営業担当変更の引継で、お客様との良い関係を失わないための効果的な引継方法 Vol.034

企業の組織変更に基づき、営業担当が変更することがありますが、お客様の引継が営業任せになっている企業が多いです。そのため、営業の引継を機にせっかく良い関係ができていたお客様との関係を失っている場面をよく見ます。
お客様との関係は、会社にとってはとても大切な資産。それを失うことなくしっかり引継すべきですができていないのです。
あなたの会社では、営業の引継はうまくいっていますか? 大事なお客様との関係が失われていませんか?
今回は、お客様との良い関係を継続できる効果的な営業の引継の方法について考えましょう。

営業担当変更の引継で、お客様との良い関係を失わないための引継方法とは?

営業の引継は効果的に出来ていますか?

会社は、年度方針や戦略の見直しに伴い、市場やお客様への対応力の強化や組織の活性化を目的として組織変更を行います。
この組織変更で発生する昇進や転勤などにより、お客様の営業担当が新しい人に変わることになり、お客様の引継が行われます。


ですが、この引継が効果的に行われることなく、せっかく作り上げてきたお客様との関係を失っている場合が目につきます。
せっかく構築してきたお客様との関係を失ってしまうことは、会社にとって大きな損失です。
会社は営業の引継を営業同士にただ任せるのではなく、責任を持ってマネジメント(支援と管理)をすることが大切です。


こんな営業の引継は最悪! 私の経験談1

以前、私が外資系企業で営業をしていた時の引継の体験をご紹介します。
5年を超える期間、愛知県のお客様を担当しておりましたので、自分でも「そろそろ移動かもしれないな」と思っていました。実は、当時、上司との関係もあまり良くなかったことも「そろそろ移動かもしれないな」と感じていた理由の一つでした。
案の定、そろそろ期末を迎えるという2週間ほど前に、「東京への転勤」という連絡が来ました。
そのため、私の同僚の営業へ私が担当していたお客様の引継の準備を始めることになりました。

その時にある先輩から引継ぎについてのアドバイスをもらいました。
「引継に時間をかけすぎると、転勤先での営業活動の時間がなくなるから、2,3日くらいの短い期間で終わらせたほうが良いよ」

当時、私が担当をしていたあるお客様では業務改善プロジェクトに取り組んでおり、営業ながら私はその業務改善プロジェクト推進の一役を担っているような存在でした。
そのお客様の業務改善プロジェクトの状況を考えますと、
「私は転勤することになりました。今後は新しい営業が担当しますのでよろしくおねがいします」
というだけでは済まされない状況だと思っていました。
そのため、私は「短い時間でさっさと済ます」という考えはできませんでした。

しかし、一般的には、多くの営業の引継では「短い時間で済まさないと、次の移動先での自分の時間がなくなり苦労する」という考えが根強いです。

このような理由から「お客様の担当変更をしないほうが良いのでは?」という考えもありますが、私は「担当変更したほうがよい」と思います。長期的な視点において、ほかのお客様の担当させることは営業にとって新たな経験や成長のチャンスです。また、長いこと特定のお客様を担当することで馴れ合いの関係を助長することにもなります。そして、この長く同じお客様を担当する営業は概ね「我流の営業」に育ってしまい、マネージャーとして人を育てることを担うことができなくなっていることが多いです。

お客様には若干ご迷惑をおかけしてしまいますが、そのお客様との会社対会社の長期的な関係のためにも「勇気をもって担当変更はすべき」で、そのために、会社として営業同士の引継を仕組み化しマネジメント(支援や管理)する必要がある、と考えています。


こんな営業の引継は最悪! 私の経験談2

また、ある時同僚からお客様を引継ぐことになった時の経験です。その引継がとんでもないものでした。
朝、そのお客様の最寄り駅に同僚と待ち合わせをし、その日の夕方までお客様の引継をしました。
その日だけで80人ものお客様と面会したのです。


その担当変更の引継の時にその同僚がお客様たちに話していたことは、
「今度担当が変わることになりました。彼(私)が新しい担当です。特に今問題になっていることはないですよね? じゃあ、お世話になりました。今後彼が担当しますのでよろしくお願いします。」
です。
そのくらいの短い時間で行わないと1日に80人も引継できませんから。


途中で「これではまずい!」と思い、お客様へ「最近ご購入頂いた製品名を教えていただけませんか?」と聞き、頂いた名刺に書き留めていきました。
半分程度のお客様に関しては、伺えていません。そのために、その同僚に
「後で、このお客様たちは何を購入してくれたのかその製品だけは必ず教えてくれ!」
と依頼しました。
結局、教えてくれませんでしたが。


ちなみに、その翌日には60人と名刺交換をしました。それで2日間に渡る引継が終了しました。
それぞれのお客様はどんな仕事をしているか、どんな課題を持っているか、そのようなお客様情報をまとめるのに、その後1年間を要しました。


多くの営業は、引継のことを「お客様との顔合わせ」と考えています。
これでは、本当に大切な会社の資産とも言える「お客様との関係」をみすみす失っているようなものです。


お客様との引継の真の意味とは?

お客様との引継とは、「単なる顔合わせ」ではなく、「お客様との今までの関係を引継ぐ」ことなのです。
お客様との関係を失うことになってはいけません。現在取り組んでいる商談があれば、その商談機会を失ってはいけません。
できれば、この引継を機に、過去よりも更に良い関係にしていきたいのです。


ですが、そうはいっても引継は、若干はお客様に御迷惑をかけてしまうことがあります。ですが、それを最小限にする努力はしなければなりません。
引継によって、お客様に多大な迷惑をおかけしてはいけないのです。


営業の効果的な引継を行うためにはどうすればよいか?

間違いなく言えることは、法人営業にとって引継とは「単なる顔合わせ」などでは決してなく、「お客様との今までの関係性を引継ぐ」ことを目的としなければなりません。
そのためにも、引継は下記のような手順で、計画性を持って取り組むことが大切です。


[Step1] 引継する情報を決める

まず、引継すべき情報を会社として定義をしておきます。
最低でも引継すべき情報は下記となります。

  • お客様の連絡先や連絡方法
  • お客様の組織・仕事内容
  • 過去購入いただいた商品、時期、導入理由
  • 現在の商談
  • 最近のお客様とのやり取り(お客様のご要望など)


  • [Step2] 引継計画書を作成する

    次は、引継計画書の作成です。その引継計画書には、下記を計画します。

  • 引継期間 (引継日程)
  • 面会で引継をするお客様リスト
  • 面会をせず情報だけを引継するお客様リスト

  • 引継をする営業は、このような引継計画書を作成し、上司の承認を取ることが必要です。
    上司は、その際、「このお客様は面会して引継すべきだ!」「日程が厳しいから、このお客様は面会まではしなくて良い!」という助言をします。

    [Step3] 引継をする

    面会して引継をするお客様は、主に下記のお客様です。

  • 過去大きな取引のあったお客様
  • 現在進行中の商談のあるお客様

  • このようなお客様には、しっかり訪問してお客様に挨拶をします。
    お客様と面会する際に、先ほどご紹介した引継すべき情報を1つ1つお客様に確認しながら進めます。


    お客様に直接この一連の流れで確認することで、前任者から新しい営業担当へ情報を確実に引継ぐことができるのです。
    「今、特に問題になっていることはないですよね? 今後よろしくおねがいします!」などという抽象的なやり取りで終わらせてはいけません。


    面会できないお客様に対しては、前任者の営業は上述した引継すべき情報をしっかり準備しておき、後任の営業に情報を引継ぎます。
    計画した引継が完了した際には、その結果をマネージャーに報告して、引継が完了となります。


    お客様を大切にするためにも、日頃からしっかり情報を取りまとめる!

    上述した引継すべき情報とは、多くの企業が活用しているSFA(Sales Force Automation: 営業支援ツール)やCRM(Customer Relationship Management: 顧客管理システム)というシステムに入力すべき情報の1つです。


    引継を効果的にするためには、それらのシステムに情報を残しておくことは大切です。このようなシステムは多機能なために、すべての情報を入力しようとしますととても手間も時間もかかります。あまりにも手間や時間がかかるようでは、本来の営業が行うべき「お客様との商談活動」の時間を圧迫することに繋がります。
    ですので、システムで扱えるすべての情報を入力する必要はありません。


    ですが、先ほどからご紹介している引継すべき情報は、引継するときだけに必要な情報ではありません。日頃の営業活動でもしっかり整理しておくべき情報です。
    多くの企業では、SFAやCRMに情報を登録しない営業が見受けられますが、これは、お客様を本当に大切にすることになっていません。そして、会社の大切な資産を失ってしまうことにもつながってしまいます。


    営業は責任を持って、SFAやCRMに最低限必要な情報を入力すべきです。
    そして、会社及びマネージャーは、営業がこれらに入力することをさせるべきです。ただし、営業に過度な作業をさせないためにも最低限必要な情報に絞ることが大切です。


    営業が今までお付き合いさせていただいたお客様に感謝をし、お客様を大切にするためにしっかり引継をする必要があります。システムに情報を登録さえしてくれていれば、長期にわたりお客様に情報を簡単に確認することができるようになります。
    営業が変わろうとも、長きに渡りお客様に貢献し続けられる体制が構築できるのです。


    営業の効果的な引継はできるようになろう!

    本来、引継とは「お客様との関係を円滑に引継ぐ」ことが目的で、そのためには、名刺交換とあいさつだけという「顔合わせ」程度に考えてしまってはだめです。
    しかし、多くの会社は、その「引継」ということを大切にせず、営業任せにしている傾向があります。
    これが、引継が効果的に行われないもっとも重要な原因です。


    組織変更に伴うお客様担当変更を円滑に引継ぐために、上記のような手順でマネージャーが関与して行うことが大切です。
    営業の引継が効果的でなければ、今までの継続的なお客様との協力関係を失ってしまいます。それは、利益率の低下・お客様の注文リピート率の低下・新規顧客の開拓率のための販売コストの増加など、多くの財務的なインパクトを与えます。
    引継とは、それほど重要なものなのです。


    是非、会社の仕組みとして、引継に取り組んでください。
    また、そのためには、日常の営業活動の中でしっかり情報を整理出来るようにしておくことも大切です。


    もし、取り組んでも上手くいかなければ遠慮なくご連絡ください。
    私たちがあなたの会社の大切な資産である「お客様との関係」をこれ以上失うことがないようお手伝いを致します。


    (本コラムは、2008年10月26日に書かれたものを再編集しました)
    文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
    Copyright (C) 2008 T-SQUARE Co., Ltd. All rights reserved.


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    1 個のコメント

  • そもそも「引き継ぐ」という業務が、業務としてルール化・明確化・文書化されていないことと、営業活動の内容や得た情報がドキュメントとして残っていないことが大きな原因ではないでしょうか。「お客様」のことを考えれば、信用を失う可能性もあるので、非常に重要な業務であるはずですが。何かやっつけ仕事みないな空気がありますよね。