営業担当者の効果的な案件創出コミュニケーションとは、どのようなものか? ~ 「プロセス思考」を強化することが結果を出す営業担当者を育成する鍵!

多くの企業で行われている営業担当者の評価は、「売上目標に対する達成度」です。営業担当者にとって、売上目標を認識し、その目標を達成することは大切です。

しかし、数値ばかりを重視した管理を行うことで、「営業担当者が十分に育っていない」「営業担当者が力を発揮できていない」という状況に陥っている企業も多いです。実は、数値ばかりを重視した管理を行うと、逆に「目標達成できない」「売上が前年と比べて減ってしまった」という状況に陥る可能性を高めてしまうのです。

また、短期的な数字を追い求めすぎると、人が疲弊し、活力を失い、会社の成長まで阻害することにもつながります。そうならないために必要なことは「プロセス思考」を発揮できる業務体制を構築することです。業務の中でプロセス思考を発揮する仕組みを作れば、「売上目標という数字を意識した上で社員が学習し、成長できる」という効果に繋がります。

社員の生産性を高める鍵となるのが、「プロセス思考」です。プロセス思考を発揮すれば、人を育てる時間を早めることができます。プロセス思考の仕組みを作る重要性とそのための方法について解説します。

「プロセス思考」を強化することが結果を出す営業担当者を育成する鍵!

プロセス思考のある営業担当者とない営業担当者は、案件創出コミュニケーションが違う

営業Aさんと営業Bさんは、案件創出を目的としてお客様を訪問しました。その際、OJT(On The Job Training, 職場内訓練)の一貫として、新入社員を連れて行くことになりました。このような状況で、プロセス思考の有無がそれぞれの営業担当者のパフォーマンス(業績)にどのような影響を与えるかを確認しましょう。

プロセス思考のない営業Aさんの案件創出コミュニケーション

【お客様】「わざわざ来社いただいてありがとうございます。先日、問い合せた文書管理ソフトを紹介していただけますか?」

【営業Aさん】「わかりました。この文書管理ソフトは、特に中小企業の総務の方にご導入いただいているものです。特長としては…」

=== 途中省略 ===

【お客様】「なるほど、そういう特長のある製品なんですね。」

【営業Aさん】「ええ。ところで、いつくらいに導入する予定ですか?」

【お客様】「まだはっきりしていないと思います。」

【営業Aさん】「では、予算は無いんですか?」

【お客様】「予算についてはわからないですね、あるのかなぁ?」

【営業Aさん】「そうですか。今後どうしましょうか、何かご要望がありますか?」

【お客様】「製品も分かりましたし、またこちらから連絡しますよ。今回は、お越しいただきありがとうございました。」

【営業Aさん】「わかりました。よろしくお願いします。」

=== お客様との面会の後 ===

【営業Aさん】「こういう打合せはよくあるんだよ。あのお客様、いつ買うか日程も決まっていなかったし、予算も無かっただろ。このような案件はすぐに注文になることはないし、受注確率も悪いんだよ。手間ばかりかかるから、すぐ注文をもらえる確率の高い案件を見つけないといけないんだ!」

【新人】「なるほど、そうなんですね」

プロセス思考のある営業Bさんの案件創出コミュニケーション

【お客様】「わざわざ来社いただいてありがとうございます。先日問い合せた文書管理ソフトを紹介していただけますか?」

【営業Bさん】「わかりました。その前に少しお時間を頂いて、どうして検討することになったのか教えていただけますか?」

【お客様】「上司からの指示なんです。」

【営業Bさん】「そうですか。上司の方はこの文書管理ソフトでどのような問題を解決したいのかご存知ですか?」

【お客様】「聞いていないんです、とりあえず文書管理ソフトを調べておいてくれ、って言われただけなので。あと価格も聞いておくように、と。」

【営業Bさん】「いつくらいにご導入する予定で検討しているのですか?」

【お客様】「よくわかりませんが、まだはっきりしていないと思います。」

【営業Bさん】「上司の方は予算をお持ちですか?」

【お客様】「それも聞いてないです。」

【営業Bさん】「いろいろ教えていただいてありがとうございます。では、我社の製品を説明しますね。まず、特長ですが…」

=== 途中省略 ===

【お客様】「なるほど、そういう特長のある製品なんですね。」

【営業Bさん】「では、次回概算の見積りをお持ちしますね。その際、上司の方にもご同席頂いてお話させていただけませんか?」

【お客様】「そのほうが良いですね、わかりました。では次回、よろしくお願いします。」

=== お客様との面会の後 ===

【営業Bさん】「このような導入時期も予算もはっきりしていない案件は、時間的にも少し余裕があるから、次回は成功事例と概算見積書を持っていくと良いんだ。重要なのは早い段階で上司と面会すること。上司が実際に購入を検討しているのだからね。」

【新人】「なるほど。ところで、お客様は最初『製品を紹介してください』って言っていたのに、なぜすぐ説明しなかったんですか?」

【営業Bさん】「良いポイントに気がついたね。実は、多くのお客様は『モノを買う』ということにはあまり慣れていないんだよ。企業か何かを購入ときには、『どのような問題を解決したいのか?』そして『予算が確保できているか?』の2つが重要なんだ。

そのことがはっきりできていないと、お客様は買いたくても購入することができない。だから、商品説明の前にそれを聞いたんだよ。そうすればお客様が購入できるようになるためのお手伝いもできるからね。お客様の役に立つためにはお客様に言われたことだけをしていても不十分で、営業担当者がお客様をリードできるようなプロフェッショナルでなくてはいけないんだ。」

プロセス思考のある営業担当者とない営業担当者の差を生み出している原因とは!

営業Aさんが新人へ言っていた助言はあまり良いものではありませんでした。このような助言を真に受けて新入社員が育ってしまうと困るのです。ですが、多くの営業担当者たちはこのような助言を新人や若手営業にしています。営業Aさんは、案件をプロセスとして考えてなく、「すぐ買ってくれるかどうか?」という見方だけで面会を進めていました。

営業Aさんのアプローチの場合、お客様が予算を取れるまで待ちの状態となり、次のアクションが取れません。もし、お客様が買う気になったとしても、お客様がライバル会社にコンタクトすれば、営業Aさんにはもう声をかけないかもしれません。すなわち、かなり確率の悪い営業方法を行っているのです。

それに対して、営業Bさんはプロセス思考を発揮でき、案件をプロセスとして考えていました。そのために、このお客様が文書管理ソフトを購入するまでの一連のプロセスを頭に思い浮かべ、そのプロセスを着実に先へと進めるための対策を考えることができていました。

このような対策を思いつくことができるから、お客様の上司との面会を依頼することができたのです。また、営業Bさんは、これらのことを新人へ適切に助言することもできていました。

営業Bさんは、今後、お客様が購入にいたるまでのプロセスを共に進めることができます。次にどのような手段を取ればよいかもわかりますし、もしライバル会社がその商談に介入したとしても、そのための対策もできるのです。営業Bさんは受注確率を最大化できる営業方法を行うことができていました。

プロセス思考を発揮する営業担当者を早く育てるためには!

営業担当者一人あたりの成果を最大化するためには、営業業務を経験させているだけでは不十分です。「仕事での経験を積ませる」だけではなく、「仕事を通してプロセス思考を育み、そのことから自らの仕事ぶりを自分で評価でき、自己成長ができる」業務の仕組みを構築することが重要です。

プロセス思考の弱い営業Aさんとお客様は、図のような「購買プロセス」に基づく会話を行っていませんでした。特に、お客様は、ただ上司から言われたことをやっているだけでした。そのため、お客様は購買プロセスの「課題」「予算計上」について認識していませんでした。

営業Bさんは、このプロセスを頭に思い浮かべて、お客様と案件創出コミュニケーションを行っていました。そのおかげで、お客様に言われたことにただ対応するのではなく、お客様の購買プロセスの進捗状況とスケジュールを確認することができていました。

また、お客様は「課題」を明確にできていなかったため、その上司の課題を伺うための面会を依頼していました。営業Bさんはプロセス思考を発揮できているから、お客様をリードして商談を成約へとつなげていくことができているのです。もちろん、それを新入社員へ的確に解説することもできています。

営業Bさんのような「プロセス思考」を発揮できる営業を育て、営業担当者一人あたりの成果を最大化するための鍵は、営業業務の中で自然と「プロセス思考」を発揮する仕組みを作ることです。その具体的な方法は「案件をプロセスで管理すること」です。

営業担当者が行っている案件の進捗状況を図のプロセスのように管理します。このように案件の状況をプロセスで判断できるようになれば、営業Bさんのように、より具体的に「次何をすればよいのか?」を計画できるようになります。

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組織内に「プロセス思考」を育もう!

「人は簡単には育たない。だから、人が育つには時間が必要だ」とよく言われます。ですが、今は育つまでに長い時間待っていられる状況ではありません。一日も早く育ってほしいのです。その鍵を握るのが「プロセス思考」です。営業担当者が自然と「プロセス思考」を発揮する営業業務体制を作ることは、投資対効果が高く、かつ、人を育てる時間を短縮することができます。

私たちは、多くの営業組織の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウと経験があります。特に営業組織において、営業担当者を育て、営業担当者一人あたりの成果を最大化するためのプロセスを組織内に定着させるノウハウを持っています。私たちが、営業担当者をグングン成長させ、そして、営業担当者一人あたりの売上を向上するためのお手伝いをします。より具体的な内容説明の希望/質問/ご依頼は、下記からお問い合わせください。

(本ノートは、2008年8月17日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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