企業が実施している目標管理(MBO)の運用方法の解説

なぜ、目標管理は必要となったのか?

以前のマネージャーの役割は「部下の仕事を管理すること」でした。現在求められている仕事と比べると、以前は求められている業務内容や手順が単純でわかりやすいものが多かったからです。工場内でものづくりをしている作業員を想像するとわかりやすいです。作業者には「会社が定めた作業方法を決められたとおりに忠実に行うこと」が求められました。この時代のマネージャーは「ボス」と呼ばれていました。

しかし、マネージャーの役割は大きく変わりました。現在のマネージャーの役割は「組織の成果と成長に責任を持つこと」です。部下であるチームのメンバーが「言われたことだけをする」「言われたようにやる」だけでは、事業目標を達成することが困難な時代になりました。マネージャーにもメンバーにも、知恵や応用力(状況判断力/適応力など)が求められるようになったのです。

社員は以前、「会社が定めた作業方法を決められたとおりに忠実に行うこと」が求められていましたが、今は仕事を正しく行うことは当たり前で、その上で「自ら考え、知恵や応用力を発揮して行動すること」も求められるようになりました。

マネージャーが「リーダー」と呼ばれる時代へと変化したのです。目標管理(MBO)は、このような状況で必要となりました。

目標管理が機能しない4つの原因!

多くの企業が目標管理を行っていますが、経営者や事業部長などのマネジメントチームの人と話をすると、「社員が十分に成長し、事業の生産性が向上している!」と満足している人はいませんでした。業務変革/パフォーマンス向上の支援を行っているときにクライアント企業内を観察すると、多くの企業が行っている目標管理には、以下の4つの問題があることに気が付きました。

(1) 目標管理の定義が間違っている
(2) 目標管理の目標設定が効果的ではない
(3) 企業内の体系として実施されていない
(4) 教育プログラムが十分ではない

本来、目標管理は「高い目標を達成するために、社員のスキルや意欲を高めるためのマネジメント方法」です。

ですが、多くの企業の目標管理の運用方法は、ノルマ管理(売上などの年間数値目標の管理)の状況でした。目標管理がモチベーションを引き出すためのものではなく、社員を疲弊させている状況だったのです。どうしたらこのような状況から脱出することができるのでしょうか?

目標管理の真の定義とは何か?

私たちのクライアント企業のマネージャーたちへ、「MBOの英語での正しい名称は何か?」と質問すると、ほとんどの人が「Management By Objectives」と答えました。ですが、これは正解ではありません。目標管理を提唱したピーター・ドラッガーは、MBOについて「Management by Objectives, and Self-control」と説明しています。

ポイントはこの「self-control」の部分です。目標管理に「self-control」を付加して考えると、目標管理の真の目的が明らかになります。目標管理の真の目的とは、「自ら目標を設定し、自らの仕事ぶりを自らマネジメントし、目標を達成する」マネジメント方法です。

目標管理を行っていても業績が良くない企業では、社員それぞれの目標管理には「会社やマネージャーから与えられた目標」だけが目標となっており、社員自らが設定した目標はありませんでした。また、年初にメンバーへ目標管理の作成を指示するだけで、その後、マネージャーとメンバーは目標管理で合意した目標の達成度の確認やその対策などのコーチングを行っていませんでした。

目標管理とは、マネージャーが数値目標を決めて一方的に指示することではありません。「メンバーが自らの目標を決めて、その目標をマネージャーとメンバーとの間で合意をし、達成を目指す」ことが含まれます。そして、一度決めたら、その後ほったらかしでよいものでもありません。(メンバーが自ら決めた目標を含め)定期的に進捗と達成度を確認し、目標管理に書かれている目標が達成できるようにマネージャーは支援(コーチング)をし、確実にその目標を達成することが、目標管理の真の目的なのです。

企業内にどのような目標管理の体系を構築するか?

実際に、持続的な成長を実現している企業では、その持続的な成長を実現するための目標管理を行っています。

◆ 事業部長は、目標管理を通して部長に自らの課題を設定させ、育成していました。
◆ 部長は、目標管理を通して課長に自らの課題を設定させ、育成していました。
◆ 課長は、目標管理を通してメンバーに自らの課題を設定させ、育成していました。

このように、目標管理を活用した育成の連鎖を会社の仕組みとすることで、マネージャーの「社員を育てる能力」を強化していました。その結果として、部長は次の部長候補者を、事業部長は次の事業部長候補者を育ててることができているのです。

マネージャーの目標管理の運用能力を高める!

以上で説明したように、現在の事業環境において、「目標管理はただ行えば良い」というものではありません。その目的と定義を明らかにし、企業としての体系として運用しなければ効果がありません。

現在の社員には、経験や能力以上の結果を出すことが求められているのですから、マネージャーはメンバーと一緒に考え、ヒントを与え、様々な挑戦をさせる必要があります。そのためには「自分で考えて欲しい!」という期待を押し付けるだけでは不十分で、マネージャー側も責任をもって学び成長していないといけません。

マネージャーに求められているのは、社員の能力を高め、最良の結果を出せるようにする支援(コーチング)です。社員が目標達成できない原因や障害を探り、様々な観点で検討し、相手がそれを意欲的に乗り越える(ブレイクスルーする)方法を一緒に見つけます。

マネージャーと社員がこのような能力を身につける効果的な対策の1つが、「チームにおける問題解決」を実践させることです。様々な問題解決や課題を達成する能力は、目標管理には必須となる能力です。マネージャーに「チームにおける問題解決や課題達成」の十分な実践経験があるから、メンバーへ適切なコーチングができるのです。そして、社員はそのコーチングを受けて、目標達成へ実行する能力を強化することができます。
(【参照】 【事業成長力強化研修】チームで挑戦する『事業成長への行動』推進モデル ~ 事業計画達成に貢献する組織課題解決力を強化!(Driving Model for Growth)

成長力強化セミナーのご紹介

『組織』と『個』の相互の成長に役立つ『プロフェッショナル育成』などのセミナーを毎月開催しています。ぜひご参加ください。

【マネジメントセミナー】 事業を成長させている企業が行う「事業成長プロジェクト実行力の強化」の仕組みと実例(事業を成長させるノウハウ) ~ この仕組みとノウハウが、あなたの会社のこれからの成長に役立つかもしれない!

【ハイパフォーマーセミナー】ハイパフォーマーの必須条件・組織問題の解決策立案メソッド ~ 組織問題を解決できるプロフェッショナルになる!

【ハイパフォーマーセミナー】チームの生産性向上に役立つモチベーション対策 ~ メンバーが主体的に行動するようになるための動機づけ

その他の成長力強化セミナー

成長力強化セミナーページ

あなたの会社の目標管理を見直そう!

目標管理が事業の成長に向けて上手く機能していない4つの原因ととともに、その問題を解決するためのポイントを解説しました。

事業を成長させることに役立つ目標管理のためには、「目標管理の目的と定義を見直す」「目標管理の体制を再構築する」「運用するためのマネージャーへの教育」が欠かせません。それぞれのマネージャーがどのような目標管理を実施しているのか、その目標設定/進捗管理/コーチングを定期的にチェックし、効果的なフィードバックを行い、マネージャーの「人を育てるスキル」を強化し続ける必要があります。

目標管理は「ノルマ管理」ではありません。目標管理を行うことで「やる気(モチベーション)」を創出する事が必要です。目標管理は「自分の仕事をマネジメントし、改善しつづけられる社員を育成する」ためのマネジメント方法なのです。

私たちは、多くのクライアント企業の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウ/経験があります。貴社と力を合わせて問題を発見し、その問題を解決します。私たちは、目標管理を効果的に運用できるようにするためのコンサルティング(診断/対策立案/対策実施)を行っております。目標管理を行っていながら「自ら自分の仕事をマネジメントし、改善しつづけられる社員」が育っていなければ何処かに問題が潜んでいます。私たちがその問題を発見し、解決策をご提案します。ぜひ、お問い合わせください。

(本ノートは、2016年6月27日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
Copyright (C) 2016–2023 T-SQUARE Co., Ltd. All rights reserved.

お問い合わせ

ご質問/ご依頼など当社へのお問い合わせ

関連するソリューション

【プロフェッショナル人材育成】 チームによる問題解決メソッド研修 ~ 成長に向け組織課題に取り組む体制を構築する!(Method of Team Problem Solving)

【プロフェッショナル人材育成】 次世代マネージャー育成研修 ~ 目標達成と組織の成長をリードできる実務能力を強化!(Manager’s Competency)

ティ・スクエア プロフェッショナル人材育成ソリューション 一覧

一緒に読まれているノート

部下がついてくる「チームの目標設定と戦略策定」は、どうすれば作ることができるのか? ~ マネージャーに必要な「年間目標設定/戦略策定の考え方のコツ」とは!

「自ら考え行動できる能力」が必要とされる時代へ! ~ 「自ら考え行動する社員」を教育・育成する3つのポイントと2つの方法

業務改善ケーススタディ『法人向けサービス会社 』 ~ 受注センター業務の生産性を向上させ、さらに、インサイドセールスを担うチームへと進化させる!

マネジメント力強化ケーススタディ『エンジニアリング企業』 ~ 「会社を良くするマインドと視点」を育み、経営者と一緒に「会社を良くする挑戦」をするマネージャーを選抜する!

マネジメント力強化ケーススタディ『エンジニアリング企業』 ~ 率いる部門(グループ)を目標達成へ導く、マネージャーの方針作成力を強化!

営業力強化ケーススタディ『外資系製造業』 ~ 二桁以上の売上成長率を続ける営業組織へ転換する具体的営業力強化実施計画の立案!

無料メールマガジンの登録

『組織』と『個』の相互の成長に役立つ『プロフェッショナル育成』と『営業力強化』の情報を月1~3回お届けしています。

当社無料メールマガジンのご登録フォームへ