働き方改革で、企業(営業組織)が本来取り組むべき取り組みとは? Vol. 292

多くの企業が「働き方改革」に取り組んでいます。
ですが、政府が求める「働き方改革」と実際に企業が行うべき「働き方改革」は、必ずしも一致していないことも明らかになっています。
このコラムでは、

  • 働き方改革の背景は?
  • 働き方改革で発生している問題は?
  • 企業にとって (営業組織にとって)、本当に必要な働き方改革の取り組みとは?

  • について解説します。

    働き方改革、企業(営業組織)に真に必要な取り組み方とは!

    働き方改革が様々な企業で取り組まれている

    政府が「働き方改革」を推進しています。そのため、テレビや雑誌などのメディアでも「働き方改革」の特集を多く見受けます。
    ちょうど就職活動の時期でもありますし、「働き方改革」の取り組みを優秀な新入社員確保のアピールポイントとしている企業もあります。


    一言で「働き方改革」と言っても、企業によって様々な取り組みがあります。
    「非正規雇用の処遇改善」「労働生産性の向上」「長時間労働の是正」「女性の労働参加」など、課題はたくさんあります。
    そのための施策も「テレワークや在宅勤務の推進」「残業の削減」など様々あります。
    「会社に保育園を用意する」というのも1つの働き方改革です。
    この「保育園を用意する」という取り組みは、企業内に設置するかどうかは別として、子どもたちのためにも子供を育てる女性が少しでも働きやすくなるためにも、私たちは基本的に賛成です。


    政府の推進する働き方改革とは?

    まず、政府の掲げている働き方改革について、確認することから始めましょう。
    政府が働き方改革を推進する背景は「日本の人口(労働力人口)が予想以上に大きく減ってしまい、日本という国の国力や生産力が下がってしまうため」というのが理由です。

    そのため、
    (1) 女性や高齢者などの働き手を増やす
    (2) 出生率を高めて将来の働き手を増やす
    (3) 「低い低い」と言われている一人当りの生産性を高める
    などの対策が必要だと考えられ、企業がそのような取り組みを推進するよう働きかけています。


    企業が取り組んでいる働き方改革の多くは「残業をなくせ!」

    メディアの報道で目につきやすい企業の働き方改革の1つが「長時間労働の解消」です。
    「長時間労働の解消」に向けて、テレワークや在宅勤務の導入なども取り組まれていますが、もっとも取り組まれていることは「残業をなくす」です。


    幾つかの企業では「残業をしなかった人に”残業しなかった手当”を渡す」ということが行われています。
    企業における人件費の割合は高いために、売上を減らすことなく残業代を削減できれば、業績を大きく改善する事ができます。
    そして、残業や通勤時間などが減ることによって社員がより健康で元気なれば、会社も明るく活気づきます。
    以前と比べ仕事に対する価値観も変わりつつあり、就職活動中の学生や特に若手社員には「仕事よりも日常の生活を大切にしたい」と考えている人が増えていますし、その考えを尊重すべき時代にもなりました。

    ですが、その一方で違う声もあります。


    「残業をなくせ!」という働き方改革が様々な問題も引き起こしている

    会社が急に残業を抑制したことで、「残業代がないと生活できない」という声もよく聞きます。
    残業代込みの月給を手に入ることを前提に、住宅ローン支払いを含めた生活設計が組まれてしまっているのです。
    ですが、このことは簡単に受け入れるわけにもいきません。
    「残業代のためにダラダラと長時間仕事をすることにつながっているのではないか…」という問題もあるためです。
    本来は、残業をすることなく規定の時間内で仕事を済ませるべきです。
    本当に仕事が多すぎるのか、それとも、やはりダラダラやっているのか、見極めることが難しいのも確かですが、それを見極める仕組みを構築することが求められます。


    また、「残業しなければ、売上目標は達成できない」という声もあります。
    大きな売上を達成している営業というのは、「できるだけ多くのお客様に対応したい」「できるだけお客様の役に立つように対応したい」という意識をもって行動します。
    「限られた時間で」というより「時間があるならもっと多くのお客様に役立ちたい」ということに価値をおいています。
    営業に求められる重要で大切にしたい意識・価値観です。
    ですので、売れている優秀な営業というのは残業が多くなる傾向があります。
    漫画やテレビドラマなどで「夕方の定時までしか働かないのに、一番良い成績を上げる営業」が出ることがありますが、過去私が見てきた本当に高い成果を上げる営業たちは、全員、時間など関係なく働いていた人たちでした。

    残業をなくせば解決できるのか?

    今、多くの企業が「働き方改革」に取り組んでいますが、営業という領域においては「残業をなくす」という取り組みだけを行なうと一人ひとりの生産性の向上や、企業としての生産性の向上に本当に役立つのでしょうか?
    (ちなみに、メディアでは「”残業しなかった手当”を出した企業は、残業代を減らした上で売上が増えた!」と報道していましたが。)


    実際、「残業を減らす」という取り組みは、今回の働き方改革が発端として初めて取り組まれることなどではなく、過去20年も30年も多くの企業が取り組んできたことです。
    「全員一律に残業をなしにする」や「全員一律残業時間カット」などの取り組みは、残業に対しての社員の考え方を変えるためのショック療法的には一時的な効果があります。
    しかし、一時的には効果があるのですが、ほとんどの企業が組織風土を変えることまでに至らず、もとの状態に戻ってしまっています。


    また、「一律で残業を減らす」という取り組みをすると、ほかの人の仕事を助けることをしなくなることが明らかになっています。
    以前、成果報酬制度を導入した企業でも「ほかの人の仕事を手伝わなくなった!」という問題が発覚しましたが、それと同じ副作用が発生します。
    人の仕事の手伝いなどをしている余裕がなくなるからです。

    営業組織においては、たくさん売れる成績の良い営業の「売る意欲やそのモチベーション」を抑制させてしまいます。
    優秀な営業が、新規のお客様との新たな取引を作ってくれたり、かつてないほどの大きな取引を実現してくれたりするから、その企業は次なる発展ができます。
    「売れている営業がもっと売れるようにすること」は、とても投資効果の高い重要な経営施策の1つです。
    その効果はぜひ手にすべきなのですが、みすみす逃すことになってしまいます。
    政府は「プロフェッショナル制度」を推進していますが、「プロフェッショナル制度」もただ導入しただけでは以前企業が取り組んだ成果報酬制度と同じような結果を招くだけとなってしまいます。


    それぞれにとって本当に必要な「働き方改革」の目的をもう一度考える

    働き方改革の目的というものをもう一度考え直したいのですが、企業の経営者にとって働き方改革で成し遂げたいことは、「生産性の向上」です。
    社員一人ひとりの生産性を高めていくことです。
    ちょうどこのコラムを記載している時に発行された「ハーバード・ビジネス・レビュー 2017年度7月号」にて、日本電産・永守社長も同じことを言っていました。


    次に、社員にとっての働き方改革の意味ですが、先述しましたとおり、残業してでももっと働いて自分を高めていきたい人もいますし、残業するよりも日常の生活を大切にしたい人もいます。
    成熟した日本では社会環境が大きく変化しており、従業員が求めている働き方は1つではなく、一人一人の働き方に望む要望は多様化しています。
    多様な働き方の中から、自分にあう働き方を選択できるようになることを望んでいます。


    そして、社会と言う観点では、雇用が増えない理由の1つが雇用のミスマッチ (人が集まらない / 人がやめてしまう) です。
    多様な仕事の選択ができ、それが雇用のミスマッチを減らすことで、生産労働人数を増やすことができます。


    以上にように、今回の働き方改革は「多様化する社員のニーズを汲み取った組織改革をとおして、生産性をさらに向上させること」が目指すべき方向であり、そのためには「残業を減らす」という単純で一律な対策だけでは済まないです。
    (「テレワークを導入する」も同様です。「テレワークを導入する」「残業を減らす」という取り組みは重要ではない、と言っているわけではなく、これだけでは本質的な「働き方改革につながらない」という意味です。)


    企業においてほんとうに必要な「働き方改革」は、仕事の取り組み方を見直すこと

    以上のような本質的な目的に沿って考えますと、企業に求められている働き方改革とは
  • 仕事のモデルそのものを見直すこと
  • 多様な働き方ができる組織制度設計を行なうこと
  • ことが鍵となります。


    過去、多くの日本の企業は、従業員の望む働き方に合ういくつかの選択肢を用意していませんでした。
    今までの日本の雇用は「就職」ではなく「就社」でした。
    この意味は、「仕事を選択していたのではなく、会社を選択していた」ということでした。
    「状況によって仕事内容が変わり、それをしっかり説明することなんて出来ないから、会社や上司の意向に沿う仕事をする」ということが求められてきたからです。


    会社は仕事内容をしっかりプロセス化や定義してきませんでした。
    強いて言えば、仕事内容の定義とは、組織がピラミット構造なために、「営業」とか「生産」とか「開発」という大きな領域での区分しかありませんでした。
    そして、勤続年数に合わせた職能レベルと給与レベルを用意していただけでした。


    社員に求める仕事内容も定義されていなく明文化されていなく、上司による感覚的な評価が行われ、結局勤続年数や時間などの数値評価で給与を決めていました。
    特に、営業組織というのは目に見えづらいもののために、職務の設計がしっかり行われている日本の企業はほんの一握りです。
    でも、もうそんな時代ではなくなっています。


    営業で真に必要な「働き方改革」は、仕事の選択肢を増やすこと

    今回の働き方改革で会社が行わなければならない最も重要な事は、「営業」「開発」「生産」「総務」などという大きな領域の区切りではなく、たとえば営業という仕事においても複数の選択肢を用意し社員が選べるようにする仕事のモデル化です。
    営業という観点においては、今後Job Description (職務明細書)形式を導入して、職務設計・評価体系を作ることが必要となります。


    複数の選択肢に基づく職務は表形式(マトリックス形式)考えます。


    図にように、横軸は、例えば「社内営業 ←→ 外回り営業」で分類します。
    (新規開拓営業 ←→ アカウント営業という分け方もあります)
    縦軸は裁量面で分けます。例えば、「残業をしない働き方  ←→ 残業を含むみなし職務の働き方」などです。
    実際に、営業内において10も20もの分類を作る必要はありません。
    ですが、上図のように少なくとも3-4つは準備する必要があります。


    会社は、上記の分類領域それぞれに対して職務明細とその場合の給与報酬体系を示します。
    社員は、会社が用意した働き方の選択肢から自分のニーズに合わせた職務を選び、その仕事に取り組みます。
    そして、会社は、職務明細と評価項目に合わせ仕事のモニタリングをし、社員に改善する機会を提供します。


    実際には、社員の教育体系やマネージャー向けのマネジメント教育なども合わせて行う必要があります。
    このような営業モデルと評価を構築し、仕事を明確にすることは、ひとりひとりの行動を促し意欲を発揮することにつながります。


    法人営業における「働き方改革」というのは、多様化していることを認識して、知恵を発揮し、緻密にプロジェクトとして推進していくものです。
    政府がいかに「働き方改革」を推進しようとも、企業が取り組まなければ、真の「働き方改革」は実現できません。

    私たちは、複数の職務の決定から職務明細書の作成、そして、その後の効果的な運用に至るまで、営業組織の働き方改革を遂行する支援を行っております。
    まずは、貴社のお悩みについて一緒にお話をしましょう。


    文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらお たくみ, Takumi Terao)
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