大企業向け営業(アカウント営業・エンタープライズ営業)の営業成績に不満がある企業は多い! ~ 大企業向け営業で結果を出すために強化すべき4つの営業スキルとは?

多くの企業が、大企業向け営業チームの売上成績(パフォーマンス)に満足できていません!

大企業向け営業とは、アカウント営業やエンタープライズ営業とも言われている営業のことです。中堅・中小企業向けの営業を経験した人が大企業向け営業を担当することになっても、すぐには会社が期待する結果を出すことができません。今まで経験し蓄積してきた営業方法が、大企業相手には通用しないのです。実は今、日本では大企業向け営業(アカウント営業・エンタープライズ営業)で結果を出せるスキル(能力)を有する営業パーソンが不足しています。そのような人を採用したくとも十分採用できないのです。

「一般的な営業と大企業向け営業との違い」そして「アカウント営業・エンタープライズ営業は、どのような営業スキルを強化する必要があるのか?」この2つを解説します。

大企業向け営業で結果を出すために強化すべき4つの営業スキルとは?

企業が直面している大企業向け営業チームの問題とは?

中堅・中小企業向けの営業経験が、大企業では通用しない

A社は、IT機器やITソリューションを販売している外資系企業の日本法人です。以前の主なお客様は、中堅・中小企業でした。大企業を相手に営業しても強力なライバル企業がいるため、そのライバル企業を避けた営業をしていたためでした。ですが、海外本社からより高い成長目標を求められ、アカウント営業・エンタープライズ営業に挑戦することになりました。中堅・中小企業向けの営業は外部の販売パートナー企業へ委託し、A社の営業全員が大企業向けの営業を行う組織へと変革しました。

大企業向けの営業を行うために、A社は大企業向け営業の経験者採用を行いました。採用した営業パーソンたちのうちの幾人かは、ある程度の結果を出していました。ですが、全員が期待する結果を出しているわけではありませんでした。また、以前から所属していた中堅・中小企業を担当していた営業パーソンも結果を出すことができずに苦労していました。今まで行ってきた営業方法ではうまく行かないのです。

若手社員が大企業向け営業を担っているが苦労している

B社は、ITサービスを販売している企業です。今までは地域(エリア)によって営業パーソンの担当が決まっていました。そのため、営業パーソンは、大企業や中堅・中小企業の区別なく、両方を同時に担当していました。

B社は、営業体制を見直すことになり、大企業と中堅・中小企業で営業担当を分けることにしました。その際、主に若手社員が大企業向け営業(アカウント営業・エンタープライズ営業)を担当することになりました。というのも「エンタープライズ営業部門」や「アカウント営業部」はB社にとって新しい挑戦だったためです。「新しく創設する部署だし、若い人のほうが新しい挑戦でも適合しやすいだろう!」と判断し、若手が大企業向け営業の部署へ移動しました。

ですが、マネージャーも営業パーソンたちも十分な大企業向け営業の経験がないために手探り状態で、会社から期待されている結果を出せずに苦労していました。

大企業への営業経験はあるが、大企業顧客での取引拡大ができない!

C社は、工場設備や部品を販売している企業です。ここ2~3年の売上は水平線で増加できていない状況でした。その状況を打破して更に成長するために、今まで取引が少なかった大企業への営業に挑戦することになりました。

C社には10数年の経験のあるベテラン営業が数人いました。彼らが担当しているお客様には、大きな取引ができている大企業も含まれていました。ですので、大企業への営業経験はあるのですが、まだ取引のない大企業の開拓では、会社が期待するペースで増やすことができずに苦労しています。

大企業への営業で陥っている状況

以上のA社、B社、C社のように、大企業向け営業に苦労している企業は多いです。彼らは下記のような状況に陥っており、満足できる営業成績(パフォーマンス)を出せていませんでした。

◆ 中堅・中小企業向け経験のある営業パーソンが、大企業向け営業(アカウント営業・エンタープライズ営業)で結果を出せない
◆ 中途採用した大手企業向け営業の経験者も、結果を出せる人はそれほど多くない
◆ 若手社員・新入社員が大企業向け営業で苦労をしている
◆ 経験のあるベテランの営業ですら、新たな大企業を開拓できない、取引拡大できない

中堅・中小企業向けの営業方法と大企業向け営業方法は違う!

大企業向け営業では、具体的にどのようなことに苦労をしているのか?

なぜ、彼らのように多くの企業は、大企業向け営業で成果を出せずに苦労をしていたのでしょうか?

A社、B社、C社の3社は、以下の3つの共通する問題がありました。

◆ 新しい商談を発見できない
◆ 会いに行けない
◆ ライバル会社(競合)に勝てない

1つ目は「新しい商談を発見できない」ことです。

多くの営業担当者は、新しい商品が出るとお客様に訪問します。その紹介した商品にお客様が関心を持ってくれればよいのですが、関心がないことも多いです。関心がないときは「なにか購入するものがありませんか?」「なにかお役に立てることはありませんか?」とお客様に伺います。ですが、ほとんどの場合、「特にないですねえ」と言われています。

このようなアプローチですと、新しい商談機会を発見することができないまま面会が終わってしまいます。

2つ目は「会いに行けない」ことです。

上で説明したとおり、次回の面会の約束をするために「なにかお役に立てることはありませんか?」と聞きますが、そう聞いても「特にないですねえ」と言われてしまうことの方が多いです。また、大手企業はセキュリティも厳しいですから、気楽に立ち寄ることもできません。ですから、そのお客様と次に合うためのネタが無くなってしまい、紹介できる新製品が出るまでそのお客様に会いにすら行けないのです。

お客様と継続した面談ができていません。

3つ目は「ライバル会社(競合)に勝てない」ことです。

運良くお客様が購入検討中だったとしても、通常大企業は1社だけを検討して購入することはありません。お客様は複数の会社の商品を比較検討して購入します。大企業で対決するライバル企業は強力なことが多く、その強力なライバル企業に勝てないのです。

以上のような営業のアプローチでは、商談機会を発見しても、ライバル会社に勝つためには価格勝負となり、結果として「大手企業との取引を増やす事ができない」という状態になっているのです。

今、日本には大企業向け営業で結果を出せる人が減っている

今、日本では大企業相手に効果的な営業を行う知識/能力(スキル)/経験がある人は多くありません。C社のように、以前から大企業向け営業を担当していても、すでに付き合いがあるからできる御用聞き営業しか経験がないのです。また、A社のように、中堅・中小企業への営業経験者が、その営業方法でアカウント営業・エンタープライズ営業を担当しても効果が出せません。営業経験者を採用したいと思っても、大企業相手に商談機会を生み出し、取引を拡大できる知識/能力(スキル)/経験のある営業パーソンは少ししかいないために、十分な採用ができません。

お客様にニーズを気づかせる営業能力の強化方法 ~ 案件数増加に必須となる「顧客ニーズ」がお客様との面談で話されていなかった!」で解説していますが、多くの営業パーソンは「自分はお客様のことを理解できている!」と考えていました。ですが、私たちが営業パーソンの顧客理解度を調査すると「新しい商談を発掘するために理解すべきニーズ」すらつかめていないことが多いのです。

アカウント営業・エンタープライズ営業は、その営業を遂行するための専門的な知識やスキルを学習する必要があります。「研修で学んで終わり」という状態にならないためにも、組織として、営業マネジメント方法/人事評価/継続的な育成体制を整備し、アカウント営業・エンタープライズ営業が遂行できる仕組みを作ることが大切です。ですが、そのようなアカウント営業・エンタープライズ営業で成果を出せる仕組みを構築できている企業はほんの一握りしかありません。

(ジョブ型雇用制度を取り入れることは解決策の1つです。ジョブ型雇用制度については、「ジョブ型雇用制度」は、導入を目的とすると失敗する! ~ 組織/事業/社員を成長させ、会社が持続的に発展するための「ジョブ型雇用制度」導入の注意点を参照ください)

現在、多くの企業がインサイドセールス(内部営業)を拡大しています。インサイドセールスは、お客様の問い合わせがあって初めて商談が始まります。商談の時しかお客様とやり取りをしないインサイドセールスですと、大企業向け営業のノウハウや経験を獲得することは困難です。また、「中堅・中小企業向けの営業が行う商談」や「インサイドセールスが行う商談」と比べ、アカウント営業・エンタープライズ営業が行う商談では、扱うべき情報や求められるスキルがより広範囲です。

アカウント営業・エンタープライズ営業は、中堅・中小企業向け営業やインサイドセールスとは違い、この後に解説する4つのスキルを身につける必要があるのです。

一般的な営業と大企業向け営業の差は?

一般的な営業と大企業向け営業の方法は、大きく分けて以下の4つの違いがあります。

◆ 取引する金額が大きい、量が多い
◆ 購入プロセス・意思決定プロセスが複雑(条件が多く、時間がかかる)
◆ 購入に多くの人が関わる(役職の高い人が関わるが、ハイレベルなためになかなか会えない)
◆ 強力なライバル企業が関与する

以上のことから、中堅・中小企業向けの営業と違い、アカウント営業・エンタープライズ営業は、単に商品を紹介するだけの営業、気軽にお客様に立ち寄るだけの営業ではつとまりません。仮に、運良く大企業のお客様が商品・サービス・ソリューションに関心を示してくれても、通常はすぐには購入できません。予算の確保など、様々な社内手続きが必要で、かつ、慎重に比較検討するために、購入までに半年から1年は時間がかかります。このように商談も長期に渡るため、その長期間にお客様と疎遠になってしまうことがないよう継続的にお客様と面談でき、広範囲に渡る様々な要望に対応できる対応力やシナリオ構想力が必要なのです。

大企業向け営業が強化すべき4つの要素

大企業向け営業(アカウント営業・エンタープライズ営業)を担うためには、以下の4つの営業スキルを強化する必要があります。

情報収集力

大企業向け営業(アカウント営業・エンタープライズ営業)は、「新製品が出たら訪問して紹介」という営業スタイルだけでは新規の商談を開拓することができません。また、ホームページをみてお客様の事業内容を確認するだけでも不十分です。戦略的なアプローチを行うためには、最低でも下記のような情報を収集できる「情報収集力」が必要となります。

◆ お客様の商品(何を売っているか?/誰に売っているか?)
◆ お客様の保有資産(利用サービスなどを含む)
◆ 組織情報と各組織の方針(戦略や課題)
◆ 購買に至る一連のプロセスとそれに関与する部署や人 など

計画立案力

アカウント営業・エンタープライズ営業は、一般的な営業のように毎週/毎日の訪問計画を立てるだけでは不十分です。担当する大企業ごとの取引目標や関係構築目標を設定し、そこから「情報収集や関係構築などの活動計画」「商談を受注に向けて進捗させるための活動計画」などを立案して遂行することが大切です。

◆ アカウント目標と計画
◆ アカウント情報収集の訪問計画
◆ 新規開拓部署の計画
◆ 商談進捗計画 など

商談準備力

アカウント営業・エンタープライズ営業は、「新製品のカタログを準備して、ホームページで事業内容を調べておく」だけでは商談前の準備としては不十分です。そのような準備だけで「新製品紹介」や「なにか買うものがありませんか?」というようなアプローチをしても継続して面会してもらえるようにはなりません。必要なことは、お客様に役立つ情報提供です。市場の動向を踏まえ、「どのような効果をもたらすものか?」がわかる提案を準備することが大切です。この提案には、大企業のお客様の社内で使われている用語や言葉を使って準備すると効果的です。お客様の社内で使われている用語や言葉で提案を準備できるスキルも必要となります。

◆ お客様の市場情報の収集
◆ 商談を開拓するための仮説提案の準備
◆ 上の2つを効果的に行うためのビジネス・プレゼンテーション など

商談遂行・交渉力

アカウント営業・エンタープライズ営業が行う商談では、担当者だけと面会するだけでは不十分です。購買検討にかかわる多くの人と面会をして商談を進める必要があります。また、強力なライバル企業との競争に勝ち抜かなければなりません。そのためには、下記のスキルを強化する必要があります。

◆ 商談を先にすすめるための計画立案・交渉力
◆ ハイレベルとのアプローチ
◆ 競合対策力 など

また、業界トップの大企業との取引関係を構築し、さらに取引を拡大していくためには、営業・エンジニア・マーケティングがチームとなって「戦略的アカウント営業メソッド」という高度な営業手法を遂行する必要もあります。

(【参照】【法人営業研修】 戦略的アカウント営業 TSメソッド ~ 業界内で大きなシェアを獲得している大企業との取引拡大を達成!(Strategic Account Sales, TS-Method)

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大企業向け営業を強化しないと、営業組織の営業成績(パフォーマンス)は向上しない

日本の多くの営業組織では、組織的かつ継続的な大企業向け営業のトレーニングを行われていません。今まで大企業を担当していた営業担当者のほとんどは御用聞き営業が多く、新規の大企業を開拓できる能力が十分ではありません。日本にはそのようなスキルを持つアカウント営業・エンタープライズ営業が十分育っていないのです。そのため、中途採用しても期待に応える営業を採用できないことが多いです。A社も期待に応えられる大企業向け営業経験者を採用できずに苦労していました。

私たちは、アカウント営業・エンタープライズ営業において、多くのノウハウを持っております。私たちは、大企業向け営業の営業スキルの強化研修やトレーニングだけではなく、成果に結びつけるための営業マネジメント方法や人事評価の構築も支援しております。

法人営業のパフォーマンスの向上は、計画的な対策を講じる必要があります。大企業向け営業(アカウント営業・エンタープライズ営業)の状態や営業パフォーマンスに満足していなければ、力を合わせて貴社のアカウント営業・エンタープライズ営業を強化しましょう。営業組織の業績・パフォーマンスが向上する支援をいたします。より具体的な内容説明の希望・質問・ご依頼は、下記からお問い合わせください。

(本ノートは、2020年2月14日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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