お客様にニーズを気づかせる営業能力の強化方法 ~ 多くの営業パーソンが受注を増やすために必須となる「顧客ニーズ」を商談で話していなかった!

多くの営業マネージャーも営業パーソンも、「『顧客ニーズに応える!』ということは営業活動を行う上で大切なことである」と考えています。私たちが営業力診断(営業力アセスメント)を行ったクライアント企業でも、「顧客ニーズに応える!」ということが会社内で話されていました。

ですが、営業パーソンたちが行っていたお客様との面談を分析すると、表面的な会話が多く、お客様のニーズを理解した上でお客様に役立つ提案ができている営業パーソンは少なかったのです。営業組織内では「顧客ニーズは大切」とよく言われています。ですが、なぜ、営業パーソンたちは、お客様との面談においてニーズの話が十分できていないのでしょうか。また、営業目標を達成するためにはどのようなニーズを把握する必要があるのでしょうか?

顧客ニーズを掴み、お客様へご提案ができている営業パーソンとできていない営業パーソンの差とはなにか、および、顧客ニーズに対して提案できる営業パーソンの育成方法について解説します。

多くの営業パーソンが受注を増やすために必須となる「顧客ニーズ」を商談で話していなかった!

「顧客ニーズは大切」とわかっているが、実は顧客との面談で話されていなかった!

多くの営業組織では「お客様のニーズに応える!」を大切にしているが…

私たちは、多くのクライアント企業の営業組織の業績改善/パフォーマンス向上の支援を行ってきました。私たちの今までの経験では、業績改善/パフォーマンス向上のために営業組織にとって必要な課題は、概ね下記の4つに分類できました。

◆ 案件数を増やす(たとえば、新規の商談開拓を加速する、など)
◆ 商談の受注確率を高める(たとえば、競合に対する勝率を高める、など)
◆ 商談の受注額をふやす(たとえば、特定のお客様の受注額をふやす、など)
◆ 商談の利益率を高める(たとえば、値引きを減らす、など)

それぞれの課題に応じて適切な対策をする必要がありますが、4つの課題全てに共通する対策は「お客様のニーズに応える能力(お客様にニーズを気づかせる能力)の強化」です。すなわち、「顧客ニーズに応える」ということは、営業組織において基礎中の基礎です。そのため、多くの営業組織では、「お客様のニーズに応える!」がスローガンのように語られていました。実際に、営業パーソンたちと話をすると「顧客ニーズを理解しないと!」という言葉をよく聞きました。

ですが、私たちが営業力診断(営業力アセスメント)を行いますと、営業パーソンたちは、お客様との面談において「お客様のニーズ」に関する情報をあまり扱っていないことが明らかになりました。実際に営業パーソンたちが行っているお客様との面談を分析しますと、以下の3つの問題が発生していました。

1. 営業パーソンは「自分はお客様のニーズを十分理解できている!」と思い込んでいた。
2. 営業パーソンは「お客様との面談を行う上で、必要な情報はなにか?」を理解していなかった。
3. 営業パーソンは「お客様との面談を行う上で、必要な情報の扱い方」を知らなかった。

営業力アセスメントからわかった各社営業パーソンの顧客面談の状況

「お客様のニーズに応える!」を大切にしている営業組織で、営業力アセスメントを実施!

私たちが営業力アセスメントを行ったIT企業A社と法人サービス企業B社は、「案件数が少ない」という営業課題に直面していました。両社のマネージャーは、「『顧客ニーズに応える』ということは営業パーソンにとって重要なことだ!」と考えていて、営業パーソンたちへ「お客様のニーズの理解するように!」と指示していました。営業パーソンたちも「お客様との面談では、いつもお客様のニーズを理解しようと努めている!」と話していました。

このようなA社とB社ですが、両社の営業パーソンたちのお客様との面談を分析しますと、下記のような結果でした。

この分析結果から、A社とB社の営業パーソンたちの顧客との面談には、下記の2つの問題があることがわかりました。

問題1. お客様の状況を聞くだけで、ニーズについては聞いていなかった
問題2. 一般的な紹介で終始し、お客様が必要性を感じる提案にまで至っていなかった

問題1. 営業パーソンたちは、お客様の状況を聞くだけで、ニーズについては聞いていなかった

お客様との面談の分析結果からわかるように、A社とB社の面談1回当たりの質問数は9回と26回でした。営業パーソンたちがお客様に質問をしていたことは主に下記のようなことでした。

◆ 仕事内容は?
◆ 社員の数は?
◆ 今使用している設備は?
◆ 今後の投資動向は?
◆ 予算は?
◆ なにか検討しているものはないか?
◆ このような商材は必要ないか?

これらの質問は、「お客様のニーズ」に関する質問ではなく、お客様の状況についての質問です。お客様のニーズを理解したいのであれば、本来は下記のような情報を扱う必要があります。

◆ お客様の困っていること
◆ お客様の課題

これらの情報を扱うことは大切なのですが、この「課題はなんですか?」「お困りごとはなんですか?」については、現在、困った事態が発生しています。最近の営業パーソンは、お客様との面談で「課題はなんですか?」「お困りごとはなんですか?」という質問をするようになりました。しかし、多くの営業パーソンがこれらの質問をするので、お客様は「またか!」と飽き飽きしている状況となってしまったのです。漠然と「課題はなんですか?」「お困りごとはなんですか?」という質問をしているだけでは、役に立たないのです。

営業パーソンたちは、「お客様のニーズ」のうち、このような「困っていること」「解決したいこと」について、お客様と十分に話ができる状態ではありませんでした。営業パーソンたちは、お客様の状況は聞いていますし、「課題はなんですか?」「お困りごとはなんですか?」と質問しています。ですから、「自分はお客様のニーズを十分理解できている!」と思い込んでいたのです。

問題2. 営業パーソンたちは、一般的な紹介で終始し、ご提案ができていなかった

この分析からわかるもう1つのことは、製品の説明/提案方法についてです。営業パーソンたちは、面談1回当たりの「商品やサービスの紹介/説明」は、それぞれ2.5回と4.5回でした。営業パーソンたちが行っていた「商品やサービスの紹介/説明」とは、下記のようなことです。

◆ こんな特徴です
◆ こんな機能です
◆ このように使うことができます(商品をお客様に見せながら)
◆ こんな事ができます

ですが、「提案」は、ほぼ0回でした。「提案」とは、上のような一般的な商品やサービスの紹介とは違います。提案とは、お客様のニーズを理解して、その上で、「お客様のそのニーズには、このようにすることで役立つことができます!」という表現で行われるものです。すなわち、「お客様のニーズを明らかにする」ことが「提案をする」ための前提条件となっています。

営業パーソンたちは、お客様に商品の紹介や說明をしていますが、紹介と說明を行うことで「自分はお客様へ提案できている」と思い込んでいたのです。

多くの営業パーソンは「顧客ニーズを理解している」「顧客に提案できている」気になっていた!

以上の2つの問題から、「多くの企業では『顧客ニーズに応える』ことがスローガンとなっており、営業パーソンもその大切さを認識している。しかし、多くの営業パーソンは、お客様との面談において必要な『顧客ニーズ情報』を扱っていない」ということが明らかになりました。

整理をしますと、お客様との面談で顧客ニーズを扱っていない営業パーソンは、下記の状態でした。

◆ お客様の状況ばかりを確認していた。(「仕事内容は?」「予算は?」というお客様の状況だけを確認し、「顧客ニーズ」を理解したつもりになっていた。)
◆ 「お客様の困っていること」「お客様の解決したいこと」を集める方法を知らなかった。(「課題はなんですか?」「お困りごとはなんですか?」と漠然と聞くだけで、結局は、聞くことができていなかった。それだけではなく、お客様をイライラさせていた。)
◆ 商品やサービスについては、一般的な商品の紹介や説明で終始していた。(しかし、自分では提案できているつもりでいた)。

顧客面談を進める上で必要な「顧客ニーズ」とは?

私たちは、エレクトロニクス企業のC社にも営業力診断(営業力アセスメント)を行いました。そのC社の営業パーソンの面談を分析しますと、下記の結果でした。

A社やB社と比較して、C社の分析結果には下記の違いがありました。

◆ 面談当たりの質問数が多い
◆ 面談当たりのニーズ情報の取得数が多い
◆ 面談当たりの提案件数が多い

C社の営業パーソンは、お客様との面談において、下記のような特徴がありました。

◆ ニーズに関わる情報には、お客様の業績/業務上の問題や課題が含まれていた。
◆ 商品やサービスの紹介や説明だけで終わるのではなく、相手の課題や問題点に合わせた提案ができていた。

補足になりますが、営業力診断の結果、C社はニーズに関する情報は扱えているのですが、競合に対する情報が不十分でした。そのため、C社の今後の成長のための課題は「競合対策の強化」と特定できました。C社は、その後、受注確率の向上を目指し、「競合対策の強化」を実施しました。

どのようにしたら「顧客ニーズ」がつかめるようになるのか?

C社は、以前、「顧客ニーズの把握」について組織的な強化を行っていました。実際にC社が行った組織的な強化は下記の手順で行いました。

1. お客様との面談状況のアセスメント
2. 必要な「顧客ニーズ」情報の定義
3. トレーニングの実施
4. 選抜チームによる「ゴールデンケース(理想となるケース)」の作成
5. 営業パーソンの評価基準の見直し
6. スキル定着に向けた継続的コーチング

上記のように、プロジェクト的に強化することで、営業パーソンたちの「顧客ニーズ把握力」を強化し、案件数を2倍へと増やすことができていました。そのため、より高度な営業課題である「競合対策力強化」を実施できる状況でした。

「研修を実施して後はマネージャー任せ」では、実際の現場でニーズが掴めるようにならない!

私たちは、製造業D社にも営業力診断(営業力アセスメント)を行いました。D社の営業課題は「営業マネジメント力強化」でした。D社の営業方法は、「小規模な企業を相手とした御用聞き営業」でした。ですが、売上が減少し続けており、より規模の大きい中堅/大企業へシフトする必要がありました。D社から依頼されたことは、中堅/大企業向け営業へシフトしていくための営業管理/マネジメント体制の問題点を明らかにすることと、今後の施策について報告することでした。

私たちが、この営業管理(営業マネジメント)の診断を行う前、D社は2年ほどかけて営業スキルの強化を実施していました。D社は、すでに「顧客ニーズ理解力強化研修(仮称、私たちのプログラムではなく他社営業教育会社の研修)」を実施し、その後、半年ごとに営業課長が営業パーソンの「顧客ニーズの理解力」を確認していました。その営業課長による確認はすでに3回行われており、「顧客ニーズの理解力」の点数は上昇していました。営業パーソンたちの「顧客ニーズの理解力」スキルは定着しているようでした。

しかし、私たちがD社の営業パーソンたちの商談を診断すると、下記の状況であることがわかりました。

◆ ニーズに関わる情報は、お客様の状況ばかりを確認していた。
◆ 商品やサービスについては、一般的な商品の紹介や説明で終始していた。

先ほど紹介したC社は、「顧客ニーズの理解」のスキルが定着できていたのに、D社では定着できていませんでした。

その理由は、D社ではC社が行ったように、組織的に行っていなかったからでした。D社では、「顧客ニーズ理解力強化研修(仮称)」を行った後、その研修効果の確認と対策の実施を営業マネージャー任せにしていました。その研修効果の確認内容を見せてもらいますと、「お仕事内容」「商材の購入頻度」「競合との取引量」などのお客様の状況に関わる情報も「ニーズ情報」として扱われていました。

これらの情報を集める必要はありますが、ニーズの情報という観点では、上述したとおり、これらとは違う情報も扱われなければいけません。ですが、営業課長たちは、「お仕事内容」「商材の購入頻度」「競合との取引量」の情報がつかめていれば「ニーズは理解できている」と判断し、高い点数を与えていました。すなわち、営業課長たちが「顧客ニーズ理解力強化研修(仮称)」の内容を十分に理解できていないために、本来の評価基準とは違う研修効果の確認を行っていました。そのため、研修後、案件数は若干増えていましたが、C社のように2倍まで増やすことができていませんでした。

インサイドセールスにも「顧客ニーズを理解する」能力が求められる

最近、「インサイドセールス(内部営業)」体制を導入している企業が増えています。「顧客ニーズを理解する」「顧客にニーズを気づかせる」というのは、外回りの営業(アウトサイドセールス)だけに必要なものではなく、インサイドセールスにも必要になりました。「顧客ニーズを理解する」「顧客にニーズを気づかせる」ことは、特にお客様との面談の早い段階で求められるスキルで、面談の早い段階で確実に実施するから商談の成約率を高めることができます。お客様との面談の初期段階は、インサイドセールスが担うようになっています。すなわち、インサイドセールがこの能力を発揮できるかどうかは商談のその後の成否に大きな影響を与えます。

「お客様に丁寧に対応する」「お客様の話を遮らない」「お客様の話をよく聞く」というヒューマンスキルだけではなく、「商談成約に必須となる情報を取り扱う」というロジカルスキルもインサイドセールスには求められています。インサイドセールス発祥の地・アメリカでは、インサイドセールスにもこのようなロジカルスキルを強化しています。

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顧客面談を進める上で必要な「顧客ニーズ」が営業課題解決の肝!

営業パーソンの「お客様のニーズに応える能力(お客様にニーズを気づかせる能力)」の強化は、業績改善/パフォーマンス向上のために営業組織が実施すべき多くの課題に必要となる対策です。営業パーソンの「お客様のニーズに応える能力(お客様にニーズを気づかせる能力)」の強化は、組織的に実施しなければ解決できない難しい課題の1つでもあります。下記のような手順に従い、組織として実施することが必要です。

1. お客様との面談状況のアセスメント
2. 必要な「顧客ニーズ」情報の定義
3. トレーニングの実施
4. 選抜チームによる「ゴールデンケース(理想となるケース)」の作成
5. 営業パーソンの評価基準の見直し
6. スキル定着に向けた継続的コーチング

以上の進め方からわかるように、まずは「現状の問題を認識してから始める」ことが鉄則です。問題点を具体的に把握し、次は、効果的な対策を検討し、それを遂行します。確実に営業課題を解決するために、弊社が提供している「営業力診断(営業力アセスメント)」で、具体的な問題点を明らかにすることから始めることをおすすめします。

私たちのクライアント企業には、「以前、営業力強化を実施したが、期待する結果が得られなかった企業」が多いです。私たちは、多くの営業組織の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウと経験があります。貴社と力を合わせて問題を発見し、その問題を解決します。貴社の営業力強化/営業業績の改善/向上は、私たちにお任せください。

(本ノートは、2019年1月8日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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