結果を出す営業組織の「営業プロセス管理の教科書」 ~ 営業組織のパフォーマンス(業績)を最大化する強力な方法が、営業プロセスでマネジメントすること!

営業の業績(営業のパフォーマンス)の改善や営業組織の強化は、勘や経験に頼って行う時代ではなくなりました。営業組織のパフォーマンスを確実に向上させるためには、論理的/合理的/戦略的に営業組織をマネジメントすることが必須です。そのカギを握るのが「営業プロセスによるマネジメント」です。

私たちは、「営業プロセスの見える化と最適化」「営業プロセスデータの収集&分析体制の構築」「営業プロセスに基づく営業スキル強化」などの支援をしました。営業の業務、管理方法、育成体制をプロセスとして見える化し、営業組織を強化することで、クライアント企業の業績(パフォーマンス)の最大化に貢献しました。

営業プロセスによるマネジメントを導入する目的は、「営業組織の目標達成と事業の成長」です。例えば、「SFA(Sales Force Automation、営業支援ツール)を導入したが、成果が出ていない!」と感じるのであれば、営業プロセスマネジメントにその原因があります。

このノートでは、営業プロセスについての基礎から応用、具体的な事例まで、営業プロセス管理とその最適化について詳細に解説します。

営業組織のパフォーマンス(業績)を最大化する強力な方法が、営業プロセスでマネジメントすること!

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営業プロセスとはなにか?

実は、どの営業組織にも営業プロセスが存在している!

「営業プロセス」とは、営業パーソンが行う業務をプロセスで表現したもので、「お客様へのアプローチから受注までにどのような手順があるのか」をステップとしてまとめたものです。

〈初期訪問〉 → 〈情報提供〉 → 〈ニーズ把握〉 → 〈提案〉 → 〈クローズ〉は、よく紹介されている営業プロセスの一例です。営業プロセスは、どの営業組織にも存在していて、扱う商材や顧客のタイプにより各社各様です。

どの営業組織にも営業プロセスがあるのですが、自社の営業プロセスを明文化(見える化)している営業組織はあまりありません。ですが、営業プロセスを文書化(見える化)し、営業プロセスが営業パーソン全員の共通認識となれば、営業組織の目標達成力や生産性を大きく向上することができます。営業プロセスでマネジメントすることで、「営業活動のどこに、どのような問題があるか?」など、見えづらかった本質的な営業課題や問題を明確にすることができます。営業組織全体の目標達成と業績向上(パフォーマンス向上)に導く「地図」が営業プロセスです。

また、先ほどお伝えしたとおり、「最適な営業プロセスは会社によって異なる」ということに注意が必要です。書籍や研修などで紹介されている営業プロセスをそのまま営業組織に導入しても、営業組織の成績を最大化できるとは限りません。業績(パフォーマンス)を向上するために活用すべき営業プロセスは、その会社が扱っている商材/目指す財務目標/主たるお客様の購買プロセス、などを検討して最適化することが重要です。

多くの営業力強化支援会社が様々な「営業プロセス」を提案している

多くの営業組織の営業プロセスを見てきましたが、「営業プロセスが見える化できていない」もしくは「書籍や研修などで知った営業プロセスをそのまま使っている」営業組織が多い状況でした。営業プロセスは、営業組織にフィットするよう最適化する必要があるのですが、そのような最適化をしていないまま利用しています。

現在、以下のような「営業力強化に関する商品やサービスを販売する企業」が、様々な「営業プロセス」を企業へ提案しています。

◆ MA(Marketing Automation)やSFA(Sales Force Automation)などの営業支援ツールを提供しているIT企業
◆ 営業力強化などのコンサルティング会社
◆ 人材育成を支援する研修会社 など

これらの企業が提案している営業プロセスには、以下のようなものがあります。

〈リスト〉 → 〈テレアポ〉 → 〈商談〉 → 〈受注〉
この営業プロセスは、電話営業やホームページに問合せをしてきたお客様を対象に販売していく営業に合う営業プロセスです。携帯電話販売や保険の販売など、個人向けの営業でよく見られる営業プロセスです。

〈アポ取得〉 → 〈ヒアリング〉 → 〈提案書の提出〉 → 〈見積書の提出〉 → 〈デモ〉 → 〈クロージング〉 → 〈フォロー〉
この営業プロセスは、訪問件数など営業の行動量を重視した営業組織で使われる営業プロセスです。多くの製造業や商社などのプロダクト販売の営業でよく活用されています。

〈初期訪問〉 → 〈情報提供〉 → 〈ニーズ把握〉 → 〈提案〉 → 〈クローズ〉
この営業プロセスは、ソリューション営業やコンサルティング営業など、「お客様のニーズを把握する」という要素を盛り込んだ営業プロセスです。法人企業に高額な商材やソリューションを提案する営業で活用されています。

以上のような営業力強化支援サービスを販売する「IT企業」「コンサルティング会社」「研修会社」が提案している「営業プロセス」は、それらの会社が販売しようとしている商品やサービスで利用されているものです。すなわち、彼らが提案している「営業プロセス」は、彼らが扱っている商品やサービスをたくさんの企業に売るために、どのような営業組織でもつかえそうなものになっています。ですので、これらの営業プロセスをそのまま使うのではなく、自社に合わせて最適化することが大切です。

ティ・スクエアが提案する営業プロセスとは?

私たちも営業力強化を支援するコンサルティング会社ですから、基本型となる営業プロセスをいくつか編み出しています。私たちがクライアント企業へ提案する営業プロセスの代表的なものには以下のようなものがあります。

〈顧客状況把握〉 → 〈戦略目標設定〉 → 〈課題合意〉 → 〈解決策遂行〉 → 〈効果測定〉
大企業や政府など、大きな組織のお客様と大きな取引関係を構築したい営業組織のための営業プロセスです。私たちのクライアント企業が、この営業プロセスを活用して、1回受注するだけではなく、継続的かつ戦略的な信頼関係構築に挑戦しています。

〈機会創出〉 → 〈予算化〉 → 〈競合対策〉 → 〈契約納入〉 → 〈関係強化〉
持続的な目標達成のため、顧客へ積極的な営業をしていくための営業プロセスの例です。1回だけ受注して終わりではなく、会社対会社の関係構築を実現していくためのものです。

私たちは、これらの営業プロセスを押し付けるのではなく、クライアント企業にフィットするように最適化します。クライアント企業の営業組織の状況や目指す目標にフィットする営業プロセスへ最適化することが、クライアント企業の今後の売上目標達成や成長に役立つためです。

クライアント企業の良さを引き出し、その企業特有のオーダーメイドな営業プロセスを構築し、確実に目標達成ができるようにお手伝いすることが、私たちのミッション(使命)です。

「営業プロセスはなぜ大切なのか?」営業プロセスによるマネジメントのメリット!

営業プロセスによるマネジメントを行うメリットには、以下の4つがあります。

メリット1. 営業プロセスのボトルネックを発見するための「ファネル管理」
メリット2. 営業プロセスがあるからこそ深刻な問題を発見できる
メリット3. 社外で行われる営業業務がわかりやすくなる!
メリット4. 営業プロセスの見える化と最適化で、営業パーソンのモチベーションも上がる!

メリット1. 営業プロセスのボトルネックを発見するための「ファネル管理」

営業をプロセスでみると、「ファネル管理(もしくは、「パイプライン管理」とも言われます)」ができるようになります。ファネル(funnel)とは、日本語で漏斗(じょうご)のことです。図のように、ファネルのそれぞれのステップのデータを収集することで、目標達成や業績向上のボトルネック(障害)を発見できます。確実に目標達成するためには、そのボトルネック(障害)の対策を行う必要があるのです。

ファネル管理を行なうためには、一般的には、SFA(Sales Force Automation)と呼ばれる営業支援ツールを活用します。SFAでは、それぞれの商談の進捗状況や今後の見込み売上金額を管理できます。SFAを使うことで、ファネルのそれぞれのステップのデータを簡単に集計することができます。営業パーソンの数がそれほど多くなければ、Excelなどのスプレッドシートで管理することもできます。

メリット2. 営業プロセスがあるからこそ深刻な問題を発見できる

営業プロセスによるマネジメントを行う最大のメリットは、目標達成、もしくは、業績向上(パフォーマンス向上)に対する課題や問題を明らかにできることです。

以上で説明したファネル管理を更に追求することで、「目標達成できないのはなぜなのか?」「どの段階でどのような障害が起きているのか?」など、取るべき対策を明らかにすることができます。例えば、下記のような「目標達成できない原因」を推定することができます。

「新規開拓」の段階での問題

◆ 新規のお客様に紹介しても関心を持ってもらえない
◆ 行きたい会社があるが、お客様の連絡先がわからない
◆ キーマンにアプローチできない

「商談中」の段階での問題

◆ お客様のニーズがつかめていない
◆ 信頼されていない
◆ 提案内容が弱い
◆ 商談をどのように進めてよいかわからない

「お客様の関係強化」の段階での問題

◆ アフターフォローの時間がない
◆ 上層部と会えない

営業プロセスを見える化することで、以上のような「目標達成できない原因」や「業績向上(パフォーマンス向上)できない原因」を特定し、その後、業務内容や営業ツールの見直しや、研修やトレーニングプログラムの導入など、具体的な対策を実施することができるようになります。

メリット3. 社外で行われる営業業務がわかりやすくなる!

法人営業(BtoB)の仕事は、基本的にお客様先(社外)で行われます。社外で行われますから、営業パーソンの仕事の進め方を直接観察することはできません。そのため、業績が悪い営業パーソンに対する対策は、どうしても上司であるマネージャーの過去の経験や勘に頼りがちです。

ですが、本来、業務改善や業績向上には、論理性/合理性/戦略性が重要です。勘や経験だけでは、業務改善や業績向上はできません。マネージャーが「営業パーソンたちが行っている商談」を観察しづらい法人営業(BtoB)だからこそ、まず営業プロセスを見える化し、プロセスに基づいてデータ化することで、具体的な対策が取れるようになるのです。

メリット4. 営業プロセスの見える化と最適化で、営業パーソンのモチベーションも上がる!

法人営業(BtoB)の営業プロセスの見える化と最適化をすると、以下のような効果をもたらします。

◆ 売上の増加、利益の増加
◆ 生産性(社員一人あたりの売上や利益)の向上
◆ 取引金額の増加
◆ 売上予測の向上
◆ 新規開拓による取引顧客数の増加
◆ 商談件数の増加
◆ 商談成約率の向上
◆ 商談期間の短縮
◆ 営業業務の問題点の発見
◆ 顧客との信頼関係の構築や強化
◆ 営業の育成コストの最適化
◆ 人事評価の最適化
◆ 営業の意欲やモチベーションの向上

以上の効果に「営業の意欲やモチベーションの向上」が入っていることに驚いた方もいるかもしれません。私たちは、これまで多くの法人営業(BtoB)の営業力強化コンサルティングを行ってきました。その際、営業マネージャーから「営業パーソンの意欲やモチベーションが低い」と嘆く声をたくさんうかがいました。様々な対策を取ることで一時的に意欲を高めることができても、すぐにもとに戻ってしまうことに苦労していました。

営業プロセスの見える化と最適化は、営業パーソン1人ひとりの意欲やモチベーションを高めることに役立ちます。メンバー全員で営業プロセスを共有することにより、ゴールまでの道のりと現在の位置を把握できます。「自分が今どこにいて、次は何にエネルギーを注ぐべきなのか」が明確になれば、マネージャーは営業パーソンへ効果的な支援や指示ができるようになり、その結果、営業パーソンの成績が向上し、さらに、営業パーソンのモチベーションが高まるのです。

以上のように、「営業プロセス」による営業マネジメントを行うことは、これだけ多くのメリットがあるのです。

自社に最適な営業プロセスは、どのように導入すればよいか?

自社に合わせた営業プロセスは4つの観点で考える!

営業プロセスによる営業マネジメントは、以上のように多くのメリットがあるのですが、では、どのように導入すればよいのでしょうか?

自社の営業組織にとって最適な営業プロセスを明らかするには、下記の4つの観点で検討することが大切です。

1. お客様
2. 商材の特性
3. 目指す財務的な成果(もしくはその先行指標となるKPI)
4. お客様の購買プロセスに基づく検証

1.お客様

まず、「お客様」という観点で、以下について検討します。

◆ 主要なお客様は誰か?(大手企業か中小企業か、どのような業界のお客様か?)
◆ 既存顧客と新規顧客のどちらが重要か?

2.商材の特性

次に、「商材」という観点で、以下について検討します。

◆ 中間財(原材料)か、設備か?
◆ 手離れが良い商材か、サポートが必要な商材か?(納入だけですむか、作業が必要か?)
◆ 一回あたりの販売額が大きいか小さいか?

3.目指す財務的な成果(もしくはその先行指標となるKPI)

「目指す財務的な成果」という観点では、以下について検討します。

◆ 売上が重要なのか、利益が重要なのか?
◆ 受注単価を増やすのか、商談件数を増やすのか?
◆ どの商材の売上を増やすのか?

4.お客様の購買プロセスに基づく検証

上記1から3の視点で自社の営業の状況を検討することで、自社にとって最適な営業プロセスがだいぶ見えてきます。最適な営業プロセスの検討の最終段階は、「営業プロセスはお客様の購買プロセスに沿ったものになっているか?」の検証です。お客様が法人企業の場合、お客様に購入してもらうためには、まずお客様が買う気になり、そして、お客様が社内の購買プロセスを先へと進める必要があります。

ですので、営業プロセスがお客様の購買プロセスに沿ったものでなければ、その営業プロセスは機能しません。法人営業という仕事は、「ものを売る仕事」というよりは「お客様の購買プロセスが先にすすむよう支援する仕事」と言えるのです。

自社にとって最適な営業プロセスを見える化する際は、以上の4つの観点で注意深く自社の状況を検討することが大切です。

最適化した営業プロセスを組織に定着させる3つのポイント

最適な営業プロセスを検討しただけで終わりにするのではなく、組織に定着させるためには、プロジェクトとして実施することが大切です。営業プロセス管理の導入や最適化をプロジェクトとして行わなかったために、結局組織内に定着できなかった営業組織も多いです。検討を重ねてきた営業プロセスを組織に定着化するためには、下記の3つの手順で実施する必要があります。

1. 営業管理の方法を見直す
2. 研修やトレーニングを実施する
3. 営業データを分析する体制を作る

1. 営業管理の方法を見直す

営業プロセスを定着させるための1つ目の方法は、営業プロセスの見直しとともに、営業管理の方法も見直すことです。

マネージャーが短期的な視野での営業管理を行っていると、営業組織の中では、「今月はいくら売れるんだ?」「今月の目標金額までには、xxx円足りないぞ!」というような直近の売上金額の話ばかりになります。そうなると、営業パーソンはすぐ売れそうな案件ばかりを探すようになり、取引実績のあるお客様との関係構築活動をおろそかにします。

そのような短期的な視点だけの営業管理の方法から、中長期的な要素を含めた営業マネジメントへ見直します。「3か月いう観点での商談管理」「半年もしくは1年という観点でのお客様との取引額や関係構築」のような中期的な視野で新規開拓先や既存顧客との関係構築に対するマネジメントを行います。

このように「新しい案件を、どこで、どう育てて、どう刈り取るか?」を営業プロセスにそって考え直すことで、「短期的な視点に偏りすぎ」などのバランスが悪い営業になっていた状況を改善することができます。

あるクライアントは、当初、毎月の売上予測だけを確認していました。そこで、営業プロセスの最適化とともに3ヶ月先までの売上予測と各商談の進捗状況の管理を行うようにしたことで、その後20%以上の売上成長を達成できました。

2. 研修やトレーニングを実施する

営業プロセスを定着させるための2つ目の方法は、営業マネージャーや営業パーソンに研修やトレーニングを実施することです。その研修やトレーニングでは以下のことを学ばせます。

◆ 営業プロセスの最適化を行った目的や目指す効果
◆ 以前の営業プロセスと最適化した営業プロセスの違い
◆ マネージャーや営業パーソンに期待していること
◆ 具体的な商談での実施方法

営業プロセスを見直したら(最適化したら)、必ず以上のような研修やトレーニングを実施します。上記のような内容を盛り込んだトレーニングを行うからこそ、営業プロセスが組織に定着し、確実に目標達成や業績(パフォーマンス)を向上させることができます。

3. 営業データを分析するしくみを作る

営業プロセスを定着させるための3つ目は、営業プロセスからデータを収集し、それを分析するしくみを作ることです。

データの収集や分析をすることで、導入した営業プロセスのどこがうまくいっているのか、または、どこがうまくいっていないかを確認します。うまくいっていないところは、新たな対策を取る必要があります。

また、そのデータを定期的にモニタリングすれば、目標達成の障害を発見することができます。

営業プロセスを営業組織に定着させる際の注意点

営業プロセスを組織に定着させる3つのポイントを説明しましたが、私たちのクライアント企業X社で発生していた問題を通して、実施するときの注意点を紹介します。

X社では、お客様からの見積依頼があると、営業パーソンたちが見積書を作成します。問い合わせを頂いたお客様には、すでに予算があり、他社と比較検討しているお客様もいました。その逆に、まだ予算がないお客様もいました。このような状況において、「この商談は、営業プロセス上、どこまで進んでいるのか?」について、営業パーソンの判断が異なっていました。

X社の営業プロセスは、「〈アポ取得〉 → 〈ヒアリング〉 → 〈提案書の提出〉 → 〈見積書の提出〉 → 〈デモ〉 → 〈クロージング〉 → 〈フォロー〉」でした。

営業Aさんは、お客様に見積書を出したので、営業プロセスで考えると「〈アポ取得〉 → 〈ヒアリング〉 → 〈提案書の提出〉 → 〈見積書の提出〉まで進んでいる」と考えていました。ですので、Aさんは、「次は、デモをして、クロージングをしよう」としました。ですが、実際には、Aさんのお客様は、まだ予算も取れていない段階だったのです。

そのような状況なのに、Aさんは「いつ、デモをしましょうか?」「今購入してくだされば、安くしますよ!」というクロージングをしました。Aさんから度々買うことを急かされたお客様は、Aさんに対して嫌気を感じはじめました。

営業Bさんは、お客様が予算について教えてくれなかったために、営業プロセスで考えると「〈アポ取得〉 → 〈ヒアリング〉まで進んでいる」と考えました。そのため、Bさんは導入効果を提案し、お客様の予算獲得のお手伝いをしようとしました。

その準備のために、2週間ほど時間がかかってしまいました。2週間後、お客様に面談のお願いの連絡をしたところ、お客様から「遅いですよ。もう他社から購入しようと進めているところです。」と言われてしまいました。お客様が予算を教えてくれなかった理由は、より安く買おうとする価格交渉が頭にあったためでした。

以上にように、営業パーソンによって判断が異なる事がよく発生しています。そして、判断を間違えると、本当ならば受注できた案件を失注しまうのです。こうしたことが起こらないようにするためにも、営業プロセスを組織内に定着させる時には、以下のことに細心の注意をはらう必要があります。

◆ できるだけシンプルにする
◆ 購買プロセスとの整合性を十分に検討する
◆ 営業プロセスのそれぞれのステップの定義をドキュメントとして残す
◆ 営業パーソンが理解し、正しい判断できるような研修やトレーニングを実施する

誰にでもわかりやすく、誰しもが活用できるようでなければ、上手く運用できません。また、「営業プロセスの各ステップのデータをモニタリングすることが大切だ」とお伝えしましたが、複雑で、定義されていない営業プロセスですと、そのデータの精度が悪くなります。多くの営業組織では、データの精度が悪いために「効果的に営業業務が遂行できているか?」を判断できない状況になっています。データの精度を上げるためにも、営業プロセスをシンプルにすることが大切です。

営業プロセスを活用したマネジメントとは?

法人営業(BtoB)で行われる営業管理とは?

ほとんどの営業組織では、以下の3つの営業管理を行っています。これらの営業管理も営業プロセスと関連して考えるようにすることで、営業組織を強化することができます。

1.売上目標管理 → 売上目標に対しての達成度を管理する
2.顧客訪問などの行動管理 → 個々の営業パーソンの訪問量や訪問先について管理する
3. 商談管理 → 現在の商談について、「いつ、いくらで受注できるか」を管理する

売上目標管理と営業プロセス

売上目標管理では、「会社の売上目標 → 営業部の売上目標 → 個人の売上目標」または「年間売上目標 → 四半期売上目標 → 月間売上目標」とブレイクダウン(詳細化)され、それぞれの売上目標の達成度を管理します。売上目標が決まったら、「毎月の売上目標額」→「目標達成に必要な毎月の商談件数や金額」→「今月、必要な新規商談開拓件数や金額」のように売上目標から逆算して、目標を達成するために必要な活動量を算出することができます。

たとえば、月間の売上目標が5000万円、商談単価が1000万円の場合、「今月中に5件、5000万円を受注する」必要があります。競合との勝率が50%だと「少なくとも10件、1億円分の商談が必要」です。すべてのお客様が買ってくれるわけではありませんので、仮に70%のお客様が買ってくれるとしましょう。そうすると「毎月15件、1.5億円分の見込み商談を新規に開拓する必要がある」と推測できます。

上記のように、確実に売上目標を達成するためには、売上目標から営業プロセスに沿って逆算し、各ステップでの商談量や行動量の数値目標を設定し、その達成度を管理することが効果的です。数値目標に達していないステップがあれば、そこに営業上のボトルネック(障害)があることがわかります。ボトルネックの対策として、営業スキルの強化や営業プロセスのさらなる最適化を行い、その問題解決を目指します。

顧客訪問などの行動管理と営業プロセス

顧客訪問などの行動管理では、それぞれの営業パーソンの「訪問先/訪問目的/訪問件数」を管理します。多くの営業組織では、「訪問件数は管理しているが、訪問先と訪問目的は管理していない」ことが多いです。訪問件数の管理よりも重要なことは「訪問先と訪問目的」です。ここでも営業プロセスが役立ちます。

営業パーソンは、「アポが取りやすいお客様」「仲の良いお客様」に行きがちです。そのため、新規のお客様や購入条件や要望などが厳しいお客様への訪問を後回しにする傾向があります。訪問件数だけを管理していては、このような「行きやすいところばかりに行っている」という問題を発見することができません。私たちのクライアント企業では、私たちが支援を始める前にこのような問題の対策を行っていませんでした。

新規顧客への訪問件数が少ない営業パーソン、または、特定のお客様への訪問に偏っている営業パーソンに対しては、その訪問先をまず確認し、訪問先を見直す必要があります。競合との勝率が良すぎる営業パーソンも、訪問先と訪問目的を確認する必要があります。こうした営業パーソンは、苦手なお客様に訪問せず、受注機会をみすみす逃している可能性があるためです。

このような兆候を発見しやすくするためには、営業プロセスに「商談発見」の要素を盛り込みます。その営業プロセスと訪問計画を連携して分析することで、営業パーソンがバランスよく効果的な訪問計画しているかどうか判断することができます。

営業組織の業績向上(パフォーマンス向上)のためには、このような偏った訪問をしている問題を早期に発見し、対策を実施することが必要です。

案件や商談の管理と営業プロセス

案件や商談の管理では、「保有している商談件数や金額」「それぞれの商談の売上予定時期」そして「それぞれの商談の受注確率」を管理します。毎月の売上時期の予測精度を高めるためには、営業プロセスに基づいて、案件や商談の管理をすることが大切です。営業プロセスに基づいて商談の進捗状況を確認した時、その商談が「ヒアリング」の段階でしたら、受注できるのは3ヶ月先でしょう。また、「(最終)見積提出」の段階でしたら、1ヶ月後には受注できるでしょう。営業プロセスは、各商談の売上予測の精度を高めることに役立ちます。

以上のように、営業が行っている3つの管理(「売上目標管理」「顧客訪問などの行動管理」「案件や商談の管理」)をそれぞれ独立して別々に行うのではなく、営業プロセスと連携して行なうことで、より効果的な営業マネジメントができるようになるのです。

営業プロセスがあるから、営業組織をうまくマネジメントできる!

自社の状況に合わせて最適化した営業プロセスがあると、各ステップにおけるパフォーマンス(数値データ)をモニタリング(定期測定)がすることができ、下記のようなことを判断できます。

◆ 営業組織が効果的に業務を遂行できているか?
◆ どのステップが目標達成のボトルネック(障害)となっているか?
◆ どのステップを改善することでさらなる業績向上ができるか?

「営業プロセスの各ステップにおけるパフォーマンスのモニタリングがどれだけ重要か」は、飛行機の操縦席にあるダッシュボードの計器類をイメージするとわかりやすいでしょう。ダッシュボードは、飛行機が目的地に向かって問題なく飛行できているかどうかを判断するために必須なものです。営業プロセスの各ステップにおけるパフォーマンスのモニタリングは、営業組織を操縦するためのダッシュボードの役割をはたします。

営業プロセスを見える化することは、上述したとおり「売上目標管理」「顧客訪問などの行動管理」「案件や商談の管理」において、より具体的なデータを収集&分析することを可能にします。すなわち、より精度の高いデータで営業組織を効果的に操縦することができるようになるのです。


営業プロセスの最適化が成功をもたらした事例

営業プロセス最適化事例1. お客様の購買承認プロセスを組み込む

法人企業相手にITシステムを販売しているクライアント企業Y社の経営者の課題は「受注確度が悪い」ことでした。新規引合いはあるのですが、その新規引合いの多くが受注に至らず、受注確率が悪かったのです。

Y社は、営業プロセスの見える化ができていませんでした。調査をしたところ、Y社の営業プロセスは、〈初回訪問〉 → 〈提案〉 → 〈交渉〉 → 〈導入設置〉であることがわかりました。IT企業だけあって、主にホームページを活用して新規顧客開拓をしていました。Y社のホームページに新規の問い合わせはあるのですが、それが十分に受注に結びついていませんでした。

次に、その原因を調査したところ、「お客様の購買プロセスを考慮した営業プロセスになっていない」ことがわかりました。お客様が法人企業の場合、お客様には購買の意思決定プロセスがあり、合理的に購入をするかどうかを検討します。法人企業の購買では、「何を買うか?」を検討するお客様担当者と「買ってもよい!」と承認するお客様の上司がいます。お客様内にいるこの2つの役割を意識して受注までの一連の営業プロセスを進める必要があります。

そこで、Y社の営業プロセスに、〈予算〉というステップを追加し、〈初回訪問〉 → 〈予算〉→ 〈提案〉 → 〈交渉〉 → 〈導入設置〉という営業プロセスへ最適化を行いました。

営業プロセスの最適化を行った際には、必ず研修やトレーニングが必要です。その営業研修では、営業プロセスを見直した理由とともに、「お客様が予算を持っていない場合、その後、どのような対策が必要か?」「お客様がすでに予算がある場合、その後、どのような対策が必要か?」を学ばせました。その結果、ホームページの問合せからの受注額を2倍にまで増やすことができました。

営業プロセス最適化事例2. 営業プロセスに「機会創出」を組み込む

法人企業向けに原材料などの直接材の販売しているクライアントZ社の経営者の悩みは、「ライバル会社(競合会社)が大きな市場シェアを締めており、Z社は業界3~4番目に甘んじていること」および「商談成約率が悪く、受注金額が増えないこと」でした。営業支援ツールはすでに導入しており、そのツールに設定されていた営業プロセスは〈要望確認〉 → 〈ご提案〉 → 〈交渉&契約〉 → 〈納入〉でした。

調査したところ、「ライバル会社が非常に強く、そのライバル会社と競合すると勝てない。勝てたとしても、価格で勝負して受注することになる」「大手企業との取引額が少なすぎる」ということが問題だと分かりました。

そこで、Z社の今までの営業プロセスを、〈顧客分析〉 → 〈戦略計画〉というステップを追加し、〈顧客分析〉 → 〈戦略計画〉 → 〈要望確認〉 → 〈ご提案〉 → 〈交渉&契約〉 → 〈納入〉へ最適化しました。この新しいプロセスによって、「こちらからお客様に積極的に働きかけ、戦略的な商談機会を創造していこう」という活動が増えました。

この活動を通して、戦略的な大手企業を6社選定しました。そして、その6社だけで約70億円の販売機会があることが判明しました。営業プロセスの最適化を行う前は、「販売機会は3~4億円程度」という判断だったのです。Z社はこの70億円の受注に向けて現在挑戦しています。

これらの事例からわかるように、営業プロセスを見える化と最適化する効果は大きいのです。

営業力強化セミナーのご紹介

『組織』と『個』の相互の成長に役立つ『営業力強化』などのセミナーを毎月開催しています。ぜひご参加ください。

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営業部署を外から見ることが、営業プロセスの見える化と最適化を成功させる!

営業プロセスの見える化と最適化を成功させる鍵は、営業部門任せにせずに、経営者や経営幹部が主導して行うことです。

基本的に人は変化を嫌います。営業部門に任せても、今までのやり方に慣れているために新しい営業プロセスへと自ら変化しようとしません。しかし、変化しなければ、業績や結果は変わらないのです。

営業業務を担っている営業部とは別に営業推進部(営業企画部)というセクションを作り、営業プロセスの見える化と最適化をプロジェクトとして実施することが必要です。営業部門が自ら営業活動をしながら、片手間で営業プロセスの見える化と最適化を行っても、最後までやり遂げることができません。営業部門の営業プロセスを、営業部門の外から見て問題点や改善点を観察し、対処していくことが重要です。

大手企業であれば、営業推進部(営業企画部や営業戦略部)という部署を作る十分な人員がいると思います。ですが、そのような余裕のある企業は少ないです。営業推進部という役割を担う担当者は誰でも良いというわけではなく、プロセス思考があり、データ分析ができ、プロジェクトマネジメント(チェンジマネジメント)できる能力を有する人員が必要です。

将来の事業成長を確実なものにしたいのであれば、まず、営業プロセスを見える化することからはじめてください。その見える化に適切な人がいない/ノウハウがない、または、始めたが上手く行っていない場合には、ぜひご連絡ください。

私たちは、多くの営業組織の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。営業部門を強化するための豊富なノウハウ/経験があります。貴社のその挑戦を確実に成功させるために、私たちがあなたの会社の営業推進部(企画部)の一員となり、営業プロセスの見える化と最適化のお手伝いを致します。

現在の営業プロセスを見える化と最適化は、最も強力な営業力強化方法です。多くのお客様の営業力強化を実現してきた豊富な実績をもとにサポートいたします。

(本ノートは、2017年8月17日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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