営業たちが報告する毎月の売上予測の精度が悪い! ~ 売上予測に対する受注確率を高めるための案件管理方法

営業の大切な業務の1つは、「毎月の売上予測を行い、その予測を会社に報告し、その見込み通りに注文を獲得すること」です。毎月の売上がその予測どおりであれば問題ないのですが、見込み通りにならずに苦労をしている営業マネージャーは多いです。

毎月・毎期の売上見込みどおりに受注できないと、営業目標を達成できないばかりではなく、経営そのものにも大きなリスクとなります。また、この売上見込みの精度は一度外れるとそれが伝搬し、その後、外れ続けてしまう傾向があります。そのため、どこかで改善しないと経営リスクはますます増大してしまうのです。

このノートでは、毎月の売上が見込み通りにならない原因、そして、営業の売上見込みの予測精度を向上する方法について解説します。

売上予測に対する受注確率を高めるための案件管理方法

売上の見込みが外れると、企業の安定性や存続に悪影響を及ぼす

営業にとって最も重要な業務の一つは「毎月の売上予測を行い、会社にその売上予測を報告し、その見込み通りに注文を獲得すること」です。営業担当者の売上見込みの予測精度が高ければよいのですが、実際には売上見込みの精度が良くなく、毎月・毎期の売上結果が予測とはかけ離れている営業組織も多いです。

この売上予測の精度の悪さは、営業組織としての目標達成度合いに悪影響を及ぼすだけではなく、経営にも悪影響を及ぼします。

「今月売れるはずだったのですが…」という見込み外れが多くなると、その見込みに基づいて調達した原材料や人的リソースなどの資源がムダとなり、キャッシュフローを圧迫します。その逆に、当初は売上の見込みではなかったものが急な注文となってしまうことも、それを生産・出荷するための原材料や人員が追い付かず、納期が遅延し、資金繰りが悪化することになります。

先日の日経新聞で報じられたように、「案件の管理が十分ではなく、金額が大きい商談を売上見込みに計上しないまま自社株買いを行い、その後、急にその大型案件を契約した」ということは、会計操作やインサイダー取引とみなされてしまう可能性もあるのです。
【参考】 日経新聞2007年11月13日 試される司法 – 「適法」に戸惑う市場)。

以上のように、営業組織での案件の管理を十分に行わず、売上予測の精度が悪い状態だと、市場からの企業評価にも大きな悪影響を及ぼします。そのような大問題を引き起こす可能性があるのですが、どうして営業の売上見込みの予測精度が悪いのでしょうか?

なぜ、営業の売上見込みが当たらないのか?

私たちは、営業組織のパフォーマンス向上を成し遂げるために、クライアント企業X社の案件管理の状況を調査しました。調査をしてみると、X社の営業の売上見込みの予測精度が悪く、そのことが、営業組織としてのパフォーマンスを悪化させる原因となっていました。X社では、売上見込みを確認する会議において、下記のようなコミュニケーションが行われていました。

【営業課長】 Y社の案件はどうだ? 今月中に売れそうか?

【営業Aさん】 お客さんは興味を示していますし、「必要なんです」と言ってくれています。多分2ヶ月後には注文書が出ると思います。

【営業課長】 2ヶ月後か。1カ月前倒しして、来月中に注文もらうことができないか? 来月の数字が足りないんだ。

【営業Aさん】 1カ月前倒しですか? 難しいかもしれませんが頑張ってみます。

この会話の後、営業Aさんに以下の質問をしました。

【私】 ちなみに、このY社の案件は、すでに予算があるのですか?

【営業Aさん】 予算ですか? さあ、たぶんあると思いますよ。

X社は、法人企業をお客様として営業をしているBtoB企業でした。お客様が法人企業の場合、「買いたい!」と思っても予算がなければ購入することができません。購入するモノの金額の大きさにもよりますが、通常1~2か月という短い期間で予算を獲得できることはありません。また、仮に予算があったとしても、お客様社内での承認作業が必要なために「すぐに購入!」とはならず、発注までしばらく時間がかかります。

ですから、営業は「このお客様は予算があるかどうか?」もしくは「予算の目処がついているかどうか?」を確認する必要があります。そして、営業マネージャーも同様に、「この案件はすでに予算があるか?」および「発注に至るまでにどの程度時間がかかるか?」を確認することが大切なのです。営業マネージャーは、少なくともそのような情報を確認した上で、営業へ「もっと早く注文もらえるようにできないか?」と要求すべきです。

このような相互の確認が行われることなく、「もっと早く注文をもらえないか?」と営業へ要求することは、本来はそれぞれの商談の売上見込みの予測を精度高く管理すべきなのに、「売れてほしい!」という営業側の勝手な期待を売上見込みとしてしまっている状況なのです。

そして、この商談の売上見込みが外れると、2つ目の商談へ3つ目の商談へと伝搬し、ますます売上見込み通りに注文が獲得できない商談が増えてしまいます。

以上のように、本来は「今後の売上見込みや予測」であるべきものが、「売上への期待」という状態になっているのです。

「見込みや予測」と「期待」は全く別物です。「見込みや予測」とは「売れる可能性が高い!」という意味合いであり、「期待」は「売れてほしい!」という願望でしかないのです。

売上見込みの予測精度を高めるためには、進捗で管理する!

多くの営業組織では、以上のように、案件の管理を「売れるかどうか?」「いつ売れるか?」「いくらで売れるか?」の観点で行っています。この観点の案件管理を行いますと、売上見込みの予測精度を高めるための対策が十分にできなくなります。売上見込みの予測精度を高めるためには、お客様の購買プロセスで商談の進捗を管理することが大切です。

法人のお客様が何かモノを購入するときには、購買プロセスにそって進めます。一般的には、下の図の流れに基づいて購買が行われています。

企業は、まず「予算」を計上します。その後、「要求仕様の決定」「選定」「交渉・発注」の工程を経て、モノを購入します。「稟議書」という言葉が営業の中ではよく使われますが、これは「予算の計上」に相当します。お客様がいくつかの会社/いくつかの商品を比較検討することは、「要求仕様の決定」「選定」に相当します。価格や契約条件の交渉は、「交渉・発注」です。お客様は、このような一連のプロセスに基づき購入を進めます。特に、金額の大きいモノを購入するときには、「要求仕様の決定」「選定」「交渉・発注」を注意深く時間かけて行います。

すなわち、売上見込みの予測精度を高めるためには、案件管理において「売れるかどうか?」「いつ売れるか?」「いくらで売れるか?」の観点だけではなく、本来は「購入プロセスのどの段階か?」の情報を管理することが大切です。このようにお客様の購買プロセスにもとづく商談の進捗管理を行えば、売上見込みの予測精度は格段に高まります。

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案件管理を見直して、売上見込みの予測精度を高めよう!

案件の進捗管理は、販売している商材とその特性、商材の生産や在庫の体制、お客様の業界やその業界慣行などを考慮した上で、最適な進捗管理の方法にする必要があります。世の中には様々な案件管理用のITツール(SFA、Sales Force Automationと言われます)が販売されていますが、その案件管理ツールの初期設定のままで案件管理を行っても、十分な導入効果が得られないことが多いです。効果を得るためには、自社の状況に合うように設定を変更し、利用することが必要です。そのため、私たちは、クライアント企業の状況に合うように案件管理ツールのカスタマイズ(設定変更)や社員向けのトレーニングの支援を行いました。

私たちが貴社にとって最適な案件管理体系を構築するお手伝いをいたします。この案件管理の対策を取ることは、売上予測の精度を高め、ひいては、目標達成の確実性を高める効果があります。営業組織の売上見込みの精度にお悩みであれば、遠慮なくご連絡ください。

(本コラムは、2008年7月27日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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