強い営業組織の常識は、「プレイングマネージャー制度ではなく、マネジメント専任マネージャー制度」~ 営業組織の売上拡大/営業担当者一人あたりの生産性向上をめざすために、マネージャーの制度を変えよう!

日本の企業の営業マネージャーの多くが、プレイングマネージャーです。仕事柄、様々な営業組織を観察しましたが、プレイングマネージャー制度の営業組織の多くは、「営業担当者一人あたりの売上額が少ない」「営業組織としての売上が伸びていない」状況でした。

強い営業組織の常識は、「プレイングマネージャー制度」ではなく、「マネジメント専任マネージャー制度」です。マネジメント専任マネージャー制度にすることで、営業担当者一人あたりの売上を高め、そして、組織としての売上を拡大させることができます。

「プレイングマネージャー制度」から「マネジメント専任マネージャー制度」へ変えたある企業を例として、プレイングマネージャーの問題点とその企業が行った営業力の強化方法について解説します。

営業組織の売上拡大/営業担当者一人あたりの生産性向上をめざすために、マネージャーの制度を変えよう!

事業の拡大への投資をしたが、営業組織の業績は悪化してしまった

法人サービス企業A社は、プレイングマネージャー制度によって長らく営業組織を運営してきました。以前のA社の営業担当者の人数は40人で、売上は年間36億円ほどでした。すなわち、一人あたり9000万円の売上でした。

ある時期、A社が属する市場が伸びはじめたために、事業拡大を目指して新しい営業担当者を採用することにしました。その当時、市場は10%ほどの成長が期待できました。また、採用活動の結果、新たな営業担当者を4名採用できました。

ですが、4名増やしても、売上額は37億円へと1億円増やせただけでした。市場の期待成長率である10%とはかけ離れた結果で、さらには、営業担当者一人あたりの売上は約8400万円へと減ってしまいました。「人を増員する」という投資の効果を得ることができなかったのです。

新たな営業担当者を採用しても、彼らがすぐに結果をだしてくれるわけではありません。まずは、商品やその会社独自の営業方法を勉強し、営業の業務を担えるまでの時間が必要です。会社としては、採用した営業担当者に早く結果を出してもらいたいですが、結果を出すまでに時間がかかっていることも、特にプレイングマネージャー制度の営業組織の悩みの1つです。

その後、A社の市場が悪化しはじめ、ライバル会社との競争が激化しました。そのため、A社の売上は減少し始めたのです。ついに、A社は事業として利益が出せない状況へ陥ってしまいました。

当時のA社の営業担当執行役員は、マネージャーと営業担当者たちへ「何しろ売上を回復しろ!」「面談件数を増やせ!」「積極的にアプローチをしろ!」と言い続けました。ですが、業績を回復することには至らず、逆に幾人かの営業担当者が辞めてしまい、結果として営業組織としての売上はますます減少する状態になっていました。

営業組織の業績改善のために、プレイングマネージャー制度をやめた!

A社の経営層は、営業組織が売上減少を食い止めることができていないために、新しい営業執行役員Xさんを迎えることにしました。この新しい営業執行役員Xさんが営業力強化を遂行することで、4年後には営業担当者35名で40億円の売上へとV字回復を成し遂げました。このXさんが実施した営業力強化の1つが「プレイングマネージャー制度を廃止したこと」でした。

Xさんがプレイングマネージャー制度をやめることにした理由は、「営業担当者の能力不足」でした。昔と比べ、今は、販売業務が格段と難しくなっています。お客様への面談数を増やすだけでは、昔のようには売上が増えない時代です。その理由は、「ただ会いに来るだけの営業担当者など、お客様にとっては会う価値がない」からです。お客様に価値ある情報を提供できなければ、営業担当者はお客様に面会すらできない時代となったのです。

また、もし、お客様が面会してくれたとしても、ちょうどなにかを購入検討しているお客様はほとんどいません。仮に、お客様がなにかの購入を検討していても、さらに価格が安いものを検討していることが多いです(「ちょうど、○○○の購入を検討しているけど、安くしてくれれば、御社から買っても良いですよ」と言われるだけの商談です)。

A社にとって、このような状況を打破しなければ、営業組織の業績を改善することは不可能でした。

販売することが難しくなった現在において、プレイングマネージャー制度の営業組織は、営業担当者の営業力を十分に強化できていない状況です。プレイングマネージャー自身も、自分自身の売上目標を持っていますから、チームのメンバーを育てることよりも、自分自身の売上のための活動を優先します。

そのため、Xさんは、「自分で売って自分の目標を達成すること」よりも「メンバーを売れるようにして、チームの目標を達成すること」を、マネージャーの役割としたのです。それを実現するために行ったことが、プレイングマネージャー制度を廃止して、マネジメント専任マネージャー制度へと、マネージャーの役割を変えたことでした(私たちは、その営業マネージャーのマネジメント力の強化/営業担当者の営業スキルの強化/人事評価制度の見直しの支援をしました)。

プレイングマネージャー制度の営業組織の問題点

A社の事例からわかるように、プレイングマネージャー制度の営業組織は以下のような問題を抱えています。

◆ 営業担当者一人あたりの売上額が少ない(営業担当者一人あたりの売上を増やすことができない)
◆ 対策が、「何しろ売上を回復しろ!」「面談件数を増やせ!」「積極的にアプローチをしろ!」という指示だけとなり、効果的ではない(かつ、全員に一律の目標を課す)
◆ 営業担当者がやめてしまう
◆ 組織としての売上が伸びるかどうかは景気次第、もしくは、良い商品を扱えるかどうか次第
◆ 不景気となると、急激に売上が減る
◆ 規模の大きいお客様への販売が伸びない
◆ 以上の結果として、どうして営業担当者たちが売上目標を達成できないのか、どうして育たないのか、その理由がわからない

プレイングマネージャー制度の営業組織の一番の問題は「どうして営業担当者たちが売上目標を達成できないのか、どうして育たないのか、その理由がわからない」ことです。

一般的に、プレイングマネージャー制度の営業組織は、どのようなお客様にも使える営業トークを用意して、多くのお客様にコンタクトしていく営業方法を行っています(個人や小規模な企業へ幅広く販売していく営業方法です)。

ですので、プレイングマネージャーは「何しろ売上を回復しろ!」「面談件数を増やせ!」「積極的にアプローチをしろ!」と言う「量を増やす」指示が多くなります。ですが、それでも結果が出ないと「自分がリーダーなのだから、結局は自分が売ればいい!」と考えます。これでは、営業組織全体の業績が向上することなどありえないのです。

プレイングマネージャー制度をやめて、「強い営業組織を作る」ための手順

多くの営業組織の営業力強化の支援をしてきて明らかに言えることは、プレイングマネージャー制度の営業組織は、「営業組織のパフォーマンス(営業組織としての売上)も、営業担当者一人あたりのパフォーマンス(営業成績)も高くない」ということです。

マネジメント専任マネージャー制度の営業組織では、営業担当者たちはより大きな売上目標を担っています。営業組織全体の売上を本当に増やしたいのであれば、プレイングマネージャー制度を見直すべきです。プレイングマネージャー制度をやめて新しい営業体制を構築すれば、確実に営業組織全体の売上が増えます。このことは、営業担当者一人あたりの売上高の大きい「強い営業組織の常識」です。

プレイングマネージャー制度からマネジメント専任マネージャー制度への移行は、下記のプロセスで行います。実際、A社の営業執行役員Xさんも、以下のプロセスで行い、A社の売上をV字回復させました。

◆ マネージャーの職務と評価を見直す(マネジメント専任マネージャーの職務と評価を具体化する)
◆ 上記の職務と評価に沿った営業力強化計画を立案し、遂行する
◆ 上記の職務と評価に沿ったマネジメント力強化の計画を立案し、遂行する

インサイドセールスだけで営業を行っていても、売上は頭打ちになる!

BtoB企業(法人営業企業)であっても、今、多くの営業組織がインターネットを活用してプロダクトやサービスを販売しています。インターネットでのプロダクトやサービスの販売は、関心があるお客様からの問合せを獲得し、その関心があるお客様へ販売していくには効果的な方法です。そこでは、インサイドセールスがマーケティングオートメーションなどのITツールを利用して、インターネットでの販売を行っています。

このようなインターネットでの販売方法を通して売上を伸ばしてきた企業でも、次第に売上の伸び率の低下に直面します。このような企業には、サブスクリプションサービスやクラウドサービスと呼ばれるサービスを提供している企業も含まれます。

なぜ、売上の伸び率が悪くなってしまったかと言うと「熱心に購入を検討するスピード感のあるお客様」へは売り尽くしてしまったからです。今後、事業をさらに拡大していくためには、今まで取引があった企業よりも規模が大きい企業への販売を増やしていかなければなりません。ですが、このような規模の大きい企業は、インターネットを利用して決まりきった商品やサービスの紹介をしているだけでは、販売をすることができません。

規模の大きい企業がモノを買うためには複雑な承認プロセスがあり、そのお客様の要望や買い方に合わせて営業担当者が適切に対応できる能力が必要です。以前と比べて、販売という業務が難しくなっていますが、それに適切に対応できる能力を持つ営業担当者が必要なのです。

米国セールスフォース・ドットコム社などの大手クラウドサービス企業も、最初はインサイドセールスによる販売が主流でしたが、規模の大きな企業に売るために現在は営業組織を充実させています。それによって、マーケティングオートメーションやインサイドセールスだけの販売では実現できないような大きな売上を達成しています。

このインサイドセールスの部門は、一般的にプレイングマネージャーが多いです。その延長線上で、規模の大きい企業への販売を進めても、売上を拡大することができません。現在、このような企業から、インサイドセールスや新設したアウトサイドセールスの「営業力強化」や「営業コーチング」の依頼が増えています。

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もはや営業は、誰でもが結果を出せる時代ではなくなった!

プレイングマネージャー制度の営業組織だと、営業担当者一人あたりの売上額、ひいては、組織としての総売上額を増やすことができません。

日本の営業組織のほとんどは、プレイングマネージャー制度です。ですが、以上に解説したとおり、マネジメント専任マネージャー制度にすれば、営業担当者たちの営業能力をさらに強化することができ、その結果として、確実に営業担当者一人あたりの売上額を増やす事ができます。

営業という仕事は、もはや、誰でもが結果を出せる時代ではなくなりました。結果を出すためのスキルを学び、それを発揮できる一部の人だけが結果を出せる時代へと変わりました。営業組織としての売上を本当に増やしたければ、プレイングマネージャー制度を見直すべきです。

私たちは、多くの営業組織の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。プレイングマネージャーからマネジメント専任マネージャーへ移行するための十分なノウハウを持っています。その方法についてより具体的な内容説明の希望・質問・ご依頼は、下記からお問い合わせください。

(本ノートは、2021年7月26日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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