営業組織が行っている「売上予測管理」が、営業目標の達成に役立っていない? ~ 売上目標を確実に達成するためにマネージャーが行うべき売上予測の管理方法

「売上予測管理」とは、営業一人ひとりに今後の売上見込を報告させる管理方法で、営業組織が必須で行わなければならない管理の1つです。

お客様へ高額な商材や専門的な知識が必要な商材を販売している営業組織では、この売上予測管理の方法を改善することで、営業社員のパフォーマンス(業績)をさらに向上することができます。私たちのクライアント企業でも、売上予測管理の方法を見直すことでパフォーマンス(業績)を向上することができました。売上予測管理の方法を改善すべきである営業組織は多く、この対策を行うことで営業パフォーマンス(業績)をまだまだ向上できます。

売上目標を確実に達成するために、「売上予測管理」をどのように改善するのか、その改善方法について解説します。

売上目標を確実に達成するためにマネージャーが行うべき売上予測の管理方法

売上予測管理が目標達成を妨げている?

売上予測管理とは、【表1】のように、今後の売上目標と売上見込を管理するものです。ほとんどの営業組織では、この売上予測管理を行っています。

多くの営業組織の「売上予測管理」を見ましたが、理想的な売上予測管理が行われていることは少ないです。ある企業K社の営業組織でも、この売上予測管理を行っていましたが、以下のような状態でした。

【営業課長KAさん】 来月(6月)は、200万円ほど目標に対して足りないな。他の案件でこの200万円の穴埋めができないか?

【営業社員KBさん】 他にはないですねぇ、7月も厳しいので。6月中に注文がもらえそうな新しい案件を探してみます。

【営業課長KAさん】 わかった。なんとか200万円分の案件を見つけて目標達成するように。

(そして月末…)

【営業課長KAさん】 結局、今月はいくら売れたんだ?

【営業社員KBさん】 最終的には1,500万円でした。

【営業課長KAさん】 「月初めには目標達成しろよ」って言っただろ、どうなっているんだ!

【営業社員KBさん】 ええ、それで、200万円積み増しできる案件を探すようにがんばったのですが。

多くの企業の売上予測管理では、K社のように、営業マネージャーが月初めに「売上目標」と「売上見込み」を確認して、「何しろ達成しろよ!」と指示する形で行われていました。ですが、確実に目標達成するためには、これだけでは不十分なのです。

本来は、そのGAPをなくすための対策を講じる必要があるのですが、それが行われていません。

売上予測管理と営業プロセス管理をしていても、目標達成への対策が効果的ではない?

L社の営業組織は、売上予測管理だけではなく営業プロセス管理も合わせて行っていました。営業プロセス管理を行っている営業組織は、SFA(Sales Force Automation)と呼ばれる営業支援ツールを導入している事が多いです。SFAを活用して、営業社員の行動量やそれぞれの商談の進捗度を管理しています。

SFAには、商談の進捗度を管理するための営業プロセスを設定することができます。SFAに初期設定されている一般的な営業プロセスは、「アポ取得」「電話営業」「ヒアリング」「提案書の提出」「見積書の提出」「デモ」「クロージング」「フォロー」という項目で、L社もそのSFAの初期設定で営業プロセスを管理していました。

L社のように、売上予測管理と営業プロセス管理を行っている営業組織でも、売上予測管理の改善が必要となっていることが多いです。実際に、L社は下記のような状態でした。

【営業課長LAさん】 来月(6月)は、200万円ほど目標に対して足りないな。他の案件でこの200万円の穴埋めができないか?

【営業社員LBさん】 他にはないですねぇ、7月も厳しいので。6月中に注文がもらえそうな新しい案件を探してみます。

【営業課長LAさん】 わかった。なんとか200万円分の案件を見つけて目標達成するように。

(そして月末…)

【営業課長LAさん】 結局、今月はいくら売れたんだ?

【営業社員LBさん】 最終的には1,500万円でした。

【営業課長LAさん】 月初めには目標達成できるって言っていただろ、どうなっているんだ!

【営業社員LBさん】 ええ、それで、200万円積み増しできる案件を探すようにがんばったのですが。

【営業課長LAさん】 (【表2】のデータを見て)確かに「アポ取得」「電話営業」はかなり頑張ったようだな。でも、これだけ活動をしているのに、なぜ新しい案件が見つからないんだ?

【営業社員LBさん】 そうですね、新しい案件を発見することに時間をかけたのですが、今月注文になる案件は見つかりませんでした。翌月以降に注文になりそうな案件はいくつかありましたけど。それより、デモやクロージングの活動にもっと時間を割いて確実に注文をもらうための活動が重要だったかもしれないと思っています。

以上の営業課長LAさんと営業社員LBさんとの間のコミュニケーションは、先程のK社の営業組織よりは具体的な原因の把握と対策の実施ができているように見えます。しかし、このL社でも、以下のように、目標を確実に達成するための対策の検討が十分ではありませんでした。

◆ 他の商談でカバーできるものがなかったのか?
◆ ないならば、どのお客様に訪問するのか?
◆ どの製品を重点的に紹介するのか?

実際のところ、このL社の営業課長LAさんと営業社員LBさんのコミュニケーションは、下記のことが問題でした。

◆ この状況で、営業社員LBさんが「アポの活動」に時間をかけることは、本当に効果的なのか? (1800万円の売上見込だったのに、1500万円が売上結果だった)
◆ 来月にデモやクロージングに時間をかけることは、本当に有効なのか? (7月の売上見込額は少ない)
◆ GAPを少なくするための対策は、効果的で十分なものか? (それぞれの案件の進捗や受注可能性ははっきりしていない)

多くの営業組織では、このような具体的な原因追求と対策の検討が十分ではなく、感覚的で効果が乏しい対策が繰り返されているのです。

目標達成に向けて、効果的な対策を行うための営業管理の方法とは?

では、売上目標を確実に達成するためには、どうしたらよいでしょうか?

売上目標を確実に達成できるようにするために、売上予測管理に必須で盛り込むべきことがあります。法人であるお客様は、消費者が行うような「衝動買い」ということはほとんどありません。基本的に、合理的な判断に基づき決済者の承認を得て購入します。通常、お客様は下記のようなプロセスで購入するかどうかを決定します。

(1) 予算の申請
(2) 予算の承認
(3) 競合との比較
(4) 価格を含む購買条件の交渉
(5) 発注

法人営業の営業活動とは、このようなお客様の購買の一連の流れ(購買プロセス)を先へ先へと進めるための活動です。なぜならば、お客様が購買プロセスを先へと進めてくれないと発注できないからです。

この購買プロセスの一連の流れの中で特に重要なポイントは、「予算が獲得できたかどうか?」です。予算がなければ、お客様はそもそも買うことはできません。すなわち、売上予測管理に必須で盛り込むべきこととは、「予算が獲得できたかどうか?」を確認することです。

売上予測管理をさらに進化させてGAP対策を行う!

法人営業の営業活動は、「お客様の購買プロセスを先へ先へと進める活動である」と説明しました。そのなかでも「予算が認められたかどうか?」が特に重要です。その観点を売上予測管理に反映させ、より効果的/戦略的な売上予測管理をする必要があります。効果的な売上予測管理をおこなうためには、【表3】のように、予算のある見込金額(予算確定)と予算がない見込金額(予算未確定)の2つに分けて管理をすることが重要です。

「予算確定」案件に対する対処方法

【表3】の売上予測管理の「予算確定」とは、「お客様は予算が獲得できていて、本格的な購入検討をしている状態」の商談です。この段階のお客様は、通常、「どこの会社のどの商品やサービスを買うか?」を比較検討しています。

先ほど紹介したL社の営業組織は売上予測管理と営業プロセス管理の両方を行っていて、営業課長と営業社員は、「予算確定」の商談について以下の確認をしていました。

◆ 提案書の提出をしたか?
◆ 見積書の提出をしたか?
◆ デモをしたか?
◆ クロージングをしたか?

ですが、目標達成の確実性を高めるために営業マネージャーと営業社員が行うべきことは、以上のような確認ではなく、以下のような対策の検討をすべきなのです。

◆ 競合より優位か?
◆ どうしたら競合より優位に進められるか?
◆ どうしたら競合に勝てるか?

お客様の購買プロセスにそって売上予測管理を行うことで、このような具体的かつ戦略的な対策が取れるようになり、その結果として、受注確率を高めることができるのです。

「予算未確定」案件に対する対処方法

【表3】売上予測管理の「予算未確定」とは、「お客様はまだ予算が取れてなくて、買うかどうか決まっていない状態」の商談です。お客様は「来月中にはほしい!」「来月中には必要です!」とは考えていますが、予算が確保できていないために、本当に来月発注してもらえるかどうかわかりません。

売上予測管理を「予算確定」と「予算未確定」に分類して管理すると、以下のように、営業課長と営業社員の対策の検討を格段に改善することができます。

【営業課長NAさん】 来月(6月)は、予算確定商談が1,500万円、予算未確定商談が300万円だな。

【営業社員NBさん】 ええ。売上目標に対して足りないので、何とか他の案件を獲得できないか、やってみます。

【営業課長NAさん】 そうだな。しかし、予算確定商談が1,500万円あるのは心強い。これらを確実に受注するための活動を優先し、成約率を高めよう。

【営業NBさん】 わかりました。しかし、新規の案件を開拓しないといけません。

【営業課長NAさん】 それはそうだ。しかし、70%の時間は、予算確定商談を確実にクローズする時間に使おう。そして、残りの30%の時間で、予算未確定商談を行おう。特に、予算未確定の商談が少ないから、最近購入いただいた既存顧客を中心に訪問してはどうか。たとえば、ABC社はどうだろうか?

(そして月末…)

【営業課長NAさん】 結局今月はいくら売れたんだ。

【営業社員NBさん】 最終的には1,700万円でした。予算確定商談から1,500万円、予算未確定商談からは200万円でした。

【営業課長NAさん】 そうか、予算確定商談は確実に受注できたな。それに、予算未確定商談からは200万円か。目標額に対して100万円足りなかったが、この分は来月以降に取り返そう。新たな予算未確定商談の増加はどうだ?

【営業社員NBさん】 来月は、新たな予算未確定の商談を発見する活動に時間をかける予定です。

【営業課長NAさん】 そうだな。少なくとも70%は活動時間が必要だ。ところで、ABC社はどうだった?

【営業社員NBさん】 ABC社は提案に関心を示してくれました。予算化は8月ごろのようです。あと、XYZ社でもABC社と同じような課題があったために、予算化まで進みそうです。

以上のように、「予算確定」と「予算未確定」を分けて売上予測管理を行うようにすると、営業マネージャーと営業社員との間で、目標達成に向けての具体的な対策を検討する状態へと変化させることができます。今、営業マネージャーと営業社員との間で行われるべきことは、このような具体的かつ戦略的な対策なのです。

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営業マネージャーと営業社員との間のコミュニケーションの実態を把握しよう

このノートで解説した通り、売上予測管理を見直すと営業組織の業績を改善することができます。そのために、まず行うべきは営業マネージャーと営業社員との間のコミュニケーションを確認することです。そのコミュニケーションの状態を把握し、具体的な問題点を特定してトレーニングなどの解決策を実施することが大切です。

私たちは、多くの営業組織の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウと経験があります。今回解説した内容をあなたの会社の中で実行してください。もし、それでも営業組織の業績が改善しなければ、連絡ください。貴社と力を合わせて解決すべき具体的な問題を発見し、その問題を解決します。私たちが保有する研修やコンサルティングを通して、問題を特定し、確実にパフォーマンス(業績)が向上するように支援します。

(本ノートは、2008年3月31日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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