「属人化」対策がうまく行かない、どうすれば「属人化」の問題を解決することができるのだろうか? ~ 「属人化」対策がうまく行かない原因と効果的な対策手順

あなたの会社や組織では、「属人化」が問題になっていませんか?

「業績が低い企業」や「目標を達成できていない企業」にその原因を聞くと、「属人化が問題!」とよく伺います。そのため、「属人化」に対する対策を行おうとしていますが、「どうすればよいかがわからない!」もしくは「対策を行ってもうまく行かなかった!」とお聞きします。

多くの企業が「属人化」に悩んでいます。ですが、なぜ、「属人化」してしまうのか、そして、なぜ、属人化の対策がうまく行かないのか?

このノートでは、「属人化の問題の解決」を成功させるための対策手順について解説します。

「属人化」対策がうまく行かない原因と効果的な対策手順

多くの企業が「属人化」で悩んでいる!

多くの企業から「属人化が問題だ!」と、良く聞きます。私たちのクライアント企業は「IT企業」「アウトソーシング企業」「製造業」「商社」「金融サービス企業」などがいらっしゃいますが、これらの企業の経営者や事業部長や経営企画の方々から、「うちの会社の業務は属人化しているんです!」とよく伺いました。ですから、「属人化」は特定の業種業態で発生している問題ではなく、様々な業種業態の企業で発生している問題です。

「目標を達成する」および「パフォーマンスを向上する」ためには、組織の生産性を高める必要があるのですが、「属人化」がその生産性に悪影響を及ぼしています。

「属人化」が引き起こす問題とは?

「属人化」とは、なにか?

なぜ、「属人化」は問題なのでしょうか?

「属人化」とは、ある特定の社員が担当している業務の内容や進め方が、その当人以外では分からなくなってしまっている状態です。特定の業務が一人の人に依存してしまい、その人以外の人ではできなくなっています。実際に、「属人化」している業務や組織では、以下のような問題が起こっています。

◆ 業務がブラックボックス化する
◆ 業務フローでボトルネックができてしまう
◆ 担当社員の退職で業務や業績が悪化する
◆ 組織の業務効率と業務品質が低下する
◆ 品質管理やマネジメントが困難になる
◆ ナレッジやノウハウを蓄積できない
◆ パフォーマンス向上のための対策、目標を達成するための対策ができない

以上からおわかりだと思いますが、「属人化」は対処しなければならない最重要な課題の1つなのです。

なぜ、「属人化」が発生するのか?

これだけの悪影響を及ぼす「属人化」は、どうして発生してしまうのでしょうか?

以下のことが、代表的な「属人化」の原因です。

◆ 多忙で業務に追われていて、表面的な対処ばかりが行われてきた
◆ 業務の専門性が高く、特定の人に依存せざるを得ない
◆ 非生産業務で人員を割けない
◆ 「個人成果主義」が根付いてしまい、相互の協力がない
◆ 業務の目的が不明確になっている、もしくは、人によって言うことが違う

「属人化」の問題解決には、以上のような原因の対処を行う必要があります。以上のように、属人化の原因は明確なのですが、多くの企業は、「属人化の問題」を解決できていない状況なのです。

「属人化」で悩んでいる企業の状態とは?

Case1. IT企業が直面していた「属人化」の問題

あるIT企業のソーシャルビジネス事業部は、FacebookやLINEやInstagramなどのSNS(Social Networking Service、ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をお客様の社内システムに連動するサービスを提供していました。この事業部の業務の範囲は、「営業活動(お客様へのサービスの提案と受注) → 納入活動(お客様の社内システムとの連動) → (サポート活動)導入後の保守や支援」でした。

この事業部は、会社から成長を期待されていた事業部でしたが、思うような成果が出せていませんでした。結果を出せていないだけではなく、システムの連携での事故なども発生していました。さらには、社員の離職率も増えていて、問題となっていました。

この事業部は、「このような問題の原因は属人化だ!」と考えていました。事業部としては、このような状況を解決する必要があり、「属人化」の対策を行いました。例えば、共通のフォーマット(定型の文書や報告書など)をつくりました。また、リモートワークが増えているため、少しでも社員間でのコミュニケーションを図るために、朝と夕方にコミュニケーションをとるミーティングも行うようにしました。さらには、社内チャットツールなどを使った案件の進捗状況の共有化やタスクの共通管理を始めました。

以上のような「属人化」の対策を行いましたが、「特定の人に仕事が集中する」「特定の人だけが情報を持っている」状況を改善することができず、業績は低迷したままでした。

Case2. 商社が直面していた「属人化」の問題

ある地方の商社は、社内業務を担う業務部の「属人化」に悩んでいました。この業務部は、「お客様に出す見積もりの作成」「受注後の納品」「在庫管理や仕入先との調整」などを業務としていました。

この業務部は、以前から、「営業担当者とのやり取りに手間がかかっている」「システムへ入力する量が増大している(入力エラーも増えている)」「在庫欠品」「業務が属人化している」などが問題だとわかっていました。特に、「属人化」という観点では、新入社員がすぐに業務を担える状態ではありませんでした。注文数が多い時期には、アルバイトや短期派遣などで対処したいのですが、マニュアルもないためにそのような対処ができない状況でした。

以前から度々、マニュアルの作成などの対策を実施していましたが、属人化の問題は解決できないままでした。

Case3. 金融サービス企業が直面していた「属人化」の問題

法人向けサービス企業は、受注センター業務の属人化に悩んでいました。この受注センターは以下のような問題に直面し、その対策が必要でした。

◆ 仕事が属人化されており、業務マニュアルが整備されていない。
◆ 過去にも業務の改善を行おうとしたが、主要なメンバーがやめてしまい、うまく行かなかった。その際、やめた人からの仕事の引き継ぎが行われなかった。
◆ お客様に向かって仕事をする姿勢を高める必要がある。
◆ 業績が低迷している。何しろ業績を向上させなければならない。そのためにも、「単なる注文の処理」だけではなく、「注文をとってくる役割」も担ってほしい。

経営企画グループは、そのような状況を解決するために、この受注センターを対象に、コンサルティング会社の「業務改善研修」を実施しました。業務を止めるわけには行かないので、社員たちを2つのグループに分けて研修を実施しました。その研修のあと、社員たちは業務の棚卸しと整理を行いました。

この研修を機に、経営企画グループは「受注センターの属人化の問題は解消するだろう!」と期待していました。しかし、解決できないままでした。

「属人化」を効果的に解決するために、必須ですべき対策とは?

よく行われている「属人化」の対策とは?

以上の企業のように、多くの会社が「目標達成できない」「組織の生産性が低い」「パフォーマンスを向上できない」ことに悩んでおり、その主要な原因の1つは「属人化」でした。その「属人化の対策」のために、多くの企業は以下のような「属人化の対策」が行っていました。

◆ 業務のマニュアルや手順書を作成する
◆ 業務の棚卸しと整理をする
◆ チャットツールなどを利用したコミュニケーションの促進
◆ FAQ(Frequently Asked Questions、頻繁に聞かれる質問)をまとめ、ナレッジ化
◆ 研修の実施

「属人化」の対策がうまく行かない?

多くの企業は以上のような属人化対策を行っていますが、その対策を行っても効果が出ていないことが多いです。私たちも多くのクライアント企業の属人化対策を支援しましたが、私たちが支援をする前に、クライアント企業では、以上のような一般的な対策は行っていました。ですが、属人化の問題を解決することはできていなかったのです。

これらの属人化対策は効果がないわけではありません。ですが、これらの属人化対策を行う前に、行っておくべきことがあるのです。

効果的な属人化対策のために、まずすべきことはなにか?

すでにお伝えした通り、私たちは、多くの企業の「属人化対策」を行いました。その属人化対策を成功させるために、まずすべきことは、「標準業務のプロセス化」です。

本来、仕事や業務はプロセスです。ですが、この仕事や業務の標準的なプロセスが明確になっていないために、社員たちが独自の対策を行わなければならなくなっています。また、標準的なプロセスがないために、業務の生産性や品質の改善ができていません。

そんな中、リーダーやマネージャーたちは業務のパフォーマンスを高めなければなりません。そうなると、ますます特定の人(特定の社員)に依存するようになります。さらに属人化が深刻な状況へとなっていくのです。

私たちが、クライアント企業の属人化の対策のために最初に実施していることは、「標準的な業務プロセスを図示すること」です。プロセスには必ず、「目的と目標」や「Output(成果)」や「開始と終了」がありますから、「目的と目標」や「Output(成果)」や「開始と終了」も含めて文章化することから始めます。

「属人化」の問題を解決するためにまずすべきことは、「標準業務のプロセス化」です。それを行ってから、(上記でお伝えした)様々な企業が行っている一般的な属人化の対策を行えば、効果的に属人化の問題を解決することができます。また、様々な属人化対策を行った後の最終段階で、「人事評価」の見直しも検討します。そうすることで、属人化の問題を解決できる確率をさらに高めることができます。

(この「プロセス化」と「評価の見直し」については、チームで結果を出すためのマネジメントスキル「仕事の仕組み化」 ~ リーダーやマネージャーとして「チームを率いて結果を出す仕事の技術」(3) で解説しています)

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「属人化」の問題を解決し、組織の生産性とパフォーマンスを向上しよう!

多くの企業が「属人化」の問題に悩んでいます。この属人化の問題には、効果的に解決する対策手順があり、その手順通り行うことで、かなり高い確率で解決することができます。

このノートで紹介した通り、属人化の問題を解決するためにまず行うべきことは、「標準業務のプロセス化」です。このことから始めることが重要です。

私たちは、多くのクライアント企業の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウと経験があります。もし、属人化対策がうまく行っていないのであれば、私たちがその対策を遂行する支援をいたします。より具体的な内容説明の希望/質問/ご依頼は、下記からお問い合わせください。

(本ノートは、2024年5月3日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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