特に、法人向けにサービスを提供するBtoB企業のマネジメントの方が、「エンジニアの提案力」を悩んでいます。これらの企業が提供しているサービスは、ITサービス/業務支援サービス/アウトソーシングサービスなどで、マネジメントは「お客様の業績向上に役立つサービスをもっと提案できるはずだ」と考えているのですが、それができていないのです。
その「エンジニアの提案力が十分ではない」原因の1つが、「事業デザイン力」です。ITサービス/業務支援サービス/アウトソーシングサービスを行っている企業にとって、ビジネスを拡大するために必要な「事業デザイン力の強化方法」について解説します。
社員の「事業の業務全体に関心を持ち、業務を新しくデザインできる能力」を強化する方法
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期待する成長ができていない原因とは?
多くの企業が、「更に事業を成長させたい」と思っています。ですが、「期待する成長ができていない」と感じている経営者や事業部長などのマネジメントは多いです。事業を成長させるためには、主に2つの挑戦が必要です。
◆ 受注を増やす
◆ 社内の業務の生産性を向上させる
1番目の「受注を増やす」ための基本的な方法は、以下の2つです。
(1) 今、販売をしているプロダクト/ソリューション/サービスを、新しいお客様へ販売する
(2) 今まで取引をしていたお客様から、新しいプロダクト/ソリューション/サービスを受注する
「(1) 今、販売をしているプロダクト/ソリューション/サービスを、新しいお客様へ販売する」は、基本的に、営業担当者が担います。営業担当者が、すでにあるプロダクト/ソリューション/サービスを新規のお客様を開拓して販売します。
もう1つの「(2) 今まで取引をしていたお客様から、新しいプロダクト/ソリューション/サービスを受注する」は、新しいプロダクト/ソリューション/サービスを開発する必要があります。ITサービス/業務支援サービス/アウトソーシングサービスを事業としている企業では、すでにエンジニアがお客様の要望を伺い、お客様の業務を把握し、サービスを提供しています。すなわち、お客様とコミュニケーションができているので、お客様の業務や要望を知っているのです。本来は、エンジニアたちが新しいサービスの機会に気づいて、そのサービスを開発できる可能性があるのです。
ですが、多くの企業のマネジメントの方々は、エンジニアたちのこの行動が十分ではないことに悩んでいます。
ITサービス/業務支援サービス/アウトソーシングサービスの企業が直面する問題
問題1. プロセスとして問題点を特定できない
製造業に対して人材サービスを提供しているA社は、A社の顧客企業の業務を支えるために、多くのエンジニアが顧客企業の中で業務をしています。A社のマネジメントも他の企業と同様に「事業を成長させたい!」と考えていました。そこで、マネジメントチームは、今までとは違う領域へのビジネス展開を行うことにしました。「今までとは違う」とは言っても、全く新しいサービスではなく、現在提供しているサービスに関連した新しいサービスを始めようとしたのです。
実際にA社のエンジニアは顧客企業内で業務をしているために、お客様の具体的な課題や問題を把握することができるはずでした。その情報を活用すれば、お客様へさらなる貢献ができ、そして、A社は事業を拡大することができる、それが狙いでした。しかし、その新しいサービスは、アイデアだけの段階から進歩することがありませんでした。
問題2. 前工程と後工程のチャンスを発見しない
B社は、法人向け企業にアウトソーシングサービスを提供している企業です。購買業務/人事サポートなどのアウトソーシング業務の受託をしますが、その際は、B社のエンジニアがお客様の業務をB社社内へ移管する作業を行っています。B社も、事業成長を目指しており、すでにアウトソースサービスを受託している企業へ提案できる新たなサービスの開発をめざしていました。特に、現在受託しているサービスの前工程と後工程には、ビジネスチャンスとなる新しいサービスがありそうだと予測していました。
マネジメントチームは、エンジニアへ「現在のサービスの前工程と後工程となる新しいサービス開発をするように!」と話し続けていましたが、それが実現することはありませんでした。
問題3. 事業へと発展できない
C社は、法人向け企業に業務支援サービスを提供しています。やはり、C社も同様に事業を拡大したいと思っていました。お客様へ業務支援サービスを提供するために、C社のエンジニア(コンサルタントを含む)は、C社の顧客企業へ、週に2~3回は訪問していました。そのために、お客様の業務上の課題や問題を伺う機会があり、すでに提供している業務支援サービス以外の新しいサービスの可能性に気が付きました。
C社のエンジニアがそのことをマネジメントに報告したところ、「挑戦しよう!」ということになりました。実際に、お客様にその新しいサービスの概要に説明したところ、「関心がある」ことがわかりました。
しかし、最終的に、具体的なサービスを設計するまでには至らず、その話はなくなりました。
様々な企業に共通する根本原因
A社/B社/C社の事例を紹介しましたが、各社のエンジニアたちに共通していることは、「言われたことは行うが、広範囲で考えない」「新しい事業をデザインすることができない」ことでした。私たちの研修で行っている演習を実際にエンジニアたちに挑戦してもらったところ、根本的な原因が見えてきました。それは、「事業や業務をプロセスで考え、図示できる能力が十分ではない」ことでした。
その結果として、上述した通りに「プロセスとして問題を把握しない(A社)」「前工程と後工程の関心を持てない(B社)」「アイデアを新しい事業へと発展できない(C社)」という問題に直面していたのです。
事業を成長させるために、社員(特に、エンジニア)は、どのような能力を持つべきか?
多くの企業のエンジニアは、「自分の仕事を効率的に行う」という小さな改善は行っています。ですが、大きな変革(複数の部署が関わって行われる業務の改善)が十分ではありません。数10%ものパフォーマンスを向上するためには、「大きな変革(複数の部署が関わって行われる業務の改善)」が必要なのですが、その変革を行う能力が十分ではない状況なのです。その原因は、社員たちが「複数の部署が関わっている業務に関心を持つ大切さを理解していないこと」、そして、「仮に、それは理解しているとしても、事業や業務の全体像を変革する方法がわかならないこと」です。
冒頭で、事業を成長させるためには、以下の2つの挑戦が必要であることをお伝えしました。
◆ 受注を増やす
◆ 社内の業務の生産性を向上させる
この2つを挑戦するためには、エンジニアの「事業や業務のデザイン能力」を強化する必要があります。具体的には、以下のエンジニア能力を鍛える必要があります。
◆ 現在の事業や業務(AS IS)をプロセスとして図示する能力(「一人が行う業務」ではなく、複数部署/複数の人が関わる業務を図示する能力)
◆ プロセスから、「課題」を発見する能力
◆ パフォーマンスを向上するための「目指すべき業務プロセス(TO BE)」をデザインする能力
事業や業務のデザイン能力の強化方法
「社員(特に、エンジニア)の事業や業務のデザイン能力の強化」は、以下の方法で行います。1. プロセスを図示する方法を学ぶ
2. 実際に、現状のプロセスを図示してみる
3. そのプロセスの前工程と後工程を検討する
4. 前工程と後工程を含めた全体の事業や業務プロセスの課題を特定する
5. 目指すべき事業や業務のプロセスを図示する
1. プロセスを図示する方法を学ぶ
A社/B社/C社のエンジニアに「所属している部署の現在の業務をプロセスで図示すること」を実施させたところ、以下のような問題がわかりました。◆ 自己流で図示する(同じ会社のエンジニアでも、それぞれの人の図示したプロセスが違う)
◆ 作業手順が書かれているだけで、役割や判断条件がはっきり書かれていない。
◆ 注意点/ルールなどが記載されていない。
◆ 仕事の受け渡し方法がわからない。
◆ プロセスの目的やOutput(成果)がはっきりしていない。
◆ 開始と終了がはっきりわからない。
すなわち、プロセスを図示する方法について統一されてなく、学んでいないことが明らかになりました。まずは、プロセスを図示する方法を学ばせる必要があります。
(プロセスを図示する方法は様々がありますが、私たちは、様々なプロセス図示の方法を研究した上で、下の図のようなプロセスを図示する方法をトレーニングしています。図を見てもらうとわかると思いますが、役割が明確に記入されています。詳しくは、チームで結果を出すためのマネジメントスキル「仕事の仕組み化」 ~ 大きな報酬・多くの機会を手にしているハイパフォーマーの仕事の技術(3) を参照ください)
2. 実際に、現状のプロセスを図示してみる
プロセスを図示する学習の後は、自分が所属する部署が行っている実際の業務プロセスを図示します。この作業によって、「1. プロセスを図示する方法を学ぶ」で学んだ技術を実際の業務で応用し、さらに能力を強化します。3. そのプロセスの前工程と後工程を検討する
次は、「その図示した業務プロセスの前工程と後工程のプロセスはどのようなものか」を検討します。そして、その前工程と後工程のプロセスも図示します。この訓練は重要で、「前工程と後工程の検討と図示」を繰り返し行うことで、社員(特に、エンジニア)が幅広い視野で事業や業務を考えることができる土台を築くことができます。
4. 前工程と後工程を含めた全体の事業や業務プロセスの課題を特定する
次は、前工程と後工程を含めたプロセスで、以下の観点で課題を推定します。◆ パフォーマンスに悪影響を及ぼしているところはどこか?
◆ パフォーマンスを向上するためには、どこをどう変えればよいか?
5. 目指すべき事業や業務のプロセスを図示する
最後は、「4. 前工程と後工程を含めた全体の事業や業務プロセスの課題を特定する」で発見した課題を解決することができる「あるべき事業や業務プロセス」をデザインします。この「あるべき事業や業務プロセス」を図示するときは、「現在のプロセスに対して、どこをどう新しく変化させるのか?」がはっきりわかるようにします。
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社員たちの業務デザイン力を強化しよう!
「『事業を成長させたい』と考えながら、期待する成長ができていない原因」の1つは、「エンジニアの事業デザイン力」です。特に、ITサービス/業務支援サービス/アウトソーシングサービスでは、「エンジニアの事業デザイン力」を強化することで、事業の成長を加速させることができます。ですが、多くの社員(特に、エンジニア)は、与えられた範囲だけで考える状態になっています。それでは事業を成長させることはできません。数10%ものパフォーマンスを向上するためには、社員の「事業や業務のデザイン力(業務改善後の新業務プロセスをデザインする能力)が必要です。そのためには、社員たちの以下の能力を継続的に強化する必要があります。
◆ 組織の現在の業務(AS IS)をプロセスとして図示する能力(「一人が行う業務」ではなく、複数部署/複数の人が関わる業務を図示する)
◆ プロセスから、「課題」を発見する能力
◆ パフォーマンスを向上するための「目指すべき業務プロセス(TO BE)」をデザインする能力
私たちは、多くのクライアント企業の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウと経験があります。実際に、「事業や業務デザイン力強化トレーニング」をクライアント企業で実施しています。
貴社の社員、特に、エンジニアの「事業のデザイン力」「業務改善後の新業務プロセスをデザインする能力」を強化する事が重要である、とお考えであれば、以下からお問い合わせください。わたしたちが、貴社の社員(エンジニア)のその能力を強化します。
(本ノートは、2023年7月19日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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