営業組織のパフォーマンスを向上させる「営業マネジメントの教科書」 ~ 組織と事業を大きく成長させるために「営業管理から営業マネジメント」へ、営業組織の業績改善&変革の実践方法

営業組織の業績(パフォーマンス)を向上させ、目標達成の確実性を高める営業力強化方法とは?

「営業組織を強化すること」は、企業のパフォーマンス(業績)を向上する強力な方法の1つです。営業組織の能力次第で企業の売上と営業利益率が変わるからです。その成功の鍵は「マネジメント」にあります。営業組織が「営業管理の状態」か「営業マネジメントの状態」かによって、その営業組織が生み出す業績が全く異なります。業績の良い企業では「営業マネジメント」の状態ですが、業績が芳しくない/伸びない企業は、単なる「営業管理」の状態です。

同じことのようですが、管理とマネジメントでは大きな違いがあり、成果や生産性は格段に違います。管理とマネジメントの間にどのような違いがあるのでしょうか? 私たちが営業力強化を支援したクライアント企業の事例を通して、「効果的な営業マネジメントとは何か?」及び「営業組織が継続して業績を向上させるために、どのような手順で営業マネジメントへの変革を行えばよいのか?」について解説します。

組織と事業を大きく成長させるために「営業管理から営業マネジメント」へ、営業組織の業績改善&変革の実践方法

あなたの会社は「営業マネジメント」ができていますか?

あなたの会社の営業組織の状態を、下記のチェック項目で確認してください。

□ 営業部方針や営業戦略が「目標を達成できる!」と感じるものになっていない。マネージャーの達成意欲が感じられない。
□ 新規のお客様が増えていない。
□ 既存のお客様との取引額が増えていない。お客様とあなたの会社双方の上層部同士の関係ができていない。
□ 営業プロセスが文書としてまとまっていない。営業プロセス上の達成度を数値で測定できるようになっていない。
□ SFA(Sales Force Automation)と呼ばれる営業支援ツールは導入しているが、営業組織の業績に上手く活用できていると思えない。
□ 社内業務の生産性を高めるための改善をしていない。
□ 目標管理制度(MBO)の目標が、営業個々の成長につながるものになっていない。
□ 仕事の進め方が属人的で営業の仕事内容や必要なスキルが文章としてまとまっていない。
□ 上司がメンバーを正しく評価できていると思えない。
□ 個々の営業が成長していると思えない、目標達成に向けて意欲的だと感じない。

チェックが3個以上なら要注意です。業績を改善できない「営業管理」になってしまっているかもしれません。しかし、心配はいりません。いまからでも「営業マネジメント」へ変化することで、確実に業績を向上することができます。

「マネジメント」は何のために必要なのか?

組織の状態を「管理の状態」から「マネジメントの状態」へ移行できると、下記のような効果を手に入れることができます。

(1) 時間/人/お金など、限られている資源を最大限に活用でき、組織の目標達成の可能性を高める!
(2) お客様に商品の価値を提案できる!
(3) お客様満足が向上する!
(4) 継続的に改善を続け、競合に対する優位性を強化できる!
(5) 目標達成に向けた個々の営業の能力(スキル)と意欲が高める!
(6) 次なるマネージャーとなる人材を開発できる!

「管理の状態」である組織は、「今期の数値目標の達成」という短期的かつ数値だけで管理する方法が行われています。「今期目標売上50億円」「面談件数一人200件」というものです。ですが「マネジメントの状態」の組織は、その「今期の数値目標の達成」という短期的な視点だけではなく、上述した(1)から(5)の視点も含まれたマネジメントを行っています。

これまで私たちがサポートしたクライアント企業では、管理からマネジメントへ移行することで下記のような成果を実現しました。

◆ 売上を二桁以上増加
◆ 既存顧客との関係を強化し、戦略的ターゲット顧客の売上が倍以上へ
◆ 新規の顧客開拓のマネジメントを改善し、赤字から黒字へと転換
◆ 進出した新規事業での取引を拡大

短期的な目標の達成のみに注力し、経験や勘に頼った営業を推し進める「営業管理」では、企業の成長は頭打ちになっています。競合に勝ち、成長を続ける企業になるためには、「営業マネジメント」への変化が必須なのです。

管理→マネジメントへの移行を阻むもの

管理からマネジメントへ移行するにあたって、多くの企業では下記の2つがその移行を邪魔しています。

(1) 「もうマネジメントができている!」という幻想
(2) 「社員が辞めてしまわないか?」という社員の反発の懸念

(1) 「もうマネジメントができている!」という幻想

「我が社は営業マネジメントの状態となっている!」と思い込んでいる企業は少なくありません。特に、SFAなどの営業支援ツールを導入している企業です。そのような企業では「営業支援ツールを利用して営業管理をしている = マネジメントができている」と思っています。

残念ながら、営業支援ツールを導入しただけではマネジメントができているとは言えません。営業支援ツールを導入しても、マネージャーがその蓄積されたデータを毎月の売上予測にしか使っていない場合は、いまだに営業管理の状態です。

営業支援ツールだけではなく、目標管理制度(MBO)についても同様です。目標管理制度(MBO)を実施していることで「マネジメントができている!」という幻想に陥っている営業組織もよく見受けられます。

(2) 「社員が辞めてしまわないか?」という社員の反発の懸念

「社員が反発するのではないか?」「社員が辞めてしまうのではないか?」という不安から、マネジメントへの移行を諦めてしまう企業もありました。

人は変化を嫌います。仕事のやり方が変わることに反発し、これから行われる変化に非協力的な社員は少なくありません。そのため、「マネジメントへの変化が必要だ!」と感じていても、「社員がやめてしまうと、当面の売上が下がってしまう!」という不安が先立ち、将来の成長に必要な対策を先送りします。

ですが、マネジメントへの移行は会社の将来のためだけではなく、社員の将来のためでもあります。「社員の未来も大切にしたい!」という思いで、恐れず挑戦する事が大切です。

業績が悪い営業組織によくみられる事例とは?

業績が低迷している企業の営業組織、または、長いこと売上が増えていない企業の営業組織とは、どのような状態でしょうか?

実際にそのような営業組織は下記の状態でした。

◆ 事例1. 指示しているだけであとは放任!
◆ 事例2. 目標管理制度(MBO)が機能していない
◆ 事例3. 毎年達成できない数値目標とスローガン

事例1. 指示しているだけであとは放任!

A社は、数年に渡り営業利益がマイナスの状態でした。A社の営業部門では、毎週1回、営業課長と営業が営業会議を行い、売上結果と今後の活動予定を確認していました。売上目標を達成できていない営業に対して、営業課長は「売上目標が未達成だが、今後どうするつもりだ?」と指導していました。それに対して、営業は「来週の面談件数を増やします!」と言っていました。

これは、多くの会社で起こっている「営業管理の状態」の一例です。目標達成できていないことを指摘し、相手に「どうするのだ!」と詰め寄っているだけなのです。「なぜ、売上目標を達成できないのか?」という根本的な原因を追求し、「その改善のために、具体的にどうすればよいか?」を検討するというマネジメントができていないのです。

結局の所、「目標に到達していない!」「自分で考えろ!」とだけ言い、後は相手任せ/放任している状態なのです。そして「考えない営業が問題なのだ!」という責任転嫁をしています。

事例2. 目標管理制度(MBO)が機能していない

B社は、人事制度として目標管理制度(MBO)を行っていました。目標管理制度とは、自分で目標を設定し、その目標達成に向けて自らの仕事ぶりを自分で評価し、その対策をしていくものです。営業一人ひとりの売上目標は会社から与えられますが、その売上目標を達成するための副次的な目標や活動計画は自分で考え、上司と合意をします。そして、上司であるマネージャーはその達成を支援する役割を担います。

ですが、B社のそれぞれの営業のMBOに書かれていたことは、会社から与えられた「今年の売上目標」「今年の面談目標」だけで、営業自らがその売上目標を達成するための副次的な目標や活動計画は書かれていませんでした。また、年初に営業がMBOを作ったあと、その年度が終わるまでマネージャーと営業の間でMBOの進捗度や達成度について話されることなく、期末に営業が数値として「達成できた!」「達成できなかった!」を報告して終わり、という状態になっていました。

このようなことはB社だけに限ったことではなく、他の多くの営業組織でも似たような状況でした。目標管理の本来の目的である「自分を自分で管理する」「マネージャーがメンバーの目標達成を支援する」という状況とは程遠く、実際は「営業任せの放任状態」となっています。

事例3. 毎年達成できない数値目標とスローガン

C社は、長い間売上を増加できていない状態でした。C社の営業部門トップの年度方針には、下記のようなことが書かれていました。

【20xx年度 数値目標】
◆ 売上目標: 40億円
◆ 面談件数: 月200件
◆ 新規開拓: 100件

【20xx年度 スローガン】
◆ 目標絶対達成
◆ どのようなものでも売れる営業力を身につける
◆ お客様の問題を解決し、お客様とともに感動する

売上が停滞しているために、この2~3年の【数値目標】は毎年「40億円」でした。これから迎える新年度に昨年とは違う結果を達成するためには、昨年とは違うことをしなければなりません。ですが【スローガン】にかかれていることは毎年ほぼ同じ内容でした。

以上のように、C社の営業組織も「営業管理」の状態でした。営業全員に行動数値目標を設定し、毎月その行動数値目標の達成度を確認し、目標を達成していない営業には、営業マネージャーから下記のような指示が行われていました。

◆ 「訪問件数が少ないから増やせ!」
◆ 「新規開拓が少ないから売上予算を達成できないのだ!」

また、営業マネージャーの営業方針には、下記のように「矛盾している」と感じる内容も書かれていました。

◆ 「新規のお客様への訪問を増やせ!」
◆ 「既存のお客様へコンタクトしろ!」

この2つは相反する内容であり、どちらか一方を重視するともう一方が軽視されてしまう要素です。そのため、営業たちはどちらを重視すべきかわからない状態で、最終的には新規も既存も目標達成できずに年度が終わっていました。

営業管理と営業マネジメント、それぞれの定義とは?

業績が低迷している多くの営業組織では、以上のような「営業管理」の状態でした。「営業管理」と「営業マネジメント」は似ていますが、この2つには決定的な違いがあります。

営業管理とはなにか?

数値目標が与えられ(もしくは、勘に基づいて数値目標が設定され)、その数値の達成度を定期的に確認する。そして、達成できていない営業には、「達成しろ!」「達成できるようにもっと考えて行動しろ!」と指示だけが行われる。

「営業管理」では、目標達成できない原因は、主に個々の営業の意欲/考え方/能力のせいだと考えています。目標達成するための行動は、「営業任せ」すなわち「放任」の状態です。業務上都度発生する問題に対しても、場当たり的な対処が指示され、根本的な問題解決が行われていません(多くの営業組織はルール化することで解決したつもりになっていますが、それは、業務を面倒で手間のかかる状態にしているだけでした)。すなわち、「営業管理」とは、主に「指示」「放任」もしくは「責任転嫁」の状態です。

このような営業組織では「御用聞き営業」のスタイルで営業が行われています。また、営業には量をこなすことを求められることが多いです。御用聞き営業とは、「なにか買うものがありませんか?」とお客様に確認して行う営業方法です。商談は「低価格」「短納期」「小ロット」で、それが他社に対する差別化要因となっており、社員一人あたりの売上も利益率も低い状態です。そのために、圧倒的な量をこなさなければ高い目標など達成できません。

マネージャーが社員を育成せず、社員に学ぶ機会が与えられず、そして、相当な行動量が求められるために、社員の離職率が高くなります。

営業マネジメントとはなにか?

営業組織のビジョンがあり、業務がモデルとして設計・デザインされ、目標と戦略が設定できるようになっている。その目標と戦略の達成度をモニタリングし、うまく行っていない目標と戦略には、対策が行われている。例えば、目標を達成することができていない営業がいたら、目標を達成できるように営業組織の仕組みとして支援する。成果を最大化するために最適な営業のモデル・プロセスなどの仕事のやり方を明確にし、必要に応じて見直す(改善)。そして、それに沿った管理項目を決定し(時折見直し改善し)、達成できていない営業がいる場合には、育成やコーチングを通して達成できるような指導や最適な配置転換を行なう。

「営業マネジメント」の組織は、営業管理の組織と比べると、社員一人あたりの売上高も利益率も高い状態です。営業管理と営業マネジメントは下記のように表すことができます。図からわかるように、営業管理とは営業マネジメントのほんの一部分でしかありません。

どうすれば「営業管理 → 営業マネジメント」へ進化できるか?

営業組織を強化し、パフォーマンスを向上するためには、「営業管理→営業マネジメント」の進化が必要です。それには下記のステップで行います。

Step1:業務モデルの設計(営業の仕組みやプロセスが見える化できているか?)
Step2:管理すべき項目と数値目標設定(管理すべき項目と数値が間違っていないか?)
Step3:育成支援(営業を育成する体制が整っているか?)
Step4:達成度が悪い場合の対策(発生している問題は? その対処は?)

Step1:業務モデルの設計

営業の業務は、一般的には下記の3つのプロセスが混在しています。

(1) 営業プロセス(お客様への提案や受注など)
(2) 社内業務プロセス(営業活動で生じる各種社内の書類作成や会計処理など)
(3) 目標設定と評価プロセス(PDCA)

この3つを統合的に組み立て、「見える化」できていることが、この「業務モデルの設計」のゴールです。そのゴールに到達できると、下記の状態を実現できます。

◆ 誰にでもできるようになる。
◆ 早く育成できる。
◆ 相互の誤解や理解不足などのコミュニケーションミスによるムダが減る。
◆ 適切に業務が行われているか、正しく確認できる。
◆ 効果の高い改善を合理的にできるようになる。

(1) 営業プロセス

営業活動とは、「お客様にコンタクトすることから始まり、お客様の要望を伺い、自社商品の価値や他社製品に対する優位性を説明し、ご注文を頂く」という一連の流れです。これを営業プロセス(もしくは、商談プロセス)と呼びます。

営業プロセスを見える化(図示)し、各ステップにどれだけの商談件数/金額があるかを常に測れるようにしておくと、営業組織の商談状況を俯瞰的に見ることができます。勘や経験に頼らず、科学的/論理的/計画的な営業を可能にする営業プロセスは、「管理→マネジメントへ」の変革において大変重要です(【参照】結果を出す営業組織の「営業プロセス管理の教科書」 ~ 営業組織のパフォーマンス(業績)を最大化する強力な方法が、営業プロセスでマネジメントすること!)。

また、「それぞれの商談を受注へと進めるために何をするか?」をガイドしてくれるのが営業プロセスです。これにより、営業組織は下記のような課題に対して具体的な対策を立案・遂行することができるようになります。 

◆ 新規の案件数の増加!
◆ 商談機会を具体的な商談へと進める!
◆ 競合に勝つ!
◆ 価値の高い提案を行い、取引額を増やすことができる!

すでに営業プロセスが定義されている営業組織においても、このプロセスをより効果的なものへ設計し直すことで、更にパフォーマンス(売上高や利益率などの業績)を向上することができます。

(2) 社内業務プロセス

お客様に対する営業活動と平行して、営業は、社内で下記のような各種業務を行います。

◆ 承認印をもらう
◆ 社内指示書を発行する
◆ 納品とともに納品書と請求書を送る
◆ レポート(報告書)作成
◆ 経費の精算 など

「社員一人あたりの売上額/利益額が少ない企業」の多くは、この社内業務プロセスに多くの時間が使われています。そうならないようにするためには、社内業務プロセスを見える化し、どの業務にどれだけ時間と工数が取られているかを測れるようにします。あまりにも手間や工数がかかっている社内業務があれば、営業マネージャーは、営業が新規顧客開拓や新規商談発見のための時間をより多く使えるように改善します。

例えば、営業マネージャーが営業へ「今よりも1.5倍お客様へ訪問しろ!」という指示を出すのであれば、営業がそのための時間を確保できるように、社内業務に使われる時間を減らす必要があるのです。

(3) 目標設定と評価プロセス(PDCA)

目標設定と評価プロセスとは、年間/四半期/月間/週間の目標設定とそれぞれの評価のプロセスのことで、一般的に「PDCA」として行われています。定期的に目標の達成度を見直し、達成度がよくない目標に対して対策を検討します。状況によっては目標数値自体を見直す必要もあります。この目標設定と評価プロセス(PDCA)も見える化(図示)し、営業組織が戦略的・合理的に業務の運営や課題の対処ができるようにしておく必要があります。

年間の目標設定と評価
年間の目標を設定するときには、まず、「前年度の目標の達成度とその理由や原因の考察 (“Review”もしくは“反省”と呼ばれるものです)」を行います。その後、以下を年間目標に盛り込みます。

◆ 今年の売上目標や利益目標
◆ 戦略的重点顧客や重点商品
◆ 重要なお客様別の売上目標と活動目標(面談件数など)
◆ 重要な商材別の売上目標と活動目標(提案件数など)

四半期もしくは月間の目標設定と評価
四半期という観点で大切なことは、対策の検討です。それぞれの年間目標の達成度を確認し、達成度が良くない目標に対しては、対策を実施する必要があります。次の3ヶ月の間に「どのような対策を実施するのか?」さらには「その対策として目標はなにか?」を決めます。

例えば、「戦略的重点顧客の新規案件が増えていない」という問題に直面していれば、「訪問件数をもっと増やせ!」という営業管理的な指示をするのではなく、「原因の特定」を行い、その対策案の検討をすることが必要です。例えば、「お客様への提案資料を増やす/提案資料の内容を改善する」などです。このように、四半期ごとに年間目標の達成度とその対策を検討することが大切です。

次に、毎月の目標設定で大切なことは、「今後3ヶ月間での売上見込(およびその商談状況)」です。これを管理している営業組織としていない営業組織では売上目標達成確率が格段に違います。

毎週の目標設定と評価
「どのお客様と面談するのか?」「どの商材を提案していくのか?」について、週ごとの面談目標を決めます。そして、週の終わりには、その達成度を評価します。

マネジメントとは、営業マネージャーだけの仕事ではない!?
年間/四半期/月間の目標設定とその達成度評価は、営業マネージャーだけの仕事ではありません。マネージャーは自ら率いるチームの目標設定とその達成度の評価をします。そして、営業は自らの仕事ぶり、すなわち、自身が設定した目標に対する達成度評価をします。マネジメントとは、営業マネージャーも営業も、どちらもおこなうべき仕事です。

また、営業の時から自分自身をマネジメントしておくことによって、マネージャーになった時に「管理」ではなく「マネジメント」ができるようになる基礎能力を築くことができます。そのためには、上述した3つのプロセスを見える化し、だれでも実施できるようにしておくことが重要です。

Step2:管理すべき項目と数値目標設定

「Step1:業務モデルの設計」を行った後は、目標達成に向けて下記の各種マネジメント方法を決定します。
(1) 目標管理
(2) 行動・面談管理
(3) 案件・商談管理
(4) 顧客とのリレーション管理

営業をマネジメントするためには、上記の分類に基づき管理する項目とそれぞれの目標を決め、定期的に達成度を確認し、確実に達成できるように指導・支援するマネジメントが求められます。

(1) 目標管理

売上や利益などの営業目標を設定し、その達成度を管理します。売上目標は通常「会社→営業部→個人」または「年→四半期→月」へとブレイクダウン(細分化)して設定されます。会社/部/個人、もしくは、年/四半期/月、それぞれの売上目標に対しての達成度を管理します。

目標設定をするときのポイントは、「ストレッチゴール」として設定することです。ストレッチゴールとは、「今までと同じやり方では達成できないような少し高い目標」です。ストレッチゴールとして設定した目標を達成するためには、営業が「少しでも受注単価を増やす商談の進め方」などの新しいスキルを学習する必要があります。営業マネージャーは、継続的にそのスキルの強化を支援することが重要です。それが営業を成長させ、ひいては、事業を成長させるのです。

ストレッチゴールの設定には注意点があります。あまりにも高すぎる数値目標だと、営業は最初から目標達成を諦めてしまいます。逆に簡単すぎる数値目標ですと、企業も営業個人も成長することができません。

ストレッチゴールがきまったら、定期的にそのストレッチゴールと現状の達成度の差(GAP)を確認します。そのGAPが大きい場合には、そのGAPを減らしていく対策を計画します(PDCAのPに相当)。その計画を実行し(PDCAのDに相当)、その実行結果を確認し(PDCAのCに相当)、さらなる改善策を実行します(PDCAのAに相当)。営業マネジメントでは、営業が行うPDCAの遂行を営業マネージャーが支援し、一緒にストレッチゴールの達成を目指します。

(2) 行動・面談管理

営業ごとの「毎月→毎週→毎日」の面談件数・面談先・面談目的を管理します。「お客様へたくさん面談しているかどうか?」だけではなく、「戦略的重点顧客や重点商品に対する面談を計画に盛り込み、その計画通りに行っているかどうか?」を定期的に確認します。

数値目標としては、毎月(もしくは毎週)の面談件数やお客様との面談時間、または、戦略的重点顧客や重点商品に関する面談件数や時間を目標とし、定期的にその達成度を確認します。

【管理項目の応用例】
◆ 商品の紹介活動に要した面談件数や面談時間
◆ 商談を具体化するために要した面談件数や面談時間
◆ 競合との差別化に要した面談件数や面談時間
◆ 納品やサポートなどに要した面談件数や面談時間
◆ 市場調査に要した面談件数や面談時間

上記のような管理項目で収集したデータは、前述した「Step1:業務モデルの設計/(1) 営業プロセス」に必要な営業スキルの強化対策や「Step1:業務モデルの設計/(2) 社内業務プロセス」の見直しや改善を行うかどうかを判断する基礎データとして活用することができます。

このような分析は、SFA(Sales Force Automation)という営業支援ツールを使うと効率的です。ただし、こうした営業支援ツールは、導入する前に「Step1:業務モデルの設計」と合致するようツールを設定しないと効果的に活用することができません。営業支援ツールは、その初期設定のまま使うのではなく、自社の営業モデルに合致ように設定しなおすことが大切です。

「営業の成績」と「営業の行動量/面談量」は基本的に比例関係です。そのため、営業の行動量/面談量のマネジメントは大切です。ですが「月200件面談しろ!」という全員一律の数値設定や大量の面談を行わせようとしても売上は増えません。扱っている商材やお客様によって適切な行動量/面談量は違います。自分たちにとって適切な行動量を見出すことが重要です。

(3) 案件・商談管理

組織目標の達成に向けて、現在の商談の量と金額、そして、それぞれの受注予定日を管理します。案件・商談管理の受注予定日や売上時期を予測するためには、営業プロセスか見える化(図示)できている必要があります(上述した「Step1:業務モデルの設計/(1) 営業プロセス」に相当します)。

数値目標として管理すべきことは以下です。
◆ お客様から問合せがあった、もしくは、営業からお客様へ紹介しようとしている商談件数/金額
◆ 予算獲得に向けて取り組んでいる商談件数/金額
◆ 競合との差別化に取り組んでいる商談件数/金額
◆ 今後3ヶ月間の受注予定件数/金額

上記の4つの達成度に問題がある場合には、営業スキルの強化などの対策を実施します。また、金額が大きな商談/重要顧客や重点顧客の商談/重点商品の商談は、「商談を受注へと進めるためにどのような行動が必要か?」をマネージャーと営業で一緒に検討し、営業が確実に受注できるようにするための支援、すなわち、営業マネジメントを行います。

(4) 顧客とのリレーション管理

関係を強化したいお客様の売上金額と面談件数を管理します。顧客とのリレーション管理については、事前に下記2つの観点を十分検討する必要があります。

1. 売上実績Top10など、取引の大きいお客様 → 更に貢献して取引額を増やす
2. 競合との取引額が大きいために、さらに大きな取引が見込まれるお客様 → 競合との取引額を奪っていく

このほかにも、「今年は取締役クラスの人と定期的に面談できる関係を構築する」などの戦略的な関係構築を目標とすることも大切です。重要なお客様と大きな取引関係を構築していくために、より上層部のお客様と面談できる関係を築く挑戦をします。

数値目標の設定で、思わぬ「副作用」がでてしまうことも!

「Step2:管理すべき項目と数値目標設定」で紹介しましたが、数値目標の設定には細心の注意が必要です。ある営業マネージャーは売上拡大のために、「新規商談の発見件数を2倍にする!」という数値目標を立てました。この数値目標を立てた理由は、「昨年は、売上目標を達成することができなかった。問題は営業たちの行動量が少ないことだ。新規案件の発見件数の目標を2倍にすれば、もっと営業は行動するようになる!」でした。ちなみに今年度の売上目標は、昨年度の売上実績に対して5%増加した金額でした。

一年間営業が頑張ったので、最終的には売上は前年度比3%増加できました。しかし、問題となったのは営業利益率でした。営業利益率は前年度比5%ほど下回ってしまったのです(売上は増えたが、利益が減ってしまった!)。

ある数値目標を極端に高めると、その副作用のために他の数値結果が下がってしまいます。そのために必要なことが、業務プロセスの改善や営業の育成などの「営業マネジメント」の要素です。営業マネジメントを行うことで、副作用による悪影響をなるべく少なくした上で、成果を高めることが可能となるのです。

Step3:育成支援

次は、「営業の育成」です。営業の育成には様々な育成項目があります。営業育成の代表的なものでも、以下の3つの分類があります。それぞれ、さらに詳細な育成要素を決定し、育成します。

(1) 行動・面談管理に関する育成
(2) 案件・商談管理に関する育成
(3) 顧客とのリレーション管理に関する育成

(1) 行動・面談管理に関する育成

「商品の紹介活動に要した面談件数や面談時間」「商談を具体化するために要した面談件数や面談時間」「競合との差別化に要した面談件数や面談時間」「納品やサポートなどに要した面談件数や面談時間」など、効果的な行動計画・面談計画のスキルを強化します。

【代表的な育成項目】
◆ 市場情報の収集
◆ 年間/月間の面談計画の営業目標計画力
◆ 目標達成に向けた対策力
◆ 新規顧客のアプローチ方法
◆ 新規商談の開拓スキル など

(2) 案件・商談管理に関する育成

商談の状況を正しく判断し、その商談を受注へとすすめるための商談スキルを強化します。

【代表的な育成項目】
◆ 営業プロセスの理解と活用方法
◆ 商品知識の学び方・活用の仕方
◆ 商談の成約率を高める「ニーズ」を掴む
◆ 競合対策の実施方法
◆ 顧客視点の提案・プレゼンテーションの行い方
◆ 値引き要求に対する対応策 など

(3) 顧客とのリレーション管理に関する育成

普段面談することができるお客様の担当者だけでなく、取締役や執行役員など、役職の高い人と商談を行なうためのハイレベルアプローチスキルを強化します。

【代表的な育成項目】
◆ 戦略的アカウントマネジメント
◆ 役職の高さの違いによるニーズの理解
◆ エグゼクティブアプローチ など

上記の通り、営業の育成は多岐にわたり、かつ、多くのことを行う必要があります。ですから、何から何まで時間とお金をかけて行なうことなどできません。勘に頼ることなく、把握した事象やデータに基づき、自社の年間目標や戦略に必要な育成に絞ることがポイントです。そのためにも「Step1:業務モデルの設計/(3) 目標設定と評価プロセス」にて、営業の育成についても事前に計画しておく必要があります。

Step4:達成度が悪い場合の対策

Step1~3で設定したそれぞれの管理項目の達成度が芳しくない場合には、以下の2つの対策が必要です。
(1) 個々の営業のスキルの向上
(2)「営業プロセス」「社内業務プロセス」「目標設定と評価プロセス」のさらなる見直し

(1) 個々の営業のスキルの向上

管理項目を達成できない原因について調査を行い、その原因を解決するために、営業に対してティーチングやコーチングを行います。その際、もし達成度が悪い営業が複数いる場合には集合研修を行うことを検討します。

集合研修は営業だけではなく、営業マネージャーも必ず受講させます。その理由は、営業が研修で学んだ内容を日常の業務の中で実践できているかを確認し、できるように指導するためです。営業だけを集合研修に参加させる営業組織も多いですが、それでは研修の効果を最大化することはできません。

(2)「営業プロセス」「社内業務プロセス」「目標設定と評価プロセス」の見直し

「Step1:業務モデルの設計」を見直す場合には、Step2以降の「管理すべき項目と数値目標設定」も合わせて見直すことを忘れてはいけません。見直す場合には、その見直しに対する新たな営業向け研修やトレーニングを実施します。

また、「Step1:業務モデルの設計」を見直す(改善)ことは、営業マネージャーが勝手に行ってはいけません。営業部門のトップに見直すことを報告し、組織として取り組むことが大切です。業務モデルを変更するということは、上記の通り、組織として「管理すべき項目と数値目標設定」も見直す必要があり、そのための研修やトレーニングを実施する必要があるからです。

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営業管理から営業マネジメントへ営業組織を進化させ、営業パフォーマンスを向上させよう!

今回紹介した「営業管理から営業マネジメントへの変革」は、営業力強化コンサルタントとして私たちが実際に支援した事例に基づいています。この営業変革を円滑に遂行するためには以下の4点が重要です。

◆ 経営者や事業トップが主導する
◆ プロジェクトとしてチームを編成して行う
◆ 営業マネージャー・営業にも関与を促し、それぞれの能力強化を盛り込んで行う
◆ 定期的に達成度を確認し、必要な調整を行い、立案した手順を遂行する

特に、「経営者や事業トップが主導する」ことと「マネージャーの能力強化」は、「営業マネジメントへの変革が成功するかどうか」を左右する重要な鍵です。

よく「良い営業が良いマネージャーになるわけではない」と言われます。営業マネージャーがマネジメントを行うためには「営業としてモノを売るスキル」以外の様々なマネジメントスキルが必要となります。たとえば、リーダーシップやマネジメント、目標管理制度(MBO)、プロセスマネジメント、コーチング、モチベーション、意思決定、問題解決などです。数字で物事を見ることができる能力、計画を持って進める能力、人を育てる能力も必要です。営業のマネジメントは、営業という仕事の延長線上でできるものではなりません。マネジメントについて学習しなければできるようにはなりません。このようなマネジメントスキル強化も営業変革の要素として取り組む必要があります。

また、ここで紹介した内容は「ジョブ型雇用制度の導入」や「営業マネージャーをプレイングマネージャー制度からマネージャー専任へ移行する」ことに活用できます。

「ジョブ型雇用制度ではない営業組織」や「プレイングマネージャー制度の営業組織」のほとんどが、営業一人あたりの売上や利益が低い状態です。この「ジョブ型雇用制度の導入」や「営業マネージャーをプレイングマネージャー制度からマネージャー専任へ移行する」ことは、営業組織のパフォーマンスを格段に高める効果的な解決策です。

営業管理の状態だけでは、企業の発展はありません。営業マネジメントこそが、企業も事業もマネージャーも営業も成長させます。ここで紹介した内容を活用すれば、「あなたの会社の営業組織が企業の成長を担う存在として力を発揮し、貴社の業績が継続的に大きく向上する」可能性を高めます。ぜひ、活用ください。また、具体的な内容説明の希望・質問・ご依頼は、下記からお問い合わせください。

(本ノートは、2017年10月27日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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