チーム・組織を率いて業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を成功に導く技術 ~ リーダーやマネージャーとして「チームを率いて結果を出す仕事の技術」(4)

未来は自らの手で創る!

組織の中で、「チームを率いて高いパフォーマンスを達成し、大きな報酬や多くの魅力的なチャンスを得ているリーダーやマネージャーたち」を、私たちは「ハイパフォーマー」と呼んでいます。彼らは決まったことをこなすのではなく、「変化を創ること」を仕事と考えています。グローバル化が進み、競争がさらに激しくなる世界で、豊かな未来を創り出す力をもっているのは、彼らのような人材です。

ハイパフォーマーたちは「仕事の技術」を身に着け、チームを率いて実践し、ハイパフォーマンスを達成しています。この「仕事の技術」を学び実践すれば、あなたも彼らのようなハイパフォーマーとなれるでしょう。

ハイパフォーマーとして高い報酬や機会を手に入れるためには、組織やチームのパフォーマンスを改善・向上できる能力が必要です。パフォーマンスの改善/向上はプロジェクト的な活動であり、学習することで身につけられる技術です。

リーダーやマネージャーとして率いるチームのパフォーマンス向上を確実なものにする「業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)」の技術について解説します。

チーム・組織を率いて業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を成功に導く技術

ハイパフォーマーであるマネージャーに必須なスキルとは?

企業で行われるプロジェクトとは?

あなたの会社の中では、どのようなプロジェクトが行われていますか。多くの企業では、以下のような様々なプロジェクトが行われています。

◆ 新入社員を採用する
◆ 従業員を教育する
◆ webサイトを作る、改良する
◆ 展示会を開催する
◆ オフィスの引っ越し
◆ 戦略的なアカウントマネジメントを行なう
◆ 新製品を開発する
◆ 社内システムを導入する
◆ 業績を改善する(パフォーマンスを向上する)

会社の状況によって変わりますが、多くの場合、社員たちは日常業務の合間にこれらのプロジェクトを行います。マネージャーの役割は、そのような社員たちのプロジェクトが成功するように支援することです。

これらのプロジェクトの中で、マネージャーが自ら主導して行うべきプロジェクトが1つあります。それが「チームの業績を改善する(パフォーマンスを向上する)プロジェクト」です。チームの目標を達成し、事業を成長させるために、リーダーやマネージャーには業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を立案・遂行する必要があります。

業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)の定義

リーダーやマネージャーが自ら主導して実行する業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)は、その名の通り業績の改善(パフォーマンスの向上)を目指すものです。それに対して、上記の他のプロジェクトは、必ずしも、業績改善やパフォーマンス向上を目標としているものではありません。

業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)とそれ以外のプロジェクトは、下の図のような関係になっています。社員たちが行う「従業員を採用する」「社内システムを導入する」などのプロジェクトは、その業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)の一部のサブプロジェクト(タスク)として行われているものです。

リーダーやマネージャーは、この業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を自ら主導して計画し、遂行する必要があります。業績の改善(パフォーマンスの向上)をプロジェクトとして計画することなく、「数値目標を達成しろ!」「パフォーマンスをもっと高めろ!」と口で言っているだけでは、パフォーマンスを確実に向上させることなどできないからです。

まず、リーダーやマネージャーがこの業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を計画し、遂行します。そして、メンバーたちは、その業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)において「何を期待されているか?」「何を成し遂げるか?」「何をするか?」を正しく理解し、主体的にその副次的なサブプロジェクトを実行します。それによって、組織の目標達成やパフォーマンスの向上を目指すのです。

《 THINK ! 》 このノートは、あなたが事業部長/部長になったつもりで考えながら読み進めてください。ところどころ《 THINK ! 》の問いに答えながら、実際にあなた自身の業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を考えます。まず、最初の質問です。「あなたは部長です。あなた率いる部署の業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を実行します。目指すのは“10%以上の業績改善”です。では、何の業績数値を10%改善するかを決めてください。

パフォーマンス改善を実施するかどうかの決断

業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)は、上図のようにリーダーやマネージャーであるあなた自身の意思決定によってスタートします。その意思決定のためには、情報を集め、以下の3つで整理し、目標と現状のGAPを明らかにすることから始めます。

◆ ビジネスの目標(事業/業務の達成目標など) ← 一般的に、これが業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)の達成目標となる。
◆ ビジネスの状況(事業/業務の状況や達成度など)
◆ 「ビジネスの目標」と「ビジネスの状況」の差(ギャップ)

以上の3つで整理することで「業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を実行するかどうか」意思決定できるようになります。意思決定には、以下の3つの観点で考え、意思決定します。

Q1. 事業(業務)の目標は、経済成長率(市場成長率)よりも高い成長率か?
Q2. 事業(業務)の目標は、過去の成長率よりも高い成長率か?
Q3. ビジネスの現状/状況を踏まえると、事業(業務)の目標を達成することは困難か?

もし、どれか1つでも「Yes!」ならば、あなたは業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を実施する必要があります。知恵をしぼって努力しなければ目標を達成できないからです。

上記のすべてが「No!」であれば、業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を実行しなくても目標達成できます。なぜならば、今回目指す達成目標は、経済成長率(市場成長率)よりも低い成長率だからです。それに、過去の成長率よりも低いため、努力をしなくても目標を達成することができるでしょう。

ですが、リーダーやマネージャー、そして、組織が業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を実行できる能力が十分でなければ、事業(業務)の業績は景気の変動に大きく影響されます。景気が悪くなると一気に不安定になるリスクをはらんでいます。企業がそのように景気に左右されるリスクを限りなく少なくするためには、常日頃から業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を行い、組織の力を強化しておくことが大切です。

プロジェクトを立ち上げる!

業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)の実行を意思決定(決断)したら、次は、プロジェクトを立ち上げます。プロジェクトの立ち上げは、次の4つの手順で行います。

◆ チームを編成する
◆ 改善概要と改善ビジョンを作成する
◆ 全体スケジュールを立てる
◆ キックオフミーティングを行う

チームを編成する

業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)には、以下の「3つの役割」が存在し、それぞれが効果的に機能する必要があります。

◆ プロジェクトオーナー
◆ プロジェクトマネジメントチーム
◆ プロジェクト実行メンバー

プロジェクトオーナー

プロジェクトの実行を意思決定した人。プロジェクトの実行に必要な「ヒト/モノ/カネ」などの権限を持ち、プロジェクトの結果に責任を持つ。プロジェクトオーナーは、プロジェクトマネジメントチームのメンバーを選定する。

プロジェクトマネジメントチーム

プロジェクトオーナーの意思決定に基づき、業績改善(パフォーマンス向上)に向けて、プロジェクトの具体的な計画/遂行/管理を行う。プロジェクトマネジメントチームが、プロジェクト実行メンバーを選定する。選定したあと、プロジェクトオーナーに報告し、その承認を得る。

プロジェクト実行メンバー

プロジェクトの目標達成のために、必要な各種プロジェクトタスクを行う。

メンバーを選定する

プロジェクトマネジメントチーム、および、プロジェクト実行メンバーを選定する時には、下記の3つを考慮して選定します。

◆ 大きな業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)だとしても、プロジェクトマネジメントチームは最大7名までにする(3~5名がもっともよい)。
◆ できる限り「ベテランと若手」「業務スキルのある人とない人」を組み合わせることで、組織としての学習に繋げる。
◆ 成功の確実性を高めるために、外部のリソースを積極的に活用する。

成長率の低い組織は、3番目の「外部のリソースを積極的に活用する」ことをしていません。「自分たちだけでプロジェクトをやりきる」ことを前提としてプロジェクトを実施します。ですが、業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)は、「自分たちだけでやりきる」ことよりも、「確実に業績を改善する(パフォーマンスを向上する)」ことが優先されるべきです。そのためには「外部のリソースを活用すること」が鍵を握ります。目標を短期間で確実に達成するために強力な方法のひとつは「外部のリソースを活用する(プロフェッショナルを活用する)」なのです。

《 THINK ! 》部長のあなたが実行する「業績を10%向上するプロジェクト」のメンバーは誰にしますか。または、プロジェクトマネジメントチームのメンバーは誰でしょうか。

改善概要と改善ビジョン

チームの編成が終わったら、プロジェクトオーナー/プロジェクトマネジメントチーム/主要なプロジェクト実行メンバーで、「改善概要」と「改善ビジョン」の作成に取り掛かります。

改善概要

改善概要とは「なぜ、業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を実行しなければならないか?」を述べたものです。下記の6つの要素で検討し、それを文章としてまとめます。

◆ 【業界状況】組織やチームが存在している業界環境でなにが起こっており、なにが変化しており、そして、なにが重要になっているか(特に主要な競合の動き、あらたな競合の動きを考慮する)
◆ 【市場の要求】市場やお客様の要求にはどのような変化が起きているか
◆ 【内部状況】組織やチームの中は、なにが起こっており、なにが悪化しており、そして、なにが深刻な状況となっているか
◆ 【問題】なぜ、私たちは、期待されている業績や市場の要求を満たすことができないのか、私たちが直面している問題はなにか
◆ 【悪影響】問題を放置したとき、私たちに襲いかかる悪影響はなにか
◆ 【損失】改善しない時の損失はどのくらいか

改善ビジョン

改善ビジョンとは、「我々の理想の状態、実現しようとしているもの、目指しているものはなにか?」を述べたものです。下記の4つの要素を多角的に検討することで改善ビジョンが見えてきます。

◆ 私たちは、業界内でどのようなポジションを目指すのか、どのような評判を勝ち得るのか
◆ 業務やプロセスをどのような状態へ進化させるのか
◆ 改善したときの組織/チームが得られるメリットはなにか
◆ 長期的な推定財務効果は

時折、「業界トップになる」「顧客にもっと喜んでもらう」などの抽象的な改善ビジョンを見かけます。ですが、改善ビジョンは、もう少し具体的なイメージがわかるように表現すべきです。具体的にするためには、下記のようなことを考慮して表現します。

◆ 具体的に、どの市場/どのようなお客様を対象としているか、および、そこでは具体的にどのような状態になっているか?(【例】 通信業界の寡占状態の打破、保険業界の規制の突破、など)
◆ 具体的に、社内のどの業務領域を改善するのか?(【例】 営業強化なのか、マーケティング強化なのか、製品の品質向上なのか)

この「改善概要と改善ビジョン」は、業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)が成功するかどうかを大きく左右するものです。「改善概要と改善ビジョン」が合理性や必要性を感じるものだから、プロジェクト実行メンバーに目的や意義を与え、主体的に実行する意識を引き出すことができます。

この「改善概要と改善ビジョン」を明らかにすることは簡単ではありません。いきなりチームの意欲を引き出す力強い「改善概要と改善ビジョン」を描ける人はほとんどいません。何度も繰り返し書くことで、その能力を継続して高めることが大切です。

《 THINK ! 》あなたが部長として実行する「業績を10%向上するプロジェクト」の改善概要と改善ビジョンを文章として書いてみよう。

全体スケジュールを立てる

次は、業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)の全体スケジュールを立てます。ここで立てる全体スケジュールは大枠の予定表です。少なくとも下記の6つの日程を決定しておきます。

◆ 業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)はいつ始め、いつ終わらせるか?
◆ キックオフミーティングはいつ行うか?
◆ 現状把握はいつ始め、いつ終わらせるか?
◆ (詳細な)先行指標とスケジュールはいつまでに決定するか?
◆ 主要なプロジェクトタスクをいつ行うか?
◆ プロジェクトの最終報告はいつ行うか?

《 THINK ! 》あなたが部長として実行する「業績を10%向上するプロジェクト」の全体スケジュールを決定しよう!

キックオフミーティングを行う

全体スケジュールが決まったら、キックオフミーティングを開催します。キックオフミーティングは、プロジェクトに関わるメンバーが一堂に会し、これから始まるプロジェクトの意義を理解するためのイベントです。プロジェクトオーナーおよびプロジェクトマネジメントチームは、プロジェクト実行メンバーやプロジェクトに関連する人たちへ以下を説明します。
(キックオフミーティングの前に、プロジェクト実行メンバーを最終決定します)

(1) 会社や私たちが直面している問題は何か?
(2) 会社や私たちは何を目指しているか?
(3) それに向けて、この業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)で何を成し遂げようとしているのか?
(4) 私たちは、それぞれ何を期待されているか?(いつまでに、何を達成するか?)
(5) 私たちは、それぞれ何をすればいいか?(役割は何か?)

キックオフミーティングは「説明するために行う!」のではありません。キックオフミーティングに参加したプロジェクト実行メンバーやプロジェクトに関連する人たちが「上記5つのことを理解する!」ために行うものです。そのために、資料やスピーチ内容などを事前に準備してからキックオフミーティングを開催することが大切です。

(キックオフミーティングの事前準備は、キックオフミーティングを成功させることができなければ、プロジェクトを成功させることはできない! ~ 失敗事例を通して学ぶ、キックオフミーティングを成功させるための準備方法 で解説しています。)

《 THINK ! 》あなたが部長として実行する「業績を10%向上するプロジェクト」のキックオフミーティングの準備をしよう!

プロジェクトの具体的な検討

キックオフミーティングで業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)の概要を全員に共有したら、プロジェクトの具体的な計画立案を行います。その計画立案は以下の3つのステップで行います。

◆ 現状把握/原因分析
◆ 先行指標の設定
◆ WBS(Work Breakdown Structure)の作成

現状把握/原因分析

業績の改善(パフォーマンスの向上)を確実に成功させるためには、現状の把握と原因の分析が欠かせません。下記の2つを行うことで、具体的な現状把握と原因分析をします。

(1) プロセスの可視化
(2) プロセスの測定

(1) プロセスの可視化

業績を改善する(パフォーマンスを向上する)ためには、今までとは違うことができるようになる必要があります。そのためは、まず「今、行われている業務はどのような状態か?」、すなわち、現状を明らかにすることが大切です。下図のように現状の業務をプロセスで図示します(プロセスの可視化)。

(「プロセスの可視化」については、チームで結果を出すためのマネジメントスキル「仕事の仕組み化」 ~ リーダーやマネージャーとして「チームを率いて結果を出す仕事の技術」(3) で解説しています)

(2) プロセスの測定

現状の業務をプロセスとして可視化したら、次は、その業務の中で「業績に最も影響を及ぼしている要因」を特定します。プロセスの各要素のデータを収集すれば、その要因を特定することができます。その際、そのデータの収集で活用できるのが「QC 7つ道具」です。

(「QC 7つ道具」は、書籍でもインターネット上でもたくさん紹介されています。ぜひ、書籍やインターネットで学んでください)

探している「業績に最も影響を及ぼしている要因」は、プロセスの下記の場所で発生していることが多いです。このような場所の対策を取ることで、業績の改善(パフォーマンスの向上)を目指します。

◆ 時間がかかっている所
◆ 作業量が多い所
◆ チェックやルールが多い所
◆ 「上に戻る(業務の前工程に戻る)」が多い所

先行指標の設定

「業績に最も影響を及ぼしている要因」を特定したら、業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)の目標を達成できるかどうかを事前に予測できる「先行指標」を設定します。

今回の業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)の達成目標が「業務生産性を10%向上する」というものだったとします。その場合の「先行指標」とは以下のようなものです。

◆ 若手社員などの一人あたりの最低処理件数を20%向上
◆ 現在の業務プロセスの自動化を行い、10工程から7工程に削減する
◆ 上司承認に要する時間を50%削減
◆ 新入社員の立ち上げ期間を3ヶ月へ短縮
◆ バックアップ体制を整備し、有給取得率の10%向上

以上のような「先行指標」を決めたら、「先行指標の数値が改善したら、本当に、業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)の達成目標の数値が改善できるか?」を再確認します。もし、これらの先行指標を改善しても、プロジェクトの達成目標の数値が変わらないのであれば、その先行指標は必要ないかもしれません。基本的には、達成目標の数値に直接影響する先行指標に変化を及ぼすタスクを実行すべきなのです。

WBS(Work Breakdown Structure)の作成

先行指標を決めたら、次は、その先行指標を達成するための具体的なタスクを検討します。その際に活用するのがWBS(Work Breakdown Structure)です。
プロジェクトを立ち上げた時、すでに大枠の全体スケジュールを決めています。このWBSは、当初計画された大枠のスケジュールを「より詳細な作業(タスク)へと分解したもの」です。このWBSを作成する時に重要なことは、それぞれのプロジェクト実行メンバーが、以下のことを認識できるようにすることです。

◆ (期限)いつまでに何を達成する必要があるのか?
◆ (タスク)何をする必要があるのか?
◆ (担当者)誰が担当するのか?

良いWBSには、「教育や学習」や「プロジェクトメンバー間の報告」などのプロジェクトを円滑に遂行するためのタスクも盛り込まれています。それによって、「プロジェクト実行メンバーが、割り振られた作業を実施する」だけの状態から、「チームでコミュニケーションし、全体の進捗状況を共有し、全員で対策を検討して実施する」状態へと促します。

《 THINK ! 》あなたが部長として実行する「業績を10%向上するプロジェクト」の先行指標を2,3個、そして、その先行指標を変化させるためのタスクをそれぞれ2,3個考えてみよう。

プロジェクトの遂行

計画が完成し、ついに業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を実行する段階になりました。その際、意識しておくべきことがあります。それは「テストラン」です。

テストランとは、組織全体に導入する前に限定された領域で試験的に実施して、「立案した施策がうまくいくかどうか?」「計画した施策が本当に成果を生み出すか?」を検証することです(「パイロットプログラム」とも言われます)。もし、テストランで結果が得られないのであれば、施策を見直す必要があります。そして、見直した上でもう一度テストランを行います。

多くの企業では、テストランを行うことなく、「全員一斉に実施しろ!」という掛け声のもと、全体/全員で実施していることを見かけます。ですが、ハイパフォーマーを目指すあなたはそんなことをしてはいけません。「やってみれば失敗しても学習になる!」という前向きなとらえ方もありますが、それは合理的なものではありません。結果が出ないだけではなく、チームを混乱させるだけです。その計画が効果のないものだった場合、全体で実施してしまったら莫大な浪費にもなります。プロジェクトを成功させるためには慎重さも必要です。まず一部の部署で短い時間でテストランを行い、効果を把握してから全体へ展開することが大切なのです。

テストランが上手く行ったら、初めて本格稼働に入ります(全体展開に入ります)。

プロジェクトを終了する!

業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)は、最後に下記の3つを行ってからプロジェクトを終了します。

◆ ドキュメントの作成
◆ モニタリングの準備
◆ 最終報告

ドキュメントの作成

業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を行うことで、新しい業務へと変化しました。その新しい業務を誰でもができるように(たとえば、新入社員がすぐにでも業務を担えるように)、新しい業務マニュアルを作成します。

モニタリングの準備

モニタリングとは、「人間が直接『見る』ことのできない現象/事象/関係性を「見る」ことのできるモノ(データ)にし、新しい業務/オペレーションが円滑に実行され、期待どおりに維持できているかを監視すること、または、その仕組み」のことです。

業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)の効果が持続できているかどうかを継続的に定期観測する「モニタリング」の仕組みを整えます。モニタリングにより、「改善効果がなくなり、業績が向上していない」ことがわかれば、次なる改善を試みる必要があります。

最終報告

業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)終了後は、必ずその結果を最終報告書として残します。今まで検討してきた「プロジェクトの立ち上げ」「プロジェクトの具体的な検討」「プロジェクトの遂行」の要点、そして、プロジェクトの「評価/今後の展開/反省」をまとめます。

私たちは、以下の内容を最終報告に盛り込むことを推奨しています。

◆ 業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)の最終結果
◆ 先行指標の達成度
◆ 顧客満足/市場への貢献の成果/業務モデルや業務プロセスの効果/社員の意欲への効果
◆ 反省(良かったこと、更にすべきこと)
◆ さらなる改善への提言

以上のように、プロジェクトを開始したときに見定めた目的や目標が達成できたかどうかを最終報告書に盛り込みます。プロジェクトが終了した時点でその達成度を振り返り、その学習を通して、次はさらに効果的なプロジェクトを遂行できるようにします。

プロジェクトを成功に導くための注意点

プロジェクトが失敗する要因

過去を振り返ってみると、あなたにも失敗したプロジェクトがあったのではないでしょうか。プロジェクトが失敗してしまう要因は下記です。

◆ プロジェクトの初期段階で「目に見える結果」を出せていない
◆ 問題を複雑化して捉える
◆ 優先順位付けができていない
◆ 従来の管理項目にとらわれている
◆ 日常業務や他のプロジェクトとの関係性を無視して進められる
◆ 顧客満足/お客様の声が欠落している
◆ 部下の声が欠落している
◆ 上司が、意思(改善概要/改善ビジョンなど)を伝えていない
◆ プロジェクトメンバーに期待されていること/貢献すべきこと/必要なOutputが不明確
◆ 過度に、習慣/経験/ルールにとらわれている
◆ 毎回、同じ顔ぶれで行われる

以上の「プロジェクトが失敗してしまった要因」は、業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)だけではなく、一般的なプロジェクトにも共通するものです。プロジェクトオーナー、もしくは、プロジェクトマネジメントチームの一員を担うあなたは、上記のような「プロジェクトが失敗する要因」を事前に認識して、業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を確実な成功へ導かなければなりません。そのためにも、以下に紹介する「プロジェクトを成功に導く9か条」をチェックしながら実行してください。

プロジェクトを成功に導く9か条!

プロジェクトを成功に導くためには、下記の「プロジェクトを成功に導く9か条」を踏まえた上で実行することが大切です。これらはこのノートで紹介している内容をまとめたものですが、これらを認識し、時折確認しながら進めることで、あなたが実行する業績改善プロジェクト(パフォーマンス向上プロジェクト)を成功に導くことができます。

1. 上位マネジメントのビジョン/目標/期待を理解し、事前に、上位マネジメントとプロジェクトの達成目標を合意する。
2. 組織風土/日常業務との関係/プロジェクト遂行のための資源/人事的な要因などの丁寧な検討・対処をする。
3. 短い期間でのテストラン(パイロットプログラム)を行ってから全体展開する。
4. プロジェクト終了後に、効果が持続できているかを定期的に観察する。
5. プロジェクトを遂行するメンバーのスキルの強化も考慮する。
6. 「外部の協力を仰ぐ」「購入する」などの投資も積極的に検討する。
7. 組織のあり方そのものを一変させることも目指す。
8. 組織全体に渡るプロジェクトの責任体制/マネジメント体制を徹底する。
9. 双方向のコミュニケーションを行ないながら、プロジェクトを遂行する。

この中で、これからプロジェクトを実行する人に特に意識いただきたいことが、「双方向のコミュニケーションを行ないながら、プロジェクトを遂行する」です。立ち上げから終了に至る工程において、プロジェクトに携わる人達と継続してコミュニケーションをとることがプロジェクトの成功に欠かせません。そのために、前述したWBS(Work Breakdown Structure)に、「プロジェクトメンバー間の報告やコミュニケーション」を1つの作業項目として盛り込んでいるのです。

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(本ノートは、2018年6月17日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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