その違いを生み出す要因はいくつかありますが、そのうちの1つは「営業社員の営業業務上の職務の定義の違い」です。この「営業社員の営業業務上の職務」に関する対策を行うと、営業組織の業績(パフォーマンス)、および、営業社員の目標達成の可能性を確実に向上させることができます。また、この対策は、不況期の営業組織が実施すべき強力な営業強化手法の1つでもあります。
「業績向上に必要な『営業社員に求められている営業業務上の役割』とはなにか?」そして「業績の良い営業組織は、どのような役割や職務を設定しているか?」について解説します。
業績(パフォーマンス)の良い営業組織が営業担当者に与えている目標達成に向けた職務とは?
ページコンテンツ
「業績(パフォーマンス)の良い営業組織」と「業績が良くない営業組織」の3つの違い
1つ目の違いは「職務が明確になっていない」
業種や業界に関係なく、多くの営業社員たちが行っている主な職務は以下の3つです。◆ お客様への営業活動(商品の紹介、受注に向けた商談、納品やトラブル対応などのサポート)
◆ 売上見込み計画、面会計画などの各種目標設定と計画
◆ 各種報告書作成や見積作成などの社内業務
以上の3つの営業職務は、どのような営業組織であれ、営業社員が必須として行っている職務項目です。「業績が良くない営業組織」では、これら3つの職務の遂行状況が十分ではない状態でした。このことが「業績の良い営業組織」と「業績が良くない営業組織」の違いを生み出す原因の1つ目でした。
ある営業組織では、目標設定や計画が不十分でした。そこでその対策をとることで業績を向上することができました。また、社内業務が多すぎる営業組織では、その社内業務を簡便にすることで業績を改善することができました。ですので、営業社員の職務内容を明確にして、その職務を確実に遂行させれば、営業組織と営業社員のパフォーマンスを向上させることができます。
2つ目の違いは「適切な量が判明できていない」
「業績(パフォーマンス)の良い営業組織」と「業績が良くない営業組織」の違いを生み出す原因の2つ目は、「量」に関わることです。「業績の良い営業組織は、その営業社員の行動量が多い」とよく言われます。そのため、今でも営業組織には体育会系のイメージがあり、多くの行動量、および、その行動量をこなせる気合と根性がパフォーマンスの良さと比例関係であると思われています。実際に、業績のよい営業組織の営業社員たちの行動量は多いです。ですが、営業社員に多くの行動量を課しているのに業績が良くない営業組織も存在していました。そのような営業組織では、営業社員たちは疲れていて、活気がなく、社員の定着率も悪い状態でした。ですから、ただ量を増やすことを要求するだけではなく、その営業組織にとって「成果を最大化できる適切な量」を発見することが大切です。
以上のように、「業績の良い営業組織」と「業績が良くない営業組織」の違いを生み出す原因は、「営業社員としての職務の定義」および「量」の2つです。ですが、もう1つ重要な原因もありました。
「業績(パフォーマンス)の良い営業組織」の3つ目の違いとは?
「業績(パフォーマンス)の良い営業組織」について調査をすすめると、ある1つの違いに気づきました。それは、「営業組織内で扱われている情報」でした。「業績の良い営業組織」では、営業社員たちが以下のような情報を扱っていました。実際に、私たちが営業社員たちへ下記の質問をすると、答えることができていました。◆ お客様が保有する設備(競合の設備を含む)
◆ お客様が開発したり販売したりしている商品
◆ お客様の中長期計画や方針
◆ お客様の年間推定購買量
「業績の良い営業組織」では、以上のような「市場情報」を収集し、それを活用して計画を立てていました。また、その収集した市場情報をお客様との商談で効果的に活用できていました。このような市場情報を収集することで、以下のような成果を得ていたのです。
◆ 販売できる可能性の高い案件に注力できている
◆ 目標達成への貢献度が高いお客様を合理的に特定し、開拓できている
◆ 営業社員一人あたりの売上額が多く、営業利益率が高い
すなわち、「業績の良い営業組織」と「業績が良くない営業組織」の違いを生み出す原因の3つ目は、「市場情報を収集して、それを活用していること」です。
「業績(パフォーマンス)の良い営業組織」は、どうして市場情報を集めることができているのか?
「業績(パフォーマンス)の良い営業組織」は、どのようにして市場情報を収集できるようになったのでしょうか?「市場情報を収集できている営業組織」と「できていない営業組織」の違いを調査すると、1つの原因が見えてきました。それは「営業社員の職務に、市場情報収集が定義されているかどうか」でした。「市場情報を収集できている営業組織」は、営業社員の職務記述書に、市場情報の収集が職務の1つとして定義されていました。
職務記述書は、「ジョブディスクリプション」とも言われ、「職務の目的」「職務の内容」「達成する目標」「職務に必要な経験や能力」などを説明するものです。すなわち「どのようなことが期待されているか?」「どのような業務をするのか?」「どのように評価されるのか?」など、ガイドラインが文章としてまとまっています。この職務記述書によって、営業社員たちは、自分が求められている職務の内容を正しく理解することができ、それに沿って職務を確実に遂行することができるようになります。
先ほど説明しましたが、「業績の良い営業組織」と「業績が良くない営業組織」の違いを生み出す1つ目は、「業績が良くない営業組織は、営業社員の職務が明らかになってなく、不十分な状態だった」ことでした。職務が定義されていないと、営業社員の職務の内容は、上司である営業マネージャーのその時の考えや感情によって変わってしまいます。そうなると、営業社員は、好き勝手に職務を遂行するようになります。実際、その様な営業組織では、属人的な営業をしていることが目立ちました。
いくつかの営業組織では、職務が定義されていましたが、その定義された職務の中に「市場情報の収集」はありませんでした。「市場情報の収集」が営業社員の職務として定義されていないために、営業社員たちは「市場情報の収集は自分の仕事ではない」と思っていたのです。
どのような手順で組織としての情報を収集する事ができるようにするか?
営業組織として、営業社員たちがこのような「市場情報を収集することができるようにする」ためには、下記の手順で対策を行います。Step1. 職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成する
Step2. 市場情報を収集するためのトレーニングを実施する
Step3. 市場情報収集者としての役割を担うコーチングをする
Step1. 職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成する
まず、すべきことは職務記述書の作成です。職務記述書を作成し、「担当するエリア、もしくは、お客様の市場情報を収集する」という職務を盛り込みます。合わせて、評価方法も盛り込みます。Step2. 市場情報を収集するためのトレーニングを実施する
「職務記述書を作成する」ことは、営業社員の職務内容を見直すことですから、見直した後にはトレーニングが必要です。「このように決めたからやるように!」という指示や通知だけをしている組織を見かけますが、これでは決められたことが行われるようにはなりません。トレーニングを行うことで、職務記述書に定義された職務を確実に遂行できるようにする必要があるのです。そのトレーニングには、下記の内容を盛り込むとより効果的になります。
◆ なぜ、職務記述書を見直したか?(なぜ、「担当するエリア、もしくは、お客様の市場情報を収集する」を追加したのか?)
◆ それによる効果は?
◆ 具体的にどのように市場情報を収集するか?
Step3. 市場情報収集者としての役割を担うコーチングをする
次に、市場情報をどのくらい収集できているかを測定します。その測定には日報などが活用できます。その日報に書かれた訪問目的を見れば、市場情報を収集している量を測定できます。もし、そのような市場情報を収集する量が少ないのであれば、その対策を実施する必要があります。「情報は収集すれば良い」というものではありません。その情報の精度と質が高くなければ役立ちません。ですが、この情報の精度と質というのは一日や二日で高まるものではありません。ある程度の時間をかけて、精度と質を高める繰り返しの訓練が必要です。もし、今までこのような情報を扱っていなければ、外部のコーチから定期的な助言とコーチングを受けることも検討します。
営業力強化セミナーのご紹介
『組織』と『個』の相互の成長に役立つ『営業力強化』などのセミナーを毎月開催しています。ぜひご参加ください。● 【営業力強化セミナー】優秀な営業が行っている営業計画 ~ 目標達成を確実にする営業計画/活動計画立案のノウハウを手に入れる!
● 【マネジメントセミナー】法人営業変革で強い営業組織へ ~ 2030年代へ向けて進化し続ける次世代営業力強化の実例
その他の営業力強化セミナー
● 営業力強化セミナーページ
組織が持続的に成長するために、営業社員の役割を見直そう!
私たちは、多くのクライアント企業の職務記述書の作成や人事評価の見直しのコンサルティングを行っています。職務記述書や人事評価は、若干の微調整は別として、1度修正したら、通常5年以上見直しません。毎年のように見直していては、逆に社員を混乱させてしまうからです。このように、必要なときにだけ行えば良いものですから、組織内にノウハウを貯めようとすることは非効率です。いろいろな企業のことを知っている外部コンサルタントを活用することは有効です。営業組織においては、ジョブ型を導入する効果は高いです。ジョブ型は、営業社員一人あたりの売上を確実に向上することができる人事制度です。私たちは、様々な営業組織の職務の定義や人事評価の見直しを行ってきましたので、他社の事例を踏まえて御社に最適な職務記述書を作成することができます。「営業社員の役割」を見直す際、成功するための支援をします。より具体的な内容説明の希望/質問/ご依頼は、下記からお問い合わせください。
(本ノートは、2019年11月16日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
Copyright (C) 2019-2024 T-SQUARE Co., Ltd. All rights reserved.
お問い合わせ
ご質問・ご依頼など、当社へのお問い合わせ関連するソリューション
● 【新・人事制度 構築支援】「ジョブ型制度」の導入支援 ~ 中堅・中小企業の社員の意欲と能力を引き出し、企業を持続的な成長へと導く新しい人事制度を構築する(Human Resource Management, TS-Method)● 【コンサルティング】営業力診断(営業アセスメント) ~ 「営業組織が確実に目標達成できるようになり、成長し続けることを実現する」ための最重要課題を特定します!(BtoB Sales Force Assessment)
● 【コンサルティング】営業マネージャー業務代行サービス ~ 営業マネジメントができる組織を作り、今までとは違う結果を達成する!(Sales Management Outsourcing Service)
● ティ・スクエア 法人営業力強化ソリューション 一覧
一緒に読まれているノート
● 強い営業組織の常識は、「プレイングマネージャー制度ではなく、マネジメント専任マネージャー制度」~ 営業組織の売上拡大/営業担当者一人あたりの生産性向上をめざすために、マネージャーの制度を変えよう!● 「チームを成長させるプレイングマネージャー」と「できないプレイングマネージャー」の差は? ~ 事業を成長させるために、マネージャーの「職務としての役割や目標」の設定ヒント
● 不況時(景気低迷期)に営業組織の業績を改善させた企業はどのように営業力を強化したのか? ~ 経済環境が悪化しても結果を出せる基礎的な営業の仕組みを構築する方法!
● 営業力強化ケーススタディ『IT企業』 ~ 期待通りの売上結果となっていない原因を特定し、売上増加に向けて新人からベテランまでの営業力を強化!
● 営業力強化ケーススタディ「法人向けサービス会社」 ~ 営業担当者の「目標設定力と行動計画力を強化」することで、営業組織の売上増加を達成!
● 「ジョブ型雇用制度」は、導入を目的とすると失敗する! ~ 組織/事業/社員を成長させ、会社が持続的に発展するための「ジョブ型雇用制度」導入の注意点
無料メールマガジンの登録
『組織』と『個』の相互の成長に役立つ『成長力強化(マネジメント力強化とプロフェッショナル育成を含む)』と『営業力強化』の情報を月1~3回お届けしています。● 当社無料メールマガジンのご登録フォームへ