事業が成長している企業には、『勢い』を感じます。組織全体のモチベーションが高い状態とも言えます。それらの企業では、「会社として組織全体のモチベーションを高めるための環境や仕組み」となっています。その反面、モチベーションの大切さを認識しながら、事業を成長させることができていない企業は、現場のマネージャーが社員のモチベーションに気を配っている程度のことが多いです。
事業を大きく成長させるために重要なことは、「組織全体のモチベーション」です。このノートでは、「組織全体のモチベーション」を高めるための方法について解説します。
企業全体の「動機づけ」を行い、事業を大きく成長させる!
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モチベーションはなぜ必要か?
モチベーションは、個人のパフォーマンスに直接的な影響を及ぼします。モチベーションの高い組織ほど、業務の生産性が高く、パフォーマンスがよい傾向があります。特に、組織としての目標がはっきりと設定され、その目標の達成に向けた課題や戦略や実施計画が明確だと、組織のモチベーションは高くなります。また、モチベーションが高いと、困難な状況に直面しても諦めず、問題解決に向けた創造的なアプローチが行われることが多くなります。その一方、モチベーションが低下すると、物事への関心が薄れ、生産性や仕事の質にも影響を及ぼします。
昨今、モチベーションありきの考え方の弊害も言われていますが、やはり、モチベーションは、組織としての目標達成やパフォーマンス向上、そして、社員一人ひとりの自己成長の原動力となります。
そのような効果がある以上、「課長などのマネージャーが、現場の社員のモチベーションを高める対策」だけでは不十分です。「会社として組織全体のモチベーションを高めるための環境や仕組みとしての対策」が重要です。
この「会社として組織全体のモチベーションを高めるための環境や仕組みとしての対策」には、2つの要因を考慮して行うことが大切です。1つ目は、モチベーションを促進しようとするプラス要因で、2つ目はモチベーションを阻害するマイナス要因です。「会社として組織全体のモチベーションを高めるための環境や仕組み」を検討する際には、この2つの要因を考慮して行う必要があります。
社員一人ひとりのモチベーションを引き出す
内発的モチベーションと外発的モチベーション
モチベーションは、一般的に、内発的モチベーションと外発的モチベーションの2つがあります。内発的モチベーションは、物事に対する強い興味や探求心など、人の内面によるものです。仕事に対する興味や関心、そこから生まれるやりがいや達成感などが行動意欲に影響を及ぼします。内発的モチベーションによる「高い集中力が発揮され、自ら進んで質の高い行動をすること」が長く続くメリットがあります。
外発的モチベーションは、報酬や評価、罰則や懲罰といった、外部からの働きかけによるものです。「報酬を与える」「罰を与える」といったようなことが行動意欲に影響を及ぼします。外発的なモチベーションは、仕事に対して強い関心や興味がない人のモチベーション向上に有効です。「報酬が欲しい」「罰を受けたくない」などは、ほとんどの人のモチベーションに影響するために、短期間で効果が表れるメリットがあります。
この2つを比較すると、内発的モチベーションのほうが強力なモチベーション推進の力となります。人間の内部に存在するモチベーションの隠れたエネルギーを放出させ、際立った業績達成に向けて活性化させる可能性を秘めています。
2つのモチベーション要因は相互に作用する
この2つのモチベーションは、どちらか一方だけが表れることは滅多にありません。常に、内発的モチベーションと外発的モチベーションの両方が相互作用として影響します。ですが、真のモチベーションは、本来、内発的モチベーションです。会社に勢いがない、すなわち、組織全体のモチベーションが低い組織は、どちらか一方の対策しか行われていないことが多いです。外発的モチベーションである報酬や評価や罰則や懲罰に過度に頼っている企業は、長期的な高業績を達成することができていません。なぜならば、外発的モチベーションは常に短期的な効果しか上げられないからです。内発的モチベーションに頼っている企業は、「意欲を出せ!」「やる気を出せ!」という人の意欲を鼓舞するだけの状態になっていることが多く、会社やマネージャーは「社員のモチベーションを高めたい!」と思いながら、それがマイナスな状態となっていることが多いです。
8つの願望が、モチベーションに大きく影響する
内発的モチベーションには、願望が大きく影響します。「組織の中で仕事と行う!」という観点では、主に以下の8つの願望が、モチベーションを引き出す力を秘めています。率先する | 活発に行動したい、何かに取り組みたい |
参画する | 人とつながり、お互いに関わり、交流したい |
所有する | より多くのものを、より良いものを所有したい |
決定する | 人に決められるのではなく、自分で決めたい |
能力を持つ | 自分の能力をますます高めたい |
達成する | 成し遂げたい、結果を出したい |
認められる | 存在を認めてもらいたい、他の人から評価されたい |
貢献する | 社会や人の役に立ちたい、価値のある人間でいたい |
人はこれらの願望を感じることができると、強いモチベーションが沸き立ってきます。逆に、これらの願望が妨害されると、怒りとフラストレーションが生じます。または、「無駄だ!」と諦めてしまう状態ともなります。
組織全体のモチベーションを高めるためには、以上のことを更に引き出すプラス要因と、以上のことを阻害するマイナス要因を考慮して環境や仕組みを作ることが大切です。
1. モチベーションを促進するプラス要因を考慮し、組織全体のモチベーションを高める環境や仕組みを作る
組織全体のモチベーションを高めるためには、以上に紹介した「8つの願望」を促進するプラス要因を考慮して、環境や仕組みを検討する必要があります。プラス要因を考慮して、環境や仕組みを作る主な方法が以下の4つです。◆ 計画に参加させる仕組みにする
◆ 定期的に学ぶことができる機会を提供する
◆ 自主的に挑戦する機会を提供する
◆ オープンなコミュニケーションの機会を増やす
計画に参加させる仕組みにする
新年度の方針や目標や計画を立てる作業に社員を関与させる仕組みを作ります。多くの企業では、組織やグループの新年度の方針や目標や計画を立てるときは、その組織やグループを率いるマネージャーが一人で行うことが多いです。その新年度の方針や目標や計画を立てる作業に、社員たちを関与させるのです。一般的に、新年度の方針や目標や計画の検討は以下の手順で行います。メンバーをこの作業に関与させるのです。
1. 前年度の結果や残された課題の振り返り
2. 上層部の目標の確認
3. 新年度の方針や目標や計画の決定
通常、この新年度の目標と計画を作る作業は、1~2ヶ月程度かかります。日本の企業は、4月に新しい年度が始まりますから、3月頃からメンバーと一緒に前年度の結果や残された課題など、今までの振り返りを行います。また、上層部の新年度の目標が決まったら、メンバーと一緒に、新年度の方針や目標についてのミーティングを持ち、一緒に年間目標や計画を立てます。
多くの企業を見ていますと、経営層に近くなると、マネジメントのメンバーがチームとして新年度の方針や目標や計画の検討をすることが多いです。ですが、現場に近い部や課では、マネージャーが1人で新年度の方針や目標や計画を決めることが多いです。組織全体のモチベーションを高めるためには、マネージャーへ『メンバーを巻き込んで新年度の方針や目標や計画を設定する教育』を行い、組織の仕組みとします。
定期的に学ぶことができる機会を提供する
組織全体のモチベーションの低い企業は、体系的に学ぶ機会を提供していません。能力を高める機会があることは、モチベーションに大きく影響します。会社としてその機会を提供することは、組織全体のモチベーションを高めるためには必要です。会社内で提供されている教育には、大きく分けて2つの教育があります。1つは、「担当する仕事や業務ができるようになる教育」および「担当する仕事や業務でパフォーマンスを高める教育」など、会社が実施する教育を決めて社員たちへ行う学習機会です。2つ目は、社員が自分のスキルや能力を高めるために、社員が学びたい教育を自ら選ぶことができる学習機会です。
組織としてのパフォーマンスを高めるためには、会社が決定した研修を社員に受けさせる必要があります。これも、社員のモチベーションにプラス要因で影響します。ですので、会社として、会社が実施する研修を決定し、ある一定時間の学習機会を提供することはとても大切です。
2つ目の社員が自分のスキルや能力を高めるために自由に研修を選ぶ学習機会は、直接的に業務のパフォーマンスを高める効果性が必ずしも高いとは言えません。ですが、これも学習機会です。私たちは、ある程度のパフォーマンスを達成した社員に、報酬の一環として「自分で受講したい研修を選ばせて受講する機会を与える」ことを会社の仕組みとすることを推奨しています。「達成する」「認められる」「決定する」という願望に関わることだからです。
自主的に挑戦する機会を提供する
挑戦的な目標を自分で設定し、それにチャレンジする機会を与えることも、モチベーションを引き出すために非常に有効な方法です。それも、1人で行うのではなくチームを作り、難度が高い目標の達成を目指すことは、メンバーの成長意欲を刺激し、やりがいを感じやすくなります。例えば、事業成長プロジェクトのように、自分の業務範囲を超えて他部署の人と協力して挑戦的な目標達成を目指し、その過程で段階的に成功を体験しながらプロジェクトを進めれば、モチベーションは高まります。その挑戦的な目標達成を目指す過程で、会社やマネジメントが適切なサポートを提供し、進捗状況や成果を評価すると、モチベーションはさらに高まります。
会社全体としてモチベーションの高い組織では、チームとして事業の成長を目指す目標に挑戦し、その活動を会社全体で共有し、会社やマネジメントも含め全社で達成に向けて協力し合う仕組みを導入しており、より効果的に意欲を引き出すことができています。
社員たちの中で成功体験を共有し、その挑戦の成果をしっかりと称える環境や仕組みを作ることが重要です。小さな成功でも、それをチーム全員で共有し、メンバーが認められていると感じられる場を提供することで、組織全体のモチベーションが向上します。
(【参考】 【事業成長力強化研修】チームで結果を出す『事業成長プロジェクト』実行メソッド ~ 事業成長に挑戦するための組織問題解決力とプロジェクト遂行力の強化!(Project Execution Model for Growth))
オープンなコミュニケーションの機会を増やす
多くの企業が「コミュニケーションが問題だ!」と考えています。活発なコミュニケーションになっていない、一部の人しか発言しない、上下のコミュニケーションがない、お互いにわかり合おうとしない、など、コミュニケーションの問題は多岐にわたります。ほとんどの企業がコミュニケーションに問題を抱えています。ですが、コミュニケーションの問題は簡単に解決できません。実際のところ、コミュニケーションの問題を解決できる具体的かつ抜本的な方法はよくわかりません。私たちも、「どうすれば、多岐にわたるコミュニケーションの問題を解決できるだろうか?」について研究を重ねています。「これをやれば必ずコミュニケーションの問題を解決できる!」という方法は見つかってなく、永遠に追求し続ける必要がある、と考えています。結局のところ、問題だとはわかるのですが、完全には解決できていません。
そんな中、「組織全体のモチベーションを高める」という観点で重要なことは、上層部から率先して話しかけることが最も効果がありそうだ、と体感しています。上層部からメンバーへ話しかけることによって、社員たちは、「自分の存在を認めてもらっている!」「自分は大切にされている!」と感じるのです。
上層部からメンバーへオープンに話しかけることで、一人でも多くのマネージャーがメンバーへ話しかける環境を作ることが大切です。
2. モチベーションを阻害するマイナス要因を考慮し、組織全体のモチベーションを高める環境や仕組みを作る
組織全体のモチベーションを高めるためには、以上で解説したプラス要因だけを考えて実施してもうまくいきません。モチベーションを阻害するマイナス要因を考慮して環境や仕組みを作ることが大切です。モチベーションを阻害するマイナス要因として挙げられるものには以下のものがあります。
◆ 生産的ではない会議
◆ 不公平さ
◆ 情報を隠蔽する
◆ 独創性を押さえつける
◆ 質の低い仕事が強要される
◆ 政治的な活動
◆ 職務設計や評価が雑で恣意的
◆ 過度な批判や否定 など
以上はほんの一例です。モチベーションを阻害するマイナス要因は、他にもあります。このようなモチベーションを阻害するマイナス要因の多くは、過去の長い歴史を経て発生しているために、社員には諦め感も根強く、いざ対策を取ろうとしても、うまく進まないことが多いです。
ですが、この状態のままでは、組織全体のモチベーションは高まりません。これらの要因すべてを一気に解決しようとすると、組織が混乱し、社員たちから強い反感を買ってしまいます。そのために、これらのモチベーションを阻害するマイナス要因は、以下の手順で対策を実施します。
1. プロジェクトチームを作る
2. 重要度の最も高いモチベーションを阻害するマイナス要因を選ぶ
3. 具体的な削減目標と計画を立案する
4. プロジェクトとして、撲滅作業を行う
5. プロジェクトチーム任せにするのではなく、マネジメントチームはそのプロジェクトの推進を支援する
このモチベーションを阻害するマイナス要因を削減するプロジェクトは、会社が今度成長できるかどうかを左右する重要な活動です。そのために、最後の「マネジメントチームはそのプロジェクトの推進を支援する」は非常に重要です。マネジメントチームの決意、そして、マネジメントチームの姿勢と行動がこのプロジェクトチームが成功するかどうかに影響します。
言葉で言っているだけでは、組織文化は変わりません。「マネジメントチームが、行動でその決意や姿勢を示す!」ことは言葉よりもずっと強い説得力を備えているのです。
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組織のモチベーションを高め、事業を成長させよう!
組織としてのモチベーションは高い状態ですか?事業を大きく成長させるためには、組織全体のモチベーションが高い状態になる必要があります。ですが、実際の所、モチベーションに依存した働き方には限界があります。というのも、モチベーションは気分や環境の影響を受けやすく、常に一定に保たれるものではないからです。特に、短期的には意欲が高くても、同じ業務が続いたり、期待する成果が得られなかったりすると、次第にモチベーションが低下してしまいます。
個々の社員のモチベーションの高さや組織の瞬間的なモチベーションの高さに一喜一憂するのではなく、組織全体のモチベーションの平均値を過去よりも高めることが重要です。環境や仕組みとして対策を取る必要があるのです。
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(本ノートは、2025年4月30日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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