会議では活発に意見が出ているのに、以下のような経験はありませんか?
◆ 結局、開始が決まらない
◆ 何度も差し戻される
◆ 始まっても、途中で勢いを失う
実は、多くの企業でプロジェクトの成否は“始める前の会議”でほぼ決まっています。
本記事では、事業成長に必要なプロジェクトが「批判の場」で止まってしまう理由と、全員が腹落ちしてスタートできる意思決定会議の作り方を解説します。
プロジェクトが前に進まない本当の原因
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プロジェクトを成功させるために必要なイベントとは?
「事業を成長へと導くプロジェクト」を成功させるためには、以下のプロセスで進める必要があります。1. 課題の特定
2. プロジェクトの目標設定と実行計画の立案
3. プロジェクトの開始の意思決定
4. キックオフミーティング
5. プロジェクトの実行
6. プロジェクト結果の評価
プロジェクトが失敗する理由は、計画不足だけではありません。以上のように、プロジェクトを成功させるためのイベントの1つが「プロジェクトの開始の意思決定」です。
多くの場合、問題は 「プロジェクトを開始するかどうかを決める会議の設計」にあります。本来、この会議は、以下を目的とした重要なイベントです。しかし現実には、意思決定どころか、プロジェクトを止める場になっているケースが少なくありません。
◆ 成功の可能性を高める
◆ 関係者の覚悟をそろえる
◆ 協力体制をつくる
よくある「開始意思決定会議」の失敗パターン
批判が先に出てしまう会議
法人企業を対象にコンサルティングサービスを提供していた企業P社は、自社を大きく成長させることを目指していました。そのために、経営トップは社員たちへ「会社を大きく成長させるプロジェクト」の実行を指示していました。P社が挑戦しようとしていた課題には、「業務の生産性の向上(一部には、業務のアウトソーシングも含む)」「クライアントであるお客様へ提供するサービス品質の向上」「社員の能力の向上」「新たなサービスの開発」など、様々ありました(プロジェクトの手順「1. 課題の特定」に相当)。
そのため、経営トップは、各部長に対して、プロジェクトの実行を指示していました。それぞれの部長は、与えられた課題に対して、プロジェクトの目標設定や実行計画を立てていました(プロジェクトの手順「2. プロジェクトの目標設定と実行計画の立案」に相当)。
プロジェクトの計画ができると、それぞれのプロジェクトを開始(スタート)するかどうかを意思決定する会議が行われました。その会議の場には、経営トップだけではなく、複数の取締役や部長たちも参加していました(プロジェクトの手順「3. プロジェクトの開始の意思決定」に相当)。
P社のこの意思決定の会議では、プロジェクトがうまく進まなくなる問題が起こっていました。P社は、「自由に意見を言い合う」ことを尊重していました。ですが、そのことが「プロジェクトの開始の意思決定」の会議において、問題を引き起こしていたのです。
ある部長が「プロジェクトの目標と実行計画」の説明を始めると、他の参加者たちは、その発表を最後まで聞くことなく、以下のような批判/否定/ダメだし/あら探しを始めていたのです。
◆ その目標は、本当に達成できるのか?
◆ その活動計画はうまくいかないんじゃないか?
◆ 私は賛同できない。違う方法にすべきじゃないか?
◆ それよりも、こうした方が良いのではないか?
◆ 資料の作り方が悪い。その説明の部分には、図やグラフを入れたほうが良い。
◆ 本当にうまくいくのか、成功できる気がしない。
◆ そもそも、なぜ、このプロジェクトの検討しているんだ?(経営トップが自分で指示したにもかかわらず)
このように、人は肯定的な意見よりも、「批判/否定/ダメだし/あら探し」の意見の方が言いやすい傾向があるのです。
誰も決断しない会議
発表を聞いていた一人が以上のような意見を言い始めると、他の人がその意見に便乗するような意見を言っていました。そのために、結局のところ最後まで説明することなく、「計画の検討し直し」や「プロジェクト中止」となっていました。以上からわかるように、この会議は、「プロジェクトの開始を意思決定する会議」ではなく「プロジェクトをスタートさせないようにする、批判/否定/ダメだし/あら探しの会議」となっていたのです。
実際のところ、部長たちの立案したプロジェクト計画は、経営トップや取締役たちの意向に応えていて、若干調整すればプロジェクトとして実行する価値もあったのです。「計画の検討し直し」や「プロジェクト中止」となる必要のないプロジェクトもかなりありました。
P社は、事業成長に必要な課題を認識していたにも関わらず、以上のような意思決定の進め方のために、その課題の対策を遂行することができませんでした。数年後、P社の業績は危機的な状況にまで落ち込みました。
なぜ、意思決定の会議が混沌とした状況となっていたのか?
「プロジェクトの開始の意思決定」をイベントとして行っていない企業も多い中、P社は「プロジェクトの開始の意思決定」をイベントとして行っていました。しかし、P社の意思決定の会議は効果的なものではありませんでした。P社のプロジェクトの開始を意思決定する会議では、以下のような状況でした。◆ 意思決定をしたいのに、批判/否定/ダメだし/あら探しばかりとなる。
◆ 目的は「意思決定」および「よりよい実行計画を検討する」ことだが、話がずれていく。
◆ 何回もやり直しや見直しをしているので、時間がかかる。プロジェクトの開始が遅れる。
◆ プロジェクトを計画したメンバーの意欲が高いのに、その意欲を下げてしまう。
以上のように、P社の意思決定の会議では、プロジェクトの目標と実行計画を十分に理解することなく、思いつきの批判/否定/ダメだし/あら探しが出て、合理的/建設的な討議や検討が行われることなく、会議が進んでいたのです。
P社以外の会社の意思決定の会議でよく起こっていたことは、以下のようなことでした。それらの企業では、そのためにプロジェクトを始めて良いかどうかもわからないまま、時間ばかりが過ぎていました。
◆ 必須で行わなければならないプロジェクトなのに、実行を決断しない。
◆「意思決定してください」と言っても、誰も何も言わない、決断しない。
成功確率を高める「開始意思決定会議」5つのステップ
プロジェクトを成功させるためには、目標設定や実行計画が大切です。そのプロジェクトが必要である理由を明確にし、方向性を示し、目標を設定する必要があります。ですが、もっとも重要なことは、このあとの「プロジェクトの実行」です。実際のところ、プロジェクトは事前の計画通り行くことなどほとんどなく、様々な問題や障害にぶつかります。そのような問題や障害を乗り越えるためには、他の人の協力が必要です。
成果を出している企業は、「プロジェクトの開始意思決定」を公式なイベントとして明確に位置づけています。
目的はシンプルです。
このプロジェクトを、全員で成功させると決めること
そのために、会議の進め方をあらかじめ設計しています。プロジェクトを成功させるための「プロジェクトの開始を全員で意思決定する公式なイベント」は、以下の手順で進めます。
(1) 意思決定の場であると明確に宣言する
(2) 計画を最後まで聞く
(3) 理解を深める質問をする
(4) 成功確率を高める助言を出す
(5) 全員で開始を意思決定する
(1) 意思決定の場であると明確に宣言する
まず、目的を宣言することから始めます。会議の目的は、「プロジェクトを開始するかどうかを全員で意思決定すること」です。そのことを、会議に参加した全員に宣言し、全員が目的を認識してから会議を始めます。その宣言の後は、会議の進め方を説明します。(会議の進め方とは、上で説明した(2)から(5)に相当します)。
(2) 計画を最後まで聞く
「プロジェクトの開始を意思決定する会議」のルールは、「診断してから処方する」です。プロジェクトの目標と実行計画を十分に理解しなければ、適切かつ有効な意見を言うことはできません。相手を理解する前に意見を言っても、思いついただけの批判/否定/ダメだし/あら探しでしかなく、検討する必要すらないことも多いです。さらには、プロジェクトの目的を歪めてしまうことさえあります。
色々思いつくかもしれませんが、この後に、意見/質問を言う機会があります。まずは理解に徹し、説明が終わるまで待ちます。「診断してから処方する」、すなわち、「しっかりと理解してから意見を言う」が鉄則です。
(3) 理解を深める質問をする
プロジェクトの目標と実行計画についての説明が終わったら、より正しく理解するための質問をします。プロジェクトを立案した人は、そのすべての質問に対して回答します。(4) 成功確率を高める助言を出す
すべての質問に回答すれば、全員がプロジェクトの目標と実行計画を理解したことになります。ここで、このプロジェクトを成功させるための改善点や助言を検討します。全員で、「これらの改善点や検討点をプロジェクトに盛り込むかどうか」そして「プロジェクトの目標や実行計画を変更するかどうか」を検討し、このプロジェクトが成功する可能性を高めます。
「プロジェクトの目標と実行計画」を理解できているからこそ、そのプロジェクトの成功の可能性を高めることができる改善点や検討点などの意見を言うことができるのです。
(5) 全員で開始を意思決定する
最後に行うことは、「このプロジェクトを開始するかどうかを全員で意思決定すること」です。一般的には、「賛成の人は?」と問いかけ、全員が賛成しているかどうかを確認します。この方法の問題点は、「賛成」と言葉として表現しない人(黙っている人)、手を挙げない人(動かない人)が多く、全員が本当に賛成しているかどうかわからないことです。中には、拒否しているのに、何も言わない人すらいます。この「プロジェクトを開始するかどうかを全員で意思決定する」ための効果的な方法は、「賛成する人を確認する」のではなく、「拒否する人を確認すること」です。拒否する人が一人でもいたら、その人がプロジェクトの成功を邪魔しかねません。そのため、「拒否する人がいるか?」を問いかけます。拒否する人がいなければ良いのです。「拒否する人」が一人もいなければ、「全員で、プロジェクトの開始を意思決定した」とみなすことができます。
プロジェクトの意思決定に課題を感じている方へ
このプロジェクト、本当に始めて大丈夫だろうか?「プロジェクトの目標と実行計画」が不十分なのに「プロジェクトの開始の意思決定」をしても、そのプロジェクトで結果を出すことはできません。逆に、「プロジェクトの目標と実行計画」が良いのに「プロジェクトの開始の意思決定」をする会議において、思いつきだけの批判/否定/ダメだし/あら探しをしてしまっては、プロジェクトが始まらないか、もしくは、始まったとしても結果を出すことはありません。
プロジェクトの成功の可能性を高めるためには、「プロジェクトの開始の意思決定」というイベントを通して、プロジェクトの成功に役立つ意見やアイデアを反映させ(統合させ)、全員の心に「成功させる」という意識を植え付け(その意識を心に統合し)、全員で「プロジェクトの開始の意思決定」をすることが大切です。そのために、私たちは、このイベントを「統合(Integration)」を名付けています。
ここまで読んで、以下を感じたと感じた方も多いのではないでしょうか。
◆ 理屈はわかる
◆ でも実際の会議ではうまくいかない
意思決定の進め方は、組織の文化・力関係・過去の失敗体験の影響を強く受けます。そのため、内部だけで変えようとすると、元に戻ってしまうことが少なくありません。
私たちは、多くの企業で「プロジェクトが止まる原因の特定」「意思決定会議の再設計」「マネジメント層・プロジェクトリーダー支援」を通じて、事業成長プロジェクトの成功確率を高めてきました。
「うちの場合はどう整理すべきか?」そんな段階でも構いません。具体的な状況に合わせたご相談は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
(本ノートは、2023年1月28日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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