その違いを生み出している要因の一つは、「自ら考え行動する働き方ができているかどうか?」です。今は「自ら考え行動できる人」が必要とされる時代です。その様な社員を一人でも多く増やさなければ企業は成長することができません。簡単ではありませんが、「自ら考え行動できる人」を教育しなければなりません。
社員たちへ「自ら考えろ!」と言っているだけではそのような社員は育ちません。どうしたら育成することができるのか、その3つのポイントと2つの方法について解説します。
「自ら考え行動する社員」を教育・育成する3つのポイントと2つの方法
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仕事ができる人とできない人が二極化し始めている!
私たちは、事業課題解決コンサルタントとしてクライアント企業の事業の成長を支援していますので、多くの経営者の方々とお話をする機会があります。その際、よく聞く悩みの1つは、「社員の能力と意欲に関すること」です。その「社員の能力と意欲に関する悩み」ですが、以前と比べますと、現在ではその悩みの内容が変化しています。以前、経営者の方からよく聞いた悩みは「今の社員は言われたこともできない!」でした。マネージャーが指示した通りに行えば、社員たちはより高い結果(パフォーマンス)を出すことができました。ですが、そのような悩みを言う経営者はだんだん少なくなりつつあります。現在、経営者たちからよく聞く悩みは、「自ら考え行動する社員」についてです。時代は大きく変わり、「言われたことをやっているだけでは、結果(パフォーマンス)を出せない!」時代となりました。今、結果を出せる人とは「自ら考え行動できる人」です。
このことは多くの社員たちも認識しています。私たちの研修に参加したビジネスパーソンたちと「今、ビジネスにおいて求められている人の特性とは何か?」についてよく話をします。「今の仕事環境は、仕事ができる人とできない人が二極化し始めている。自ら考えて行動する人こそ仕事ができる人だ!」という結論に至ることが多いです。
今の時代、「自ら考え行動できる人しかビジネスの世界では生き残れなくなる!」という考えが、経営者も会社員も含め、多くのビジネスパーソンの共通する考えです。
働き方が人生にどのような影響を及ぼしていたか?
先日、以前勤めていた会社の先輩がなくなり、そのお通夜がありました。大変お世話になった先輩がなくなったのは、残念で寂しい思いでした。そのお通夜には、当時一緒に働いていた多くの先輩方や同僚も来ていました。久しぶりに話をするとそれぞれがそれぞれの人生を過ごしていました。その後の人生の過ごし方は、概ね以下の3つに分類できることに気がつきました。分類1. 高齢のために年金で生活をしている人たち
この分類の人は、高度成長時代の中をサラリーマンとして働き、2000年前後にリタイヤした人たちです。猛烈に仕事をしていたこの方々も、年齢が75歳を超え、リタイヤ後の人生を楽しく過ごしているようでした。この世代の人たちは年金の心配はないようで、ゆとりある生活を送っているようでした。分類2. 様々な企業で経営者や事業主として頑張っている人たち
この分類は、年齢的には40歳から70歳くらいで、現在は外資系企業などの社長や取締役を任されている人たちです。起業した人もいました。今も意欲的に活躍されているようでした。この人たちと一緒に働いていた時のことを思いだしてみると、「自ら考え行動する」ことを実践し、会社の上層部にもお客様にも評価され活躍していた人たちでした。分類3. 当時の会社で働いているか、もしくは、いくつかの会社を転々とした人たち
この分類は、分類2と同様に40歳から70歳くらいの年齢の人たちですが、現在も会社員として働いている人たちです。当時の会社のまま長く勤めている人、幾つかの会社を転々とした人もいました。この人たちは、当時、真面目に仕事をしていた人たちですが、どちらかと言うと「自ら考え行動する」姿勢はあまり感じない人たちでした。当時の仕事ぶりを思い出しながら様々な人と話をしましたが、その話を通して「原因と結果の法則」のようなものを感じました。当時と今のビジネス環境を比べると、当時はまだ現在ほど急激に変化している時代ではありませんでした。変化が激しくなかった当時においても、その時の働き方次第でその後の人生が大きく変わっていました。すなわち、「その時の働き方」という原因が「現在の働き方や働く環境」という結果を生み出していました。
これからの未来において、この「働き方の差」によって、その後に手にすることができる機会や報酬の差はますます拡大していくでしょう。
過去「自ら考え行動する」は求められていたのか?
バブルが終わるまでの高度成長期の日本では「言われたことをしっかり行う」「猛烈に働く」ことが求められていた時代でした。実際に「言われたことをしっかり行う」ことをしていれば、十分に仕事がありました。例えば、ものづくりの仕事の現場などです。工場には多くの労働者がいて、同じ作業を正しく忠実に行っていました。同じ作業を正しく忠実に行ってくれないと、高い品質を維持できないからです。モノを作る世界では、それが求められていることでした。ですが、現在、そのような仕事はロボットが担うようになっています。「言われたことをしっかり行う」だけですむ仕事というのはだんだん減っています。この「言われたことをしっかり行う」という仕事を長く続けてきた人には、下記のような思考や行動の傾向があります。
◆「与えてもらうこと」が習慣となっており、自ら考える能力が乏しい
◆「なにが問題か?」「どうすればいいか?」を自ら考えることができず、人に教えてもらわないとわからない
◆「不満」を言うが、自らその「不満」を解消しない
◆ 変化に対する抵抗感が強く、変化を率先することができないどころか、受け入れることもできない
◆「改善」という必要な変化でさえ抵抗する
「自ら考え行動する人」に共通する特性とは
今の時代に求められることは、自ら考え行動できる人です。特に「付加価値」「サービス」「ソリューション」「イノベーション」「コンサルティング」という要素が必要な仕事では、自ら考え行動できる応用力が求められます。応用力を発揮できるから、お客様の期待以上の貢献ができるようになり、お客様へ感動を与えることができます。そのような「自ら考え行動できる人」は、下記のような共通する思考や行動特性があります。◆ 目的や目標が明確である
◆ 社内外の状況を観察・認識できる
◆ その状況と目的や目標との差(ギャップ)を認識できる
◆ その差(ギャップ)を埋めるための対策を考えられる
◆ それらのことに対してチームを巻き込む
さきほど解説した「言われたことをしっかり行う」という仕事を長く続けてきた人の思考や行動と比べ、今はこのような特性の社員が求められるのです。
「自ら考え行動する人」の育成の3つのポイントと2つの方法
育成のための3つのポイント
あなたの会社では、このような「自ら考え行動できる社員」を十分に育成できているでしょうか?あなたの会社や組織にこのような社員が足りなければ、雇うか、もしくは、育てる必要があります。
「雇うこと」は一つの方法ですが、そのような人を雇うことは簡単ではありません。そのような人はどこでも力を発揮できますので、会社内の重要なポジションで活躍しています。ですから、その会社が手放そうとはしません。また、重要なポジションにいる人ですから、そのような人を雇うためには相当な報酬を用意しなければなりません。ですので、もっとも現実的な解決策は、「自社で育てられる教育体系を整備し、着実に育成すること」です。
「自ら考え行動する人を育成すること」は、企業が長期的な成長するための必須条件です。その際、企業は以下の3つのポイントを考慮し、教育・育成することが大切です。
◆ 事業/部署/個人の成長につながる目標を与え、その達成を挑戦させる(課題を与え、その課題解決に挑戦させる)
◆ その目標達成・課題解決を継続的に支援する(コーチングやティーチングを行う)
◆ 期限が来たら達成度を評価する(自己評価と支援者の評価の両方を行う)
上記の通り、「自ら考え行動する人を育成する」ことの鍵となるのは、「日常の業務の個別目標とは違う、事業/部署/個人の成長につながる目標や課題を与え、そのための活動を実行させること」です。先ほど紹介した「分類2. 様々な企業で経営者や事業主として頑張っている人たち」は、そのような機会が与えられ、会社はその成功に向けての支援を行い、幾度と挑戦してきたから「自ら考え行動する人」へと育ち、活躍できているのです。
方法1. 個別に目標と課題を与える
上記で説明した「自ら考え行動する人」を育成する3つのポイントを見るとおわかりかと思いますが、これは多くの企業が実施している目標管理(MBO)でもあります。ですから、本来、目標管理(MBO)が効果的であれば、あなたの会社にも「自ら考え行動する人」が増えているはずです。ですが、目標管理(MBO)を行っているのに「自ら考え行動する人」が育っていないということは、主に下記が原因となっています。◆ 目標管理(MBO)に掲げる目標が、会社から一方的に与えられた目標だけになっている。
◆ マネージャーが、目標管理(MBO)を達成させるためのティーチングとコーチングを行う能力が乏しい
以上のような問題を改善する必要があります。特に、マネージャーが目標管理(MBO)を通して社員を育成できるスキルを強化することは大切です。「個々のメンバーに個別の課題を与え、その課題を解決する挑戦をさせること」を支援できる能力を持つマネージャーが必要なのです。
方法2. チームに目標と課題を与える
以上のように「効果的な目標管理(MBO)を行うこと、もしくは、運営方法を見直すこと」は、「自ら考え行動する人」を育成する1つ目の方法です。もう1つの方法は、チームで課題解決に挑戦させることです。3人から5人のチームを作り、そのチームに目標と課題を与えて挑戦させます。目標管理(MBO)の場合、マネージャーと社員の二人で目標達成や課題解決を行います。人数が2人ですと、どうしても意見やアイデアが限定的となり、取るべき手段や対策も限られてしまうために途中で壁にぶつかり、それ以上進めなくなってしまいます。
そのため、わたしたちは数人のチームで行うことを推奨しています。実際にクライアント企業のチームが挑戦する組織課題解決の支援をしていますが、チームで行うことには以下のような効果があり、最後まで成し遂げられる確率が高まります。
◆ チームで行うために、データなどの現状把握の精度が高くなる
◆ 誰か一人に押し付けるのではなく、作業をバランスしながら進める(助けあう)
◆ 様々な行動計画のアイデアを生み出せる
◆ チームで、様々な観点での遂行結果の評価や考察ができる
以上のように、「自ら考え行動する人を育成する」方法は、「一人ひとりに目標や課題を与える方法」と「チームに目標や課題を与える方法」がありますが、この「チームに目標や課題を与える方法」のほうが幅広い視野で考え行動でき、そして、相互に切磋琢磨して成長させることができます。
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「自ら考え行動する人」が育つ環境を準備することは企業の必須条件!
「自ら考え行動する人」を育てることは、企業が持続的な成長をするための必須条件です。この育成をすれば、社員全員が「自ら考え行動する人」へと育つわけではありません。まずは、1~2人が企業の未来を担えるように育てます。そして、その人数を増やしていきます。「自ら考え行動できる人」を育てるためには、会社として下記のような環境を用意することも重要です。ただ「やれ!」と言っているだけでは育ちません。
◆ 目標管理(MBO)を見直し、MBOを通して育成できるマネージャーを育てる
◆ チームによる事業成長への貢献を推奨し、支援する
あなたの会社は、「自ら考え行動する社員」を育てることができる体制が整っていますでしょうか?
もし整っていなければ、その環境を整えることから始める必要があります。そして、整っているのに育っていなければ、どこかに問題が潜んでいます。是非、力を合わせて、この問題を解決しましょう。あなたの会社に「自ら考え行動する人」を増やす支援します。より具体的な内容説明の希望・質問・ご依頼は、下記からお問い合わせください。
私たちは、日本に「自ら考え行動する人」がさらに増えるよう今後も研究と実践を重ね、より強力なソリューションを提供していきます。
(本ノートは、2015年12月27日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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