企業の経営者や営業部門の統括マネージャーとお話をしますと、「営業担当者が、お客様に会おうとしない!」「お客様先に行こうとしない!」と、伺うことが多くなりました。
状況を聞くと、お客様との商談はしているのですが、ZoomやTeamsなどによるオンラインツールで商談しているだけで、お客様先に行って、お客様と対面で面談や商談をしないのです。経営者や営業統括マネージャーとしては、もっとお客様へ訪問してほしいのですが、お客様との対面での面談数が少なすぎる状況です。
どうすれば、営業担当者がお客様先へ訪問し、お客様と対面での面談や商談をするようになるのでしょうか?
営業担当者のお客様への訪問件数を増やすことができた会社が行った対策について解説します。
営業担当者のお客様訪問件数を増やすことができた会社が行った対策方法の実例
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営業担当者なのに、訪問件数が少なすぎる!
営業組織のパフォーマンスを向上させる対策の1つが、「お客様との面談件数を増やすこと」です。ある営業コンサルティング会社は、「営業担当者は、月200回はお客様へ訪問をすべきだ!」と言っています。営業担当者のパフォーマンスは、基本的に行動量と比例します。ですが、「訪問量は、多ければ良い!」というものではありません。私たちのクライアント企業のうちの1社の営業部長は、「全員、月間200回訪問しろ!」と司令を出しました。ですが、そのことで、昨年度よりも売上が下がってしまいました。それ以前は、月80回程度のお客様訪問が平均でした、それなのに、「月200回」と言われたので、ほとんどの営業担当者は「そんなの無理だ!」と考え、その訪問件数目標の達成を目指そうとしませんでした。
営業担当者たちは、訪問目標を達成しようとせず、上層部への不満も多くなり、その結果として、年間の売上額も減ってしまいました。実際のところ、このようなことが続くと、「目標は達成できるものではない!」という風土を生み出す事になってしまいます。
以上の営業組織のように、必要以上にお客様に訪問させようとすると、営業の業績が悪化します。ですが、このノートで紹介するクライアント企業の訪問件数は少なすぎるのです。
訪問件数の少ない企業の実態は?
あるIT企業のお客様訪問の状況
企業向けにITソリューションを販売しているIT企業の営業本部長も、営業担当者の訪問件数の少なさに悩んでいました。この企業の営業担当者のお客様への訪問件数は、週に1回か2回程度しかない状況だったのです。週に1回か2回程度の訪問ですから、月間ですと4回から10回程度しかお客様に訪問していません。経営目標を達成するためには、訪問件数が少なすぎるのです。
ある消耗材を販売する企業のお客様訪問の状況
企業向けに消耗材を販売している企業の経営者は、営業担当者の訪問件数の少なさが不満でした。新型コロナウイルス感性症により、一時期、多くの人の行動が制限され、お客様へ訪問することが一切できなくなりました。現在、その行動制限はなくなりましたが、当時の影響を引きずっており、営業担当者の訪問件数は月10回程度でした。やはり訪問件数が少なすぎるのです。これでは、営業の業績が向上することはありません。
なぜ、お客様への訪問件数が少ないままなのか?
以上のように、訪問件数の少なさに頭を抱えている企業は少なくありません。営業である以上、ある程度はお客様に訪問して提案をしなければ、営業のパフォーマンスを向上することはできません。それなのに、なぜ、訪問件数が少ないままなのでしょうか?
その原因は、以下の3つです。
原因1. 「技術の進歩」や「効率の重視」
原因2. 新しい営業体制への変化
原因3. 「楽な方が良い」という意識
原因1. 「技術の進歩」や「効率の重視」
理由の1つ目は、「技術の進歩」や「効率の重視」のためです。ZoomやTeamsなど、オンラインでミーティングができるツールが増え、お客様先に訪問しなくても、お客様と商談ができるようになりました。お客様先へ行かなくても良ければ、移動時間も旅費交通費も削減することができます。また、お客様も、営業担当者に来てもらうよりも、より簡単に営業担当者と打ち合わせをすることが可能になりました。営業担当者が、お客様先に訪問しなければいけない必要性が少なくなったのです。原因2. 新しい営業体制への変化
2つ目は、「インサイドセールス体制が定着してきたこと」です。お客様からの問合せは、インサイドセールスが担当します。難度が高い商談だった場合には、営業担当者がそのお客様との商談を引き継ぎます。ほとんどの案件をインサイドセールスが対応し、かつ、一部の重要な案件だけが営業担当者が対応するような状況ですので、お客様先まで訪問して面談をしなければならない機会そのものが減少しました。原因3. 「楽な方が良い」という意識
3つ目は、「外出しないほうが、営業担当者にとって楽」だからです。電話やメールやオンラインミーティングで済めば、わざわざ移動することもなく、営業担当者にとっては楽です。さらに、仲の良い人との面談であれば営業担当者にとって苦ではありませんが、初めて会うお客様やまだ関係が構築できていないお客様とお客様先で面談するのは、それなりにお客様への気配りが必要です。営業担当者に限らず、お客様と会うことは相当気を使います。簡単に済ませることができるのであれば簡単に済ませたいのです。また、社内には同僚がいます。お客様と過ごすよりも、社内で同僚と過ごすほうが気楽です。但し、上司の目が気にならなければ、ですが。消耗材を販売している企業のCaseを紹介しましたが、多くの営業担当者は、お客様へ外出できない時期が続きました。行動が制限される苦悩はありましたが、会社内で仲間や同僚と過ごすことができました。人は、一度快適な状況を体験すると、その快適さを手放したくありません。そのため、多くの営業担当者は、なんだかんだ言い訳を言って、最低限必要な訪問数すらしなくなっていたのです。
お客様へ訪問することは必要か?
「パフォーマンスの良い営業組織の訪問件数」と「パフォーマンスが低迷している営業組織の訪問件数」を比較すると、間違いなく、お客様への訪問件数の多い営業組織のほうが良い営業成績をあげています。その理由はシンプルです。訪問件数が少ない営業組織は、お客様からの問合せに対応する営業方法です。ほとんどの売上は、お客様からの問合せに依存している状態です。それに対して、パフォーマンスの良い営業組織は、お客様からの問合せに対応するだけの営業方法だけではなく、お客様に訪問して提案を行う営業方法もできています。すなわち、お客様からの問合せだけではなく、営業担当者の提案から案件を生み出すこともできています。
先ほど紹介したIT企業は、その受注のほとんどが、お客様からの問い合わせに対してインサイドセールスが対応して始まった案件でした。お客様からの問合せに対応するだけの営業方法のために、経営目標を達成するための十分な売上を達成できていませんでした。
消耗材を販売している企業も同様です。お客様からの問い合わせに対して営業をしているだけのため、売上を伸ばすことができていませんでした。また、お客様からの問い合わせに対して営業をしているだけなので、大きな値引きをしなければ受注できない案件が多かったのです。
営業組織のパフォーマンスを向上させるためには、そして、営業組織の売上や利益を増やすためには、営業力、特に、提案力が強くなければなりません。お客様と直接面談をして話をし、相手のことをしっかり知らなければ、価値ある提案をすることなどできません。電話やメールやオンラインミーティングでは、やはり、お客様のことを十分に理解することができません。だから、営業担当者には、適切な量のお客様訪問が必須なのです。
では、どうしたら、営業担当者のお客様への訪問量を増やすことができるのでしょうか?
お客様への訪問を増やす方法!
多くの営業組織が、お客様への訪問件数の低さに悩んでいます。そのために、経営者や営業本部長が「訪問件数を増やせ!」と言い続け、「訪問件数目標50件」などの指示を出しています。ですが、それでも、訪問件数を増やすことができていません。私たちは、多くの営業組織の営業力強化の支援をしています。その支援の1つが、「営業担当者のお客様への訪問件数を増やさせる!」ことです。営業担当者のお客様への訪問量を増やすために、私たちは以下の手順で行っています。クライアント企業がこの手順で対策を行えば、確実に「営業担当者のお客様への訪問件数を増やす!」ことができます。
Step 1. 現状の訪問件数を数値として把握する
Step 2. 毎月の訪問計画を計画させる
Step 3. 「提案する重要さ」と「提案する方法」をトレーニングする
Step 4. 最低限の訪問回数を設定する
Step 1. 現状の訪問件数を数値として把握する
まず、行うことは、現在の訪問件数を把握することです。この数値を把握しないと、確実に訪問件数を増やす対策ができません。毎月5回しかお客様に訪問できていない営業担当者に、「訪問件数目標50件」と指示を出しても、そんなに訪問できるわけがないのです。そのために、営業担当者全員に、毎月の訪問量を報告させます。まずは、現状の訪問件数を数値として把握します。
Step 2. 毎月の訪問計画を計画させる
現状がわかったら、次は、毎月の訪問計画を立てさせ、報告させます。最初のうちは、営業担当者が計画する訪問件数は少ないでしょう。そのため、「今月は、もう2回分増やそう」と話をし、徐々にお客様への訪問計画の量を増やします。こうすることで、お客様への訪問計画の量を増やすのと同時に、毎月の訪問計画を行う習慣を身に着けさせます。
Step 3. 「提案する重要さ」と「提案する方法」をトレーニングする
Step2の対策を行っていますと、営業担当者は、その訪問計画に苦労をし始めます。お客様へ訪問するアポネタが無くなるためです。そこで、「営業担当者からお客様へ提案する重要さ」と「営業担当者からお客様へ提案する方法」のトレーニングを実施し、学ばせます。このトレーニングにより、営業担当者が、より多くのお客様へ訪問する計画を立てられるようにします。
Step 4. 最低限の訪問回数を設定する
最後は、最低限の訪問回数を設定します。たとえば、「毎月、最低40回以上は訪問すること」という訪問回数を設定し、それを職務評価項目にします。ここで設定するのは、「目標」ではなく「最低限の訪問回数」です。この最低限の訪問回数というのは、1月や5月や8月や12月などの休日が多い月であってもクリアすべき最低限の数値です。本来は、月に50回でも60回でもお客様へ訪問してほしいのです。そのため、多くの営業組織では、「月70件訪問しろ!」という行動目標の指示を与え、どれだけ訪問しているかを報告させます。ですが、中には、それだけの訪問ができない営業担当者もいます。そのような営業担当者は、その指示した訪問目標を達成しようとしません。最初から諦めるのです。一部の営業担当者が目標の達成を目指さなくなると、他のほとんどの営業担当者もその訪問目標の達成を目指さなくなります。
そのため、「最低限の訪問回数」を設定することが重要です。その「最低限の訪問回数」を大きく超えて訪問をした営業担当者には人事評価で加点をします。逆に、最低限の数値をクリアできなかった営業担当者は、営業担当者から外れてもらう覚悟も必要です。
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営業担当者の「お客様への訪問件数」を増やそう!
お客様への訪問量と営業担当者の業績は比例関係です。パフォーマンスを向上させたければ、営業担当者の訪問件数を増やす必要があります。営業担当者が、お客様へ訪問して商談を行うことは必須です。お客様への訪問件数が少なすぎるようでは、営業担当者としては失格です。私たちは、多くの営業組織の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。事業を成長させるための豊富なノウハウと経験があります。このノートで解説した通り、私たちは、営業担当者の訪問件数を増やす支援も行ってきました。具体的な内容説明の希望/質問/ご依頼は、下記からお問い合わせください。
(本ノートは、2024年5月16日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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