「お客様との関係構築力」を強化し、ライバル会社の営業に差をつけろ! ~ エンタープライズ営業(大企業向け営業)で競争優位を実現するための顧客関係構築に役立つ3つのスキル

営業のしくみが大きく変わり始めています。営業組織にも高い生産性が求められるようになり、「営業業務の分業化」が進んでいます。新規の問合せや金額の小さい案件は、インサイドセールスが担うようになりました。

そのため、フィールドセールス(外回りの営業パーソン)には、より高度な営業スキルが求められるようになりました。フィールドセールスの業務は、「『エンタープライズ』や『大手アカウント』と言われる大企業を対象にして高額な商材を販売する」という難度の高い業務が中心となりました。そんな中、ライバル会社に勝ち、高額受注ができるハイスペックな営業パーソンが存在しています。彼らは、ライバル会社の営業とは違う「お客様との関係構築ができるスキル(能力)」を持ち、そのことで「お客様との関係性」を競争優位として活用できています。

このノートでは、ライバル会社と高額商談を競い合っても確実に受注できる営業パーソンの「お客様との関係構築ができるスキル(能力)」の内容/重要性/強化方法について解説します。

エンタープライズ営業(大企業向け営業)で競争優位を実現するための顧客関係構築に役立つ3つのスキル

多くの営業には「仲の良いお客様」がいる!

私たちの営業力強化研修に参加した営業パーソンたちへ、「お客様の中に、みなさんの『支援者』はいましたか?」と問いかけることがあります。その問いかけに対して、多くの営業パーソンが「います!」と答えていました。そこで、次に「支援者とはどのような人ですか?」と聞くと、多くは下記のような回答でした。

◆ 長い付き合いのお客様
◆ 普段からよく会っているお客様
◆ 困っている時に助けたお客様
◆ 私たちの会社や製品を好きなお客様
◆ お酒やゴルフなどのお付き合いができているお客様

以上のように、多くの営業パーソンたちには「良い関係ができている仲の良いお客様」がいて、そのお客様を「支援者」と考えていました。

ですが、高額な受注ができ、成果を上げている営業パーソンは、他の多くの営業パーソンが考えている「仲の良いお客様」とは違う「支援者」がいるのです。本当に必要な「支援者」と「仲の良い人」は全く別なのです。

「仲の良い人」と「支援者」は全く違う!

多くの営業パーソンたちの「仲の良いお客様」は、営業パーソンが質問・相談すると以下のように対応してくれます。

◆ 営業パーソンの「重要視しているのはなんですか?」という質問に対して、「その案件は、xxxを重視しています。」と教えてくれる。
◆ 営業パーソンの「今後どう進めればいいですか?」という相談に対して、「まずは、ユーザーに会ってみてはどうですか?」と助言してくれる。
◆ 営業パーソンの「上司の方はどのようにお考えですか?」という質問に対して、「この数値の改善には相当こだわっています」と回答してくれる。

以上のように、営業パーソンの質問に答え、相談に助言してくれます。やはり「仲の良いお客様」というのはありがたい存在です。

多くの営業パーソンは「自分には仲の良いお客様はいる!」と言っています。どの営業パーソンにも「仲の良いお客様がいる!」ということは、その反面「仲の良いお客様がいる」ということはごく当たり前のことで、ライバル会社(競合会社)の営業パーソンに対する競争優位性ではないのです。

ライバル会社の営業パーソンに対して、競争優位となるのは「仲の良いお客様」ではなく、「支援者」の存在なのです。

先ほどもお伝えしたとおり、「仲の良いお客様」というのは営業パーソンたちが求めれば協力してくれます。ですが「主体的に私たちから買おう!」としているわけではありません。それに対して「支援者」は、「私たちの提案したソリューションやサービスを買おう!」と、お客様の社内で主体的に購入を進めようとするお客様のことです。

「仲の良いお客様」と「支援者」は、このように「主体的かどうか?」で決定的な違いがあります。そして、競合会社と競い合う商談では、営業パーソンに「支援者」がいるかどうかが「受注できるかどうか!」に決定的な影響を及ぼしています。

私たちの営業力強化トレーニングで、「支援者」に関する討議を行うと、誰が大きな結果を出せるハイスペックな営業パーソンとしての潜在能力や資質があるかどうかがわかります。

多くの営業パーソンは、支援者がお客様の社内で主体的に購入を進めようとする理由を「ちょうど自分の仕事に役立つものだから率先して購入しようとする」と捉えています。ですが、ハイスペックな営業へと成長できる資質のある営業パーソンは、「組織や自分の成長や課題解決について一緒に考えてくれたパートナーが提案してくれたものだから率先して購入しようとする」と捉えています。この認識の差は重要で、後者の解釈の意味を理解した上で営業活動を遂行できている人が、「ハイスペックな営業パーソン」として活躍し大きな成果を実現することができているのです。

営業パーソンにとって支援者はなぜ必要か?

なぜ、営業パーソンにとって支援者は必要なのでしょうか?

それは、複数の売り手の中から「購入する1社を決める!」意思決定の会議で、支援者が力を発揮してくれるからです。通常、法人企業が購入したり投資したりする際には、以下のような購買プロセスにもとづいて購入・投資します。

この購買プロセスからわかるように、お客様は1社だけを検討してそのまま購入することはほとんどありません。複数の会社の提案内容/導入効果/価格を比較検討して、最終的に購入する1社を決定します。この「最終的に購入する1社を決める意思決定」は、お客様の会議室の中で行われます。その会議室には、私たち営業パーソンが入ることができません。ですから、誰か1人でよいので「支援者」が必要なのです。営業パーソンが入ることができないその会議室の中で、「今回は○○○社から買いましょう!」と主体的に推してくれる「支援者」が必要なのです。

実際に、わたしたちがIT営業/メーカー営業/ソリューション営業をしていた時、「支援者」を作ることができた商談は、競合と争っている商談であっても確率高く受注できていました。ですが、時折、支援者がいても競合他社に負けてしまうこともありました。そのとき、競合他社が選ばれたことを一番悔しがっていたのはその支援者でした。その支援者は、「次の機会にはリベンジしましょう!」と自ら決意を込めて言ってくれていたのです。すなわち、1回目の商談は受注できなくとも、2回目以降の商談ではリベンジして受注することができていました。

「支援者がいない」ということは、「受注できるかどうかは運任せの状態」です。支援者を作る能力は、競合対策上、営業パーソンには必須スキルなのです。

支援者を作る3つのスキルとは?

支援者を作るために強化すべきスキルとは以下の3つです。

スキル1. 共感力(理解ではなく共感)
スキル2. 提案作成力(相手の思いを実現する提案の作成)
スキル3. 支援継続力(受注した後が鍵)

スキル1. 共感力(理解ではなく共感)

支援者を作る3つのスキルの1つ目は、「共感力」です。

一般的に「営業パーソンは、お客様の課題やニーズを理解しないといけない」と言われます。「お客様の課題やニーズを理解すること」は重要です。ですが、支援者になってもらうためには、お客様の抱えている問題や悩みを理解するだけでは不十分です。そのお客様の悩みや問題に対して、「『一緒に挑戦しましょう!』という共感の姿勢を表明するスキル」が重要です。

「XXさんのおっしゃるとおり、本当に問題ですね。それは解決しなければならないと私も思います。簡単ではないでしょうが、一緒に挑戦しましょう!」という言い回しがポイントです。このような言い回しをすると、お客様はその営業パーソンのことを「この人は私の仲間だ。私の考えの実現に協力して一緒に進んでくれるパートナーだ!」と感じます。

「課題やニーズを理解する」だけでは不十分です。「そのお客様の課題やニーズを共感し、一緒に進む姿勢を示すスキル」が、支援者を作るために必須となるスキルです。

スキル2. 提案作成力(相手の思いを実現する提案の作成)

支援者を作る3つのスキルの2つ目は、「提案書の準備」です。

多くの営業パーソンが作成する提案書は「営業が売り込みたいポイント」「営業の視点で、この商材がお客様にもたらす効果」などが書かれています。もちろん、私たちから買ってほしいわけですから、それは必要です。

ですが「支援者を作る」という観点では提案書作成にも工夫が必要です。お客様は、営業パーソンが立ち入ることができない会議室で、各社の提案書を比較して「どの会社から買うか?」を話し合います。そのため、営業パーソンが準備すべきは、支援者がその会議室内で「○○○社から買いましょうよ!」と主体的に推薦できることの助けとなる提案書です。支援者がそう言いやすい提案書を準備する必要があるのです。

そのためにも、提案書を作成する前には、提案書の構成や記載内容について事前に支援者と打合せを行い、支援者の意向を盛り込んだ提案書を作成することは必須です。

スキル3. 支援継続力(受注した後が鍵)

支援者を作る3つのスキルの最後は、「受注した後も支援者と一緒に挑戦する!」ことです。

すでに「支援者を作るための3つのスキル」を2つ紹介しましたが、「支援者を作ること」は簡単ではありません。これまでにお伝えした2つのスキルを発揮しても、まだお客様が支援者になっていないことも多いです。1回目の商談では支援者を作るまでには至りませんでしたが、2回目の商談では「そのお客様が支援者になっている」状態で始めたいものです。

そのためにも、「受注したらそれで終わり!」ではなく、営業パーソンは受注後もお客様と一緒に課題解決を行います。商談の最初の段階で「XXさんのおっしゃるとおり、それは本当に問題ですね。それは解決しなければならないと私も思います。簡単ではないでしょうが、一緒に挑戦しましょう!」と共感し約束したことを忘れず、最後まで一緒に挑戦することで、お客様は営業パーソンを信頼しはじめ、支援者へとなっていくのです。

「支援者を作る」能力を強化する効果的なアプローチ

「支援者を作る」スキルは、営業パーソンにとって高度なスキルです。ですので、簡単に身につくものではありません。そのためにも、新入社員や若手営業のうちから学習させることが大切です。まず、新入社員や若手営業には、「お客様の課題を理解できるスキル」を強化することから始めます。そして、次は、お客様への課題解決の提案書作成スキルを身に付けさせます。「支援者を作るスキル」は、これら2つができるようになっていることが前提で、それを体得した上でさらに高度なスキルとして強化することができます。

上記に説明した前提となる2つスキルは、私たちの下記のプログラムで学ぶことができます。

【法人営業研修】商談開拓スキル強化 TSメソッド ~ 「商談開拓技法」が営業パーソンの提案力を強化し、商談総額を2倍へ増やす!(Developing New Opportunities, TS-Method)


【法人営業研修】 課題別営業力強化プログラム ~ 営業目標達成に必須となる基本的な営業スキルを組み合わせて学習(Learning Effective Sales Skill Essence)

営業力強化セミナーのご紹介

『組織』と『個』の相互の成長に役立つ『営業力強化』などのセミナーを毎月開催しています。ぜひご参加ください。

【営業力強化セミナー】お客様との関係構築力強化 ~ ライバル会社の営業担当者よりも「良いお客様との関係」を構築する!

【営業力強化セミナー】ハイレベル・アプローチの基礎理論 ~ お客様とさらに大きな取引をするための必須条件は役職の高いハイレベルへの提案

【営業力強化セミナー】大手顧客との取引を拡大する戦略的なアプローチ手法 ~ 大手顧客へのアップセリングや新規高額ソリューションの受注を増やす

その他の営業力強化セミナー

営業力強化セミナーページ

営業パーソンを育成することが、ライバル会社に勝ち高額受注ができる必須条件

日本の営業は大きな転換点を迎えています。今までのように、フィールドセールス(外回りの営業パーソン)が何から何までを担うような状況ではなくなりました。営業パーソンは「『エンタープライズ』や『大手アカウント』と言われる大企業を対象にして高額な商材を販売する」という難度の高い業務を遂行できる能力が求められています。

そのような営業パーソンは、OJT(On The Job Training, 職場内訓練)だけでは育成できません。本質的な営業の理論を学び、その理論に沿って適切なトレーニングとコーチングを受けるからこそ、営業パーソンの業績(パフォーマンス)は向上するのです。

あなたの会社の営業パーソンは、「強力なライバル会社の営業と競い合い、高額な商材を受注できるスキル」を獲得できていますか。もし、できていなければ、私たちが営業パーソンを育成します。具体的な方法についてご提案しますのでお問い合わせください。

(本ノートは、2019年6月26日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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