景気低迷期に入ると、多くのBtoB企業で営業担当者の目標達成率が急激に悪化します。売上見込は外れ、受注予定だった案件は失注し、最終的にはリストラを検討せざるを得ない、そんな状況に直面する企業も少なくありません。
しかし一方で、同じ不況下でも営業成果を回復させている企業が存在します。その違いは、営業担当者の頑張りではなく、「営業の仕組み」そのものにありました。
本ノートでは、実際に業績悪化に直面したBtoB企業A社が、SFA(営業支援ツール)の使い方と営業プロセスを見直すことで、営業成果を立て直した事例をもとに、不況時でも結果を出せる営業組織の作り方を解説します。
不況でも結果を出せる「営業の仕組み」はどう作るのか?
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:不況で露呈した営業組織の3つの問題
私たちのクライアント企業A社は、BtoBとよばれる法人営業をしている企業です。A社は、景気の低迷を受けて、売上目標を達成できている営業担当者が急激に減少しており、このままではリストラを行わなければならない状況でした。A社の営業組織内の管理は、下記の項目で毎月の売上見込だけを管理している状況でした。◆ 今月の売上見込金額はいくらか?
◆ 今月どのような商談が受注できる予定なのか?
その当時、A社の営業現場では、以下のような問題が発生していました。
◆ 毎月の売上見込が大きく外れる
◆ 受注予定だった商談が決まらない
◆ 営業担当者の目標達成率が急低下
当時の営業管理は「今月いくら売れそうか」「どの案件が受注予定か」という結果の数字だけを見ており、プロセスが可視化されていませんでした。
問題解決の切り札としてSFAを導入したが…
これらの3つの問題を解決するために、A社はSFA(Sales Force Automation)と呼ばれる営業支援ツールを導入しました。そのSFAを販売している会社の営業担当者からは、「我社のSFAは、A社の直面している営業問題を解決するためには最適なツールです!」という提案があったためです。SFAというツールは、営業組織の生産性を向上させるためのシステムです。SFAには、1つ1つの商談の進捗状況を管理する機能があります。商談の進捗度合いを管理することで、下記のような効果をもたらします。
◆ 売上見込の精度向上
◆ 受注予定日の明確化
◆ 受注確率の向上
SFA導入で起きがちな2つの失敗
A社は、新しい営業の仕組みとしてSFAを利用し始めました。しかし、導入しただけでは成果は出ませんでした。むしろ、新たな問題が発生したのです。◆ 失敗1. 導入目的と使い方が共有されていない
◆ 失敗2. 標準設定の営業プロセスをそのまま使った!
失敗1. 導入目的と使い方が共有されていない
A社は、SFAを導入する際、「使っていれば、そのうち使い方もわかるだろう!」と考え、導入前のトレーニングを行いませんでした。このようなシステムを導入するときには十分なトレーニングが必要です。トレーニングを行うことで、営業マネージャーと営業担当者は下記のことを学ぶ必要があります。◆ どのような目的でシステムを導入したか?
◆ このシステム導入による得られる効果は?
◆ このシステムで必須として入力すべきことはなにか?
◆ このSFAの使い方は?
このようなトレーニングを行わなかったために、以下の状態に状態に陥ってしまいました。
◆ 何のために入力するのか分からない
◆ 入力項目が人によってバラバラ
◆ そもそも入力しない担当者が出る
失敗2. 標準設定の営業プロセスをそのまま使った!
SFAの標準設定では、「アポ取得 → ヒアリング → デモ → 提案 → 見積 → クロージング」といった一般的な進捗項目が用意されています。しかし、これがA社の実際の営業プロセスと合っていなかったのです。(SFAは様々な企業が販売していますが、販売している企業によってこの設定されている項目は異なります)
A社は、SFAの商談の進捗項目の設定をこのまま使い始め、「アポ取得」「ヒアリング」「デモ」「提案書の提出」「見積書の提出」「クロージング」のそれぞれの毎月の量をモニタリングしていました。そして、営業担当者一人ひとりの量を確認し、営業マネージャーたちは以下のような指示をしていました。
◆ A君は、デモが少ないからデモを増やすように…
◆ B君は、提案書の提出量が少ないから、これを増やすように…
このようにSFAを利用しはじめたのですが、当初想定していた効果を得ることができませんでした。その原因は、A社の営業状況に合う商談の進捗項目をSFAに設定していなかったためでした。
新たに発生した問題の対策を実施!
対策1. 顧客の購買プロセスに合わせてSFAを再設計!
A社が導入したSFAに初期設定されていた商談進捗の項目は、「アポ取得」「ヒアリング」「デモ」「提案書の提出」「見積書の提出」「クロージング」でした。A社は、この初期設定されている商談進捗の項目をそのまま使っていましたが、これはA社にとって「商談を確実に受注するために適切な商談の進捗項目」ではありませんでした。A社で実際に起こっていたことの1例ですが、SFAのデータから「デモの量が少ない」という事がわかったとしましょう。そうすると、営業マネージャーが営業担当者へ「デモの量を増やすように!」という指示をします。営業担当者はデモの量を増やすのですが、売上は改善しませんでした。
実際に私たちが調査をしてみますと、「デモの量を増やせ!」という指示でしたので、営業担当者たちはデモをしていました。ですが、「新しい商品が出ましたので見てください!」とやみくもにデモをしている状況だったのです。お客様のニーズや予算を確認して、それに合ったデモをしている状況ではないために、売上を増やす効果はありませんでした。
法人営業とは「お客様の購買プロセスを先に進めるお手伝いする活動」とも言えます。BtoCと呼ばれる消費者向け営業の場合には即断や衝動買いが期待できますが、法人のお客様は合理的に購買の可否を判断します。SFAに設定する商談の進捗項目は、法人企業のお客様の合理的な購買手順に合致するように仕組み化しなければ、確実に受注することに役立ちません。そこで、A社はSFAの商談の進捗項目の設定を以下のように見直しました。
「引き合い評価」→「予算化」→「要求の明確化」→「競合比較」→「価格交渉」→「受注」
対策2. 新しい営業プロセスの再トレーニング
以上のように、SFAの商談進捗の設定を修正したあと、営業マネージャーと営業担当者にトレーニングを実施しました。これによって、営業担当者たちが入力する情報が統一化され、当初悩みとなっていた下記の問題を改善することができました。◆ 毎月の売上見込の精度が向上
◆ 商談毎の受注見込の精度が向上
◆ 営業担当者たちの目標達成の確率が改善
SFAを利用して営業状況を数値化することは大切です。ですが、営業現場の実態に即していないデータを集めても効果が得られることはありません。逆に悪化させてしまうのです。
まずは、確実に受注へと結びつけることに役立つ商談の進捗項目を設定します。そして、それを数値として把握し、対策を取ります。そうすることで、営業組織と営業パーソン両方のパフォーマンスを向上させることができます。
不況時こそ「営業の仕組み」が企業の差になる
不況になると、なぜ営業成績は一気に落ちるのか? SFAを導入したのに、なぜ成果が出ないのか?不況でも成果を出す営業組織には、共通点があります。
◆ 戦略的な営業計画がある
◆ 顧客価値を起点に行動している
◆ プロセスと成果が明確
◆ 教育と改善が仕組み化されている
営業が強い企業は、これらを支える営業の仕組みを構築し、継続的に改善しています。A社もその一例です。
あなたの会社の営業成績が伸び悩んでいる原因は、営業担当者ではなく「仕組み」にあるのではないでしょうか?
不況時(景気低迷期)こそ、営業の仕組みを見直す絶好のタイミングです。SFAを導入しているにもかかわらず成果が出ていない場合、今回紹介した視点が必ずヒントになります。営業組織の立て直しに課題を感じている場合は、早めに現状を整理し、適切な打ち手を検討することをおすすめします。
私たちは、多くの営業組織の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。様々なクライアント企業の「営業の仕組みを見直す」豊富なノウハウと経験があります。貴社の「営業の仕組みを見直す」ことが上手く行っていなければ、何かしらの問題が潜んでいます。私たちがその問題を発見し、効果的な「営業の仕組みを見直す」策をご提案し、達成するまで支援します。具体的な状況に合わせたご相談は、こちらからお気軽にお問い合わせください
(本ノートは、2008年3月24日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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