その開発エンジニアが算出した見積金額に対して営業担当者(売り手)は、「これでは競合に勝てない、もっと安くしてほしい!」と要求します。開発エンジニアと営業担当者の間では、このような販売価格に対する対立(コンフリクト)がよく発生します。
このような対立は、うまく活用すれば、企業の生産性向上や社員の能力向上につながります。
ですが、うまく活用できないと、お互いの不信感を高め、協力関係を悪化させ、企業の収益を悪化させます。どうすれば建設的な対立にすることが出来るのでしょうか?
今回は、開発(作り手)と営業(売り手)の間で発生する対立を良い対立へとする方法を解説します。
社内で発生する対立を効果的に解決する方法!
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営業担当者は開発だけと対立しているわけではなく、いろいろと対立している?
このノートでは、営業と開発の間で発生する対立を解消する方法を紹介します。ですが、実際のところ、営業は開発とだけ対立しているわけではありません。私たちのクライアント企業からは「営業と製造との対立」「営業と生産技術との対立」「営業とエンジニア(SE)との対立」などの話も聞きます。営業の仕事とは、お客様にモノを売ってくること。お客様は、仕事に役に立つモノを安く買おうとします。そのため、お客様が営業担当者に求めていることの1つは「社内調整力」です。営業担当者は、モノを売るために、お客様の代理人として社内で様々な人と対立しなければならないときもあるのです。
売り手・営業担当者の声「開発の出してくる価格は高すぎる!」
売り手である営業担当者からは、下記のようなことをよく聞きます。◆ 商品が高すぎる!
◆ 開発エンジニア(作り手)はいつも高い金額を提示してくる!
◆ 開発エンジニアは「利益がでない仕事はいらない!」と言う。だが、仕事がないより絶対にマシだ!
営業担当者は、お客様との商談で「価格で負けた!」という苦い経験をしています。営業担当者の立場としては、「苦労して発見した商談なのだから、価格での失注だけは避けたい」「この商談を何としてでも受注するためには競合より安くしたい!」と思っています。このような時、営業担当者は、「利益を削ってでも受注する!」ことを選択します。作り手である開発エンジニアへ「うちの価格はいつも高すぎるんだ。この価格は市場が受け入れる価格ではない。市場価格に合ったものを作ってくれ!」と要求します。
作り手・開発エンジニアの声「営業担当者は利益のことを考えていない!」
一方、開発エンジニアからは、以下のような声をよく聞きます。◆ 営業担当者は「安くすれば受注できる!」と思っているのか、いつも安くしろと言う。
◆ 早い段階で安くしても、ほとんどの場合、後になって更に「安くしろ!」と言ってくる。
◆ 利益の無い商談を無理して取ってくる必要はないのではないか。
作り手である開発エンジニアは、社内のルールに従い、利益を確保できる見積を作る必要があります。開発エンジニアの算出する見積価格は、原価を積み上げて算出します。営業担当者が値引きをすると、その値引きによるコストは開発エンジニアが負わなければなりません。
そのため、開発エンジニアは営業担当者の値引き要請を安易に応じるわけにはいきません。ですが、その反面、営業担当者の値引きの要求を無視する訳にもいきません。開発エンジニアは、「営業担当者は、いつも『高い、これは市場価格じゃない!』と言うが、他のお客様ではそんなに値引きしなくても売れている。営業担当者の交渉力がないだけだ!」と思っています。
しかし、高い見積金額を押し通したために失注し仕事がなくなるのも困ります。「ある程度の値引きは応じるつもりではいるが、限度を超えた値引き交渉を受け入れるつもりはない」と思っています。
営業と開発の対立を解消する方法とは!
営業担当者(売り手)は利益よりも受注することを重視します。それに対し、開発エンジニア(作り手)は適正な利益を重視しています。それぞれがそれぞれの立場で違った視点で商談を捉えている為に、対立(コンフリクト)が生じてしまいます。しかし、この対立自体は、実は問題ではありません。すでにお伝えしたとおり、このような対立があるから、企業の生産性向上や社員の能力向上ができます。そんな対立を通してお互いが改善をしていけばよいのです。問題は「この対立が双方の改善や強化につながっていないこと」です。営業と開発双方の生産性向上と能力強化となる良い対立ヘとするためには次の3つのルールを双方が共有認識とすることが重要です。
ルール1. 営業担当者が情報をとるタイミングを見直す
ルール2. 開発が検討する時間的余裕を持つ
ルール3. コミュニケーションを見直す
ルール1. 営業担当者が情報をとるタイミングを見直す
見積価格や販売価格における対立を良い対立へと変化させるためには、営業担当者が、お客様の要望や予算に関わる情報を少しでも早く取ることが重要です。一般的に、営業担当者がお客様の希望価格の情報を取る時期が遅すぎることが多いです。また、予算の情報を掴んでいても、作り手である開発エンジニアにそれを伝える時期が遅いです。
厳しい予算であれば、早めに作り手である開発エンジニアにその価格情報を伝えます。「今回の商談は、かなり低い価格になることが予想される。十分な時間があるわけではないが、知恵を絞ってそれでも利益を上げる方法を考えてほしい!」と少しでも早く連絡しておくことが大事です。
営業担当者は、商談の終盤になって開発エンジニアへ「それじゃあ高すぎる」と一方的な要求をしていることが多いのです。営業担当者は、開発エンジニアが検討できる時間を少しでも増やすようにすることが大切です。
ルール2. 開発が検討する時間的余裕を持つ
売り手である営業担当者から予算に対する要望があったら、作り手である開発エンジニアは、その予算で実現できる方法を検討します。十分な時間はないかもしれませんが、営業担当者が頑張って、早い段階にお客様から取ってきてくれた情報です。
目標とすべき価格はわかっています。原価を積み上げるのではなく、期待する価格に基づいて検討するアプローチを行います。今までと同じように検討しているだけでは、その価格を実現できません。知恵を絞り、その価格でも利益が生み出せる方法を考え抜きます。
ルール3. コミュニケーションを見直す
以上のように、営業担当者と開発エンジニアの双方が最善を尽くします。◆ 営業担当者は、出来るだけ早くお客様の予算に関する情報を取り、開発へフィードバックする
◆ 開発エンジニアは、知恵を絞り、その価格でも利益が出せるための方法を考える
このようなことを実現するためには、営業と開発の基本的な考え方を変化させる必要もあります。一方的に「安くしろ!」「それはできない!」という要求の押し付け合いではなく、下記のような心構えに基づき、双方が改善し続ける風土を構築することが大切です。
◆ 営業担当者は、開発エンジニアが検討してくれた解決策を、どうしたら高い価値として売ることができるかを追求する。
◆ 開発エンジニアは、単なる原価積み上げではなく、どうしたら市場価格を意識した上で良い商品を創る事ができるかを追求する。
◆ 営業と開発の双方が、競合(ライバル企業)に勝つためにすべきことを共同で考える。
このような改善を通して、双方が能力と生産性を高めます。この効果として、お客様へ益々価値が高いものを販売することが出来るようになり、企業の収益を向上できるのです。
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営業と開発の協力関係を強化しよう!
売り手である営業担当者も、作り手である開発エンジニアも、下記のような状態のままであれば、企業の成長を妨げてしまいます。◆ 早め早めの情報共有をしていない
◆ 一方的に要求だけをする
◆ 相互に改善しようとしない
あなたの会社がこのような状況であれば、営業と開発のリレーションを見直す必要があります。
相互に改善していく組織風土とするために、経営者やマネージャーがすべきことは、「売り手である営業担当者が、お客様の要望や予算の情報を早く社内に報告できるようにすること」、さらに、「作り手である開発エンジニアはその情報をもとに新しい技術を検討し、その要望に応えようとすること」です。
このような部署間の対立を解消するための最も効果的な手法は、部署をまたがったチームで行う事業成長プロジェクトの活動です。双方が力を合わせてプロジェクトに取り組むことで、収益の向上を可能にします。
(【事業成長力強化研修】チームで結果を出す『事業成長プロジェクト』実行メソッド ~ 事業成長に挑戦するための組織問題解決力とプロジェクト遂行力の強化!(Project Execution Model for Growth))
私たちは、多くの企業の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウと経験があります。営業と開発の関係が上手く行っていないとお感じであれば、遠慮なくお問い合せください。私たちが、あなたの会社の営業体制を見直し、営業と開発のリレーションをさらに良いものへとするお手伝いをします。
(本ノートは、2009年10月23日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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