多くの営業組織では「毎月の売上目標」と「外出量と訪問計画(もっとお客様のところへ訪問しろ!)」による営業の管理を行っていますが、それでも「営業担当者が売上目標を達成できない!」「案件の成約率が低い!」という問題を解決できていません。営業支援ツール(SFA, Sales Force Automation)はこれらの問題を解決するためのツールなのですが、SFAを導入している企業でも同じ問題を抱えています。
これらの問題解決の鍵となるのは「案件管理を行っていないのであれば案件管理を導入する」もしくは「案件管理を行っていれば案件管理を見直す」ことです。案件管理の導入/案件管理を見直しで、案件の受注確度と成約率を高めることができ、その結果として、営業目標の達成度を向上させることができます。
このノートでは、実際にクライアント企業で実施した案件管理の導入方法について解説します。
購買プロセスに沿ってシンプルな案件管理を行うことが鍵
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行動管理をしても案件の成約率が悪いままだった!
売上目標の達成率と案件の成約率を改善しなければならない理由は?
クライアント企業A社は「営業担当者が売上目標を達成できない!」「案件の成約率が悪い!」という問題に直面していました。A社は法人向けのアウトソーシングサービスを提供している企業でした。A社の社員構成は、アウトソーシングサービスの作業を行う社員が75%を占めていました。営業担当者は5名で、一般的な受注単価は50万円から150万円でした。営業担当者たちの毎月の売上状況ですが、「毎月安定して受注ができている状況」ではありませんでした。毎月の売上目標に対して1.5倍もの売上があることもありますし、売上がほぼ0という時もありました。毎月の売上目標の1.5倍もの受注になると、アウトソーシングサービスの作業を行う社員のリソースが不足し、お客様の期待する期間に合わせてサービスを提供できない問題が発生していました。
ですが、売上が0に近い状況になると、仕事がない人が増えていました。ですので、A社の営業組織は、この労働負荷のバランスをとるためになるべく毎月均等に受注できるような状況にしたかったのです。
営業の管理は、訪問件数と毎月の売上金額だった!
A社の営業力は他社と比べてそれほど悪いわけではありませんでした。訪問件数などの行動量は常に管理されていて、営業担当者たちは朝の朝礼が終わるとすぐにお客様先へ出かけ、夕方まで戻ってこない状況でした。お客様への訪問にもルールがあり、午前中に2件、午後には3件の面会をすることになっていました。また、毎週月曜日の朝には営業ミーティングがあり、「今月の売上目標」「現在の売上実績」「今週の訪問先」を確認していました。すなわち、以下のような、多くの営業コンサルティング会社が営業組織へ指導している「結果を出すためには十分な行動量をおこなうこと」は徹底されていました。
◆ 営業に、売上目標と売上実績のGAPを認識させる
◆ 毎月の訪問件数を増やすように徹底する
営業マネージャーは、その毎週月曜日の営業ミーティングで「毎月の売上目標を確実に達成しろ!」「案件の成約率を高めろ!」と言い続けていました。ですが、言い続けても「営業担当者の売上目標の達成率が悪い!」「案件の成約率が悪い!」という問題を解決できないままでした。
対策として案件管理の導入する!
アセスメント(診断)して判明した営業組織の状態
A社の営業組織をアセスメント(診断)すると、営業結果が出ていない原因が見えてきました。A社では、「今月の売上目標を必ず達成しろ!」「案件の成約率を高めろ!」とマネージャーが営業ミーティングで言っていましたが、その裏では営業担当者たちは下記のようなことを行っていたのです。◆ お客様へ「なんとか今月中に買ってくれませんか?」と催促しすぎる
◆ 「安くしますよ!」と安易に値引きしすぎる
◆ 以上の結果、お客様が営業を避けるようになっている
営業担当者たちの案件の状況を確認すると、いくつかの案件はお客様社内でまだ予算がない状況でした。まだ予算がない状況なのに「いつ買ってくれますか?」「どうしたら買ってくれますか?」とお客様に催促していました。お客様は、A社の営業担当者から催促されても「もうしばらくかかります!」としか回答できませんでした。
ですが、それでも営業担当者から繰り返し「今月中に買いませんか?」「安くしますよ!」と言われるのです。お客様がだんだん営業担当者から距離を置こうとする気持ちもわかります。そのため、幾人かの営業担当者は会社を朝早く出るのですが、お客様が会ってくれないために、その後すぐにはお客様先には行かずに外で時間を潰していました。
営業は「モノを売る存在」だけではなく「お客様の購買プロセスを先へと進める存在」である
以上のような状況がわかりましたので、これらの問題を解決するための対策を提案しました。私たちがA社へ提案した対策案は「案件管理の導入」でした。一般的に「営業の仕事とは、モノを売ることである」と考えられています。ですが、それだけでは十分ではありません。
お客様には購買プロセスがあります。お客様はその購買プロセスを先へと進めないと発注できないのです。すなわち、「営業の仕事とは、お客様が購買プロセスを発注へと進めさせる仕事である」という考えを併せ持つことが大切です。そのような考えの営業を実施できるようになるための最も効果的な手法が「購買プロセスで案件管理を行う/購買プロセスでの案件管理へ見直す」という対策です。
案件管理を導入する
一般的に、案件管理を行なうためには、SFA(Sales Force Automation)と呼ばれる営業支援ツールを活用することが多いです。ですが、A社の営業担当者は5人と人数も多くないので、そのようなシステムに投資するのではなく、当面はExcelで管理をすることを提案しました。私たちがExcelの案件管理テンプレートを作り、「お客様名/案件見込金額/売上予定日/案件の進捗/今後の活動予定」の5つで案件情報を入力して管理できるようにしました。進捗管理には購買プロセスを利用する
そのExcelの案件管理テンプレートの「案件の進捗」は、以下の図のような購買プロセスを採用しました。法人企業がモノを購入するには購買プロセスがあり、基本的には下記の8つのステップで行われます。この購買プロセスの要素で案件の進捗を管理できるようにしたのです。
課題 | 何か投資・購入をするために、「なぜその投資・購入をする必要があるのか?」の問いに関すること |
予算計上 | 「投資・購入をする上で、いくらまでお金を使ってよいのか?」の問いに関すること |
要求仕様 | 「課題を実現するためにお金を出すわけだが、どんなものを購入するのか?」の問いに関すること |
ベンダー選定 | 「どこの会社が、私たち(顧客)がほしいものを扱っているのか?」の問いに関すること |
ソリューション選定 | 「その会社のどの製品が、私たち(顧客)の要求に合致しているのか?」の問いに関すること |
交渉・発注 | 「買うものは決めたが、どのくらい有利な条件で購入することができるか?」の問いに関すること |
納入・検収 | 「いつまでに手に入れたいか?いつから使い始めたいか?」の問いに関すること |
効果測定 | 「この投資・調達は、本当に効果を出せたのか?」の問いに関すること |
日常的に行なう「案件の進捗管理」の項目に、この8つのステップのすべての要素まで盛り込む必要はありません。それよりも項目数を絞ったほうが良いです。シンプルでないとデータ入力に余計な手間がかかってしまうからです。ですが、A社では、営業担当者が「商談というものはプロセスである」ということを正しく理解・学習する目的がありましたので、しばらくの間はこの8つのステップを進捗管理の入力項目としました。
案件管理を導入した効果
上記のような「案件管理」の体系を構築し、その後、営業担当者へ研修を行い、半年に渡り継続的な営業担当者への案件管理のコーチングを行いました。その結果、直面していた「営業担当者が売上目標を達成できない!」と「案件の成約率が低い!」という2つの問題を改善することができました。副次的な効果として、営業担当者からは「お客様との面会が楽になった」という声が多くなりました。以前は「いつ買ってくれますか?」と催促し「安くしますよ!」と安易に値引きをしている状態でしたが、この案件管理を導入した後はそのような会話が減り、そのことでお客様が営業担当者に対して距離を置かなくなったためです。
以上のように、売上目標を達成できる営業担当者を増やすことができました。また、案件の成約率も向上しました。そして、更に驚いたことに、利益率が上がったという波及効果もありました。なぜならば、安易に「安くしますよ!」と言わなくなったからです。
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案件管理を導入して(案件管理を見直しして)、営業成績を向上しよう!
私たちは営業力強化コンサルタントですので、様々な業界の多くの営業担当者と話をする機会があります。その際、「購買プロセス」の項目を利用して営業担当者へ案件の進捗度合いの質問をするのですが、面白いことがわかります。答えられる営業担当者は、案件の成約率、売上目標の達成率、そして、利益率も良いのです。もし、会社として案件管理を行いながら、購買プロセスの項目に沿って質問に答えられない営業担当者が多ければ、「案件管理」を見直す必要があります。購買プロセスに基づく案件管理体制を構築することが、営業組織の目標達成に重要なためです。
案件管理は、「売上目標を達成できる営業を増やす」「案件の成約率を向上する」ために必須となる管理体系です。今回ご説明した案件管理を是非営業組織の中で挑戦してください。必ず、この2つの数値は改善します。
ですが、行っても上手くいかなかったら、ご連絡ください。特に、案件管理を行いながら「売上目標達成率」「案件の成約率」「利益率」が高くなければ、案件管理がうまく機能していません。そして、営業支援ツール(SFA, Sales Force Automation)を導入していても、そのような状況の企業は多いです。
私たちは、多くの営業組織の業務改善/パフォーマンス向上/変化変革を実践しました。営業組織の目標達成を確実にするためのその豊富なノウハウと経験があります。私たちが、貴社内に潜んでいるその原因を発見し、「売上目標達成率」「案件の成約率」「利益率」これら3つの業績指標が向上するように支援いたします。
(本ノートは、2008年2月17日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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