多くのマネジャーが、「事業・組織・社員を成長させたい!」と考えています。ですが、「その対策を行っても、事業も組織も社員も成長させることができない!」と悩んでいるマネジャーは多いです。「事業と社員を成長させることができていないマネジャー」と「できているマネジャー」にはどのような違いがあるのでしょうか?
「事業も社員も成長させる!」ために、多くのマネジャーに気がついてほしいことがあります。事業を成長させるための必須となる行動があるのです。
このノートでは、事業も社員も成長させることができないマネジャーたちが行っている問題行動と、実際に成長させることができているマネジャーの行動の違いを通して、事業と社員を成長させるために必須となる行動について解説します。
事業も社員も成長させることができないマネジャーの問題行動と「事業と社員を成長させる」ための必須行動
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事業も社員も成長させることができないマネジャーたちの問題行動
問題行動1. 必要以上に会議や報告を求める
事業も社員も成長させることができないマネジャーは、社員に対して会議や報告が多く求めすぎていました。私たちのクライアント企業のうち、事業も社員も成長できていない企業の多くは、毎週月曜日の朝に全ての幹部を集めたミーティングを行っていました。
あるクライアント企業F社は、毎週月曜部の朝、営業・マーケティング・品質保証・コンタクトセンター・総務・経理・人事などの全ての部署のマネジャー20名以上を集めたミーティングを行っていました。そのミーティングで、全てのマネジャーが「1週間のトピックス」を話すために、時間は2時間以上にも及んでいました。
このミーティングは毎週行われていましたが、たった1週間では大きなトピックスなどはありません。ですので、各部署のマネジャーたちの発表は、毎週ほぼ同じような内容でした。このミーティングで重要なことが討議されたり、意思決定されたりすることはありませんでした。
このミーティングの実態は、「トップマネジャーへの報告」でした。各部署がそれぞれのトピックスを報告しますが、他の部署には関係のない話が多く、多くの時間は関係のない他の部署の話を聞くためだけに拘束されている状況でした。また、マネジャーと言ってもほとんどがプレイングマネジャーのために、その間は自分の業務ができない状況でした。
別のクライアント企業P社も、事業も社員も成長させることができずに悩んでいました。この企業もF社と同様、毎週月曜日の朝に幹部たちを集めたミーティングを行っていました。F社やP社のように、事業も社員も成長させることができないマネジャーは、会議や報告が多いです。このように、マネジャーたちが会議や報告を多くするのは、私たちの観察上、以下のことが理由でした。
◆ 何でも把握しておかないと気がすまない。
◆ 社員たちを信用していない。
◆ 寂しがりやで、かまってもらいたい(社員はマネジャーに近づかないために)。
問題行動2. 教育熱心で、やたら研修を行う
事業も社員も成長させることができないマネジャーは、意外かもしれませんが、教育熱心でした。社員に対して相当な教育を行っていました。P社のマネジャーは、「十分なスキルがない人は、お客様先へ行くべきではない!」と考えており、部署ごとに研修カリキュラムを設けて、社員全員に毎日のようにロープレ(ロールプレイングによる練習)を行わせていました。P社の問題は、そのロープレの合否判定の基準が明確ではなく、「P社のトップマネジャーが合格と判定するかどうか?」という状態でした。合格しないと、お客様とミーティングを行うことができないために、業務を進めることができません。社員たちは「なんとか合格しよう!」とするのですが、それがトップマネジャーのその日の気分で決まるために、社員たちは対策を行うこともできずにロープレに時間を使い続けていました。
F社のマネジャーも教育熱心で、自分で様々な外部セミナーに参加しては、そこで得た知識を社員たちに解説して研修をさせていました。その1つが「キーエンスの営業ロープレ」でした。ある外部セミナーで「高収益企業として評判のキーエンスの営業たちは、ロープレを行っている」と聞き、全営業へ月8回のロープレを指示していました。
キーエンスのロープレは、いろんな企業の営業組織がマネをして実施しています。ですが、それで効果を上げている企業は少ないです。実際のところ、キーセンスだからロープレが機能しています。キーエンスのロープレだけのマネをしても、キーエンスのような高収益を上げられるわけではないのです。
もし、ロープレを行うのであれば、ロープレのテーマと判定基準を設定して行わなければ、ロープレの効果はありません。そのようなテーマと判定基準を設定せずに過度な量のロープレを行っている企業は、事業も社員も成長させることができていませんでした。
F社は、営業だけではなく、マネジャーたちのマネジメント能力の課題があり、マネジャーたちにはマネジメント研修も実施していました。マネジャーたちは、プレイングマネジャーで自分の業務も行なわなければならない上に、ロープレまで行い、部下たちのレポートの取りまとめや各種会議の参加が必要なうえに、さらには、マネジメント研修を受けなければならなかったのです。これでは、事業も社員も成長することなどありえません。
問題行動3. 思いつきで始め、実施を指示する
事業も社員も成長させることができないマネジャーは、いろんなことをその場の思いつきで指示していました。そして、その結果が出ないことを社員のせいにしました。F社のマネジャーは、「売上が良くない」と考えると、すぐに海外の商品を新商品として販売することを指示しました(海外の商品をすぐに日本の新商品として販売できることはすごいことですが)。しかし、販売を開始する前に、その新商品の販売見込みの調査や販売方法の検討などのテストマーケティングを行っていませんでした。その状態で販売を始めるために、販売を始めてもほとんど売れない状況でした。
そのため、マネジャーは、営業に対して「販売量に合わせた報酬を出す販売促進キャンペーン」を始めました。ですが、売上は伸びませんでした。この販売促進キャンペーンを行うと、その販売状況の報告が社員たちの報告事項に追加されました。そのような販売促進キャンペーンが、3~4個並行して行なわれていました。そのために、報告も手間がかかる状況となっていました。
最終的に、その新商品が売れ残って在庫となるのですが、マネジャーは、その在庫処分を営業たちへ指示をしていました。そのことが、営業たちの実際の営業時間をさらに奪っている事態となっていました。このようなことが繰り返されていたのです。
更には、「なんでここまでやっているのに売れないんだ!」と、新商品の販売が悪いことを営業のせいにしていました。そのために、「問題行動2」でお伝えした通りの研修を増やしており、悪循環となっていました。
事業も社員も成長させることができないマネジャーの特徴
事業も社員も成長させることができないマネジャーは、以上のような問題行動をしていました。マネジャーが以上のような行動をしているのであれば、事業も社員も成長することはありません。以上のように、事業も社員も成長させることができないマネジャーは、自分では色々と考えて事業も社員も成長させることをやっているつもりなのです。ですが、実際には事業も社員も成長させることができていなく、「その原因は社員にある!」と考えていました。
「事業や社員を成長させるために、本当に必要なこと」ができていなかったのです。その結果、F社もP社も事業を成長させることができていませんでした。ある一定の業績は達成できていたのですが、それは、社員たちが頑張っていたからでした。ですが、社員の定着率は良くない状況でした。特に、優秀な社員が会社をやめている状況でした。
では、F社とP社のマネジャーは、どうすれば、事業も社員も成長させることができたのでしょうか?
事業も社員も成長させることができるマネジャーの必須行動
必須行動1. 将来構想をしっかり示す
事業も社員も成長させるためにマネジャーが最初に行うべき行動は、将来構想を文書としてまとめることです。事業も社員も成長させるためには、「将来、どのような事業の状態になっているのか?」がわかる事業構想を明確にすることは大切です。その将来構想を作るときには、最低でも以下の要素を盛り込んで文章や図としてまとめます。
◆ どのくらいの売上、利益を上げているか?
◆ どのようなお客様と、どのくらいの取引をしているか?
◆ そのような製品をどのくらい販売しているか?
◆ どのような組織構造になっているか?
F社のマネジャーは、「今後、売上を2倍にしたい!」と言っていました。ですが、F社のマネジャーもP社のマネジャーも、以上の要素を盛り込んだ将来構想を文書や図としてまとめていませんでした。このように多くの企業のマネジャーは、売上規模については語っているのですが、「利益」「お客様、および、取引状況」「商品」「組織構造」などについての将来構想は描いていませんでした。
必須行動2. 将来構想を実現するための実行計画を作る
将来の構想ができたら、次は、その構想を実現するための実行計画を作ります。「必須行動1. 将来構想をしっかり示す」で文書化した将来構想と現在の状況には大きなGAPがあります。そのGAPを明確にしてから、「将来構想を実現するための実行計画」を作ります。その実行計画を作るために必要なことは、以下の3つの手順で行うことです。
1. 複数のGAPを課題として設定する
2. 課題として、何を取り組むかを決める
3. その課題の達成度合いを図る数値目標を決める
将来構想は、通常5年先・10年先・20年先など長期に渡るものです。その長期での課題を設定したうえで、「この1年は、どの課題をどのくらい取り組むか!」を決めます。そして、1年間の数値としての達成目標を決定します。
必須行動3. 正しいデータを収集する
実行計画ができましたら、日常の業務の中で達成目標の達成度を定期的に観察し、事業を進めます。もし、達成度合いが良くないときには、対策を検討し、対策を実施します。F社とP社の会議や報告を見ていますと、両社のマネジャーは、数値目標を設定して、その数値データは確認していました。ですが、両社のマネジャーが設定していた数値目標は、「必須行動1. 将来構想をしっかり示す」→「必須行動2. 将来構想を実現するための実行計画を作る」を行ったうえで導き出された数値目標ではありませんでした。その場の思いつきで設定した数値目標でした。
両社の売上目標以外の1年間の数値目標は、「ロープレの回数」や「お客様への訪問件数」というものでした。これらは、確かに1年間の目標を達成するために役立つ数値目標です。ですが、将来構想の実現に役立つデータの収集ではありません。
事業も社員も成長させるためには、将来構想の実現につながる正しいデータや情報を収集する必要があります。
必須行動4. 業務の仕組みを整える
以上の必須行動を行いながら、会社の仕組みを整えます。実のところ、「必須行動4. 業務の仕組みを整える」のために、「必須行動1. 将来構想をしっかり示す」→「必須行動2. 将来構想を実現するための実行計画を作る」 → 「必須行動3. 正しいデータを収集する」を行っているのです。「業務の仕組みを整える」とは、少なくとも以下のことを行うことです。
1. それぞれの部署の目的と達成目標を明確にする
2. それぞれの部署の社員が従うべき業務明細を明確にする
3. それぞれの部署の人事評価を明確にする
業務を整えるためには、少なくともこれら3つのことを具体的に行う必要があります。F社のマネジャーは、以上の3つの全てが十分ではありませんでした。P社は、「1. それぞれの部署の目的と達成目標を明確にする」と「2. それぞれの部署の業務明細を明確にする」は、ある程度できていました。ですが、「3. それぞれの部署の人事評価を明確にする」は、「必須行動2. 将来構想を実現するための実行計画を作る」に対して論理的に矛盾しているものでした。
結果を出すことができるマネジャーの特徴
以上でお伝えした「必須行動」からおわかりだと思いますが、事業も社員も成長させることができるマネジャーが行っていることの最後は、「仕組みを作り、整えること」です。将来構想を描き、その将来構想を実現する実行計画を作り、課題とその課題の達成基準を設定し、仕組みを整えていますから、事業を成長させることができるのです。ですが、F社やP社のマネジャーのような、事業も社員も成長させることができないマネジャーは、以上で解説した必須行動を行っていないために、「仕組みを作り、整える」ことができていません。仕組みを作ることができていないために、場当たり的な思いつきで事業のマネジメントを行います。仕組みがないから、人に依存する管理しかできず、教育ばかりを行おうとするのです。仕組みがないのにロープレや研修を行っても、その効果はほとんどないのです。会議や報告をいくら増やしても、結果を出すことはできません。
マネジャーが、自分の思い通りに社員を働かせようとすることはできません。社員が、「この仕事は自分のためになる」「この仕事を通して、結果を出したい!」とやりがいに感じる仕組みを構築することが大切です。
本来、マネジャーの仕事は、社員を管理するだけではありません。仕組みを作り、仕組みを整え、仕組みを管理することです。さらには、「将来構想の実現に向けて、その仕組みをどのように発展させるか」にも挑戦する必要があります。
それができるから、「事業も社員も成長させることができる」のです。
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事業と社員を成長させるために必須なことを行おう!
事業の成長度合い、および、社員の成長度合いに満足していますか?事業も社員も成長させることができないマネジャーは、社員が従うべき仕組みを整えることができていませんでした。それでは、マネジャーの指示が思いつきで場当たり的となってしまいます。また、社員は、何を求められているか、何をやればよいのかがわからなかったとしても不思議ではありません。
以上で紹介したF社やP社のマネジャーのように、多くのマネジャーたちは、それができていません。そのために社員が十分な意欲と力を発揮できていない状況であり、事業を成長させることができないのです。
「事業と社員を成長させるための重要なことは、仕組みに目を向けることだ!」と、マネジャーたちに気がついてほしいです。
このノートで紹介した「1~4の必須行動」は簡単ではありません。私たちは、このノートに掲載した画像のように、クライアント企業の「将来構想」「実施計画」「正しいデータ収集」「仕組みを作る」支援をしています。私たちと一緒に挑戦したマネジャーは、事業と社員を成長させることができています。
「これらのことが、事業も社員も成長させるための必須条件である」と認識いただきたいです。
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(本ノートは、2024年7月26日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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