売上予測の精度の悪さが業績に悪影響を及ぼす? ~ 「営業の売上見込の精度を悪化させる原因」および「予測精度を高める3つの対策!」の解説

営業部門が毎月報告する売上予測の精度に満足できていますか?

売上予測の精度が悪ければ、不必要なコストを増大させてしまいます。ですので、多くの企業が毎月の売上予測の精度を高めようとしています。ですが、営業マネージャーや営業パーソンと話をしますと、「売上予測の精度は重要だ!」と認識している営業マネージャーや営業パーソンはそれほど多くありません。「今月売れなくても来月売れれば良いのではないですか!」と考えている人もいます。しかし、そんな安易なことでは済まされません。

売上予測の精度を向上させる対策は必須なのですが、「売上予測の精度を悪化させている原因」を理解しないまま対策を行い、そのことがさらに売上予測を悪化させている企業もあります。このノートでは、営業組織の売上見込の予測精度を改善するために、「売上の予測精度の重要性」「売上の予測精度を悪化させている原因」「毎月の売上の予測精度を高める3つの対策」について解説します。

「営業の売上見込の精度を悪化させる原因」および「予測精度を高める3つの対策!」の解説

売上予測の精度が低い企業で発生している問題とは?

多くの企業が「売上予測の精度を高めよう!」としています。営業の売上予測の精度が低いことは、経営の観点では大きな問題だからです。特に、法人を対象として営業をしている企業(BtoB企業)にとって、売上予測の精度の悪さは会社全体のコストを増大させ、企業の長期的な成長を阻害します。私たちのクライアント企業では、売上予測の精度が悪いことで、以下のような事態が発生していました。

事例1. 営業マネージャーが無理な受注の前倒しを要求

営業Aさんがお客様へ「いつ頃発注の予定ですか?」と聞きました。お客様は「まあ、3~4ヶ月後くらいですかね」と答えました。これにより「この商談の売上見込は3~4ヶ月後」だとわかりました。

その日は営業会議の日でした。その営業会議では、今後の売上予測やそれぞれの商談の進捗状況について話し合われます。営業Aさんは、先程の商談について「この案件は、3~4ヶ月後の売上予定です」と営業マネージャーへ報告しました。

営業全員の報告が終わった後、営業マネージャーが営業たちへ「売上見込を全部合計しても、今月/来月の目標には全然足りないな。今月/来月は厳しいんだ。何か前倒しで受注できるものはないか?」と言いました。

営業マネージャーにそう言われても営業たちは黙っています。すると、営業マネージャーは営業Aさんへ「さっきの3~4ヶ月後の売上見込の商談、来月中に注文をもらえるようにしてくれないか?」と指示しました。3~4ヶ月後の売上見込が来月の売上見込へと変わってしまったわけです。営業マネージャーと営業Aさんの双方が売上予測の精度を悪化させたのです。

営業Aさんも努力するでしょうが、営業マネージャーの要求どおり来月中にその商談の注文をもらうのはかなり厳しいです。お客様が法人企業の場合、お客様は合理的に購入するかどうかを検討するため、社内手続きに時間がかかります。営業がお客様の社内の購買検討に要する時間を短くすることは簡単ではないのです。

事例2. 営業が受注予定を報告しなかった

営業Bさんがお客様へ「いつ頃発注の予定ですか?」と聞きました。その質問に対して、お客様は「まあ、3~4ヶ月後くらいですかね」と答えてくれました。「売上見込は3~4ヶ月後」だとわかりました。

その日は営業会議の日でした。ただ、営業Bさんはこの商談を営業マネージャーに報告しませんでした。報告すれば「もっと早く注文がもらえるようにしてくれないか?」と要求してくることが分かっていたからです。営業Bさんは、しばらくの間この商談を内緒にしました。「注文まで1ヶ月」の時点になってはじめて、この商談のことを営業マネージャーへ報告しました。

このように「売上見込として報告しなくても注文書が手に入ったからいいでしょ、ちゃんと売上となっているのですから!」と考える営業マネージャーや営業パーソンもいます。しかし、このような「急な案件の発生」も問題です。売上予測の精度を悪化させているのです。

事例3. お客様の事情で受注が遅れた

営業Cさんがお客様へ「いつ頃発注ですか?」と聞きました。お客様は「まあ3~4ヶ月後くらいですかね」と答えてくれました。「売上見込は3~4ヶ月後」です。

その日は営業会議の日でした。その段階で営業Cさんは「この案件の売上見込は4ヶ月後です」と報告しました。営業会議で営業マネージャーは何も言わなかったために、「売上見込は3~4ヶ月後」のままでした。

営業Cさんは「注文時期は3~4ヶ月後」とわかっていたので、しばらくの間、そのお客様へ訪問しませんでした。注文予定日の1ヶ月前にお客様へ訪問し、お客様の社内検討の状況を確認しました。そうしましたら、お客様から「社内の予算申請ができていなくて、さらに3~4ヶ月かかりそうだ」と言われました。

これも、売上予測の精度を悪化させています。ですが、これは営業自らが売上予測の精度を下げてしまったわけではありません。原因はお客様です。ですが、原因がお客様側にあるにせよ、結果的に売上予測の精度が悪化していることには変わりません。やはり、これも問題なのです。

売上予測の精度が悪いことで引き起こす様々な悪影響

売上見込が無くなる、ずれることで、無駄になる様々なコストとは?

機械/建設/重工業/化学/コンサルティング/ソフトウェア開発/システム開発などの事業を行っている企業にとって、売上予測の精度は重要な経営課題です。これらの企業は、売上見込をもとに原材料の調達計画を進めます。原材料の調達だけではなく、生産に要する人員の確保も行います。最近はお客様の希望納期が短くなっているので「受注できそうだ!」という見込み段階で各種資源の調達をはじめる必要もあります。

当初予定していた売上見込が急に無くなってしまったらどうなるのでしょうか?

その受注のために調達した原材料が全て在庫になります。その後、それをカバーする注文が入らなければ、調達した原材料の多くを廃棄しなければならず、大きなコスト増加要因となります。このような原材料を購入する資金は銀行から借り入れとして調達されるために金利も発生します。さらに予定より数か月も注文が遅れると、借入金の金利負担がさらに増えてしまいます。

ソフトウェア開発の場合にも、受注見込によって様々なものを用意する必要があります。エンジニア、開発用のスペース、ソフトウェアやハードウェアなどの設備も押さえなくてはなりません。売上精度が悪いとこうしたコストが会社に重くのしかかってくるのです。

実は見込んでいなかった売上も、会社を苦しめる無駄なコストを増やす

では、当初見込んでいなかった受注が急に発生した場合、どうなるのでしょうか?

通常のスケジュールに合わせて生産を始めたいところですが、急な受注は納期も急であることが多いです。もともとその生産の準備をしていないわけですから、予想外の生産が入ってくると他の生産に悪影響を及ぼします。無理な生産を進めることで、生産部署の残業代、納期遅延による借入金利の増加、遅延金の発生など、結局はコストを増やしてしまいます。

最小限のリソースで利益を最大化する鍵は「計画性」

一見プラスにみえる「予想外の受注」も、以上のように、会社のコストの増加という悪影響を及ぼします。ですから、営業にはできるだけ精度の高い売上予測が大切なのです。

現在は生産能力に余裕がある設備や人員を抱えてビジネスができる時代ではありません。どの企業も最小限のリソースで、利益を最大化できる環境が求められています。それを実現するには計画性が必要なのです。

「今月の売上のことしか考えない」ことの恐ろしさとは?

売上予測の精度を悪化させてしまう本質的な原因はなんでしょうか?

それは売上ノルマに追われ、営業全体が「今月の売上」という短期的な視野や思考となってしまい、「今月の売上目標を達成しろ!」という掛け声を優先してしまっていることです。高い責任感をもって「今月の売上目標達成」をめざすことは重要なことですが、今月の売上のことだけしか考えなくなってしまうと会社全体に悪影響を及ぼすのです。

営業マネージャーが無理な受注の前倒しを要求する

営業マネージャーが営業へ「前倒しをして注文をもらえないか?」と急がせると、そのことが営業に余計な仕事をさせることになります。お客様へ「予定よりも早く注文してほしい」とお願いするためのトークや、早く注文してもらうためのお土産やお礼などを用意する必要があります。このようなことに時間を使うということは、その分、新規顧客や新規商談の開拓のための時間を減らしてしまうのです。

営業が受注予定を報告しない

「営業マネージャーに無理強いされることを避けたい」という気持ちはわからないわけではないのですが、営業は案件を隠してはいけません。いきなり注文が発生すると、生産計画を狂わせ、関連組織に様々な負担をかけます。そのため、会社に無駄なコストを生じさせてしまうことになります。

お客様の事情で受注が遅れる

お客様の検討プロセスを理解し、適度にお客様にコンタクトをし、お客様社内の進捗状況を把握する必要があります。もし遅れているのであれば、そのことを事前に会社へ報告する必要があります。

営業にとっては「受注」が仕事のゴールかもしれませんが、会社としてはこれから「生産して納入する」という作業が始まります。この納入という作業が完了して初めてお客様の満足やキャッシュが得られるのです。会社が着実に成長していくためには、営業1人ひとりがこのような経営者意識やコスト意識を持つことが大切です。

売上予測の精度を改善する3つの対策!

営業部門の売上予測の精度を向上させるためには、以下の3つの対策が効果的です。

◆ 対策1. 3~4ヶ月先まで含めた売上予測を徹底する
◆ 対策2. お客様の購買プロセスを把握する
◆ 対策3. コスト意識を高める教育を行なう

対策1. 3~4ヶ月先まで含めた売上予測を徹底する

「今月の売上」だけではなく、3~4ヶ月先までの売上予測を管理することが重要です。そして、3ヶ月後の売上見込みの商談は、その売上見込みの時期に確実に受注できるような対策を行います。3~4ヶ月先まで期間で売上予測をしているからこそ「何月に売上が増えるのか?」「何月に売上が不足するのか?」を事前に把握することができ、「展示会をする」「生産調整を行う」などの効果的な対策ができるようになります。

対策2. お客様の購買プロセスを把握する

お客様の購買プロセスや意思決定プロセスを把握し、それによる商談管理を行います。その結果、「お客様の都合で注文時期が遅れそうだ!」という問題を早く察知できるようになります。お客様の社内手続き上の問題があれば、お客様がその作業を進めるのを待っているだけではなく、お客様が社内手続きを先へと進められるようにするお手伝いをします。

対策3. コスト意識を高める教育を行なう

上記の2つの対策と合わせ、営業に「売上予測の重要性とコスト意識」に関する教育をすることも大切です。お客様に対して第一線にいる営業がコスト意識を持つことで、売上予測の精度が高まります。また、コスト意識を強化することは、波及効果として安易な値引きをしなくなることにも役立ちます。

安易な売上予測に基づいた思考や行動が企業にどれだけの悪影響を及ぼすのかを認識し、「売上予測の精度を高める」意識を1人ひとりが持ち続ける風土と運用体制(マネジメント)をつくることが重要です。

SFA(Sales Force Automation)をさらに活用し、売上予測の精度向上へ

上記のような管理には、SFA(Sales Force Automation)という営業管理ツールを使って商談管理をすると効果的です。ただし、SFAを導入しただけで、売上予測の精度が高まるわけではありません。実際にSFAを導入しても、売上予測の精度が低い企業はたくさんあります。SFAで売上予測の精度を高めるためには、やはり上記3つの対策をともに行うことが大切です。

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(本ノートは、2009年2月26日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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