営業日報は必要、それとも、意味がない? ~ 営業目標達成のために、営業日報をどのように活用すべきか、その効果的な判断方法

「営業日報は必要ない!」という意見をよく聞きます。私たちのクライアント企業でも、営業日報を書いている企業と書いていない企業がありました。営業日報が営業目標達成に役立っている企業もありましたし、逆に、営業日報が時間の浪費となっていた企業もありました。

あなたの会社では、営業日報を書いたほうが良いのでしょうか、それとも、書かなくてもよいのでしょうか。もし、書いていないのであれば、営業日報を始めたほうが良いのでしょうか?

それを正しく判断できている企業は少ないようです。今回は「営業日報は、本当に、営業目標達成に役立つか?」そして「やるかやめるか、どのように判断すればよいか?」について解説します。

営業目標達成のために、営業日報をどのように活用すべきか、その効果的な判断方法

営業日報のメリット/デメリット

営業日報にもデメリットとメリットがあります。営業日報のデメリットとしてよく伺う意見は下記です。

◆ 手間がかかる
◆ 時間がかかる
◆ それなのに誰も読んでいない
◆ 書いている人すら、後で見直すことがない

それに対し、営業日報のメリットの意見には、以下のものがありました。

◆ お客様のニーズの変化や購買動向、そして、競合の変化の情報収集や整理
◆ 商談の状況の把握
◆ 営業担当者のスキルの向上度合いの確認
◆ マネージャーとメンバー間の情報共有の促進

マネージャーが、営業日報に目を通して適切なコメントや助言をしてくれるのならば、営業担当者たちも営業日報を書く必要性を感じるでしょう。ですが、「昔からの会社のルールだから…」という理由だけで書くことを求められ、誰も読んでくれないのであれば、書く意欲は決して高まりません。

営業日報を書いていない企業の状況は?

営業日報という名前がついている以上、毎日書かなければなりません。そして、営業日報を書くために1日30分から1時間程度は時間を取られます。時には営業日報を書くためだけに会社に戻らなければならないこともあります。営業日報をためてしまうと営業日報を書くために残業することもあります。

このように、「営業日報を書くことに時間を使っている」ということは、その分、営業担当者が本来使わなければならない「お客様と面談する時間など、お客様のための時間」が減ってしまいます。営業日報を書かなければ、その分、お客様への訪問量を増やし、かつ、残業時間を減らすことができます。すなわち、営業日報を書かなければ営業担当者の生産性を上げることができそうです。

これらの理由により、ある外資系企業A社では、だいぶ前に営業日報をやめ、その代わりに週1回の営業会議を行っていました。ですが、そのA社の営業会議は、下記のような数値の確認だけの管理となっていました。

◆ いくら売れるか?
◆ どの商談が契約できるか?

こうなってしまった理由は、営業日報がないために「お客様の投資動向」「商材に対するニーズの情報」「商談の進捗状況」などの情報が営業マネージャーに集まらなくなったためです。営業マネージャーがそのような営業上必要な情報を得られないために、他の営業担当者へ有益な情報を共有できなくなり、そのことが売上に悪影響を及ぼしていました。すなわち、営業日報をやめてしまうことのデメリットが大きい場合もあるのです。

「ただ書くだけになっている」「誰も見ない」営業日報はムダです。ですが、書くべきことを決めて営業日報を書くことは、組織内での情報の共有化や売上の増加に役立つ有効な手段でもあるのです。

営業日報を書くように提案することもある!

クライアント企業B社の経営層は「営業日報を書くことはお客様との関係強化のために必要だ!」と考えていて、営業担当者が営業日報を書くことを義務化していました。実際に、B社の営業部長や営業課長が、営業担当者と一緒にお客様を訪問する時には、そのお客様に関する営業日報を事前に確認しており、そのおかげでお客様との面談を効果的に行うことができていました。このように、営業日報は、売上目標の達成やお客様との関係を強化することに役立っていました。

以上のように、営業日報を書くことが効果のある企業もありますので、私たちは「営業担当者は嫌がるかもしれませんが、売上を成長(Sales Growth)させるために、営業日報をやりましょう!」とクライアント企業へ提案することもあります。

特に、新規顧客や新規商談を増やしたい企業では、「お客様のニーズの変化」「投資や購買動向」を営業日報で収集し、その情報から戦略的な営業計画を策定することができるからです。

(【参照】 【法人営業研修】営業パーソンの営業活動計画力の強化 ~ 目標を確実に達成するために必須となる営業活動計画の作成方法(Planning Method for Achievement)

営業日報の目的は? 何を書くべき? 判断手順は?

企業にとって重要なことは、「営業日報を書くか書かないか」ではなく「営業日報という手段が下記の達成に必要かどうか?」です。

◆ 今期の売上目標を達成すること
◆ 企業がよりお客様に貢献でき、長期的に売上や利益を増やせるようになること

もし、営業日報を書くのであれば、その営業日報に最低限書かれるべきことは下記の4つです。

(1) 訪問件数や訪問相手に関わること(訪問時間や面会時間を含む)
(2) 商談に関わること(発掘したお客様のニーズ、商談の進捗状況など)
(3) 1~2年程度の今後の見込(投資や購買の動向など)
(4) ライバル会社との取引状況

以上の(1)と(2)は「今期の目標を達成すること」へ、(3)と(4)は「企業がよりお客様に貢献でき、長期的に売上や利益を増やせるようになること」に役立ちます。

では、あなたの会社では、営業日報を書くべきでしょうか、書く必要はないでしょうか? その意思決定には、次の4つのステップで検討すると答えが出ます。

【ステップ1】受注をするためには、お客様のニーズを理解することが大切か?

営業日報を書いていない企業の営業担当者と同行訪問をしますと、お客様との商談内容をノートに書いていない営業担当者が多いです。このような営業担当者は、営業をする上で重要なお客様のニーズや市場動向(マーケット情報)を集めていません。

販売している商材(商品、サービス、ソリューションなど)によっては、確実に受注するために、以下のお客様のニーズを把握することが大切です。

◆ お客様はなぜ購入したいのか?
◆ どのような要望があるのか?
◆ 競合はどこか?
◆ 選定基準は何か?

また、今後、長期的に売上や利益を増やすためには、以上の商談に関わる情報だけではなく、投資&購買の動向やライバル会社との取引状況などを収集することが重要です。ですが、そのような大切な情報をノートに記録していないのです。記録に残していないと、月末にマネージャーから「この商談はどのような状況か?」と聞かれても適切に説明することができません。「これから売上を増やすためにはどうすればよいのか?」と聞かれても、今後の営業活動を合理的に計画することができなくなります。

優秀な営業担当者は、「商談の進捗に関わる情報」「今後の投資動向」「ライバル会社の情報」などをできるだけ詳しく記録しています。

【ステップ1】受注をするためには、お客様のニーズを理解することが大切か?

Noならば、営業日報では、訪問件数や訪問先を簡単に報告するだけで良いでしょう。営業日報を書くことに営業担当者の時間を使うよりも、少しでも多くのお客様に訪問する時間に使ったほうが効果的です。

Yesならば、営業日報が必要かもしれません。次のステップで、より具体的に検討しましょう。

【ステップ2】商談あたり3回以上の面談が必要か?

あなたの会社の商材(商品、サービス、ソリューションなど)を販売するために、何回くらいお客様と面会する必要がありますか?

1~2回面会すれば受注できる商材ならば、営業日報は効果的です。日々の営業日報1回分に、お客様の「投資や購入動向」「お客様のニーズの情報」「意思決定の内容」をすべて書き留めることができるからです。マネージャーもその営業日報を見れば、商談の全体像が理解することができます。

ですが、受注までに3~4回以上の面会を行なう必要がある商材の場合には、一日の営業日報に商談の全体像を書き留めることができません。商談の全体像が3~4日分の営業日報に分断されてしまい、商談の流れや全体像が把握しづらくなります。すなわち、商談あたり3~4回お客様と打ち合わせをすることが必要な商材の場合には、営業日報という方法よりは、商談ごとに情報を取りまとめられる報告体系のほうが効果的です。それぞれの商談の一連の流れや全体像を確認できるほうが、商談を確実に受注するための計画を立てやすくなります。

もし、「営業日報も行っている」「商談進捗レポートも出させている」と両方やっているのであれば、それは過剰な作業をさせている可能性があります。営業担当者がもっとお客様のために時間を使えるようにすべきです。

【ステップ2】商談あたり3~4回以上の面談が必要か?

Noならば、1~2回お客様と面談すれば受注できる状況ですので、営業日報は効果的です。営業日報として、 「お客様のニーズ」「受注理由や失注理由」を簡単に報告させましょう。これらの情報は、営業マネージャーが収集して、他の営業担当者たちへ共有化すべき情報です。

ですが、それでも「営業日報に時間を使うよりは、お客様との面談に時間を使わせたい」のであれば、失注理由だけは報告させるようにしましょう。会社として、これ以上失注しないための対策を取る必要があるからです。

Yesならば、営業日報のように毎日書く必要はありませんが、それぞれの商談ごとに「主たるお客様のニーズ」「商談の進捗情報」「受注理由や失注理由」などの情報をまとめ、報告することが必要です。

【ステップ3】商談には、複数のメンバーとともにチームで行うか?

商材の販売を営業担当者1人で行いますか、それとも、マネージャーやエンジニアやマーケティングなどと一緒にチームで行うことが多いですか?

もし、チームで営業することが多いのであれば、チームのメンバーとニーズや商談の進捗情報を共有化しながら進める必要があります。このような情報を商談ごとに共有化しておくからこそ、より効果的にチームで商談を進めることができるようになります。そのような仕組みを構築しましょう。

【ステップ3】商談はチームで行うか?

Noならば、営業担当者だけが商談情報を把握できていれば商談を進められます。ですので、組織内で商談の情報を共有化する仕組みは必要ないでしょう。【ステップ2】で説明したように、それぞれの商談ごとに「主たるお客様のニーズ」「商談の進捗情報」「受注理由や失注理由」などの情報をまとめ、報告します。

Yesならば、それぞれの商談ごとに「主たるお客様のニーズ」「商談の進捗情報」「受注理由や失注理由」などの情報をチームで共有化する必要があります。そのような情報を共有化する仕組みが必要です。営業支援ツール(SFA, Sales Force Automation)を活用することも検討します。

【ステップ4】営業担当者一人あたりの売上額と利益額を最大化させたいか?

もし、営業担当者一人あたりの売上額と利益額を最大化させたいのであれば、それを実現するために営業日報は有効な手段となります。

(【参照】 【法人営業研修】営業パーソンの営業活動計画力の強化 ~ 目標を確実に達成するために必須となる営業活動計画の作成方法(Planning Method for Achievement)

営業担当者一人あたりの売上額と利益額を最大化させるためは、担当するお客様の市場情報を集めることが大切です。営業担当者が集めるべき市場情報とは、「お客様の投資動向」「今後の購入量」「競合との取引状況」のことです。営業担当者が市場情報収集者として、このようなお客様の購買状況を収集し、その情報を上司と共有化することで、営業担当者一人あたりの売上額と利益額を最大化できる営業活動計画を立案することができるようになります。

【ステップ4】営業担当者一人あたりの売上額と利益額を最大化させたいか?

Noならば、【ステップ2】の通り、それぞれの商談ごとに「主たるお客様のニーズ」「商談の進捗情報」「受注理由や失注理由」などの情報をまとめ、報告します。

Yesならば、商談に関する情報だけではなく、重要なお客様の「投資動向」「今後の購入量」「競合との取引状況」を上司と共有化し、今後の営業活動計画に役立てることが大切です。営業日報を活用して、そのような情報を共有化します。

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(本ノートは、2008年3月3日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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