相手に決断と行動を促すビジネスプレゼンテーションは、どのように準備するか? ~ プレゼンを成功させるために必須となる3つのステップ

日本人は「プレゼンテーションが下手だ」とよくいわれますが、あなた、もしくは、あなたの部下はいかがでしょうか。

ビジネスプレゼンテーションは、仕事が成功するかどうかを左右する重要なスキルです。ビジネスプレゼンテーションを成功させるには「技術」が必要です。ここで紹介する手順通り準備を行えば、相手の決断を促すことができるでしょう。このノートでは、ビジネスプレゼンテーションを成功させるために必須となる3つのステップを解説します。

社員のビジネスプレゼンテーション能力を高め、仕事の成功を勝ち取るために、ぜひこのシンプルなビジネスプレゼンテーションをつくる手順を活用ください。

プレゼンを成功させるために必須となる3つのステップ

ビジネスプレゼンテーションの目的とは?

ビジネスプレゼンテーションを行う目的は何でしょうか?

ビジネスプレゼンテーションは、報告/相談/連絡ではありません。ビジネスプレゼンテーションの目的は、相手に承認や意思決定を促すことです。

ビジネスプレゼンテーションは「相手に承認や意思決定を促す」ために行うのですが、自分の考えを相手に伝えるだけでは、ビジネスプレゼンテーションを成功させることができません。ビジネスプレゼンテーションを成功させるために、以下の3つのステップで事前準備することが大切です。

1. ビジネスプレゼンテーションを成功させるために事前に明らかにすべき「3つの要素」
2. ストーリーを構築する
3. 本番で慌てないための対策(時間が足りない、想定外の質問に対するテクニック)

1. ビジネスプレゼンテーションを成功させるために事前に明らかにすべき「3つの要素」

ビジネスプレゼンテーションの目的は、相手に承認や意思決定を促すことです。そのために、まず以下の3つの要素を明らかにすることから始めます。

◆ 相手に何の承認/意思決定を促すのか?
◆ 相手にどのような価値をもたらすか?
◆ 相手にどのような行動を依頼するか?

相手に何の承認/意思決定を促すのか?

承認や意思決定とは、例えば下記のようなことです。

上司へのビジネスプレゼンテーションの「承認や意思決定」

当分の間、新製品販売への時間よりもお客様のフォローの時間を優先します。その承認をお願いします。

お客様へのビジネスプレゼンテーションの「承認や意思決定」

当社がこの度発売した新しいソリューションについて、本格的な導入検討を行うことを意思決定していただきたい。

ビジネスプレゼンテーションでは、相手への提案に「何を承認してほしいのか」「何を意思決定してほしいのか」を盛り込みます。具体的に「何を承認してほしいのか」「何を意思決定してほしいのか」を盛り込むからこそ、相手に承認や意思決定を促すことができるのです。

まずは、「なにを承認してほしいのか?」「なにを意思決定してほしいのか?」を明らかにすることが大切です。

相手にどのような価値をもたらすか?

ビジネスプレゼンテーションの目的は、以上のように、相手に承認や意思決定を促すことです。ですが、「その承認や意思決定をすると、相手にとってどのような価値(メリット)があるか?」が伴っていなければ、相手は承認や意思決定をしてくれることはないでしょう。ビジネスプレゼンテーションは、通常、上司やお客様に向けて行われることが多いですが、上司やお客様へのビジネスプレゼンテーションで考慮すべき「相手にもたらす価値(メリット)」とは、以下のようなことです。

◆ 売上が増える/利益が増える
◆ 株価が上がる/市場評価が上がる
◆ 業績指標がよくなる/コストが下がる
◆ 目標達成のリスクを低減できる

ビジネスプレゼンテーションは、報告/連絡/相談ではありません。ビジネスプレゼンテーションでは、「相手にどのような価値(メリット)があるのか」を明らかに伝えられなければなりません。

相手にどのような行動を依頼するか?

ビジネスプレゼンテーションによって提案したことを承認/意思決定してもらっても、その後、相手が行動してくれなければ、提案された側も提案した側も双方が価値やメリットを手にいれることはありません。双方が価値やメリットを手に入れるためには、承認/意思決定をしてもらうだけでは不十分で、双方が行動しなければなりません。そのため、ビジネスプレゼンテーションには、相手の承認や意思決定の後、「相手にどのような行動をしてもらう必要があるのか?」を明確に依頼することも大切です。「相手に行ってもらう行動」とは、以下のようなことです。

◆ 関連部署に今回の承認や意思決定について通知してほしい
◆ 購入するための予算・資金の準備をしてほしい
◆ 検討するためのチームや辞任を任命してほしい など

ビジネスプレゼンテーションを成功させるためには、以上で解説した3つの要素を明らかにすることが必須です。まず、この3つの要素を明らかにすることから始めます。

この3つの要素を明確にすることができたら、次に、ビジネスプレゼンテーションのストーリーを構成します。

2. ストーリーを構築する

以上の「事前に明らかにすべき3つの要素」の事前準備が完了したら、いよいよストーリー作りです。その際、ストーリー作りにおいて常に意識したいのが「結論を先に言う」です。

文章を書く時には、よく「起承転結を考えて書きなさい」と言われます。すなわち、物語などの文章では「結論は後」です。ですが、ビジネスプレゼンテーションは違います。ビジネスプレゼンテーションの基本は「結論を先に言う」です。

結論を先にいうべき5つの理由

なぜ、ビジネスプレゼンテーションでは、結論を先にいうべきなのでしょうか?

結論を先に言うことは、以下の効果があるからです。

1. 「相手の時間を奪わない/無駄にしない」というビジネスマナーや相手への配慮
2. ビジネスプレゼンテーションに対する相手の関心を引き付けておくことができる
3. 相手の関心を引き止めておくことで、ビジネスプレゼンテーションの採用確率を高める
4. 提案する側の能力を高く評価してもらうことができる
5. 「結論を先に言う」ことで、不採用でも相手はその理由を告げやすく、その不採用に対する対策がとりやすくなる

ビジネスプレゼンテーションを通して意思決定や行動を促したい相手は通常忙しい方々です。結論を示さずに長々と説明すると、相手の関心を失うばかりでなく「この人は仕事の能力が低い」と感じさせてしまいます。また、「話が長い!」と相手は必要以上にイライラしはじめます。

こうなると、後半に素晴らしい内容を伝えようとしていても最後まで聞いてもらえず、ビジネスプレゼンテーションは失敗に終わります。スピードが求められる現代では、「結論を先に言う」ことでお互いの時間を効率的にする必要があります(スピードばかりでは弊害を引き起こすことも確かですが、ある程度のスピード感は必要です)。

時折、ビジネスプレゼンテーションにおいても「結論を最後にいう」人もいますが、これは上級テクニックです。ビジネスプレゼンテーションに慣れていない段階では、基本に忠実に、「結論を先に言う」を心がけましょう。

ビジネスプレゼンテーションのストーリーはこれで完璧!

「結論を先に言う」ビジネスプレゼンテーションは、下記の流れで行います。

1. 結論
2. 結論を導き出したロジック
3. 価値(メリット)を伝え、承認/意思決定を得る
4. 承認/意思決定後の行動の合意

ビジネスプレゼンテーションを上記の流れで準備をすることで、冒頭で解説した「事前に明らかにすべき3つの要素」を明確に伝えるストーリーを作ることができます。いくつかの事例で確認しましょう。

「上司へのビジネスプレゼンテーション」 事例

事前に明らかにすべき3つの要素

【相手に何の承認/意思決定を促すのか?】
業務プロセス改善プロジェクト実施とシステムの改良の承認

【相手にどのような価値をもたらすか?】
業務プロセスを改善することで固定費を下げ、事業部の利益率を向上できる

【相手にどのような行動を依頼するか?】
関連各所への周知、プロジェクトキックオフへの参加、および、プロジェクト進行会議への出席

ビジネスプレゼンテーションのストーリー

【結論】
「事務処理センターの業務プロセス改善」が急務。「事務処理センターの業務プロセス改善」のプロジェクト実施の承認/意思決定をしていただきたい。

【結論を導き出したロジック】
1. 営業からの発注指示書のうち、毎月後半は業務時間内に処理できない件数が1日平均25%ほど発生している。そのため、月末になると残業が慢性化している。
2. この部署の一人当りの残業は、他部署と比べて多い。
3. システムに欠陥があり、ある入力項目で異常な手間がかかっていて、それが生産性を下げている。それは、全業務時間の15%もの時間を要している。
4. システムを改修し、業務プロセスを改善することで残業代を削減できる。
5. これによって、関連部署の人員の10%程度の削減と業務時間内未処理件数を5%以下に抑えることが見込まれる。

【価値(メリット)を伝え、承認/意思決定を得る】
以上の理由により、業務プロセスを改善することで固定費を下げ、事業部の利益率が向上します。業務プロセス改善プロジェクト実施とシステムの改良の承認をお願いします。

【承認/意思決定後の行動の合意】
承認後、このプロジェクトを円滑に遂行するために、下記の行動をお願いします。
◆ 関連各所への周知
◆ プロジェクトキックオフへ参加し、プロジェクトメンバーへ「期待」を伝える
◆ プロジェクト進行会議での進行上の助言

「お客様へのビジネスプレゼンテーション」 事例

事前に明らかにすべき3つの要素

【相手に何の承認/意思決定を促すのか?】
「インターネットを使ったマーケティングツール」を本格的に導入検討する

【相手にどのような価値をもたらすか?】
新規の案件開拓数を50%向上できる

【相手にどのような行動を依頼するか?】
導入に向けて、導入効果を共同で検討する。

ビジネスプレゼンテーションのストーリー

【結論】
新規案件をさらに増やすためには、「インターネットを使ったマーケティングツールが重要」。本格的な導入の検討をする意思決定をしてほしい。

【結論を導き出したロジック】
1. 市場調査によると、貴社の主要なお客様の購買行動は大きく変化しており、「インターネットで商品を探す」という比率が以前に比べ5倍の60%に到達している。
2. 弊社ツールを導入いただいた他社では、インターネット経由で案件開拓件数が前年度比50%を超えている。
3. 貴社の公表された売上から推定すると、10億円程度の新規売上を増やすことが見込まれる。

【価値(メリット)を伝え、承認/意思決定を得る】
以上の理由により、案件開拓数を50%向上できるため、インターネットを使ったマーケティングツールの導入の検討開始の意思決定をお願いします。

【承認/意思決定後の行動の合意】
意思決定の後、実際にこのツールを円滑に導入するために、下記の行動をお願いします。
◆ お客様の現在の新規開拓プロセスの観察
◆ 営業支援ツールの利用状況について情報開示
◆ 共同で分析するためのチーム編成

3. 本番で慌てないための対策(時間が足りない、想定外の質問に対するテクニック)

「事前に明らかにすべき3つの要素」と「ストーリー」が準備できたら、最後に、プレゼンテーション本番で慌てないようにするため、以下の対策を行っておきます。

◆ 緊急時に削除するスライドを決めておく
◆ 「So What?」「So Why?」の対処
◆ その他、回答の準備

緊急時に削除するスライドを決めておく

ビジネスプレゼンテーションは、当初想定していた時間配分で進まないことが多いです。例えば、「前半に話しすぎてしまった」「相手から質問があり、時間がとられてしまった」などです。そうなると、持ち時間が段々少なくなります。多くの人は焦ってしまい「用意したスライドを全て説明しよう!」と早口となり、もっとも訴えたいポイントを十分にアピールできなくなります。

これでは「相手の承認や意思決定を促す」「相手の行動を促す」というビジネスプレゼンテーションの目的を達成できないまま終わってしまいます。そのため、時間が足りなくなったことを想定して、「時間が足りなくなった時には使用しないスライド」を事前に決めておきましょう。

「So What?」「So Why?」への対処

ビジネスプレゼンテーションを行っている途中で、相手から「So What? (だから、なんだ?)」「So Why? (だから、なぜだ?)」と聞かれたらどうしますか?

このような想定外の質問で頭が真っ白になり、必要なことを伝えられなくなるケースも珍しくありません。これらの質問されてしまった場合の回答を事前に準備しておきましょう。

「So What?」は、ビジネスプレゼンテーションの結論がわかりにくいから聞かれる質問です。あなたのビジネスプレゼンテーションの目的や結論が明確でないために起こります。

「So Why?」は、ビジネスプレゼンテーションの結論を導き出したロジックの具体性や現実性がわかりにくいために聞かれる質問です。あなたのビジネスプレゼンテーションのロジックが明確でないために起こります。

以上のようにこの「So What?」「So Why?」という質問に対する回答を事前に準備しておくことはビジネスプレゼンテーションの基本中の基本です。ですが、その回答を準備しないままビジネスプレゼンテーションをしている人が多いです。この2つの質問に回答できないのであれば、本来はビジネスプレゼンテーションをしてはいけません。

なぜならば、あなたのビジネスプレゼンテーションは相手の承認や意思決定につながるストーリーとなっていないからです。

「So What?」「So Why?」という問いは、シンプルだからこそ本質を突きます。これらの問いは、あなたのビジネスプレゼンテーションのストーリーをブラッシュアップする鍵です。これらの問いの答えを考えることが、ビジネスプレゼンテーションの効果姓を格段と高めます。これが準備できていないビジネスプレゼンテーションの成功率は0%にかなり近いです。たとえうまくいっても、それはラッキーだっただけなのです。

その他の回答の準備

「So What?」「So Why?」以外にも、ビジネスプレゼンテーションで聞かれそうなことはないでしょうか?

事前に予想して回答を準備しておくことが大切です。ビジネスプレゼンテーションは時間が限られていることが多く、結論を導き出したロジックの多くを盛り込むことができません。質問されたらすぐに説明できるように、詳しい分析データや資料も準備しておきましょう。

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さあ、ビジネスプレゼンテーションを行おう!

あなたのビジネスプレゼンテーション能力、あなたの部下のビジネスプレゼンテーション能力は、組織の目標達成に十分役立つものでしょうか?

米国Apple社の故スティーブ・ジョブス氏やソフトバンクの孫社長は「プレゼンテーションが上手い」と言われています。この二人は、社内の社員に対しても、社外のお客様やメディアに対しても、毎週のようにプレゼンテーションをしています。あれだけたくさんのプレゼンテーションを行っていればうまくなるでしょう。

プレゼンテーションがうまくなるコツは、やはり量です。うまくなるためには数をこなさなければなりません。相手の心を動かすビジネスプレゼンテーションを上達させるには、今回紹介したこのシンプルな手順を活用して数をこなしてください。

マネージャーや営業パーソンのビジネスプレゼンテーション能力は、その人のパフォーマンス(業績)と比例関係です。日本の企業は、マネージャーと営業パーソンのビジネスプレゼンテーション能力を高める必要があります。

私たちは、多くのクライアント企業の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。私たちは、多くの会社の社員のビジネスプレゼンテーション能力を高める支援をしています。私たちが、あなたの会社の社員のビジネスプレゼンテーション能力を確実に高めます。より具体的な内容説明の希望/質問/ご依頼は、下記からお問い合わせください。

(本ノートは、2018年1月28日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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