コミュニケーションが悪いと損失が増える! ~ コミュニケーションの活性化に向けて経営者や経営幹部が実施すべき対策と6つの注意点

「円滑に事業を行うためには、コミュニケーションが欠かせない」と言われます。コミュニケーション不足は組織内に様々な停滞や問題を引き起こします。コミュニケーションが円滑であれば、組織が活性化し、生産性は向上します。

会社内で行われるコミュニケーションは、構造的に2つに分類することができます。横の関係のコミュニケーション(社員間のコミュニケーション)と縦の関係のコミュニケーション(上司と部下の間のコミュニケーション)です。今回着目するのは、縦の関係のコミュニケーションです。特に、経営者や経営幹部などのトップと社員の間のコミュニケーションの活性化についてです。

「組織内のコミュニケーション」は、経営課題の1つです。経営者や経営幹部と社員の縦の関係のコミュニケーションを促進するための対策と6つの注意点について解説します。

コミュニケーションの活性化に向けて経営者や経営幹部が実施すべき対策と6つの注意点

経営者や経営幹部と社員のコミュニケーションは必要か?

経営者や経営幹部と社員の間のコミュニケーションを活性化するメリットは少ない?

多くの企業に共通する課題の1つは「コミュニケーション」です。特に、業績が悪化している企業の経営者や経営幹部や社員にその原因を聞くと「コミュニケーション」がその原因としてあがることが多いです。

「社員間の横のコミュニケーションだけではなく、経営者や経営幹部と社員の間の縦のコミュニケーションは大切だ!」と多くの経営者や経営幹部たちは考えています。特に、大企業だと社員数も多くなり、社長から社員までの階層も増えますから、必然的に経営者や経営幹部たちが社員と活発なコミュニケーションをもつ機会は減ります。

そのため、多くの経営者や経営幹部は「少しでも社員とのコミュニケーションは増やしたい!」と考えています。ですが、その逆に「多忙のためにコミュニケーションの時間がとれない」「社員はコミュニケーションが必要だと感じていない」などの意見も聞きます。また「コミュニケーションは大切だとわかっているが、その対策を実施した効果は大きくなかった!」という経験をしている経営者や経営幹部は多いです。

組織におけるコミュニケーションの目的は?

なぜ、経営者や経営幹部は、社員とコミュニケーションをする必要があるのでしょうか?

コミュニケーションを行う主な目的には下記があります。

◆ ビジョンや目標の共有
◆ 問題の発見と課題の特定
◆ 相互の協力(チームワークの向上)
◆ モチベーション

すなわち、コミュニケーションを活性化することで「社員が組織の目的を理解し、目標達成に向けて率先して行動するようになり、より高い業績を達成する」ことが可能になるはずだからです。

コミュニケーションの改善は本当に効果があるのか?

では、本当にコミュニケーションの活性化の対策を行うと効果はあるのでしょうか?

多くの企業が「コミュニケーションの対策が必要」と考えていますが、その効果を把握することまでには至っていません。

PMI(Project Management Institute, Inc)の2013年度のレポートによると、「効果的なコミュニケーションがプロジェクトの成功率を高める」ことが報告されていました。PMIの調査では、プロジェクト規模10億ドルごとに1.35億ドルの費用が無駄になるリスクがあり、その1.35億ドルのうちの56%に相当する部分(すなわち7,500万ドル)は「コミュニケーションが効果的ではないことが原因である」と解説しています

このPMIのレポートからわかるように、コミュニケーションが悪いと損失が膨らむことが明らかです。コミュニケーションは、財務的にも対策を取るべき経営課題なのです。

効果的なコミュニケーションの対策を実施する!

コミュニケーションの一般的な対策とは?

多くの企業が行っている「コミュニケーションの対策」には、どのようなことがあるのでしょうか?

一般的に多くの企業が行っている「コミュニケーションの対策」には下記があります。

◆ 社内報
◆ レクリエーション(会食・飲み会・社内運動会など含む)
◆ アンケート(目安箱や意見箱など)
◆ 定期ミーティング(全社会議など)
◆ コミュニケーション研修
◆ SNSなどのツール

しかし、さきほども説明したとおり、多くの経営者や経営幹部は「このような対策を行っても効果やメリットは限定的だった」と感じています。では、どうすればよいのでしょうか?

経営者や経営幹部が取るべき対策とは?

組織内では様々なコミュニケーションが行われますが、それらは下記のように分類できます。

業務報告体系との関連性が高い業務報告体系との関連性が低い
定期的領域1
・全体会議(年初会議)
・進捗ミーティング
・通達
領域4
・社長と会食
・社内報
・レクリエーション
・従業員アンケート
不定期領域2
・電話
・メール
・SNS
領域3
・Management By Walking Around
・立ち話

この表から分かる通り、多くの企業が行っていたコミュニケーションの対策は、領域1と領域2と領域4です。ですが、以上で説明したとおり、これらを行っても、経営者や経営幹部たちはその効果を十分に感じることができていませんでした。

着目すべきは「業務報告体系との関連性が低い」かつ「不定期」の領域3のコミュニケーションです。業績の良い企業の経営者や経営幹部たちは、できるだけ現場に行き、現場の雰囲気を観察し、社員たちとコミュニケーションを行い、課題を特定するための情報を収集しています。すなわち、今まで行なわれていた領域1と領域2と領域4の施策だけではなく、この領域3と合わせて行うからこそ、効果的なコミュニケーションの対策ができ、事業の成長へと役立つようになるのです。

対策を実施する上での注意点

経営者や経営幹部がこの領域3のコミュニケーションを行うときには、以下の6つの点に注意する必要があります。

1. 経営者や経営幹部から声をかける

声をかけられるのを待っているのではなく、社員たちのいる場所へ出向いて行き、こちらから声をかけます。これは「MBWA(Management by Walking Around、マネジメント・バイ・ウォーキング・アラウンド)」と言われているマネジメント手法です。特に、成長率の高い企業のリーダーたちが行っているコミュニケーション手法です。

2. 「言う」ではなく「聞く」

経営者や経営幹部の考えや意見を伝えるのが目的ではなく、社員の考えを聞くことがポイントです。ですから、最初は「どお?」「調子いい?」など、普通の質問から初めて大丈夫です。最初は会話が続かないことも多いですが、社員たちも段々慣れてきます。まずは聞くことに徹して、相手が自然と業務に関する問題や懸念を言い始めることを待ちます。最初からいきなり業務の話をこちらから話すことは厳禁です。

3. クローズ質問ではなくオープン質問

質問をする際、「はい」「いいえ」で答えられることではなく、「オープンな質問」を心がけます。相手が自分の考えを言うことを促すためです。なにか相手が言ったら、更にストーリーとして話してもらうようにすることも重要です。「具体的には何があったの?」「もうすこし詳細に教えて!」など、相手の言ったことに関心を示し、相手にストーリーとして話してもらうようにします。

4. 業務の指示は部長や課長を通して行う

このコミュニケーションを行う目的は情報収集です。そのため、もし社員が「業務上の問題や不満」を言い出しても、その場で解決しようとしません。聞いたあと、その問題をその社員の直属の部長や課長に解決するよう指示します。その問題が解決できたかどうかを確認する必要はありますが、解決自身は、その社員と直属の上司で解決させる必要があります。経営者や経営幹部が自ら解決に動くことは避けます。

5. 全員平等でなくても良い

不定期に行うことなので、全員平等や均等に行うことはできません。話しかける相手は誰でも大丈夫です。同じ人ばかり続いてもあまり気にする必要はありません。長く続けていれば、統計的に考えて、全員と平均的に話ができるようになっているからです。

6. 一人に長い時間をかけなくても良い

無理に長い時間を掛ける必要はありません。2~3分のちょっとの時間で大丈夫です。それよりも、多くの回数を行うほうが効果的です。

以上のことを通して、経営者や経営幹部は、組織内にコミュニケーションの風土を醸成し、事業成長に向けた様々な情報を収集できるようにすることが大切です。

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組織内に、コミュニケーションの風土を作ろう!

組織内のコミュニケーションは、重要な経営課題の1つです。コミュニケーションが悪いと損失を増やします。コミュニケーションの課題は、社内のメンバーに「コミュニケーションの対策をとるように!」と指示するだけで解決できるものではありません。それと同時に、経営者や経営幹部が率先して領域3の不定期かつ業務報告体系との関連性が低いコミュニケーションを行うことが大切です。その両方を融合して実施することで、組織内のコミュニケーションが活性化できます。

経営者や経営幹部が行うべきコミュニケーション改善の第一歩は、「業務報告体系との関連性が低い」かつ「不定期(予定を立てずに実施)」に分類されたMBWAや立ち話です。そのさい、相手に話してもらうことが重要です。そうすれば、あなたの組織内のコミュニケーションが大きく変わり、良い風土が醸成され、事業の生産性は大幅に向上します。

私たちは、多くのクライアント企業の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウと経験があります。貴社と力を合わせてコミュニケーションに関する問題を発見し、その問題を解決します。より具体的な内容説明の希望/質問/ご依頼は、下記からお問い合わせください。

(本ノートは、2014年3月18日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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