マネージャーは、部下であるメンバーのキャリアプランの支援を行うな! ~ キャリアプラン支援が役に立たない理由とマネージャーが注力すべきこととは!

私たちは「チームによる組織問題解決」という社員の意識・行動改革コンサルティングサービスを提供しています。長期的に成長している企業は「チームによる組織問題解決」が業務として推奨され、社員たちが自ら実践しています。「チームによる組織問題解決」は、事業成長/業績向上をしていくための業務変革ソリューションです。

このソリューションを通して、多くのマネージャーたちと仕事上の悩みについて話をする機会があります。マネージャーたちの悩みは多岐にわたります。そのうちの一つはメンバーの成長です。メンバーを育成することはマネージャーの役割の一つです。その一環としていくつかの企業では、マネージャーが部下のキャリアプランについて支援しています。

そのような企業のマネージャーたちへ私たちが助言していることは、「キャリアプランの話し合いは必要ない!」です。なぜならば、無駄になっていることが多いためです。

なぜ、キャリアプランの話し合いが無駄になっているのか、そして、マネージャーとメンバー双方のために、もっと優先すべきことは何かについて解説します。

キャリアプラン支援が役に立たない理由とマネージャーが注力すべきこととは!

多くのマネージャーがメンバーとのキャリアプランの話し合いに悩んでいる!

仕事柄、様々な業種のマネージャーたちと食事をする機会があります。ある時、いくつかの上場企業のマネージャーたち5名が集まって会食をしました。その時の話題の1つが「メンバーとのキャリアプラン」でした。

大手システム会社のマネージャーAさんが、「メンバーが育たないんですよ」と話し始めました。もう少し詳しく聞くと、「先日、メンバーとキャリアプランについて話し合いましてね」ということでした。

Aさんの会社では定期的にマネージャーとメンバーがキャリアプランの話をすることになっています。ですが、Aさんのチームのメンバーの多くは、キャリアプランが明確になっていないのです。

Aさんは「未来の目標を持とうよ!」とメンバーに伝えています。そのときは「そうですね」と言ってくれますが、次のキャリアプランの話し合いの時には、やはり明確になっていないということが繰り返されています。みんな、まじめに業務をしてくれているので、そういう面での不満や問題はありません。

Aさんによると、キャリアプランを持っているメンバーもいました。その人のキャリアプランは「将来独立したい」でした。ですが、その人は業務にムラがあって、Aさんとしてはあまり良い評価が与えられない、と考えていました。

Aさんは、最後に「以前『最新のプログラミングスキルを身に着けたい!』というキャリアプランを持つメンバーがいて、彼は成長したんですけどね」と言っていました。その後、キャリアプランの話は終わり、他の話題になりました。

マネージャーは、メンバーとキャリアプランの話をすべきではない!

キャリアプランとは、「『将来どのような仕事をしたいか、もしくは、どのような職につきたいか』という未来の希望や目標」のことです。いくつかの企業では、マネージャーはメンバーとキャリアプランについて話をし、そのキャリアプランの支援をすることになっています。

私たちは、「目標達成」「パフォーマンス向上」「組織と社員の双方の成長」をコミットするコンサルタントです。その立場から多くのマネージャーへ助言していることは、「会社から『メンバーとキャリアプランについて話をするように』と言われていても、マネージャーはそれをやる必要はないですよ!」です。

なぜならば、キャリアプランについて話をしても、メンバーにためにもマネージャーのためにもなっていないことがあまりにも多いからです。特に、マネージャーにとっては余計な負担にまでなっています。

一定数の人にはキャリアプランがない

すべての人が将来の夢や目標を持っているわけでありません。キャリアプランのない人は一定数存在しています。また、仕事としての将来のキャリアよりも、「プライベートとしての夢の実現」や「今、充実した生活なので、今の状態を維持したい」ということに関心が高い人も多いです。人それぞれ求めるものは違います。仕事としてのキャリアプランを必要としていないメンバーもいるのです。

マネージャーは支援できないことが多い

「将来独立したい」「経営層を目指したい」という長期的なキャリアプランがある人もいます。ですが、そんなキャリアプランを示されても、部長や課長などのマネージャーは、その支援をすることなどできません。マネージャーは、そんな経験をしていないのです。

そうすると「頑張れよ!」とか「それなら社外のセミナーにでも行ってみたら!」など、適当な助言しかできません。キャリアプランを持っているメンバーにも、そして支援をするマネージャーにも有意義な話し合いなどできないのです。キャリアプランの話は、場合によっては、相手の人生の話にまで発展してしまい、あまりにも範囲が広すぎるのです。

マネージャーの評価は他で決まる!

以上のように、キャリアプランについてメンバーと話しても中途半端なことが多く、メンバーたちの業務に対するモチベーションを高めることができていません。それにメンバーとキャリアプランの話をしたところで、マネージャー自身の評価は上がることはありません。なぜならば、マネージャーの評価を決定する最大の要因は、そのマネージャーが率いるチームのパフォーマンス(業績)だからです。

結局の所、メンバーとキャリアプランを話し、メンバーのキャリアプランについて悩んだところで、チームの成果は上がりません。それならば、現在マネージャーが担っている業務の目標達成や生産性の向上に時間をかけることのほうが圧倒的に重要です。そのほうがマネージャー自身の評価が上がることに役立ちます。

そして、マネージャーの評価だけではなくメンバーの評価も上げることができ、彼らの給与を増やしてあげることもできるのです。

マネージャーができるキャリアプランとは?

メンバーとキャリアプランの話をしたとき、「プロジェクトマネージャーのスキルを身に着けたい!」「最先端のプログラミングスキルを身に着けたい!」「マネージャーになりたい!」というキャリアプランを持っているメンバーもいます。

このように、相手のキャリアプランが業務に役立つ内容の場合、マネージャーは十分に支援をする事ができます。このような目標であれば、チームの目標達成や生産性の向上にも役立ちます。そのような目標にはマネージャーは支援すべきです。

であるならば、メンバーと話すべきことは、キャリアプランではなく「現在の業務において生産性を高めるために目指すこと」です。そして、この「現在の業務において生産性を高めるために目指すこと」はキャリアプランとして話されることではなく、目標管理(MBO)で話されるべきことです。

目標管理(MBO)であれば、マネージャーは徹底的にかつ具体的にそのメンバーの目標の実現の支援をすべきです。そして、メンバーにそのような視点を持って仕事をしてもらえば、双方にとって有意義であり、チームのパフォーマンス向上にも役立ちます。

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キャリアプランは会社や人事が主導しておこなう!

現場のマネージャーにメンバーとのキャリアプランのことを話させている企業は、一般的に成長率がよくありません。業務の目標達成やパフォーマンス向上に直接影響しないことに時間を使っているからです。

ただし、会社として社員のキャリアプランを支援することは社員の採用がしやすくなるという良い面もあります。また、適材適所な配属にも役立ちます。そのためには、キャリアプランを現場のマネージャーに話させるのではなく、業務とは切り離した形で、人事部が責任を持って社員のキャリアプランについて支援すべきです。人事部であれば、外部のプロフェッショナルなリソースを活用もできるでしょうから、より具体的な支援ができ、最適な配置転換にも役立ちます。

会社がマネージャーに「メンバーとキャリアプランの話をするように!」と言っても、マネージャーはキャリアプランの話に過度な時間を使う必要はありません。キャリアプランの話は、場合によっては人生の話にまで発展してしまい、あまりにも範囲が広すぎるのです。そのため、誰の役にも立たず、時間の無駄となってしまいます。部下のキャリアについての考えは、雑談のなかで把握しておけばよいだけです。

多くの企業は、組織課題をうまく解決することができず、そのために各部/各課/各チームの生産性が低い状態です。キャリアプランの話をするくらいであれば、全てのセクションが効果的な組織課題の対処ができるような文化や風土を築きあげることに時間を使い、業務の目標達成・業務の生産性向上を実現すべきです。

それができれば、メンバーとマネージャー双方の評価も報酬もモチベーションも高めることができます。

文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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