経営者や事業部長は、事業の拡大や成長を目指し「お客様と大きな取引をしよう!」と、方針や戦略として掲げます。ですが、しばらく経つと、そのための活動が行われなくなり、そのままその目標を達成することなく終了していることが多いです。2~3年ごとに「お客様と大きな取引をしよう!」との目標を掲げながら、毎回うまく行っていない企業や営業組織もあります。なぜ、うまく行かないのでしょうか?
今回は、「顧客と大きな取引をする」ための5つの対策について解説します。
大きな取引を実現するために行うべき5つの対策
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「顧客と大きな取引をする」対策がうまく行っていない!?
事業を拡大するための対策には、どのようなものがあるか?
事業を拡大する(売上や利益を増やす)ために、営業組織が行うべき対策はいくつかあります。例えば、以下のような対策です。1. 商談や案件の数を増やす(営業社員を増やす、販売する商材を増やすことを含む)
2. 個々の商談の金額を増やす
3. 個々の商談の成約率を高める(ライバル会社に対しての勝率を高めることを含む)
内部や外部の要因や目指す目標に応じて取るべき対策は変わりますが、営業組織において一般的に良く行われる事業を拡大するための対策が「商談や案件の数を増やす」です。ですが、「営業社員をなかなか採用できない」「営業社員たちが辞めてしまう」「営業社員を採用して売上は増えたが、その逆に利益率は悪化している」という問題から、「商談や案件の数を増やす」対策を行っても、期待通りに事業が拡大できない(売上や利益を増やすことができない)企業や営業組織も目にします。
「顧客と大きな取引をすること」は、事業を成長させるための重要な対策の1つ
今回、このノートで考えたいのが、事業を成長させる対策の1つ「個々の商談の金額を増やすこと(顧客と大きな取引をする、を含む)」です。実際に、多くの企業の経営者や事業部長や営業統括マネージャーが、「お客様と大きな取引をする」ことを重要課題として挑戦しています。重要課題として挑戦しているのですが、実際には結果が出ないことが多いです。
それぞれの企業や営業組織は、どのように「取引額」を大きくしようとしているのか?
売上額2倍を目指すA社の挑戦
備品などを含めた消耗材を扱うA社の経営者は、長らく「現在の売上額を2倍へ増やす」ことを目標に掲げていました。その目標を達成するために、「新しい商材(商品、サービス、ソリューションなど)の販売を始める」「営業社員の能力強化や行動力を強化する」などの対策を行っていましたが、なかなかその目標に近づくことができずに苦悩していました。A社の経営者は、「新しい商材を増やして取引のあるお客様に買ってもらえれば、売上高は増えるだろう」と予測していました。A社のマネージャーたちも、新しい商材で受注できれば、お客様あたり月額数100万円の取引になる、と見込んでいました(お客様ごとの取引額が増える見込みでした)。
ですが、色々と営業状況を調査してみると、その目論見通りには行きそうもないことがわかりました。A社の商材の受注履歴を調べてみると、お客様ごとの商材の売上は月額数万円程度でした。さらに、紹介してから初めての注文をもらうまでに半年以上かかる(場合によっては1年近くかかる)こともわかりました。新しい商材を増やすだけでは、目標としている「売上額を2倍にする」ことに十分貢献しそうにもないことがわかったのです。
営業社員の採用も進めていますが、今はどこの企業も採用数を増やそうとしていますから、採用も思うように進みません。今までのように商材を増やし、営業社員がお客様に新商材を紹介するだけでは、取引額は微増にしかならず、会社の売上額を2倍にすることは困難な状況でした。
企業成長率10%を目指すB社の挑戦
外資系製造業B社の経営者は、「売上成長率10%」を目標に掲げました。B社が販売している商材は、技術的に高い知識が必要な商材のため、営業社員を増やしたくても簡単に増やすことができませんでした。また、50年以上に渡り事業を行っている企業なので、多くのお客様との取引もあり、新規のお客様を開拓することはそれほど重要ではありませんでした。すでに取引のあるお客様があるので、そこから大きな取引ができれば売上成長率を高めることができると見込んでいました。B社は、お客様からのある一定量の問い合わせがあり、それをきっかけにお客様と商談ができました。ですが、それだけでは、お客様と大きな取引ができません。そのために、B社の経営者は、営業社員へ「商材の話だけをするのではなく、お客様とビジネスに関わる話もするように」そして「担当者と会うだけではなく、より上層部のお客様と会うように」という指示を出しました。そして、指示を出すだけではなく、上層部とビジネスの話をするためのトレーニングを行いました。
その結果、お客様との取引額は増えたのですが、当初期待するほどの大きな取引までには至りませんでした。
「顧客と大きな取引がしたい」と考えているが、思うように行っていない原因は?
2つの会社の事例を紹介しました。私たちのクライアント企業の多くは、売上や利益の増加のために、「顧客と大きな取引がしたい」と考えていましたが、うまく行っていなかったのです。以下のことが、「顧客と大きな取引をする」ことができない原因でした。◆「顧客と大きな取引をする」と指示しているだけ
◆ 営業社員の営業方法を変えていない
◆ 営業マネージャーの役割を変えていない
これらの原因からおわかりの通り、顧客と大きな取引をしていくためには、今までと同じような営業方法をしているだけでは、取引額を大きくすることはできないのです。
「顧客と大きな取引をする」具体的な対策とは?
顧客と大きな取引をするために、必須で行うべき対策は以下の5つです。1. 営業からお客様へ提案をする
2. 商材の提案ではなく、お客様の問題を解決する提案をする
3. 上層部との関係を構築する
4. ビジネスの話をする
5. マネージャーと営業社員で役割分担し、チームで挑戦する
1. 営業からお客様へ提案をする
顧客と大きな取引をするためにまずすべきことは、営業社員からお客様へ提案を仕掛けていくことです。事例として紹介した外資系製造業B社は、お客様からの問い合わせが多い状況でした。「お客様からの問い合わせが多い」ということを聞くと、羨ましい経営者や営業マネージャーも多いのではないでしょうか?
新規の案件や商談を開拓することは簡単ではありません。多くの企業が新規の案件や商談がなくて苦労をしています。そのような企業と比べて、B社はお客様からの問い合わせはあるのです。ですが、問い合わせがあるために、営業社員は、待ちの姿勢の営業スタイルでした。
お客様は、B社だけに声をかけているわけではありません。B社のライバル会社にも声をかけています。そのため、問い合わせから発生するほとんどの案件は価格勝負となっていて、利益率は良くない状況でした。
「顧客と大きな取引をする」ためには、お客様からの問い合わせを待つのではなく、営業側から提案を行い、商談を作っていくことが必須です。営業からお客様へ提案をしても、お客様は検討してくれないことも多いです。だからといって待ちの姿勢のままでは、「顧客と大きな取引をする」ことはできません。当初は、案件や商談となる確率が低いかもしれませんが、営業側からお客様へ繰り返し提案する必要があります。
そのような姿勢で営業を続けることで、お客様は営業社員を高く評価するようになるのです。
2. 商材の提案ではなく、お客様の問題を解決する提案をする
営業社員は、販売している商材について十分な知識が必要です。しっかり商材について勉強し、お客様へわかりやすく説明できなければなりません。しかし、商材の話だけをしていても、結局のところライバル企業が同じような商材を扱っていれば、値引き競争になります。そのために、「その商材はお客様のどのような問題を解決することができる商材か!」を説明できなければなりません。
様々な企業の営業社員と同行訪問をしましたが、「この商材は、お客様のどのような問題を解決できるか?」を具体的に提案できる営業は少ないです。その理由は、このことを徹底的に訓練していないためです。ですが、顧客と大きな取引をすることができる企業の営業社員は、当たり前のようにできます。それができるから、ライバル会社との値引き競争に巻き込まれることを減らし、取引額を大きくすることができるのです。
先ほど紹介した「営業からお客様へ提案をする」と「商材の提案ではなく、お客様の問題を解決する提案をする」の2つは、「顧客と大きな取引をする」ための必須条件です。この2つができなければ、お客様との取引額が大きくなることはありません。
営業社員には、この2つの要素を徹底的にトレーニングする必要があります。
3. 上層部との関係を構築する
多くの営業社員の一般的な営業相手は、調達や購買の担当者やユーザーです。ですが、そのような担当者と話をしていても、金額の大きな取引ができるわけではありません。お客様の上層部とコンタクトをして、関係を構築し、上層部へ提案をしていく必要があります。上層部のお客様だからこそ、大きな予算や投資額の権限を持っています。「顧客と大きな取引をする」ためには、お客様の上層部との関係を構築することが大切です。
4. ビジネスの話をする
先ほど、「商材の提案ではなく、お客様の問題を解決する提案をする」を解説しました。この「商材の提案ではなく、お客様の問題を解決する提案をする」ためには、お客様の仕事の状況や仕事上の問題を理解しなければ提案することができません。ですから、まずは、お客様の仕事内容や仕事上の問題をお客様と話し合い、しっかり理解できることが大切です。さらに「顧客と大きな取引をする」ためには、お客様の仕事内容や仕事上の問題の話だけではなく、お客様の経営層や事業部長や執行役員などの役職の高い人とビジネスの話をする必要があります。ビジネスの話とは、「お客様の行っている競合対策」「お客様が行っている市場開拓」「経済環境の変化への対策」などの話です。そのようなビジネスに関わる話を行い、そのビジネス上の課題を解決する提案を行う必要があります。
そのようなお客様のビジネスの問題や課題を解決する提案ができれば、お客様と大きな取引ができるようになります。
5. マネージャーと営業社員で役割分担し、チームで挑戦する
「上層部との関係を構築する」と「ビジネスの話をする」を解説しましたが、これを行うためには、チームで行うことが大切です。営業社員だけにやらせようとしてもできません。お客様の上層部との関係を構築するためには、こちらもそれなりの役職の人が応対し、その人がお客様との関係を維持する必要があるのです。本来、大企業のお客様との大きな案件を創出するのは、営業だけの仕事ではなく、営業マネージャーの仕事です。営業マネージャーが戦略を立て、営業社員へ指示を与えながら関係構築し、お客様の上層部とビジネスの話をし、そのビジネスの提案をしていくことが大切です。
このような営業の仕組みを構築しなければ、「お客様と大きな取引をする」ことはできません。
事例紹介した企業は、なぜ、十分に「顧客と大きな取引をする」ことができなかったのか?
実際に、大企業のお客様と大きな取引ができている企業や営業組織は、このノートで解説している「5つの対策」を行っています。それに対して、先ほど紹介した2社は、「5つの対策」をすべて行っていないために、十分に「顧客との取引を大きくする」ことができていませんでした。A社が「顧客との取引を大きくする」ことができなかった原因
A社の経営者は、「現在の売上額を2倍へ増やす」ことを目標に掲げ、営業社員たちに指示していました。そして、「現在の売上額を2倍へ増やす」ために、新しい商材(商品、サービス、ソリューションなど)の販売を始めていました。ですが、この5つの対策のうち、「営業からお客様へ提案をする」対策と「商材の提案ではなく、お客様の問題を解決する提案をする」対策だけを行っていました。「営業からお客様へ提案をする」対策を行ったので、営業社員がお客様へ提案する量は増えていました。ですが、「商材の提案ではなく、お客様の問題を解決する提案をする」対策については、十分な訓練ができてなく、ここでつまずいている状況でした。
B社が「顧客との取引を大きくする」ことができなかった原因
B社の経営者は、「企業成長率10%を目指す」ことを目標に掲げました。その実現のために、「営業からお客様へ提案をする」「商材の提案ではなく、お客様の問題を解決する提案をする」「上層部との関係を構築する」「ビジネスの話をする」ためのトレーニングを行いました。そのため、B社は、ある程度「顧客との取引を大きくする」ことができていました。ですが、B社は、組織上の問題があり、「マネージャーと営業社員で役割分担し、チームで挑戦する」対策ができませんでした。営業社員が一人で「上層部との関係を構築する」「ビジネスの話をする」を行わなければならなかったのです。そのため、お客様の上層部との関係構築が十分できないままでした。
以上のA社とB社の事例から、十分に「顧客との取引を大きくする」ためには、今回紹介した5つの対策をしっかり取り組まなければならないことがおわかりいただけるかと思います。
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「顧客と大きな取引をする」ためには、以下のことを戦略的に行う必要があります。◆ 大きな取引を実現したければ、ビジネスの話をする。
◆ より上層部の人と面会する必要がある。
◆ 大手企業と大きな取引を目指すことは、営業社員任せにせず、営業マネージャーの役割として行う(それには、営業マネージャーの能力強化が必須である)。
実際に、「顧客と大きな取引をする」ことができている企業や営業組織は、これらのことができています。簡単ではありません。ですが、それらの企業では、営業マネージャーと営業社員を徹底的にトレーニングして、このようなことができるようにしています。
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文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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